フィステラの道1  7月11日(月)   Santiago - Negreira

 今日からは今年のカミーノ最後のルート、フィステラの道が始まる。5月12日に北の道から歩き始めて2ヶ月が経った。これが4つ目の道で、無事にここまで辿りついたかと、ホッとするのが正直な感想だ。北の道、ポルトガル人の道、イギリス人の道と渡り歩いて最後はここと決めていた。だってこの道はガリシア語でFisterraフィステラ、スペイン語ではFinisterreフィニス・テレ。英語ならさしずめフィニッシュ・テラかな。地の終わりと名前が着いた、巡礼を終わりにするには相応しい道だから。

 真っ暗な中をサンティアゴ・メノールのアルベルゲを6時半に出発する。このルートは昨年、ドイツのイーデンとずっと一緒に歩いた道で、フィステラまで同じ道筋をなぞって歩く。北の道を歩いたときは最後の数十キロをフランス人の道と合流して歩くため、余りの人の多さに辟易したが、ここフィステラルートは歩く人がぐっと少なくフランス人の道の10分の1以下なので楽しみにしていた道だ。一度歩いたと言う事もあり、迷わないと思っていたが意外と覚えていなくてサンティアゴの町を出るところで一度地元の人に巡礼路を教えてもらった。早朝なのに運良く近くに人がいて助かった。町をでる所にあった広場の片隅でテント泊している人が二人いた、その隣には建物の庇の下で寝ている人もふたり。アルベルゲさえ泊まらずに節約しているツワモノで昔の自分を見るようだった。

 所々に見覚えのある景色が現れるので、これもまた楽しい。7キロほど歩いて8時半に昨年と同じところにあった最初のバルに入って行く。ここはチョコラテとチュロスが旨かったので、同じのを頼んだのだが出てきたのはコラカオだった。これはホットミルクに袋入りのココアみたいのが付いてくるもので、袋を自分でビリッと破いてミルクの中に入れてかんますものだ。これも旨いので、ま、いいかな。チョコラテを頼むとチュロスが付いてきたのだが、チョコラテ自体がないのでチュロスも付かないようだ。手持ちの大きなコッペパンをコラカオに浸しながら食べると意外なほど旨い。まるごと1本食べてしまったので、栄養はともかく腹が減ることは避けられる。

 歩きだすと若者3人組に追い越された。さすがにとても足が早い。追いついたところで良く見たら、そんなに若くもない女性3人組で、一人が女性の坊主頭だったので若者に見えたのだった。道で出会うペリグリノには全員声を掛けることにしている。

 今日のメインエベントとも言える名所にやってきた。でもペリグリノはほとんど居ないので拍子抜けするほどだった。昨年はここにいっぱい居て写真を撮りまくっていたのだが。そこを過ぎても見覚えのある所は何度も出てきて懐かしく楽しく歩くことができた。

 途中にある大金持ちの門を撮ろうと思っていたが、今回は門が開いており、そこに2頭のでっかいジャーマン・シェパードが放し飼いされていたので怖くなって通り過ぎる。あんなのに襲われたんじゃたまらん。

 11時過ぎにネグレイロの入り口に入ってきた。昨年泊まったアルベルゲ・カルメンもちゃんとあった。でも今年は安い公営に泊まる予定だ。公営は町を通り過ぎて1キロ歩いたところにあるので、ここでスーパーから食料を調達して行く作戦を考える。やはり同じことを考え付く人がいるもんだ。レジ袋を提げたペリグリノが店から出てきた。スーパーのチェーン店、GADISで500mlビールを2本、チーズ、ヨーグルト4、カット野菜、チョリソー、ジュース、エンパナダ2、トマトと大量に買って8.61ユーロ。大きなレジ袋を提げて町を後に歩いていくと、巡礼路からは少し外れた所にアルベルゲはあった。と言っても100m外れただけだったので、これならお安い御用だ。

