2025.11.16
葉月&コグマ スペシャルインタビュー
15日間で10日間の強行軍。オフの日も取材、撮影、練習と休むことなく活動をつづけたFWC。最終日の10月30日、メキシコシティの空港で今回のメキシコ遠征を総括してもらう予定だったが、まさかの飛行機トラブルにより、そんな余裕が吹っ飛んだ。結局、飛行機は4時間遅れで出発。乗り継ぎのサンフランシスコ空港で次の便に間に合わず、足止めを食らって帰国日が1日ずれることに。急遽、まだ帰国できない状況の葉月、コグマにサンフランシスコ空港にて、今回の遠征を振り返ってもらった。
――とりあえず、まだ帰国していないものの、なんとかメキシコでの全日程が終わりましたね。まずは今のお気持ちからお聞かせください。
コグマ もう今はほっとしてます。全部が終わったという、達成感がすごいです。
葉月 日本じゃ考えられない試合数でしたし、連戦と移動距離がすごかったです。
――そうですね、5連戦が2回、計10試合の強行日程でしたからね。移動もバスや飛行機での長距離もあり、スケールが大きかったですよね。
コグマ はい、そもそも言葉がわからない。通じないし、全部、勝手が違いました。
――お2人とも初めてのメキシコなわけでしたから、想像とは違いましたよね。まず最初にメキシコ遠征のお話が来たときには、どう思いました?
コグマ 行けるなら行きたいって思いました。私、10年ぐらい前に一回、行くお話があったんですけど、行けなくなっちゃったんです。だから「行きたいっ!」って。
葉月 私は即、「あ、行きたい!」でした。自分のプロレスの中でも、速い動きを使ったりすることもあるんで、もっと本場のルチャを体験したいなっていうふうに思いました。それに、今アメリカのベルトを持ってて、CMLLのベルトを取りました。今このタイミングでいけば、日本じゃできない経験ができるし、自分の視野を広げていきたいなって思ったので、出れるんだったら、「はい、出たいです」の返事しかなかったですね。
コグマ 自分も、メキシコは昔からずっと行きたかったし、いろんな面で興味があったので。で、あと、私たち海外志向があったというか、タッグでもいろいろベルト取りたいと思ってたのもありました。もちろん、個人でも、海外のベルトを取りたいと思ってたので、「どうですか?」「行きます!」みたいな感じでした。
――その舞台がメキシコで一番のメジャー団体であるCMLLだったわけですが、出発前はどんなイメージがありましたか。
コグマ イメージは島国的な、日本のプロレスやアメリカンプロレスって、結構共通点があるけど、ルチャ系はもうなんか全く違うなって感じがして。ただ、YouTubeとかでも、調べてもあんまり出てこなかったり、Googleとかで調べてもあまり出てこなくて。だから、最初は謎のイメージでした。でも、xとかで動画は流れてくるので、そこで見る限りは、もう本当、「ザ・ルチャ」みたいな、クルクル飛んだり回ったりっていうイメージでした。
葉月 「行く!」ということ自体は、こっち側は楽しみだけど、メキシコ人の方とか選手とかに、あんまり受け入れられないのかな、どうなんだろうみたいな考えはありました。試合のスタイルっていうか、そういうのも違うし、それでも、あんまりよく思ってないものを覆せる機会でもあるから、それは楽しみでした。
――いろんな思いがある中でのメキシコ入りとなったわけですね。まずは初日、10月15日、空港では、メキシコ到着のお迎え映像の撮影からスタートしました。いよいよ、すべてのスケジュールがここから始まりましたね。
葉月 まず空港について、「撮影します、それから『CMLLインフォルマ』に出演します」って、「もう休む暇ない」と思って、あわてて空港でパックして、周りの人に見られながら、化粧するっていうのが初めての感覚すぎて戸惑いはありましたけど、日本ではない忙しさを感じられて、ありがたいなって思いました。
コグマ 私はサバイバルみたいだなと思ってました。日常でも個人的な面で、そういうタスクをこなしていくっていうのが好きなんですよ。一日で、例えば、5個ぐらいタスクを決めて、それを予定通りにこなせたら、すごい達成感がある。だから、ゲームが始まったなっていう感じで、楽しかったですね。いきなりミッションが始まった、みたいな。


