北の道13 コブレセス − サンビンセンテ − Pendueles
5月27日(金)コブレセス、修道院併設のアルベルゲをを7時半に出発する。曇り。
歩き出して1時間ほどは腰が暖かいのを感じ、痛みもないので、昨日塗ってもらったスネーククリームがまだ効いているらしい。歩き続けてから試しに道端のベンチに座ってオレンジを食べてから歩き出したらやっぱり腰が痛いのでスネーククリームが切れてきたのが分かった。残念、ずっと効いているわけではなかった。昨日よりマシだが、クリームが切れてくるに従ってもっと痛くなるのは想像できるので、次の大き目の村の中にあったファルマシア(薬局)の中に入っていって身振り手振りで腰が痛いことを伝える。「ジョ(私)ペリグリノ(巡礼者)モチーラ(バックパック)腰(を指さす)イタイイタイ」。ボルタレンというクリームを出してきてくれた。ボルタレンというのはサンチャゴ巡礼をネットで調べていたときに、靴擦れ防止のクリームを発売しているメーカーと覚えているが、スポーツ関係のメーカーでなくて薬品も扱っていたのか。7ユーロちょっとと安くはないが、これで腰痛が治れば安いものだ。しかし、腰痛の友達を何人か知っているが、痛くてたまらんときは医者に行ってブロック注射だとか整体に行くとか言っているのを聞いているので、ただのクリームが劇的に効くとは思えないのだがなぁ。でも、スネーククリームの例もあるし、アルベルゲに着いたらシャワーの後に塗ってみよう。いちるの望みにかける。
山の中を歩き続けて海沿いに出たところで大きな橋を渡ったらサンビンセンテの町に入ってきた。GPS頼りでアルベルゲを探し当てたら、ここも教会併設のアルベルゲらしく、上には立派な教会が建っていた。壁には大きな帆船のオブジェがあるので、航海と関係ある教会のようだ。(上の写真で帆船のオブジェの下に入口が見えますが、アルベルゲは更にその下です)
受付は4時と遅かった。現在まだ1時。3時間も待たなくてはならないが、ここを過ぎたら次にアルベルゲがあるのはPenduelesまでの29.6kmなので待つっきゃない。すぐペリグリノ親子らしき二人連れがやってきたので、ザックは小さめだが「ペリグリノ?」と聞いたらそうだって。バルセロナからやってきたイサベル、マリナ母娘で、待ち時間が長いので一緒にスーパーへ買い物に行くことになった。アルベルゲに来る途中にスーパーを見かけたが、この母娘は違うスーパーを目指しているようだ。まぁスペイン人なんだから任せておけばいいだろう。今日も1リットルビールにトマト、オレンジ、パン2袋、生ハム、チーズで7ユーロ台。アルベルゲから少し離れたベンチで景色を見ながら一人宴会を開く。
母娘と片言でお喋りしながらオープンを待っているとき、マリナがボルタレンの注意書きを読んでくれ、シャワーの後が効果的とか一日に3回塗るとか教えてくれる。ママは私が書いていた日記に興味があるらしく、と言うより日本語が珍しいのでスマホのカメラで写真を撮らせてくれと言ってきたので、はいどうぞ。そうこうしていたら、オーストリアのカタリナが到着する。チェックインのあと、シャワーしてからカタリナとオランダ人がスーパーへ行きたいと言っているので案内しながら、またビールを買って来てアルベルゲのキッチンで夕飯にする。スネーククリームを塗ってくれたオリベアと先日のアルベルゲ満杯で泊まれなかった南米の女性、アメリカのリンダと数人の顔見知りも到着してきたので知り合いがいっぱいになった。
肝心の腰痛の方はボルタレンが嘘のよう効いて痛みが失せている。ホントか!?こんな効く薬がそこいらにある町の薬局で買えるんかスペイン!!
リンダ達はプラスチックのバケツに入った野菜サラダを食べだしたので、野菜が取りずらい私もあぁ言うのを食べてみたいなぁと思った。どこで買うのだろう?スーパーに売っているんだろか。食べている所をつかまえて聞くのはエチケット違反なので後で探してみよう。
明日はPenduelesだと29.6kmだがどうするか。Colombresなら21kmで手ごろだがアルベルゲ情報がない。
5月28日(土) サンビンセンテ − Pendueles
アルベルゲで昨日買っておいた食料で朝飯にする。出発するとき、マリナ親子が今日のショートカットを教えてくれる。5kmくらい近道になるらしい。8時ころ一人で出発する。暫くは山と湖の素晴らしい眺めが続く。英語とスペイン語を話すソロのお嬢さんが先頭で、この子は歩くのが非常に早く見る見るうちに遠くに行ってしまった。次はマリナ親子で、この二人は私と同じスピードなのでペースメーカーに調度いい。ショートカットの道なのでいつもの矢印がないから一人歩きは不安だ。スペイン人が先を行くならこれ以上の道案内はないだろう。マリナは背中に鯉のぼりのような布を下げて歩いているが、これは乾かない洗濯物のようだ。
今日は腰の調子がいいようだ。昨晩1回と今朝も出発する前に1回塗ったのが効いているらしい。30年以上も時々腰痛に苦しんでいたのに、こんなありがたいクリームがあるなんてひとつも知らなかった。何で日本で大々的に売り出さないのだろう?政治的・経済的なカラクリでもあるのか?
