フィステラの道3  7月13日(水)   Santa Mariña ー Olveiroa

 アルベルゲの1階にあるバルでコラカオだけ頼んで一昨日仕入れておいたエンパナダを1個食べて朝飯とする。ちょっと遅めの8時15に出発。昨日の日本人お兄ちゃんは車に詳しくて、ここんちの車は1千万以上もする高級車の何トカだと言っていた。小さなバル兼アルベルゲだけど付近に競争相手がまったくいないのでやって来るペリグリノを漏れなく総取りしてるのだろう。物価が安いスペインで1千万円以上の車を買えるなんてものすごく儲かっているようだ。金儲けコンセプトが随所に現れていてあまり良い感じがしないアルベルゲだったな。もうお世話になることもないだろう。

 せいぜい丘程度のなだらかな起伏の道を延々と歩く。とても歩きやすくて気持ちのいい道だ。出来たら来年も歩きたいな。

 非常に不思議に見える木が道端に現れた。え、これどうなってるの!?写真を撮りながら眺めていると、太い親木が倒れて、そこから枝が1本の木のように伸びているのが分かった。親木は地面と見分けが付かないほど同化していたので、とても不思議に見えた。

 
遠くに大きな湖が見える所までやってきた。どこもかしこもすこぶる気持ちのいい道だ。それに加えて、歩いている人が殆どいないのがいかにもひなびた巡礼路ぽくて心が和む。

 田舎道を歩いていくと、前方の草むらから女性の頭が出たり入ったりしているのが目に入る。あれー、トイレタイムのようだ困ったな。もうあちらからも見える距離まで近づいて来てしまっている。立ち止まってモジモジしているのも不自然だろう。下を向いたまま知らない振りして通り過ぎることに決める。問題の横に来たところで向こうから声が掛かった。トイレじゃなくて靴を脱いで休憩していただけだった。頭が出たり入ったりしていたのは、どうも私がやって来るのを確認していた気がする。それは昨日、歩きながら話した女性だった。それから自然と一緒に歩くことになった。分かりやすいスペイン語を身ぶりと共に使ってくれるので、喋っていて楽しい。道々に出てくる物を指差してはスペイン語では何々と教えてくれるのだが、教わるそばからポロポロ忘れていく。

 次の村のバルで一緒に休んでいくことになった。私はもちろんビールで女性はファンタみたいのを注文していた。ちょっと親しくなったので日記帳に名前を書いてもらう。名前はアナで、コンポステラから北へ90キロほどのア・コルーニャの人だった。ア・コルーニャには世界遺産のヘラクレスの塔があるので、いつか行ってみたい街だ。このフィステラの道だけを歩きに来たらしい。外国からやって来た自分にはとても珍しいパターンに見えるが、地元のスペイン人ならアリなのかも知れない。コンポステラには電車でやってきたのかと思ったら、マイカーでやってきて路上駐車してきたと言っている。いいんか5日も路上駐車しといて!?ボロイ車だから悪戯されてもいいそうだが、そういう問題か?バルの人にお互いのカメラを渡して一緒のところを写真に撮ってもらう。ビールはおごられてしまったので機会があったらお返ししよう。

 休憩後も一緒に歩いていき、先週が誕生日だと言うのでしらばくれて幾つになったのか聞いてみると、ためらいもなく教えてくれた。ほどなく次の村、オリベイロアに到着する。私はここの公営アルベルゲに泊まるが、アナは次のLogosoと言う村のアルベルゲに泊まるそうなので、ここで分かれることにする。ロゴソ、初めて聞く名前だな。そんなとこにもアルベルゲがあったんだ。

 アルベルゲの入口まで行ってみたら、オスピタレラが中を掃除中だったので外で少し待ってから声を掛ける。昨年も泊まったんだよとスペイン語と身振りで伝えたら分かったらしく喜んでくれる。アケオラ アブリルト、何時に開けるのかと良く分からないスペイン語で言ってみたら、鍵の掛かっていない扉をスッと開けてくれたので入ってもいいらしいのが分かる。昨年と同じ、2階のトイレに近いベッドをゲットしてみたが、外に出ようとしたら入口から一段下がった所にもベッドルームがあるのに気づいたので見にいって見る。ベッドの間隔も広々しているのに加え、ここには1台だけ平ベッドがあった。勿論さっさと引越しして到着1番のアドバンテージを最大限に生かす。今日はショートコースだったのでシャワーだけして洗濯はしないでおく。洗濯しないと楽でいい。

 昨年、昼飯を食べたり買い物をした、アルベルゲ隣りのバルは店じまいしたのか人けがなかった。少し離れた所に大きな私営アルベルゲ兼バルがオープンしてたので、客を取られてしまったか。そっちに行ってみたら販売コーナーもあって、そこそこの品揃えだった。これじゃぁ向こうは潰れるはずだよ。昨年のバルでも食品は少しだけ売っていたが、1坪ほどの倉庫の中に種類が幾らもない品が雑然と置かれていて、客はその中から選んだ品を離れたバルまで持っていって金を払うという、なんとものんびりした店だった。それだけに潰れたなら気の毒だ。

 さて、我に返って新しく出来た店には何が置いてあるのか見渡してみる。いつもの1リットルビールはなかったので、缶ビール3、ヨーグルト2、8Pチーズ、カステラ2で5.9ユーロ。こんな不便な村だけど、ぼられもしないで定価で売っていたので感心した。今回はさすがに野菜は手に入らなかった。早速アルベルゲに戻り、キッチンでスープを作って前に買っておいた小さなソーセージを4本入れる。旨くも不味くもないので、まぁまぁかな。


 ここのアルベルゲは非常に独特なつくりで、道を挟んでベッドルームは離れ離れに3棟ありキッチンと食事スペースはまた別棟だった。まだ人が居ないのでどんなことになっているのか探検しに行ってみると、ひとつはワンフロアにベッド数が6で2階にもあるようだ。ここは自転車の人が泊まる棟らしく、室内に自転車スタンドが備えてあった。もうひとつ、一番小さな棟を見てみたら、ここはベッド数4ほどなので小グループには持って来いだが張り紙を見たらハンディキャップを持った人専用だったのが分かる。

 暇なので、少し離れたところにある昔の保存地区みたいな所に写真を撮りに行ってみる。説明があるようだが読めないから分からない。ただ、古いのだけは分かる。

 6時過ぎに今度は夕飯を作る。残り半分のスープの素に、昨日買っておいたトルティージャを入れてぐずぐずに煮てみる。これもまずまず。それと残りのパンとヨーグルトにチーズ2個。1本残しておいた缶ビールも一緒に飲む。食後にはナッツをポリポリ。スペインのナッツは割りといけるのが分かった。夕飯も食べたことだし、もう寝てしまいたいのだが、肝心のチェックインが7時なので寝ることはできない。歯を磨いて時間つぶしをしている内に受付が始まる。今回も6ユーロ。勿論Wi-Fiなし。

 夕方になったら昨年と同じように、隣の牛小屋からボーッと大きな音が鳴り始まる。オスピタレラによると、発電機のようだが、発電機ってあんな音を出すか?何はともあれ2階より1階の方がはるかに音が小さく聞こえるのでありがたい。


フィステラの道4へつづく