ポルトガル人の道6  6月27日(月) ポンテ・デ・リマ ー ルビアエ ス

 ポンテ・デ・リマのアルベルゲ。朝飯はキッチンでスープを作り、昨日の残りの小さな卵を4個入れる。それにチョコパンと大量のサクランボ。サクランボはマリアとアメリカおばちゃんに食べさせようと大量に買ったが、みんな朝ごはんはいつも食べないと言うので一人で全部食べてしまう。朝早いので他の人に上げようにもキッチンに誰も来ないし。

 少し早目の6:40に出発しようと外へ出たら、アメリカおばちゃん二人はバルの店先に並んでいる椅子にドカンと座って動こうとしないので妙だな、随分ゆっくりしてるんだなと思ったが「ブエンカミーノ」と言ってそのまま出発する。

 どんどん山の中に入って行った所に店があった。へー、こんな山の中なのに小奇麗な店があるんだな。そこは珍しく店が塀の中にあって門から中に入るようになっていた。先に出発したマリアが門の前に立っていて、後からやって来る誰かを待っているようだ。私が到着してからも門を出たり入ったりしている。そうそう、心配していたマリアの靴は新しいのに履き替えていた。相変わらずズックタイプなので長距離歩行に適しているとは思えないが、取りあえず靴底だけは擦り切れてないので良かった。どう言う訳か、ボロボロになった靴は捨てずにバックパックに括りつけている(写真)。ドイツまで持って帰るのか?

 ここは少し高台になっていて、階段を下りた下には魚の養殖場があった。それとも釣り堀か?ポルトガルにも釣り堀ってあるんだろうか。コーラ1.2ユーロを飲んでスタンプを押して貰う。
 マリアの待った甲斐があって、若いカップルとターニャが到着する。アメリカおばさん二人はやって来なかった。それからはこの5人のメンバーで歩きだす。やっぱりマリアはみんなと一緒に歩きたいのかも知れない。

 ここからはポルトガルの道、最初で最後で最大となる凄い山越えになった。大きな岩がごろごろの急傾斜で、私は2本スティックなので両手が塞がっているが、でなかったら手を使ってよじ登るような山道だ。途中、何度もうぶちゃんに教わった立ち休みをしながら上って行く。スティックにバックパックの肩ベルトを当てて体を支え、大きく10回深呼吸すると大分回復する。
 一休みできる所に来たらターニャがタバコを一服つけている。コーヒー好きのタバコ好き。キャラクターも面白すぎるし、どっかのドタバタ映画に出てきそうな女性だ。こんな細い体だけど馬力があって坂道を見事な大股で上って行く。

 この辺りの森林には松に傷を付けて松ヤニを取って利用する何かがあるらしく、松の木にやたらとビニール袋が取り付けてある。何十本と同じことをやっているので、個人で何かしていると言うより産業としてやっているらしい。まさかシャボン玉液製造じゃないだろし、靴の滑り止め?本当はどんな利用法があるんだろうと興味が沸いた。この険しい山の中まで歩いて松ヤニ回収に来るのは大変と思うが、巡礼路以外に車が通れる道もあるようだ。

 上りが急な山は下りも急だ。膝を痛めないように突きだすスティックに体重を掛けながら慎重に下って行く。こんな所で足を挫いたらエライこっちゃだ。

 下り終える一歩手前に家があり、山の中から突然現れた建物だったのでアルベルゲと気がつかなくて、まさかと思っていたらこれがアルベルゲだった。村の中に有るものとばかり思っていた。これが今日泊まろうとしていたRubiaesの公営アルベルゲで時間はまだ11時半で受付は13時のようだ。

 すぐ前が雑貨屋兼バルになっていて、このアルベルゲに泊まった人専門の店と言うのがすぐ分かる。だってここは村外れなのでわざわざここまでやって来る村人は滅多にいないだろう。どんな様子なのか受付が始まる前に行ってみると、マツコ似のドイツ女性フランシスカと日本人のNさんがテーブルで休んでいたので自分もビールを買って飲むことにする。1ユーロなので店で飲むならコーラより安い。フランシスカの靴底を見せてもらったら、私が追っていた足跡と同じ模様だったのでやったと思った。良く分からない英語で、この足跡をトレースしてたと言ってみると通じたようで笑っている。

 アルベルゲは早めの12時から受付を開始してくれた。5ユーロ。オスピタレロはアルベルゲの2階に住まいがあるようで、一通り受付を終えると居なくなってしまったので、その後やって来た人が受付できなくて困っていた。下から声を掛けても反応がないので、どこに行ってしまったんだろう?

 シャワー・洗濯してから隣の雑貨屋へ行ってみる。とても小さくてバル併設だから大した品揃えじゃないと期待せずに行ってみたが、狭い店内には食料品以外にも巡礼に必要な靴下やクリーム、傷バンなどが色々取り揃えてあったので感心した。こんな村外れにポツンと1軒だけある雑貨屋なので、値段は少々高いかなと思ったが、普通のスーパーと変わらない値段だったので良心的な経営者らしい。1リットルビールが冷えているのが嬉しい。それとトマト、8Pチーズ、魚の缶詰、玉ねぎスープの素、玉子6、スナック菓子で6ユーロと少々。アルベルゲに戻り早速飲み始める。
 買い出しのために下手をすると片道2kmも歩いたことを思えば、買い物が目の前で出来るなんてありがたいなーとしみじみ思った。アルベルゲは施設やサービスもさることながら、スーパーが近いことも重要な要素だ。

 ターニャと一緒にエストニアから出発した女性がまだ到着してこないと、ターニャは何度も門の外に出て見ていたが、やっと到着してきた。私はアメリカおばさん二人組がやって来ないかと時々見に行ったが、結局この二人はやって来なかった。前日泊まったポンテ・デ・リマからはこの道を来る以外ないし、次のアルベルゲもここだけなので、歩きなら必ずここに到着する。多分バス移動したんだなと想像する。二人はバスを使うこともあるような事を言ってたし。妹分のドナは歩くのが得意じゃないらしいから、今日のこのハードな山道を事前に知って安全策を取ったのだろう。アメリカおばさん達とは二晩一緒のアルベルゲになったが、これ切り会うことがなかった。

 夕飯を食べないのも詰まらないので、また前の雑貨屋に行って1リットルビールにリンゴ2、ヨーグルト2を買ってくる。近くにいたマリアを誘ってビールを飲みはじめ、同じテーブルで何か書いている空手のアレハンドラにも進めてみたが、ビールは飲まないそうだ。チーズを1個上げたらそれは食べてくれた。飲めないんじゃと、また雑貨屋へ走ってポテチとジュースを買ってきて上げたがこれは飲まなかった。やっぱり若い子は年配者と違って扱いが難しい。

 ターニャもやって来たのでビールを飲ませて上げる。4人で一緒にいるが、英語が達者なのは今回マリアだけなので、いつものように英語でバンバン喋る訳には行かなくて調子が出ないようだ。みんな平等になったようで私にはそれが返って面白い。ターニャの英語は私程度で、アレハンドラはそれ以下。英語を喋ろうとすると必ずその前に「あー」と言いながら単語を探しているようだった。日本人のNさんも誘ったらテーブルに加わってくれたので、Nさんはスペイン語が話せるのでアレハンドラはやっとスペイン語で喋れるようになった。

 お開きのあと買って来た玉ねぎスープを作り玉子を3個入れて食べる。今日はキツイ山越えがあったが良い一日だった。


ポルトガル人の道7へつづく