北の道29 Baamonde − Miraz
6月14日(火)Baamondeのアルベルゲを8:05に出発。今日はたったの10.7kmなので気楽だ。普段歩いている途中は背負っているバックパックから引っ張り出さないとならないタブレットの写真は撮らないのだが、今日は3回も撮る余裕がある。途中から小雨が降ったり止んだりしているが、ザックカバーだけして合羽を着るほどではない。少し雨に濡れるくらいなら合羽を着たために汗で蒸れるよりずっといい。
こんな山の中なのに屋根付きの休憩所があった。雨に当たらずに休めるこんなチャンスは絶対に逃せない。中に入ってジュースを飲みながら休んでいたらマルテンが追いついてきた。ここでかねてより考えていたことを実行する。昨年のフランス人の道では炎天下を歩くときに眩しかった経験から、今年はサングラスを買って持ってきていた。しかし、巡礼銀座のフランス人の道と違って、歩いている人が少ないこの道では矢印や道標などの目印はいつも自分自身が見つけなければならないので、ド近眼の私はサングラスを掛けるために近眼メガネを外すと矢印が見えないジレンマがあるのがわかった。なので、まだ一度も使ってないサングラスだが、持っていてもスペインでは使えないからマルテンに上げちゃおうかなと考えていた。マルテン、まだ一度もサングラスしているの見たことないし。で、持っているかと聞いてみたところ、予想がバッチリ当たり持ってないそうだ。理由を言って、サングラスいる?と聞いたらいるそうだ。やった、いつも食事を食べさせてくれる恩返しが少しできた気がした。
一度も使ってないので、記念にサングラスをしたところを写真に撮ってもらってからマルテンが掛けたところも写真に撮る。UVカット99.9%と謳っている優れ物のサングラスだが、なんと百均で買ってきたものだ。デザインも洒落ていて、顔のカーブに沿ってフレームも湾曲しているのでこれが百円とは思わないだろう。私も買うときにまさかこのサングラスまで百円と思わなかったので、えっ、これも百円なの!?とレジの人に聞き返した程だ。百均恐るべし。マルテンには1ユーロだとは言わないでプレゼントしたのは言うまでもない。
一緒に歩いて、次の村にバルがあったらマルテンがコーヒーが飲みたいと言い出したので寄ることにする。コーヒーを注文したらサンチャゴケーキの小さいのが付いてきた。ここの払いは私がしたる。ほんの2.2ユーロばかしだけど。
目的のMirazのアルベルゲには11:45と超早い時間に到着する。まだ掃除中で、オスピタレラのおば様たちが忙しそうに立ち働いていた。でも中には入れてくれ、ベッドも好きなのをゲットさせてくれた。ここはベッドの間隔が広く取ってあり気持ちがいい。ドナティーボと言うことなので、マルテンがふざけて1ユーロと言ったら、オスピタレラに笑われる。まぁ5ユーロくらいと言っていたようだ。ずっと降ったり止んだりしていたが、アルベルゲに落ち着いたら晴れ間が覗いてきた。
ここはオスピタレラが3人も詰めていて、みんな違う国からやってきてボランティアをしているらしい。キッチンでレモン水とコーヒーをいただく。雨で寒いので、一人のおばちゃんが薪ストーブに火を入れてくれた。薪ストーブの炎は柔らかく、心地よい暖かさだ。燃料の薪は良く見るぶっ太いのとは違い、森から腐った枯れ枝を拾い集めてきたような代物で心もとない。
ベッドルームに行こうとしたら、マルテンが女子トイレのドアを何かしている。丸ごと外れているのをはめ直しているようなので私も手伝う。大きな重い扉で、3つある兆番の一番上が少し曲がっていて上手に入らないようだ。マルテンがハンマーで一番上の兆番をガンガン叩いたところ、それが功を奏してぴったり入れることができた。マルテンやるじゃん。重いので女性のオスピタレラには無理だったろうから、とても喜ばれる。
ここMirazはとても小さな村で、スーパーはないそうだ。でも、二人ともそこそこの食材を持っているのでマルテンが夕飯にはパスタを作ると言っている。マルテンはパスタとトマトにチョリソーを、私はパプリカ、パン、干しブドウを持っている。この道では手持ちの食料を切らさないのが鉄則だ。
午後になったら雨が本降りになってきた。まだ歩いているペリグリノは沢山いるので大変だ。一人、また一人と濡れ鼠状態で砂漠のオアシスのようなアルベルゲに到着してくる。ここまでやってくればみんなホッと一息だろう。
昼過ぎたので腹が減ってきた。手持ちの食料の中にインスタントの玉ねぎスープがあったので鍋にお湯を沸かして作り、パンとパプリカを小さくカットしたのと干しぶどうでマルテンと簡単な昼飯を食べる。私はいつもスープにはパンを入れて食べるのが好きだ。インスタント・スープは本来の使い道のスープの他に、カット野菜の味付けとしても使えるのを発見したので、これも終わったら2袋ほど補充しておくと助かるときがきっとある。
3時に受付開始。ドナティーボの箱にはいつものように5ユーロ入れたが、マルテンはなんと20ユーロ札を惜しげもなく入れていたのでビックリした。公営は安いからみんな泊まるのに、私営の倍も入れるなんてマルテンって金持ちだったの?そういえばアルベルゲを決める基準はウォッシング・マシーンがあるかないかと言ってたから、手洗いでは洗濯しないらしい。洗濯機はどこも有料なので私は自分からは一度も使ったことないが、マルテンは毎回のようだ。普通、倹約しながら巡礼を続ける人は洗濯機を使うにもシェアしようとするが、マルテンからは洗濯のシェアという言葉は聞いたこと無かったので、倹約しない人には洗濯のシェア自体考え付かないのだと思う。やっぱりマルテンはリッチなんだと言う結論になった。見た目はとてもリッチには見えないのだが。私の目標は一日20ユーロだと伝えたら意味深な笑いを浮かべていた。
今日は雨で涼しかったのに加え、歩く距離も短かったので汗をかかなかった。なのでシャワーと洗濯はなしにする。いつものルーチンがないと時間が凄く余る気がする。
マルテンが夕飯を作り始めたので、私も見ているだけじゃなく今回初めて手伝う。チョリソーとパプリカをみじん切りにして、それらをみんな入れた鍋をかき回すだけ。マルテンは食材を思ったより大量に持っていて、玉ねぎ、にんにく、トマト・魚の缶詰と色々出してきて、私がかき回している鍋に切った物から順番に次々に放り込んでくる。こんなにいっぱいの食材をバックパックに詰めて持ち歩いていたのか、だから歩くのが遅いのだ。完成した料理はいつも美味しい。いつも食べるときに飲むワインを私が用意するのだが、今日は店がないので買うことができない。珍しくワインもビールもない夕飯になった。
北の道30につづく
|