 玄関のテーブルには手に障がいのあるブラジルおじさんが座って一人開くのを待っていたので良く分からない言葉と身振りでお喋り。ポルトガル語はオブリガード(ありがとう)と、ポルトガル娘に教わったボンディアしか知らないが、その国の言葉を言うと間違いなく喜んでくれる。

 すぐに4人のスペイン女性組も到着する。私と同じように、GADISのレジ袋を提げている人がいた。13時オープンと書いてあるが、12時過ぎにオスピタレラがやってきて早めに受付を開始してくれる。6ユーロWi-Fiなし。ここはベッドが全て平置きのしっかりしたものだった。凄いラッキー。トイレに近い入り口脇をゲットする。シャワーと洗濯をしてから昼飯の準備をする。ここには調理器具と食器が揃っていたのでこれも嬉しい。大皿にカット野菜、チョリソー、チーズ、トマトを盛り付けて、これは私としたら中々の出来だ。食器がないアルベルゲではいつも袋から直接食べているが、こうやって皿に盛れると一味違う気がする。このアルベルゲはキッチンもベッドも非常に気に入った。難点は1キロ戻らないとスーパーが無いことだが、差し引きしてもプラスだ。今のところ空いてるし、公営上位5本指に入るアルベルゲだ。アルベルゲを早く開けてくれたセニョーラに和風マリアカードを進呈する。

 今日、右のスティックの石突きが取れてしまった。昨年から2000km以上使っている相棒なので、とうとう金属製の先端が擦り切れてしまい、残った部品がスティックの中でカランカランと音がしている。石突きがないとプラスチックが直接地面にあたるので、すぐ壊れてしまう気がするがどうかな?

 飲んで食べたあと、3時間くらいスコーンと昼寝して、目が覚めたら明るいので朝まで寝てしまったと早合点したが、時計を見たらまだ昼の4時だった。寝るには相当早いので、こうしてボーっとしてるより明日の食料を手に入れようと考え、また1キロ歩いて町まで行ってみる。今回も考えることは同じ人がいるらしく、スーパーにはペリグリノが3人やってきていた。メロン半分、桃缶(中)、ナッツ1袋、パン(大)、1リットル白ワイン、ソーセージ4本で5.44ユーロ。今日は結構食料に金掛けてるな。3枚残っていた50ユーロ札をとうとう使う。でもまだ全部あわせれば200ユーロくらい残っているので一週間はオーケーだ。この調子だとコンポステラに戻ってキャッシングしても間に合うかな。

 帰り道でもスーパーへ行くと思しき数人のペリグリノと会って笑って挨拶する。みんなこの道には店やアルベルゲが少ないことを知っているので食料確保の重要性を知っているのだ。

 7時近くなってやって来たソロの女性がいた。入口に立ったまま入らずに、ベッドが空いているか心配顔をしている。オスピタレラは既に帰ってしまったので、ベッドが空いているかどうか確認できない。2つあるベッドルームに行って空いているベッドをチェックしてみると、一部屋に10人で、このアルベルゲは20人収容なのが分かった。1つ空いているようだが、念のため鍵の掛かった事務室に広げてある受付ノートをガラス越しに見たところ、今日は19人しか記入されてないのでピンポンだ。来い来いと呼びよせて、ノートを指さして大丈夫だよと告げてやったら、やっとホッとしたようだ。ここは町に戻れば私営アルベルゲが何軒もあるのでまだいいが、やっぱり今夜の宿が決まらない不安は何度も経験しているので、ホッとする気持ちは良く分かる。スペイン人かと思ったら、ウルグアイだそうだ。ウルグアイって聞いたことあるけど地図では見たことない。どこなんだろう?

 この子が来る前に同じテーブルに居たカップルにワインを勧めたらノーサンキューだったが、この子に勧めたらオーケーだったので喜んで2杯飲ませてあげる。ノーサンキューと言った二人が良かったねと言う感じで笑っている。
(写真、手前がウルグアイの子)

 このテーブルにはイタリア人カップルが2組になった。知っているイタリア語を4つ使ったら手持ちがなくなったので、簡単なスペイン語で話してみると何となく通じるところが楽しい。


フィステラの道2へつづく