10月15日(1日目)…空港に着いてまずは撮影。メキシコのファンに向けて、これが一番最初のアピールとなった。続けて、スタジオに移動して「CMLLインフォルマ」出演。到着日早々、休むことなくFWCの宣伝に努めた。
――初日は、いきなり撮影や番組出演でしたが、2日目の16日はメキシコのメディアの方が多数集まってFWCのお二人への合同記者会見が行われました。現地のメディアから多数取材を受けましたが、改めて振り返ってみていかがでしたか。
葉月 こっちへの関心がすごいなあって。日本だとこっちが喋って、はい、終わりです、みたいなインタビュー的なんですけど、向こうの人は、聞きたいことを何個も用意してくれてて、いろんな葉月とコグマを知りたいんだなっていうのがわかって、嬉しかったです。
コグマ やっぱ団体が大きいからというのもあるんでしょうけど、(マスコミの)みんなが活動的、意欲的でした。みんながエネルギッシュだから、こっちもすごくパワーもらえるというか、「あ、こっちもちゃんと答えよう」って気持ちになるのが、なんか嬉しかったですね。


10月16日(2日目)…女子クラスのあと、メキシコの新聞、雑誌、テレビ、ネットなどのメディアが集結し、合同取材。20社以上が質問攻勢。40分にもわたる長丁場となった。
――試合前からいろんな露出があって17日、デビュー戦を迎えます。対戦相手はマルセラ&プリンセサ・スヘイ&マグニフィカのベテラン組でした。いきなりのアレナメヒコという大舞台を経験してみていかがでしたか。
コグマ 歓声が日本の比じゃないというか…。日本どころか、アメリカよりも歓声がすごかったのが第一印象でした。試合自体はもうやるしかないって感じだったんですけど、相手がベテラン3人だから、変な安心感というか。
葉月 うん、何をしても大丈夫みたいな。
コグマ 試合を通じて、ルチャを教えてくれるんだろうな、みたいな安心感はありました。
――グランプリの前って多国籍軍の方って、絶対みなさんブーイングを浴びます。でも、デビュー戦に関して言えば、試合後、声援のほうが全然上回っていました。
葉月 想像していたよりもブーイングがなかったので、受け入れてくれているのかなって。もしかしたら、ブーイングしてやろうって思ってた人も、試合を見て「こいつら、すげーっ!」て思ってくれての歓声なのかな? って。 1発目でちょっと認められた感じはしました。
コグマ 私たちFWCは、2人で出るときは多分どこに行っても、歓声を変えられる自信はあるから、全然そういう面では気にせず、いつも通りやれば、おのずとそうなるだろうなっていう自信はありました。だから、「あ、よしきた、うまく乗ってくれた」みたいな。


10月17日(3日目)…ついにFWCがメキシコデビュー。まずはプレスルームにて、宣材用の撮影。デビュー戦はまさかの大ブーイングが大歓声にひっくり返るという結末。初戦でFWCがファンの心をわしづかみに。
――本当にそんな反応でしたよね。いきなりメキシコのファンの心を掴んだという実感がありました。さて、翌18日は場所を変えてアレナコリセオという伝統的な会場で、雰囲気もまた全然変わりました。ここで 純血のFWCが初結成で、対戦相手はサネリイ&メタリカ組でした。こちらの会場や試合についてはどうでしたか?
コグマ 相手がヒールみたいな感じだったんで、ブーイングは思ったよりはなかったというか。アレナメヒコとは違って、縦に長い会場というか。コロッセオというだけあって、熱い感じで、「おおー」みたいな独特の感覚はありました。
葉月 1発目にアレナメヒコを感じちゃったんで、会場的にはちょっと小さめかなと思ったんですけど、歓声はすごいし、2試合目で早くもFWCのタッグを見せられたので、それも良かったのかなって思いましたね。


