イギリス人の道1 7月5日(火) Santiago - ネダ
サンティアゴ・メノールのアルベルゲ。早朝5時半にキッチンに下りてきたら扉には鍵が掛かっていて入ることができなかった。お湯を沸かしてスープかコーヒーを飲みたいのだがな。6時に開くことを予想して入り口のベンチで待つことにする。どっちみち時間はあるし。
待っている間にマドリッドのオスタルにメールを送信することにする。日本からネットで予約したオスタルだが、ここはチェックインの時間を必ず連絡するようにとのことだった。18日の午後4時くらいに着きますとgoogle様の翻訳サービスを使ってメールを送る。まだ2週間もあるが気がかりなので早めにやっつけておく。
結局、キッチンは開かなかったので6時45、駅に向かって歩き出す。サンチャゴ・デ・コンポステラ駅には7時2分に到着。いつものように20分弱で着くことができる。こういうときの所要時間を覚えておくことは結構重要だ。この駅から電車を利用するのはこれで3回目なので、いくらか慣れた気がする。電光掲示板には私が乗るア・コルーニャ行きは表示されているが、相変わらずホームの番号は空欄のままで出発20分前にならないと発表されない。フランスもスペインも、これについて誰か改革しようって気にならないのかね。
今回も20分前になったらやっとホームは4番と発表される。電車はどうせ遅れて到着だろうと馬鹿にしていたら、今回は時間通りにやってきた。サンチャゴからコルーニャ間には幾つもトンネルが掘られていた。スペイン人もトンネル作るんだと感心する。窓の外はどんよりとした厚い雲で覆われているので、今日は雨の中の歩きになるかも知れないな。もともとこの辺りは雨の多い地域なので降られても仕方が無いだろうと覚悟しておく。
コルーニャ駅から次のフェロール行きまでは時間があるので駅の外に出て様子を見ておく。いつかコルーニャには観光で来るだろうと思っているから。駅前にバス停があったので、世界遺産のヘラクレスの灯台行きがあるかなと見てみたがさっぱり分からない。
構内に戻ってベンチで手持ちのビスケットを食べて朝食を食べたつもりになっておく。この駅は終着点の駅なので、全ての電車がこちらを向いて並んでいる、ちょっと面白い光景だ。電光掲示板にフェロール行きの表示が出ているが、そのうち「遅れ」という意味らしい文字が追加された。何だよ、ここまで順調だったのについてないなぁ。フェロールからの様子が分かっていないので、なるべく早く着いて巡礼路探しを始めたいのだ。8時45分発が9時発に変わってしまったようだ。まぁ15分遅れくらいなら我慢のしどころだ。
ヨーロッパの駅には電車に乗るときの改札が無いことが多いのだが、この駅にはあった。自動改札機が設置されていて、そこ以外は鉄の柵で囲われている。私のチケットはコンポステラの国鉄出張所で発行された大判のチケットなので自動改札機に通すことができない。運よく少し離れたところに居る駅員に声を掛けてお願いする。大版チケットのバーコードには改札機が反応しなかったので、駅員が持っている専用カードでゲートを開けてくれる。言葉は分からなくても人対人ならだいたい何とかなるから有難い。機械相手ではこうは行かない。
乗り込むときに一応確認のため、駅員さんに「フェロール?」と聞いてみる。同じ1本の列車だが、フェロール行きは先頭の1両だけらしい。こんなことがあるから確認は大切だ。乗り込む前にもう一度近くにいた駅員さんに確認してから乗り込む。どうやって1両だけフェロールに行くのだろう?1両だけ切り離されて行くので駆動できる先頭車両なんかな。
車両は小さくて古かった。シートカバーも端っこが切れてるし、乗客も私しか乗ってないし、なんか廃線間近のうらぶれた感じがする電車だなぁ。フェロールという所はあまり人が行かない町なんかな。
しばらく走ってから途中の駅で止まると、今度は逆走を始めた。スイッチバックするんか!?まさかフェロールに到着したので折り返し運転始めたんじゃないだろなと一抹の不安が!?訳が分からないがこの電車がフェロールに行くことを祈ろう。心配しながら乗っていると、私服の駅員が「ネクスト ストップ フェロール」と声を掛けてくれたので、やっと安心する。
やっとフェロール駅に着いたら、この車両以外にも箱があった。どっかで連結したってことなんだろうか。そっちの箱からは巡礼スタイルの親子らしき一組が降りてきたので、お、やったと思った。バックパックにはコンチャ(帆立貝)を付けているので間違いない。イギリス人の道で初の仲間にもう会うことが出来たと喜んで声を掛ける、ブエンカミーノ。この二人は親子だった。女の子は巡礼らしからぬ都会的な雰囲気を撒き散らしているオシャレな子で、大きなスカーフを首に巻いてレザーのカウボーイハットという出で立ち。小さなビデオカメラをずっと回している。バックパックはアルミパイプの骨組が入っていて、パイプ入りのバックパックを背負ったペリグリノを初めて見た。親父さんは大きなクッションシートを持っているので野宿も視野に入っているのか?都会的で野宿しそうな二人には見えないが。二人も私に会えて嬉しそうだ。この二人は外国人だがスペイン語を良く話す。
実は、ここフェロールからの巡礼路がまったく分からなかったのだ。道は凡その方角に歩いていけば見つかる可能性が高いが、フェロールをスタート地点と証明するためのスタンプは必ず必要なので、その場所もさっぱり分かっていなかった。その意味でも二人と出会えたのはとてもラッキーだった。
