街中が赤やピンクで飾られる。
一人で歩いているとその甘い雰囲気が妙で、自分がいつもとは全く違う場所に
迷い込んだそうな、そんな気さえした。
移りゆく季節、過ぎ去る日々。
この町並みと同じように俺の周囲も信じられないスピードで変化していった。
本田透。
彼女が俺たちの前に表れてから、皆変わっていった。
変わろうと努力して、思いが変化をもたらして。
その思い自体が変化で。
温かく、変わっていった。
由希も、夾も、・・・紫呉だって・・・・・・子供のまま自分の時を自身で止めた俺の親友。
己の世界の中に閉じ籠もって、その中で必死に夢を追い求めていたアイツも、
変わった。
俺はそんな風に目まぐるしく変わっていくアイツらを追いかけるのに必死で・・・
俺は、俺自身は果たして変わっているのだろうか。
時々分からなくなる。
俺は今もあの場所から動けていないのではないかと。
確かに周りは変わっている。
それは俺の周りをすり抜けていくだけで、俺自身は・・・
あの雪の中から、俺は一歩でも踏み出せたのだろうか?
*
「はーさんっ」
「・・・・・・紫呉。危ないだろ」
「だって、はーさん難しい顔して歩いてるんだもん」
「それは俺に体当たりする理由にはならんぞ」
「え〜」
こいつは俺のコートを握りしめて、拗ねてみせていても・・・変わった。
昔と比べたらずっと余裕が出来た。
外界との間に分厚い防壁を持っていたのが嘘のようだ。
「紫呉」
「なぁに?」
「俺は・・・変われただろうか」
いつまでも立ち止まっているのではないだろうか。
追いかけているのは気持ちだけで、実際は何も・・・
一歩も進めていないのではないだろうか。
今も俺は、あの絶望しか持てなかった頃のまま、
あの場所にいるのではないだろうか。
「・・・大丈夫だよ」
俺を見上げる紫呉の目が笑っていた。
「大丈夫」
紫呉は俺の手を取って、それに頬を寄せた。
俺の左手に。
「僕はここにいるでしょ?僕は変わってないと思う?」
「・・・いいや。おまえは変わった。とても、綺麗になった」
「だったら悩まなくていいよ。僕はここにいる。はーさんと一緒にいるよ」
「・・・・・・あぁ、そうだったな・・・」
俺はここにいる。
あの雪は、もうとっくに溶けてしまったんだ。
春が来て、あの時俺たちを包んでいた真っ白な雪は溶けたんだ。
彼女はもう幸せになれた。
そうだったな。
「帰ろ。透くんがはーさんのこと探してたよ」
もう俺は願う必要はないのだろう。
もう俺が心配する必要はないのだろう。
祝福を。
君に幸あれ・・・――――
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