10月18日(4日目)…アレナコリセオで第2戦。FWCのタッグ初戦。前日見せなかった連携も次々と披露。
――さて、試合はまだまだ続きます。翌19日が二度目のアレナメヒコで、タバタ&カンデラ&キラ組という新世代トリオと対戦でした。前日がFWCの純血タッグというのもあり、このあたりから、連携技が頻繁に出るようになります。二人でトップロープに立ってのダイビング・セントーン&ダイビング・ボディプレス、また葉月さんのトペ&コグマさんのプランチャの同時発射が飛び出し始めます。これらの連携技をやるようになったきっかけは?
葉月 日本だと二人でリング内に出てるのは短くなくてはいけないという感覚があるんですけど、メキシコの場合はルール的に問題ないし、ダブルフォールというものもある。それが自分的には新しくて、だったら、「FWCで見せつけられるものを全部見せつけてやろうぜ」っていう気持ちがあって。つねにタッグとしていろんなものを見せようみたいな気持ちはありました。
コグマ メキシコは日本と逆というか。とはいえ、厳格なルールはどっちもないですけど、やり方というか見せ方は真逆な感じがしました。日本だとレフェリーにうまく隠れなきゃいけないじゃないですか。でも、こっちだとそれがあまりないからこそ、やれるだけやったろう! みたいな気持ちになりました。いつも日本で見せている連携を見せたいなという意識で取り組んでいました。
――トップロープでダイビング・セントーン&ダイビング・ボディプレスに行く時の観客の扇動アピールなどはまさにメキシコのファンへのアピールにピッタリだと思って見ていました。
コグマ 両手で扇動していったら歓声が上がっていくから、「もっとボリューム上げてー」、みたいな(笑)。
葉月 こっちも気持ちよくなるから「もっともっともっともっとー」みたいな(笑)。
――トペとプランチャに関しても、時間差で決めるのではなく、同時発射というのも特徴的でしたね。
葉月 日本だと、トペやって、プランチャ飛んで、と時間差で個々に飛ぶ人が多いじゃないですか。それか、プランチャを同時で飛ぶかですよね。このトペとプランチャのタイミングを合わせるのって、なかなか難しいんですよ。
コグマ それに関して言えば、メキシコの人は、結構そのダブルでもドン!ドン!とかってイメージでバラバラだけど、私たちがこだわっているのは、一緒、ということ。セントーンとプレスも一緒に着地。 そこはこだわっていますね。 綺麗じゃないですか?
――そうですね。実際この連携は見たことはありませんし、メキシコのファンからしたら、それがすごくインパクトあったんでしょうね。
コグマ ですよね。あんまり、そのそういうのを見なかったので。
葉月 そこが合わせられるのがそのFWCの良さなのかなって。
コグマ 合わない人は合わないんで。逆に言ったら練習もしてないんです。
葉月 同時に飛ぼうという練習はしてなくて。
――じゃあ、ぶっつけ本番みたいなものですね。それであれだけ呼吸が合うんですね。
葉月 そうなんですよ。
コグマ たぶん、勝手に合うんで(笑)。


10月19日(5日目)…アレナメヒコで第3戦。小さい体ながらもスイングスリーパーに持って行くコグマのパワーにどよめく。葉月はフィニッシュにはづロックを見せ、目の肥えたメキシコのファンに「何が起きたんだ?」と、衝撃を与える。(C)CMLL/Alexis Salazar
――まさに阿吽の呼吸と言うべきか。では翌20日、4連戦目はアレナプエブラ大会で、FWC対テッサブランチャード&スカディ戦でした。
コグマ あまり前情報を入れてなかったんで、後日知ったんですけど、グランプリ覇者と現タッグの王者が相手だったみたいで。その二人に勝ったのはすごい大きかったんだろうなって、あとで気が付いたんですけど。
葉月 そう、いつも通り、うちら調子いいみたいな。いい感じでしか考えてなかった。
コグマ とにかくスカディのインパクトがあって、見た目もでかいし、日本じゃいないタイプですね。大きさだけなら、ダンプ(松本)さんとか、アジャ(コング)さんとかおられますけど、それでいて飛べる選手はいない、インパクトがすごいです。これがルチャなんだなと感じました。
――プエブラという町は、世界遺産の町で教会が華やかだったり、天使がたくさん住んでいるっていう逸話もあります。街の印象って、いかがでしたか?
コグマ めっちゃ綺麗でした。ファイト系でたとえるなら、アレナメヒコあたりがなんかストリートファイトな感じで、プエブラはフェンシングみたいな、高貴なイメージで。 犬のウンチも全然落ちてなかったです(笑)。


10月20日(6日目)…アレナプエブラにて第4戦。テッサ&スカディの実力派を下し、4連勝。
――まあ、メキシコシティ周辺はいたるところに糞が…(笑)。さて翌22日、5連戦目がアレナグアダラハラ大会です。同じ国内ですが、飛行機移動するほど、距離も離れています。熱狂的なファンで知られるアレナでもあります。応援団の雰囲気に圧倒されますね。
コグマ まず、この時、3本勝負が初めてだったんです。
――そうなんですよね。従来と違って、今回は1本勝負が主流でした。
コグマ それにシルエタの故郷ということもあって、会場で会えたこともうれしかったし、応援団がいて、野球っぽかったです。 なんか右と左の席で別れて、応援歌的なものをずっと歌ってた。
葉月 なんか試合よりも応援団のほうを見そうになりました(笑)。 でも、言葉がわからないから、どっちを応援してるんだろうと思いながら、勝手にもう全部自分たちへの応援なんだっていうふうに思うようにしていました。
コグマ うん、わかんないからこそ、全部が自分たちのものだと思えるだから、普通に楽しかったです。
――実はこのデビュー戦からの5連戦で5連勝という記録を打ち立てました。今までいろんな選手が来ましたけど、グランプリまでの全勝は初めてという快挙です。
コグマ やっぱりその結果だけで見る人もいるので、いろんなところに伝えられるし、自慢できるというか。「私たちは5連戦5連勝したよ」って言えるなっていう。いい結果として残りましたね。
葉月 しかもそれがグランプリ前っていうこともあって、自分たちもめちゃくちゃ勢いが良かったし、対戦相手が「こいつらに負けないよ」って気持ちで来てるのを上回っての自分たちの勝ちがついてるので、やっぱりタッグとして、No. 1なんだなっていう手ごたえはすごく感じました。


