北の道14 Pendueles − Poo − Pineres


 
5月29日(日) ドミンゴーッ!!今日は日曜日で店がお休みだから買い物がしづらい。と言うより買えない可能性がある。食料が尽きないように注意しなくてはだ。開いてる店があったら買いっぱぐれないように気をつけよう。7時にアルベルゲで朝飯を食べさせてもらう。いつものようにパンが主体の簡単朝食。出発時間になったら、ここのオスピタレロのお兄ちゃんは宿泊者全員の写真を撮るのがいつもの習慣らしく、出る人をいちいち玄関前に立たせて撮っている。その姿をこちらからも一枚撮らせてもらうパチリ。お世話になりました。


 今日は急坂を幾つも越える巡礼路だが、そのため絶景も楽しめるのでプラスマイナスまずまずだ。Llanes(スペイン語読みではヤネスと読むらしい)に辿り着くと道端の看板には目指すPineresまで18キロとある。山の中なのであと5時間は掛かるだろうか、時間的に無理だろう。Llnesから2キロ過ぎたところにあるPooに泊まることにする。

 山の中を前後して歩く男性ペリグリノがいて、分岐点でどっちに行くべきか一緒に協議する。迷ったらタブレットだ。その人もGPSを知っていて覗きこんできた。困った時のGPS、巡礼路でこれ以上強い味方はない。

 13時、線路を越えたところでPooに到着。この村には私営アルベルゲしかなく、そのアルベルゲも巡礼路を外れて細い路地をくねくねと歩いて辿りつかなくてはならなかった。道幅が1mしかなく草だらけで猫しか通らないような道まであったので、こんなところに良くアルベルゲを作ったもんだと思った。でもアルベルゲの名前を書いた看板はそこかしこにまめに置いてあるので迷うことはなさそうだ。

 路地を抜けたら車も走れる広い道に出て、そこからもアルベルゲの看板だけは続いているので程なく到着。オープンまでまだ2時間もあるので、アルベルゲの玄関前にバックパックを置いて巡礼路沿いに見つけたバル迄戻ってビールを飲むことにする。入って行くと、日曜日なのでバルの中には地元の男連中が何人も昼間から酒を飲んでいる。道の反対側にもバルが1軒あるが、そっちには誰もいなかったので人気がないバルなんだろうか。日本でも長距離トラックやタクシー運転手が沢山寄る食堂は間違いがないので、スペインでもそこは同じだろう。やっぱり人で混んでいるこっちを選んでみたが、特別なところはなかった。あ、特別なのがあった。この店は店内に直径30cmくらいの金属の長い筒が置いてあって、一見すると傘立てのようだが客がその筒の上でコップを手にして、反対の手で酒瓶を高く掲げてコップにダラーっと酒を注いでいた。テレビで見たことある、高いところから酒を注いで空気を入れる飲み方なのが分かった。ちょっと興味があったけどチャレンジしないで普通にビールだけ飲んでおく。自分が上手に注げる気がまったくしなかったし注文の仕方も分からないし、笑われるのが落ちだ。

 この通りにはスーパーらしき店が見当たらないのでこの村にはないのか、それともドミンゴなのでシャッターが閉まって表からは見えないのか?いずれにしても非常に不便。まだ時間はあるけど狭い村なので少し歩いただけで村はずれに出てしまう。見るところもないからアルベルゲに戻ることにする。もしかしたら時間前にオープンしてくれるか知れないから。その途中、オーストリアのカタリナと道端で再会する。おー、カタリナー。カタリナも嬉しそうだ。カタリナもアルベルゲの玄関前に私と同様にバックパックを立てかけて一緒にビールを飲みにいくことにする。今度は別のバルに入る。でもビールじゃなくてリモンconセルベッサを頼んでいるので私もそれにする。前にカタリナが似たようなのをおごってくれたので、今度は私がおごったる。

 カタリナは長ズボンが歩きづらかったようで、自分で膝から下をちょん切っていた。切り口はボロボロなのでナイフで無理やり切ったようだ。自分でワイルドだろうと、どっかのギャグみたいなことを言っている。帽子はキューバ兵みたいなのを被っているし、シャツは南方の日本兵みたいだし、まるで鉱山で働いているおばさんのように見える。こんなのカタリナが読んだら怒ること必至だろうな。笑 でもカタリナの現役時代はやり手のキャリアウーマンと想像できるテキパキした女性です。

 14:50、少し早めにチェックインさせてくれる。ここのアルベルゲは部屋の定員数によって値段が異なるそうだ。モチロン一番安い6人部屋をお願いする。カタリナも安いほうがいいそうだ。それでも私営なので13.5ユーロで高め設定だった。朝食が別料金で2ユーロ。ベッドは高いけど朝食は安いんだな。部屋は6人部屋だけど広くてキレイだったので満足。一番乗りだったのでモチロン下段ベッドだ。カタリナが最初に取ったベッドはクッションが沈んでしまうそうなので、別のベッドに移っていた。後からやってきたペリグリノもいたけど、この部屋ではなくて少し高い4人部屋などに入ったので、結局この部屋はカタリナと二人で独占だった。2段ベッドでも上に人がいないとシングルベッドのように快適に過ごせる。

