8)キアゲハ チョウの図鑑に戻る キアゲハ(黄揚羽・黄鳳蝶、学名 Papilio machaon)は、チョウ目・アゲハチョウ科に分類されるチョウの一種。ユーラシア大陸と北米大陸に広く分布し、日本でもナミアゲハとともに全国でよく見られるアゲハチョウである。 成虫の前翅長は4cm-6cmほど。ナミアゲハとよく似ているが、キアゲハは前翅のつけ根が黒ずんだ色彩で塗りつぶされたようになっていてナミアゲハのような縞模様にはならない。また、翅の中ほどは黒い線が細く、和名どおり黄色みが強いので区別できる。 成虫は4月から10月頃まで、年に2回〜4回ほど発生する。後述のように海岸植物から高山植物までを含むセリ科植物を食草とするため生息地も幅広く、海岸から市街地、農村、山地、さらには高山帯までと、いろいろな場所で見られる。雄成虫には独特の香りがあるが、成分としてはリナロール、ゲラニルアセトン、n-ドデカンなどが検出されている。 幼虫の食草はセリ、ハマウド、シシウドなどのセリ科植物である。葉だけではなく花序や若い果実をも好んで食べて育つ。ニンジン、ミツバ、アシタバ、パセリなどの野菜も食草となるので、これらが栽培される畑でも幼虫が見られる。都会でも家庭菜園でパセリなどを栽培するとたちまち成虫が産卵していき、幼虫を見ることができる。幼虫は三齢まではナミアゲハと同様に鳥の糞に似せた保護色をしているが、四齢幼虫では白地に黄色と黒の斑点模様の警戒色となる。五齢幼虫ではさらに黄緑と黒のしま模様に変化し、黒いしまの部分には橙色の斑点が乗る。冬は蛹で越冬する。冬型の蛹は-196℃の低温にも耐えられる。 分布であるが、ヨーロッパからアジア、北米北西部にかけて広く分布する。広い分布域の中でいくつかの亜種に分かれていて、そのうち日本に分布するのは亜種 P. m. hippocrates とされる。また、研究者によってはそれらの亜種を別種とすることもあり、この場合日本産は P. hippocrates となる。 なお北アメリカにはよく似たアメリカキアゲハ(学名 Papilio zelicaon・英名 Anise Swallowtail)が分布している。英語ではこの2種を区別するため、キアゲハを Old World Swallowtail(旧世界のアゲハ)と呼ぶ。 どこでもよく見られる。登山の際、山頂でもよく観察できる。遠くの山々を背景に、このチョウを撮影することも多い。 2010年9月4日 剱岳早月尾根 2006年8月13日鷲羽岳〜水晶岳 チョウの図鑑に戻る 作成日: 2019年7月11日 |