10月21日(7日目)…アレナグアダラハラで第5戦。ついにグランプリまで無傷の5連勝という快挙を達成。
――でも改めて振り返ってみると、最初の5連戦だけでも相当、濃密な空間でしたね。試合や移動も含めて、本当に時間のない中での5日間でした。
葉月 本当になんかいつ一日が終わったのかわからないレベルで、毎日が忙しくて過ぎていったね。
コグマ 気がついたら一日を繰り越している。日本より労働時間は長くて、睡眠時間は短いって感じだったんですけど、気が張っていたからか、不思議と大丈夫でした。体は疲れてはいましたけど。
葉月 なんか疲れを見せないように体がしている感じだったよね。
コグマ なんか元気の前借りみたいな(笑)。そんな元気が出ていて。
葉月 しんどいより楽しいという気持ちのほうが大きかったのもありました。しかも、大一番がグランプリだから、ケガできないっていう意識もあるから、余計に気を張っていた部分はあると思います。
――そのうえで、コンディションを整える意味で、気を配っていたことはありましたか。
コグマ まず、変なものは食べない。
葉月 お腹は壊さないっていうのは一番。もう睡眠時間はどうしようもできないじゃないですか。忙しくさせてもらってるから。
コグマ そのなかでできるだけ寝るけど。
――メキシコは気をつけないと、お腹を壊しやすい環境にありますからね。
葉月 そう、だから、用心していました。お腹壊して試合でできないことが一番嫌なので。
コグマ 水はペットボトルのやつを飲んで。生野菜とか、火が通っていないものは控える、避ける。
葉月 よくわからないものは、食べないようにっていうのはすごい気をつけました。
――そのおかげで、とりあえずはグランプリ当日まで大丈夫でよかったですね。さて、グランプリの前日23日には、AEWの選手たちもメキシコに来て、会見で顔を合わせるということになりました。中島翔子さんとか、白川未奈さんとか、日本人の方も合流するようになりました。もともと彼女たちとの接点はどういうものでしたか。
コグマ 白川未奈とは、スターダムで一緒だったんですけど、中島さんは一緒ではないですけど、デビューが近いんです。…もしかしたら同期に近いのかもしれないんですけど。
葉月 (中島選手は)13年デビューだったから。
コグマ スターダムのその時のデビューが変なんですよね。 何年デビューじゃなくて何期なんです。 実質、葉月が14年、私は13年デビューなんで、年代で見ると違うんですけど。でも(FWCは)同期で。だからちょっとよくわかんないですけど。でもそれくらいの情報ですかね。あまり中島さんは関わることがなかったので。
葉月 ただ、日本人で言葉通じる人がいるっていう安心感はありました。
――今回のグランプリメンバーで言えば、もう一人、ある意味、接点の深いテクラ選手もいました。テクラと多国籍軍にて、一緒になったことに関してはどうでしょう。
コグマ ああ、私はなんか嬉しかったですけどね。 全然。テクラとなんか会社がどうこう揉めているのは関係なかったんで。
葉月 私も「久しぶりに会える〜、嬉しい」、そういう感じだったんで。
コグマ 活躍してて、ええ、もうすごいなって見ている感じでしたから。
――実際に話とかはされましたか。
コグマ 全然普通に話しましたよ。「頑張ってる? 」とか。
葉月 「元気?」みたいな。本当、普通の会話でした。
――そして、ちょうどこのタイミングで、CMLLとスターダムの業務提携が発表されました。 結構、電撃的な発表だったんですけど、それを聞いたときは、どういう印象でしたか。
コグマ そういう話は前々から、もちろん出ていたとは思うんですけど、じゃあそれをどうやって確かめるかっていう部分で、私たちが送られて。それで5試合して、その評価で、「これなら大丈夫だ」っていう確証を得られたんじゃないかなって思ってます。
葉月 そうだね。 この業務提携に関しては、うちらの頑張りも確実にあるよね。
コグマ とは思ってます。私たちが最後の懸け橋になったんだと。
――業務提携に関しては、まだ発表しただけで、今後どうなっていくかはこれからなんですが、お二人の希望みたいなものはありますか?
コグマ どっちも盛り上げたいので、日本でCMLLの選手とスターダムの対抗戦みたいなものをやりたいし、逆にメキシコでスターダムとCMLL合同興行とかもいいですし、どちらにも行って、どちらでも広めたいなと思います。
葉月 お互いに大きくなれば、さらにプロレスを見てくれる人も増えるだろうし。
コグマ もう、すぐ活動していきたいよね。この熱が冷めないうちに。
葉月 またね、すぐメキシコうちらも行きたいと思いますし。
コグマ CMLLからも来てほしいしね。
――この業務提携のニュースは相当、現地のメキシコでは話題になっていました。現地で試合をしている身のお二人にはそこまでわからなかったかもしれませんが。
コグマ やっぱその情報を追う方法がないので、あんまりわかってはなかったんですけど、広まることは嬉しいですね。


