ポルトガル人の道11  7月2日(土) ポンテベドラ - CaldasDeReis

 ポンテベドラのアルベルゲ。インスタントの玉ねぎスープを作りチーズを挟んだボカディージョとヨーグルトで朝飯にする。と、そこへ「おはようございます」と日本語で挨拶してくれる人がいたのでびっくり。この人は昨年、日本へ行ったそうだ。東京、京都なら分かるが飛騨高山にも行ったとか。スペインに居て日本に行ったことがあると言う話を聞くと驚いてしまうが、ここにいる人たちは世界のあちこちに行っている可能性があることを考えれば無さそうで有ることなんかも。

 アルベルゲを7:20に出発する。ここは駅と隣り合った建物で、前にもデバでそういうアルベルゲがあったのを思い出す。駅の隣なんだから、やたらな建物は建設できないと思うのだが、アルベルゲも公共の施設らしいのでこういう立地が可能なんだろうか?良く分からないが、我々にしてみれば見つけ易い宿なので有難いことだ。高台から巡礼路に戻る坂道には色々な落書きがしてあるが、そこそこ芸術的だ。巡礼路上にはこういった落書き(か?)がそこかしこに見られるが、日本みたいなくだらない内容ではなくて、「良い巡礼を」とか「がんばれ」と言う内容が多いので落書きする者の意識は根本から違うようだ。

 やはり大きな町だけあって、出るには時間がかかりそうだ。途中には大きな噴水広場があって、子供のブロンズ像が幾つも置いてあった。この広いサークルには無数の穴が開いているので時間によってはこの穴から盛大に水が噴き出るのが分かる。暑い昼間にはここから子どもたちの歓声が聞こえるようだ。こういうのが置けるこの町にゆとりを感じる。
 前を行くペリグリノがいるので、その人を町を出るまでのペースメーカーに決めて着いて行く。必ずしも前を行く人が道を間違えない保証はないが、ガイドブックを持っている人が多いので少なくとも自分よりは信用できるだろう。それにもし迷ったとしても複数で迷うのと一人で迷うのとでは心持ちにも余裕がある。


 この辺りが町の境目なのか、大きな橋が現れた。調度朝日が上がる時間らしく、東の空が明るくなってきて雰囲気のある風景になった。こういう景色が見られると無性に嬉しい。町を出ると田舎道の山道になってひたすら歩く。

 次の村の中には開いているバルがあったので多くのペリグリノがここで休んで行く。調度小腹が空いてきた時間なので誰にとってもタイミングのいいバルだろう。ここにはWi-Fiがあったので、タブレットを出して自分のフェイスブックを更新する。カフェコンレチェだけ頼んで手持ちのチーズサンドを店の中で食べてのんびりゆっくりして行く。コーヒーには小さなお菓子がサービスで付いてきた。隣のテーブルには面目丸潰れの若者も休憩していたので挨拶する。この若者とは行程が似ているらしく何かと縁があるようだ。

 店内も外のテラス席もペリグリノでいっぱいになっている。朝早く店を開けてくれるとこうしてペリグリノが沢山寄ってくれるし、我々にしても朝早く開いてくれるバルは有難いので両者にとってありがたいことだ。バルの店先を写真に撮ろうとしたら、その前に立って記念写真を撮っている人がいたので後ろからパチリ。この人も背中にいっぱいタトゥーを入れていた。背中に羽を入れるというのは天使の羽の積りなんだろか?
 面目が潰れた若者と仲のいい専門学校生がやってきたので、お兄ちゃんが中にいるよと教えてあげる。

 広い舗装道路を歩くことになった。いいのか悪いのか、時々こういう巡礼路になる。先の方を見ると道路の反対側で首を出している人たちが見えるので、なんだろうなぁと思いながら近づいて行くとペリグリノの女性3人組だった。広い道路の反対側が一段低くなっていて、そこの溝に3人して腰を下しているのでこっち側から見ると上半身だけ見えるので何とも滑稽な絵だ。昨日のアルベルゲでも一緒になった女性3人組だったので手を振って挨拶したら3人とも手を振ってくれる。面白い光景だったので、写真を撮れば良かったなぁと通り越してから気が付く。わざわざ戻って撮るのも何なので諦めるが、チャンスにはいつも後ろ髪がない。