巡礼路と合流後、マリナ親子は村の中で休みだしたので一人歩きとなる。でも歩く方向が同じで道も同じなので何度も一緒になったり離れたりを繰り返す。町の中にあった細長い公園にベンチがあったので、オレンジを食べていたらマリナ親子に加え、何日も顔を合わせている鬚ボーボーのフランス人が通り過ぎながら挨拶してくれる。ベンチの近くには水道とゴミ箱があるのを確認してたので、オレンジの皮もベタ付いた手も始末できる。こういう好都合のベンチがあちこちにあると有難いいのだが。
次の町の中を歩いていたら道端に何か紙切れが落ちていた!え、と思って拾い上げたら馴染みの5ユーロ札だったので嘘みたいだった。誰が落としたかなんて分かる筈もないのでありがたく頂いておく。ドナティーボのアルベルゲがあったら余計に入れてやろうかなと殊勝にも思ったりする。町を抜けたらすぐに山の稜線を歩く道になって、ソロのフランスおじさんとマリナ親子と付かず離れず歩いていくと、道端にマリア像を祀っている小さな小屋があって、近所の爺さんが親子を捕まえて何やらありがたい話をしているようだ。聞いても意味が分からない私はその横を素通りする。
ずっと歩き続けて小雨の中、Penduelesの村に入ったところで、1輪車の荷台にバックパックを積んだ顔見知りのオランダ人と一緒になる。アルベルゲはすぐ近くの筈だが、その前にバルで一息入れているらしい。私はまずチェックインしたいのでアルベルゲ方向に行こうとすると、その人とバルの中にいたもう一人のオジサンが付いてきたので三人で急坂を下りていくと小さなアルベルゲはすぐあった。既に3人のフランス夫人たちが前の椅子に座ってオープンを待っていた。私の到着が2時で、オープンは2時半だった。すぐその後、ソロのおばさんペリグリノも到着。こんな淋しい、おまけに小雨が降っている山の中までよく女性一人でやってくるよなと思う。
チェックインした頃から本格的に雨が降り出し、4時半にマリナ親子がビショビショの濡れ鼠状態で到着してきた。気温が下がっているので凄く寒そうだ。日本語の並びのまま「カリエンテ(暖かい)ルチャ(シャワー)があるよ」と言ったら、スペイン語ではひっくり返して「ルチャ カリエンテ」と言うのだと教えてくれた。濡れても冷えてても暖かいシャワーとベッドがあって泊まれるから良かった。ここは14ベッドしかない小さなアルベルゲなので、やっと辿り着いた山のアルベルゲにベッドがなかったら可愛そうだ。どうか万床になりませんように。今日のマリナは私の上段ベッドに落ち着いて、ママは隣の上段ベッドなので話をするにも具合がよさそうだ。
このアルベルゲは夕食・朝食に加え、洗濯乾燥までしてくれてドナティーボだそうだ。雨の日に乾燥機が使えるのは特別ありがたい。世話をしてくれるホスピタレロがボランティアでなくちゃ経営が成り立たないだろう。ありがたいこってす。偶然にも昼間ひろった5ユーロが思い出された!
夕飯前に村のスーパーから1リットルビールを買って来てキッチン兼談話室で飲む。1輪車のオランダ人が隣にいたのでコップに2杯飲ませて上げたら、あとからワインを買ってきて1杯飲ませてくれた。
ベッドで寝てしまっていたら誰かが夕飯だよと起こしてくれる。暗めの明かりの下で全員で長いテーブルを囲んでいただきますをする。米の入ったスープにマカロニ入りのサラダ、それにパンとワイン。デザートまであってカップヨーグルトを食べさせてもらった。作ってくれた二人の男性も同じテーブルで楽しい夕げとなる。素朴な料理だが無骨な男二人が作ってくれた食事は暖かく、寒い夜に心まで温かくになるように感じた。私が言うと「何ちゃって」だけど本当のことだ。
北の道14へつづく
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