10月23&24日(9&10日目)…中島翔子、白川未奈、岡田社長らも合流。スターダムとCMLLの業務提携も発表。
――そして、24日、いよいよグランプリ本番です。 最初に軍隊の方たちが入場して、セレモニーがあって、国歌をお客さん全員が歌ったりというものがありましたけど、そのスケール感というのはいかがでしたか?
コグマ 日本のプロレスでは考えられない。プロ野球とかサッカーとかぐらいの大きい規模で、すごい圧倒されたというか。客席で見たかったですね(笑)。
葉月 わかるわかる。アレナメヒコのチケットが売り切れてるみたいな。もうグランプリへの関心度の高さをすごく感じました。
――だからこそ、多国籍軍として、メキシコ・CMLL軍と対戦されているお二人へのブーイングは高かったですね。
葉月 今までにないブーイングを感じた気がしました。もうそこに関しては、ブーイングするなら、もっと来いみたいな。でも、日本人初優勝したいという夢がすごくあったので、そこに向けても、自分の最善を尽くすのみって感じでしたね。
――実際にお互い、グランプリの試合を振り返ってみてどうでしたか。
コグマ いやー。難しかったですね。 日本の感覚で言うと、あれだけ選手がいたら、みんなで「ブワーッ!」ってなんかやり合うとか、そういうものがあるかなとか思ってたんですけど、意外とないというか、1対1の戦いが中心でしたね。
葉月 誰かが出たら、もう隙をついて入らないとみたいな感じはすごくありましたね。それで、グランプリに出ているメキシコ人の選手の方がほとんど当たってない方だったので…。
コグマ だからもう、感覚的には一日目に戻ったみたいな。
葉月 でも多分、向こうは向こうで、こっち側が5連勝してるっていうのを知っているだろうから、絶対負けられないっていう熱量も、闘いながら相手側から感じてはいました。
コグマ まあ、狙われるよね。
――どうしてもターゲットにはなりますし、実際マークされていましたよね。最後、ペルセフォネの優勝で幕を閉じて、ノーサイドみたいな感じで終わりましたけれども、すべてが終わった時のお気持ちはいかがでしたか。
葉月 無事終わったなとは思ったけど、やっぱり悔しいなっていう気持ちはありました。ここまで5連勝してきたのに、ここで負けちゃうかっていう。確かに自分が優勝したい気持ちは一番ですけど、やっぱり日本人初優勝、誰か取ってほしかったなと。
コグマ こっち側の多国籍軍が誰か勝てれば、一番良かったかな。