 いつものように舗装道路から細い泥道に巡礼路は伸びていたので、どうせ回り道させてからまたこの舗装路に戻すんだろうと思ったが、素直にはいはいと従って歩いて行く。こっちは両側がブドウ畑の道がずっと続いていたので、まぁ悪くはないかな。そこで面目丸潰れのあんちゃんと一緒になる。このお兄ちゃんはスペインの専門学校生2人組の女の子と仲良くなっていた筈だが一緒には歩いてはいなかった。一緒に歩いて行くとアルベルゲの立て看板があったので、お兄ちゃんが不思議がっているので自分のへっぽこ地図を見せてやり、道を外れた所にあるアルベルゲだよと教えたら納得したようだった。でも、二人ともここには泊まらないのでそのまま歩き続ける。

 1時過ぎに目的の町のCaldas de Reisに到着する。少し大きな町なのでいつものように迷う。こういう時はタブレットのGPSが頼りだ。おおよその方向が分かったので、GPSに従い歩いて行くとほどなく今晩の宿に到着する。既に何人もがチェックインしていたが、私もまだ早い方なのでベッドは好きなのが選び放題だった。もちろんトイレに割と近めの下段ベッドをゲットする。値段はいつも通りの6ユーロ。だがこのベッド選びは失敗だった。暗くなったらトイレ前のライトが人が通るたびに点灯するセンサー付きだったのだ。普通、暗くなると寝ている人に遠慮して電気は点けないものなのだが、自動点灯だとそうは行かない。通るたびに目の前がピカーッと光って迷惑この上ない。そこで良いことを思いついた。私の上段ベッドには誰もいなくて、そこに置いてあった毛布をライト側に垂らす作戦だ。完全に覆えないとしても大分違うので、まぁ満足かな。

 2時のシエスタが近いので、シャワーは後回しにしてまずはスーパーへ買いだしに行く。少し回り道しながらも無事にスーパーを見つけて今日も定番の1リットルビールに生ハム、バケツサラダ、OIKOSヨーグルト2、たまには変わった物を食べてみるかとムール貝の缶詰も買う。それと次ぐ日用に1リットルオレンジジュースと大きめのエンパナダ2に干しブドウも買って9.89ユーロと大量買い。
 エンパナダとは見た目は餃子の大きいもので中に色んな物が入っている。数年前にチリで落盤事故があったとき、地下に閉じ込められた炭鉱夫達を長い日数を掛けて助け出した時にお祝いで供されたのがこのエンパナダと言うことだ。スペインや南米ではポピュラーな食べ物だそうだ。

 パンパンに膨らんだレジ袋を提げてアルベルゲに戻って行く。こんだけの荷物を全てバックパックに詰めたら4kgは重くなりそうだが、半分以上は今日中に飲み食いしてしまうので問題ない。シャワーを浴びてから一人宴会の準備だ。このアルベルゲはずっと前に誰かから古くてギシギシと聞いていたのだが、古いことは古いが問題はまったくない。キッチンらしいのがあるにはあるが、ひとくちコンロが1つあるだけで流しがないのはどういう訳だ!?でも、調理器具と食器があるのでガリシアとしたら上等だ。

 さて、ムール貝の缶詰というのは初体験なのだが、食べてみると大したことはなかった。旨くも不味くもないという所だ。新鮮なムール貝だと違うのだろうが、元もと魚介類は得意分野ではないので。高いレストランで食べて外れたのじゃなくて良かった。缶詰なら1ユーロちょっとだから。(一番左がムール貝の缶詰)

 隣のテーブルで顔見知りのスペイン青年3人が食事を始めたので、コンポステラ、パラドールでのタダ飯をデジカメで撮った写真を見せながら教えてやる。金のなさそうな青年なので食べに行ってくれるといいな。

 飛騨高山に行ったことのある人が、コリアンの女の子と一緒にチェックインして来たので、「パンモゴッソヨ(ごはん食べた)?」と声を掛ける。そしたらまたハングルでペラペラと喋り出したので日本人だよと伝える。日本人が喋るハングルは発音が良いらしく、こういう経験は何度もしている。同じようにスペイン人に片言のスペイン語で話しかけるとこちらがスペイン語ペラペラと思われて機関銃のように喋り出されることがある。日本人が喋るスペイン語も発音がばっちりのようだ。道端の側溝で休んでいた3人娘も少し遅れてチェックインしてきたので挨拶する。

 アルベルゲの自販機でコーラを飲む。1.5ユーロ。スーパーで買う1リットルビールの安い方が0.75ユーロなので、コーラ1缶と同じ金額でビールが2リットル飲めるって、信じられます?


ポルトガル人の道12へつづく