 カタリナがディナーを食べに行こうと誘うので付き合うことにする。アルベルゲからは巡礼路と反対側に海岸があって、そこにレストランがあった。ディナーは8時からでないと出来ないそうなので、その前に食べられるものをチョイスして外のテラスで食べることにする。サラダ、白ワイン、イカフライ、コーヒーで23.5ユーロもした。たまに食べるバルでの定食の倍以上だった。普通のレストランってこんなにするんだ!!その割りに腹はいっぱいにならないので、もうレストランなんか絶対に入りたくない。やっぱりスーパーがないと辛い。食べている途中、雨がびちゃびちゃと降ってきたが、このテラス席には大きな天蓋があるので濡れることはないが寒くなってきた。小振りになってきたところでアルベルゲに引き上げる。
 カタリナは明日はPineres18キロまで行くと言ってるが私はどうするかな?その次にアルベルゲがあるのはRibadesellaで、更に10.2キロある。


5月30日(月)Llanes de Poo の私営アルベルゲ。
 結局、易きに流れて今日は18キロ先のPineresを目指すことにする。短い距離と決めたので余裕の一日になるだろう。アルベルゲの朝食は既に前の晩に用意してくれたらしく、下に降りてきたら準備されていた。アルベルゲの人は誰も起きてこない。いつものようにトーストやシリアルと飲み物しかないが、歩くためのエネルギーなのでバターやジャムをいっぱい載せて食べておく。

 空の方は雨模様なので、ザックカバーを装着してスタートするが、パラパラ雨が降った後は止んでくれて、暫くしたら青空に変わったので、今日はもう雨の心配はなさそうだ。カタリナが泊まろうとしているPineresにはスーパーがないので、その手前の町で食料を仕入れるんだと教えてくれる。ガイドブックを持たない私には貴重な情報だ。最初はカタリナと一緒に歩くが、そのうち私が先行しだして一人旅になる。



 海の側から山の中に入って沼地の隣を歩いてと変化に富んだ道を歩いて行く。そのうち町の後方にはまるで一枚岩かと思われるような巨大な石の山が見えてきた。スペインって石の文化だからあちこちに石が取れる山があるんだなぁと歩いていて思った。歩きなので鈍いから良い景色の場合は飽きるほど見ていられるのが利点だ。いつまで経っても遠くの景色はなかなか変わることはない。



 また海岸に出て山の中に入って、カタリナに教えてもらったとおり、目的の村のひとつ手前にあったNavesの町で通りにあったスーパーで食料を仕入れておく。缶ビール2、生ハム、オレンジ、パンにT字カミソリも買っておく、6,78ユーロ。すぐ前にベンチがあったので、ここで一杯やってしまおうと、生ハム肴に缶ビールを飲みだす。折角冷えた缶ビール買ったのに2km歩いているうちに温まってしまうしね。道路の反対側をマリナ母娘が通りかかったので「マリナッ」と声をかける。次の町のRibadesellaまで行くそうだ。ここからまだ8.9キロの距離だ。マリナ達とはこれを最後に会うことはなかった。今度はカタリナがやって来た。途中、カミーノを見失って1キロ迷ったそうだ。女性のソロが知らない外国で迷うのは相当なストレスだろう。食べ終わったところなので一緒に歩き出す。
 いつものように矢印で舗装路から泥道に誘導されて歩いていたら、前には見覚えのある長い杖を持った女性が!やっぱりサントーニャの立派なアルベルゲで一緒の部屋だったアルバニアの女の子だった。でも、話を聞いているとアルバニアでなくてドイツらしいがハッキリしない。カタリナとお喋りしながら歩いていて、私達とおなじPineresに泊まることに決めたらしい。

 着いたアルベルゲは村から離れた所にポツンと一軒だけだった。どうりで周りには店がないと言う筈だよ。とても小さなアルベルゲで、敷地の奥には管理人の住居があって、そっちの方が一回り大きい。受付は2時半なので、みんなで外にあったベンチに座って30分待つ。奥さんがやって来て鍵を開けてくれたので入ってみたら二段ベッドが3台の、とてもこじんまりしたアルベルゲだった。定員6人は今までで一番小さなアルベルゲだ。
 キッチンが使えるので一緒に歩いてきた二人にスパゲティとワインをシェアするかと確認して、2km離れたさっきのスーパーまで食料を買いに歩いていく。その途中、Penduelesで一緒だった74歳が通りかかったので立ち話をする。やはりマリナ達と同じリバデセージャまで歩くそうだ。この人はずっと手の震えが止まらない人で、会うといつも良く頑張って歩いているなぁと思う。
 しかし、歩きながら大変なことに気がついた、いま3時前なのでシエスタ真っ最中だよ。でも、ここまで歩いてきてしまったのでシエスタをやらないスーパーがあることを願うしかない。果たして着いてみたら3軒ともしっかり入り口の扉は鍵をかけてシエスタやっていた。がちょんだ。5時まで開かないので、仕方なしに手ぶらでまた2キロ歩いて帰る。アルベルゲには若い男性が増えていた。長い棒の女性はミリアムと言う名前なのが分かる。

 夕方になったら可愛い女の子がチェックイン手続きしに来てくれる。お母さんのお手伝いをしているらしい。私営なので10ユーロ。とても可愛いので写真を撮らせてもらう。夕飯は食べるところもないので手持ちの物で済ますことにする。カタリナからパン・バターとアボガドを一切れもらい、何も持っていないミリアムには私のカステラパンを1つ上げる。その後、若い男性二人とミリアムが村まで買い物に行くと言うので誘われるが、もう2往復してうんざりなので行かない。


北の道15につづく