10月24日(10日目)…グランプリ本番(第6戦)。コグマ、葉月とも優勝は果たせずとも、インパクトを残し、"世界のFWC"が名実ともに叶った瞬間だった。最後は大団円で終わる。
――という大一番が終わりました。ただ、このグランプリが今回の最終試合ではなく、翌25日はまた、メキシコ北部にある、モンテレイへの長距離遠征が控えていたんですよね。これもまた早朝に飛行機移動という過酷なスケジュールでした。
コグマ そうなんですよ。だから実はあそこで優勝しました、「ワーッ!」て、みんなでやっているときに、私は「明日からも試合だ」って思っていました。ここで終わりじゃないって(笑)。
――グランプリという、ものすごい壮大なイベントの次の日には、ERLLの大会という、ローカルなインディの会場に行かれたわけですけども、あれも1つのルチャの形です。グランプリとは真逆の大会を経験してみて、どうでしたか?
コグマ 楽しかったです。 目新しいというか、いい意味で今までのグランプリまで気張っていたのが、ちょっとこう緩んだ、リラックスしたというか。子どもたちが本当に多くて、かわいくて。日本だとあんなに子どものファンが会場にいないし、近寄ってくることもあんまりないんですよね。
葉月 そう、めっちゃフレンドリー。本当、試合の入場したらセコンドかな?って思うぐらい子どもたちがリング周りに囲んでくれて。
コグマ やっぱり子どもが応援してくれるってことは、嬉しいことですね。
――そうそう、子どもたちが熱心にリング周りで応援していました。しかも、あの大会はトータルで、第1試合からメインまで見て、子どもたちがあそこまで声援を送ったのは、FWCのお2人だけでした。
葉月 おー! 子どもたちからも認められたFWC(笑)。
コグマ もしかしたら、年齢が近いと思われたからかもしれない(笑)。外国だと日本よりも自分たち、若く見えると思うんですよね。だから近い年齢の選手だみたいな。
葉月 身長も小さいし(笑)。
コグマ それもあったのかもですけど、でもまあ、トータルで嬉しいです。


10月25日(11日目)…ERLLで第7戦。早朝からモンテレイへ移動。子どもたちから人気爆発。試合中もリングを取り囲み、子どもたちの応援を受けて闘う。
――そういう経験をして、26日にはアレナメヒコに凱旋してマルセラ&プリンセサ・スヘイの元CMLL世界王者コンビ、実力者チームと対戦でした。CMLLでは5連勝後、グランプリを挟んで、超実力派2人からの勝利で、実質6連勝でした。振り返ってみて、どうでしょう。
コグマ 初日でどういう感じかっていう感覚をつかんだので、やりやすかったです。ベテランだから、やってくることも多い。だったら、逆にこっちもやってやろうと思ったので、ベテランをボコボコにするのには、いいかなと。
――だからこそ、その攻め方にはブーイングを結構浴びていましたね。
コグマ この試合ではブーイングを求める気持ちでいました。それまでは、どうにかなるだろうって感じでしたけど、今回はブーイングが欲しい気持ちでやっていました。
――会場全体からのブーイングというのは、日本では全然経験したことがないと思うんですが。
コグマ ブーイング、大好きです。ぶっちゃけ海外だと声援も何言ってるかわからないから、どっちなん? って思ってます。とにかく声が出ていればいいなと。特にメキシコの方はめっちゃ声出しますから、別に何でも嬉しいですよね。
葉月 ブーイング、最高だなっていう気持ちがありますね。試合をするにあたって何も声が出ないほうが、やってる側も、「この人たちはどう思って試合見てるんだろう?」という気持ちになるんです。ブーイングしている人を見つけて、そこを煽れば、もっとブーイングくれるから、こっちの罠にハマってるじゃないですけど。
コグマ 楽しんでくれてるよね。
――葉月さんは耳に手を当てて、それこそ反応を探っていましたからね。それがまたものすごい盛り上がりにつながっていました。
葉月 それが本当に、お客さんと選手の一体感じゃないけど、つなげてくれているのはあるのかな? って思います。
――この日はマルセラ&スヘイの実力者コンビに勝ったのも大きな実績だと思います。
コグマ やっぱり日本でもそうですけど、まずベテランの方に勝つっていうのはすごい大きいことだなと思いますよね。 やっぱり、経験とか、いろんなものがベテランの方にはあるわけで、そこを超えていけるっていうのは、うれしいし、評価も上がるかなって。
葉月 自分たちのタッグとして、またさらに何段階も上に上がった感じがすごくしました。
――本当にこれだけの実績というのは、今まで例がないですからね。日本だけなく、海外からメキシコのリングへ上がっている多国籍軍など含めて。本当に栄誉あることだと思います。
葉月 その誰もしたことがないことを成し遂げたFWCっていうのは、自分たちにとってもすごく嬉しいですね。


