フィステラの道6  7月16日(土)  フィステラ - Santiago

 のんびりと8時に起き出す。足に障がいのあるサイクリストが居たので一緒に写真を撮る。このお兄ちゃんともかれこれ4日も会っていたことになる。いつもニコニコとして愛想はいいのだが、あまり話しかけてはこない。元々シャイなのか、東洋人なのでスペイン語は通じないと思っているのだろうか。まぁほぼ当たっているが。顔はこのとおり、人の良さそうな穏やかな顔をしている。


 今朝の朝飯は昨日買っておいたバケツサラダだ。アルベルゲの食事スペースは鍵が掛かっていて入れないので、アルベルゲでは食べることができない。バックパックを担いで食料を入れたレジ袋を手に港へ行ってみる。朝早いのでまだ人もまばらなので何処で食べてもオーケーだろう。海岸沿いに石でできた手ごろなベンチがあったので、ここで食べることにしよう。バケツサラダにはパスタも入っているので一食分としては十分だ。チーズと1リットルのオレンジジュースもグビグビ飲んでおく。日陰なので肌寒いくらいだ。山の上なら分かるが、夏の海岸ってこんなに寒いかなぁ!?

 海を見ながらのんびりした時間をすごすが、ずっと同じところに居るのも飽きたのでバス停に行ってみるか。バスは9:45発で、まだ9時だが、時間が近づくにつれ沢山のペリグリノ達が集まりだして、これ全部乗れるのかなと心配になるほどになった。列を作って待ってる訳でもないので、バスが到着したらどういう順序で乗り始めるんだろう。最後の方は乗り切れないんじゃないのかな。愛想のいい自転車のお兄ちゃんもこのバスで帰るらしいが、この人数なので車体の荷物室はバックパックで一杯になってしまう気がする。お兄ちゃんの自転車まで乗せられるかと心配になる。

 そのバスがやって来た。みな一斉にバックパックをバス横の荷物室に放り込んでから早い者順に乗り込んでいく。カオス状態だが運転手も乗客のやりたいようにやらせていてノータッチだ。私もいい位置をキープして無事に乗る込むことが出来る。チケットは乗り込んだ所のステップで運転手から直接買うスタイルなので、お金を出すだけでチケットが買え、言葉はいらない。これが一番簡単でありがたい。コンポステラまで13ユーロと少し。やっぱり幾人かは乗り切れなかったようで諦めた人がチラホラいる。

 コンポステラまではノンストップだったので、11時前には到着してしまう。5日掛けて辿り着いた距離がたったの1時間ちょっとだった。なんてこと。

 コンポステラの大きなバスステーションを利用するのはこれで3回目だ。最初は昨年ムシアから戻ったときに降り立ち、2回目も昨年ポルト行きに乗った。なので道は間違えようがないだろうと高を括っていたが迷ってしまう。相当いい加減な記憶だな。まぁこっちだろうと勘と記憶を頼りにメノールに辿り着き、今回は2晩のチェックインをする。1泊12ユーロなので24ユーロ。こんだけ大きな金額がビニール袋の財布から一度に出て行くと少し寂しい気分になる。まぁ日本円なら3,000円に満たない額だけど、金銭感覚がスペインモードになっているので2桁を超えると大金に思えてしまう。お陰で手持ちのユーロが100を切ってしまったので、明日のうちにはキャッシングをして補充しておきたい。

 清掃時間なので今回もベッドルームにはすぐ行けない。バックパックは地下のキッチン前に置いてパラドールの無料ランチを食べに行くことにする。もうすっかりコンポステラの住民みたいだ。住民と言うかホームレス的な?

 無料ランチを食べるには、発行されて3日以内の巡礼証明書の提示が必要なのだが、そんなの一度もチェックされたことがないので今回も持たないで行く。ペタペタ歩いてタダメシ待合所に行くと4人の人が待っていた。15分前なのに私でやっと5人目。その中の一人のおじさんが、筒に入れた巡礼証明書を掲げて、これが必要なんだと壁に張り出してある注意書きを指しながら言っている。先刻承知だが、そんなのいらないんだよと身振りで伝えると「そーかなぁ?」と言う感じで納得いかないようだった。そのあと一人やって来たので今回も定員に満たない6人だけだった。あと4人も食べられるのに、も、もったいない。

 時間になったら今回もホテルの人が表から顔を見せて連れてってくれる。フロントの人に何か告げてから「誰か食べたことのある人がいるか?」と聞いているようだが、恥ずかしいので手を上げなかった。なので、係りの人がそのまま厨房まで連れてってくれ、ここで食べ物を貰ったらあそこの部屋で食べるんだと教えてくれて去って行った。

 今回のランチは今までで一番豪華だった。今回が松なら前回は梅、最初が竹と言うところだ。でもどのランチもみんな美味しい。先に食堂に入った5人が1つのテーブルに座り、最後にやって来たじいちゃんが隣の小さなテーブルに一人で座った。みんなが席を詰めて一緒にと誘ったが、こっちでいいそうだ。我々は5人でワイン1本だが、じいちゃんは一人でワイン1本になってしまった。


 イタリアのじいちゃんが一人でワインを1本飲んでしまい、いい調子で何やら演説をぶち出したが一個も分からない。分からないがきっと巡礼のことを言っているのだけは分かる。酔ったので巡礼についての思いを熱く語っているようだ。こんなじいちゃんで、しかもイタリア人なのに英語で喋っているので偉いなぁと思った。イタリア人とフランス人は英語を喋らない人の方が多い。ドイツ人と韓国人は良く喋り日本人は色々で私は中学1年程度。スペイン語に至っては5歳児くらいか?