私はポルトガル人の道で使ったクレデンシャルをイギリス人の道でも使うのでクレデンシャルを新たに手に入れる必要はないが、二人は今からクレデンシャルを入手するそうだ。駅にあるインフォメーションで聞いてみたところ、街中にあるインフォメーションに行けと言うのでそちらを目指すことにする。タライ回しでなく、そっちのインフォメーションは巡礼のための用意があるらしい。
街の真ん中に公園らしき広い空間があって、その中に大きなインフォメーションがあった。ここでスタンプを押してくれて、フェロールの市街図とイギリス人の道の地図をくれたのでラッキーだ。クレデンシャルはカテドラルで発行しているそうなので、今度はそっちを目指す。私はクレデンシャルは持っているし、スタンプもゲット出来たので早く歩き始めたいのだが付き合うことにする。でも、カテドラルでは立派なスタンプがまたもらえたので来た甲斐があった。ここはアルベルゲにもなっているようだが、今晩の目的地はネダなのでノーサンキュー。
親子はまた別のところに寄ると言うので、私はもう歩き出すと言って分かれる。インフォメーションで貰った地図のおかげで街からの巡礼路も確認できた。この街は黄色い矢印でなく、モホン(巡礼路を示す石柱)でガイドしてくれていた。地図どおりに行くと海岸線をぐるっと歩かされて遠回りになるので、ショートカットする道を選ぶ。でもバチが当たって迷ってしまった。幼稚園みたいな塀の中にいたおばちゃんセニョーラに教えてもらったら、ここが私が目指したショートカットの道と言うのが分かった。これはラッキー。
ほどなく巡礼路と合流し、賑やかな街中から郊外にやってきた。この辺りの海は潮が引くと干潟になるようでドブ臭い。どっかのおじさんとすれ違ったら後ろから「ペリグリノ」と声を掛けてきた。え、なに?と振り向くと何か伝えたそうに口をモゴモゴやっているが怪しい人でないのは雰囲気で分かる。こちらが東洋人だったので戸惑っているようだ。やっと出てきた言葉が「ペリグリノ、カンサードス(疲れる)」だった。ノーカンサードスと言ってみる。握手を求められた。こういうのは珍しいなぁ。
寂しい丘を越えるところに大きな陸橋があった。この下は高速道路が走っているらしい。近くで女の子のペリグリノ3人が休んでいたのでブエンカミーノと声を掛けても返事がなく戸惑っている様子で、ペリグリノ同士の挨拶を知らないらしい。もう夏休みに入ったのだろう、この子たちを見ると綿密な準備をすることなく勢いで歩きだす若い子が増える予感がする。
干潟の中に海の中を突き抜けるような細い道が続いていて、そこを通って反対側の町に渡る。地図によるとそろそろアルベルゲがありそうなので、GPSを出して位置を確認したいのだが、いつまで経っても電波をキャッチできないでいる。仕方ないので向こうから歩いてきたあんちゃんに声をかけ、タブレットの地図を見せながら聞いたところ、このあんちゃんはまったく考える気も教える気もなさそうで明後日の方を向いたまま「No sé」分からないと言うだけ。やっぱり鼻カンしてるようなのはロクなのが居ないなと諦める。次に聞いたのは地元の女の子で、この子はさっきよりマシだったがアルベルゲを知らなくて、更にこの場所を聞こうにも女性にありがちな地図をまったく理解できない子だったので現在地さえ分からなかった。次に土木作業員のおじさんに聞いたところ、この人は運良くアルベルゲを知っていた。さすが歳の功だ。ここを真っ直ぐ行ったらプエンテ(橋)を右に行くんだと教えてくれる。アルベルゲの近くに来たと思い込んでいたが、まだ大分離れていた所だった。
道が分かったので元気を取り戻して歩いていくと、ほどなく教わった橋が現れて、そこから川沿いに歩いていくと目的のアルベルゲが見つかった。ネダのアルベルゲは臨海公園の中にあって、これ以上は無いという程のロケーションだった(写真:黄色い建物)。いいんか、こんな市民の憩いの場になってる公園の中にアルベルゲなんか作って。アルベルゲは公園の中に溶け込むことなく凄く浮いた存在だった。
中に入っていくと、意外や既に10人ほどが先着していた。もしかしたら昨日はフェロールに一泊した人たちかも知れないな。でもベッドは下段を確保することができたので一安心。ここはオスピタレロが夕方やってくるタイプのアルベルゲだった。チェックインしなくてもベッドやシャワーはOKなので、このスタイルは大好きだ。暫くしたらフェロール駅で会った親子がやってきたので元気良く挨拶するも、二人はこのアルベルゲには泊まらなかった。薄暗い中に2段ベッドがズラッと並んでいる室内を見て恐れをなしたか?この親子とはこれ以来会うことはなかった。
遅れてやってきたオスピタレロが言うことには、昨日、日本人が二人泊まっていったそうだ。一人はポルトガル人の道で一緒だったNさんかも知れないな。でも、一日先行されると詰めるのは難しいので会うことはないだろう。ここもガリシア州なので同じ6ユーロでWi-Fiはスマホの人のみ使えるロクデナシだった。
シャワー、洗濯してから少し離れたスーパーへ買出しに行く。まだ3時なのでシエスタやってるかなと心配しながら行ってみたが、運良く開いていた。カット野菜、1リットルビール、トマト、ヨーグルト4、バゲットパン、生ハムに6Pならぬ12Pチーズで、こんだけ大量に買っても5ユーロちょっとと格安なのが嬉しい。早速アルベルゲに戻って一人宴会。次ぐ朝用に同じ材料でボカディージョを作っておく。ちなみに、12Pチーズとは、丸いケースが妙に分厚いので不審に思っていたが、6Pチーズが2段重ねに入っていた。
イギリス人の道2へつづく
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