10月26日(12日目)…アレナメヒコで第8戦。超実力派チームであるマルセラ、スヘイを下して実質6連勝。今まで達成した選手などいない快挙。(C)CMLL/Alexis Salazar
――と、ここまで熱心にリング上の評価の話をお聞きしておきながら…次の27日アレナプエブラ大会からはガラッと内容が変わります。メキシコでは「死者の日」という年間最大のお祭りがあり、その週間に突入します。この期間は選手たちはカラベラ(骸骨)メイクで、骨のTシャツを着て試合をするのですが、ペイントすると意識は変わりましたか。
葉月 変わりました! いつもと違う自分が出せるというか。
コグマ 日本だとベビーフェイスよりだったんですけど、ずっとヒールをやりたかったんで。デビューの時からヒールが好きだし、デスマッチやりたかったんですけど、「あ、やっと、なんか悪いことできるぞ!」みたいな気持ちになりました。
――実際にカラベラメイクした自分の姿はどうでしたか。
コグマ すごく楽しかったです! メイクするのも楽しいですね。日本でもやりたいなって思いました。
――そして、なんと葉月さんは全面カラベラというサプライズ!(笑) いやー、インパクトありまくりでしたね。
葉月 みんなが顔半分でペイントをやっているなか、「トド、カラ! トド、カラ!(顔全部)」って言って(笑)。最初は、スタッフさんから「下地だけ持ってきて」みたいな指示があって。じゃあ、下地だけでいいか。でも、せっかく骸骨をやるなら半分よりか全部やりたいっていう気持ちが強かったので、もう下地だけ持ってって、あとはメイク道具全部をホテルに置いて来ていたんです。メイク室に行ったら、「今日は顔半分です」って言われて。「は? 無理無理。そんな化粧品持ってきてないから」って。プエブラだから、ホテルへ取りに帰れる距離じゃないし、そもそも半分か顔全部か選べると思ってたんで、「いや、もう無理だよ」みたいな。コグマの化粧品とも種類が違うから使えないですし、もうこれは半分すっぴん半分化粧は無理だなと思って。それで、もう「全顔で絶対に!」みたいな(笑)。
コグマ ただ、その時の圧が出てましたね。あのメイクに(笑)。
葉月 だって半分すっぴんで出たくないじゃないですか(笑)。
――入場で出てきた瞬間、インパクトがやばかったです(笑)。
コグマ メイクの過程が一番面白くて、(葉月の)白塗りだけされている時が、中国のキティちゃんみたいで(笑)。
葉月 もう、ずっと笑っているんです。こっち見て(笑)。
コグマ 中国のキティちゃんみたいな、面白かったです。 それを見せたかったですね。
――中国の、といういわく付きなんですね(笑)。でも出来上がりはパンダみたいになってましたね(笑)。
葉月 そうなんですよ。途中、スタッフさんからも通りがかった人に笑われたり、パンダって言われたり。いや、でもなんか、あ、意外と似合ってるって思いました。
――いや、実際、カラベラメイク、不思議と似合ってましたよ。
葉月 なんですかね? 顔の作りなのかなんなんですかね?元から日本人寄りではないというか、ちょっとフィリピン寄りの顔だとよく言われてので、だからこそ良かったのかなと。
――試合はそのメイクと、骨のTシャツ着てやったわけですけど、これも初めての体験でしたね。
葉月 ああ、そうだ。暑かった。こっちはTシャツ着ているのに向こうは着ていなかったりして。何が違うんだろうって最初は思ったんですけど。あとからその経緯を聞いたら、ルーダがTシャツを着るみたいで、あ、そういうことかみたいな。じゃあ、もうもっとルーダ的なことをやっちゃっていいなって、余計に思いました。


10月27日(13日目)…アレナプエブラにて第9戦。いよいよ「死者の日」週間。葉月のインパクトは一度見たら忘れられない!(C)CMLL/Alexis Salazar
――たしかにスタイル的にも、ちょっと変えてましたよね。翌28日のアレナメヒコも同じ死者の日大会でカラベラメイクなのですが、これが今回の最終試合、合計10試合目にもなりました。
コグマ アレナメヒコだけあって、そのクオリティーというか、死者の日の会場の作り方とか、演出とかがもっと凝っていて、なんかもう自分たちがディズニーのキャラクターとか、ディズニーのそのアトラクションの中みたいな気分でした。
葉月 試合もそうだけど、この「死者の日」そのものを楽しもうみたいな気持ちでしたね。 負けたら謎に大男たちに連れていかれるし。抵抗しても離してくれない(笑)。
コグマ 自分たちも、死者の日ならではの体験を楽しみながら、試合してました。
――本当にこの1週間しか体験できないですからね。
コグマ もし次メキシコ来るとしたら、また「死者の日」の時期に来て、今度は最後までいたいですね。私は全顔やってないんで。最後までいたら、完全な死者になって墓に戻ると聞いたので。
葉月 次は、もっとその日のために衣装とか用意したいなって思いました。
コグマ 今回あんまり事前に何も知らないで来たんでね。もっと合う衣装があったかもしれない。


10月28日(14日目)…アレナメヒコで最終戦(第10戦)。ラストはカラベラメイク。惜別の連携技を次々と繰り出してのメッセージ。 26=(C)CMLL/Alexis Salazar
――ああ、確かにいろいろと「死者の日」バージョンのFWCができそうですね。ではまたその機会が訪れることを期待して…これで10試合すべて振り返ってみました。
葉月 あっという間でした。ほんと、つねに気を張ってないといけなかったので、最初は意外と長いのかなって思ったんですけど、あっという間に終わって。
コグマ 感覚的には、15日間というよりは長い一日。全部つながっていう感覚でした。
――では、もし次にメキシコへ来るとしたらどんなことをしたいですか。
葉月 今回、試合しながら得られるものはあったんですけど、つねに試合だったので、次来るときはもっと練習に時間を割いてルチャを吸収していきたいですね。
――今回、2回だけでしたが、ウルティモ・ゲレーロさん指導の女子クラス(練習)へ参加された経験はどうでしたか。
コグマ 全然、日本で見たことない動きしかしてなくて、しかも、指導してくれるんですけど、全部スペイン語だから。私たちはもう見て覚えて、どうにかするしかない。 そのサバイバル感も楽しかったですね。
葉月 標高も高いし、息が上がるけど楽しかったです。それはそれで日本帰った時に、自分がその動きをやりやすい感じになるのかな?って。もっといろいろ知りたいし、いろいろ教えてほしい。
コグマ 日本でも教室をやってほしいなって思います。メキシコの人って大きくても小っちゃくても関係ない。 みんな同じことができるし、飛べるし、受けれるし。日本だと大きいと飛べないとか、ちっちゃいと受けられないとかはあるんですけど、そこを乗り越えていけるルチャの技術があるんですね。 そこをもっと日本でも広めてほしい。
――今回は、試合が中心のスケジュールで、練習以外でも観光とか、メキシコの街並みを知る機会は少なかったと思うんですけど、その中でも見たもの、感じたものはどうでしたか?
葉月 人はみんな優しかったです。英語もなかなか通じないっていう感じだったんですけど、すぐに翻訳してくれたり、わかりやすいスペイン語で伝えようとしてくれたりっていうので、人のあったかさを感じました。
コグマ 来る前はすごい周りからも「メキシコは危ないから、気をつけて」って、もうなんか殺されるよ、ぐらいの感覚で、めっちゃ警戒しながら来たんです。でも、もう真逆で、すごいびっくりしました。


10月29日(15日目)…唯一のオフ。とは言え、撮影の仕事でテオティワカン(ピラミッド)へ。その後、メキシコシティにあるプロレスショップを訪問。
――そんなビビりながら来たわけですね(笑)。いまはお疲れさまでしたって言うしかないんですけど、こうして全て終わって、改めて心境はいかがですか?
コグマ いえ、また今がピンチです。
葉月 いま、まだ旅は終わってないんです。遠足は家に帰るとこまでなんですね。今ピンチです。
コグマ 早朝にホテルを出発して、空港からサンフランシスコへのトランジットだったのに、まずその時点で遅れて。飛行機が数時間遅れてやっと飛んで、サンフランシスコ着いたと思ったら、今度は荷物が出てこない。それでなんか1時間ぐらい待って、今度はカウンターで次の振り替えがあるとかないとかでずっとやり取りして、やっと今、空港のレストランにたどり着いて、今このお話しているところです(笑)。
葉月 しかもメキシコの空港の換金所で、残ったペソのお金を渡したら、「ちょっと待って」って言われたから待ってたのに、「いや、お金を渡されてないけど、これは私たちのお金です」みたいな。「お金ちょうだいみたいな」、そんな感じでしたね。でも、スペイン語もしゃべれないから、「それは違う。うちのお金だから」みたいに日本語で言い返して。めっちゃ圧かけて、なんとか返してもらいました。

10月31日(オマケ)…まさかの足止めとなったサンフランシスコ空港にて。これから日本へ帰ります!
――それはまた最後に強烈な経験を…(笑)。まぁ、なんとか無事に日本までたどり着くことを祈りましょう!一応、今まだこのインタビュー時点では海外にいるので、日本のファンの方に最後にメッセージをお願いします。
コグマ パワーアップした、FWCを見てほしいっていうのと、またいろんな面が、日本で見れるかもしれないから、楽しみにしていてほしいです。また、あの変なガイコツが出てくるかも…。
葉月 いろんなものを今回の遠征で吸収できたと思うので。FWCもそうだし、葉月の個人としても、さらなるレベルアップはできた機会だと思うので、そこを楽しみにしてほしいなっていうのと、また、すぐ世界に呼ばれたら、飛び立てるように準備しておきたいなっていう思いはあります!
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