 食事がすんでパラドールのレセプションに戻る途中で赤と白のバラの花びらが通路や階段などあちこちに散っている。これは結婚式がこのパラドールで行われたんだと想像する。こんな派手なことは真似したいとは思わないが洒落たことをする人がいるんだな。

 オブラロイド広場に戻ってから少し離れたところにあるスーパーGADISを目指す。前にも来たことがあるが、どうもこの辺の道は似ているのですぐには辿り着けない。なんとか探し当てて、1リットルビール、カット西瓜、スナック菓子に冷凍ご飯を買って5.36ユーロ。主食にビールとデザートまで買って600円は安くてたまらん。

 メノールに戻り、シャワー・洗濯する。メノールには物干し場があるが、室内で日が当たらないので乾くのが遅い。なので慣れてからは日の当たる窓枠に干すようにしている。もちろん、風で飛ばないように洗濯バサミで挟んでおくから心配いらない。これだとすぐ乾くので気に入っている。それを見たのか真似をしている人が出てきたが、洗濯ばさみで固定してないので今にも落ちそうだ。

 地下の食堂に移動してこれを書いているが、まだ3時なのでもう少し腹を空かせてから飲みはじめたいな。満腹のままビールを飲むと旨くないので勿体ない。ここには冷蔵庫が2台もあるので、幾らでも冷やしておくことができる。その冷蔵庫だが、フィステラの道を歩き始める前に飲みきれなかったジュースを入れておいて帰ったら飲もうと思っていたところ無くなっていた。誰かが飲んだのかとも思ったが、偶然、係りの人が冷蔵庫のチェックを始めたのを目にしたので捨てられたのが分かった。あまり長い期間は入れて置けないらしい。大勢が使う冷蔵庫なので当たり前だが、そうして貰ったほうが全体としたら有難いだろう。

 日記帳の残りが裏表で8ページと終わりそうになってきた。どうしよう、別のを買うか?とりあえず文字を小さくしてなるべく長く使う方法を適用する。それでも足りなくなったら裏が白紙の紙は何枚も持っているので、そっちに書けばいいし。


7月17日(日)  Santiago de Conpostera 2日目

 コンポステラ・メノール2日目。移動が無い日はとてものんびり気分で過ごすことが出来る。このベッドルームのフロアは昨日来たときはガラガラだったが、夕方にはいっぱいになった。今朝早く出立して行った人たちはフィステラへ行くか故郷へ帰る人たちだろう。ゆっくり組は私と同じで連泊か。

 何十日もの日程で歩いて到着する訳だから、誰しも幾日かは予備日を設定しておくものだ。日にちを余して辿りついた場合は、飛行機や列車の予約日との調整をするためにコンポステラで数日を過ごすことが多い。なので、ここだけは連泊が認められている。

 今日はドミンゴなのでミサの中でボタフメイロのぐるんぐるんがあると期待してミサに与ろう。キッチンに下りて行って冷凍ご飯をチンして3分の2食べる。まずまず。ビンに入ったインスタントコーヒーがあったので貰って飲んでみる。本物のコーヒー好きではないが、コーヒーを飲むと何となくゆったり感が味わえるのでインスタントのコーヒーは大好きだ。食堂のソファに座りのんびり人間ウォッチングをしていると、8時過ぎて出発する人たちがパラパラいる。この時間に出るということは国に帰る人たちだろう。一人一人がみんな素晴らしい土産話を持って帰ることだろな。それを考えただけで、こちらまでワクワクしそうだ。

 ミサはきっと混むだろうと、早めにカテドラルへ向かう。どうせ時間はあることだし、イギリス人の道でコンポステラに進入してきた道筋をもう一度見ておきたいので行ってみる。ついこないだだけど、仲良くなったグループ8人でワイワイ到着してきたので既に懐かしい。あの人達にまた会いたいが、それは奇跡でも起きない限り不可能だ。

 11時に聖堂内へ入る。1時間も前だが、もう殆どの椅子は埋まっていた。運良く数少ない残った椅子に座ることが出来た、早く来て良かったこと。いつもはボタフメイロの動きが良く見える祭壇の側面だが、たまには祭壇の正面に座ってみる。その10分後には空いた椅子は無くなってしまったようで皆さん通路に座り込みだした。通路はなぁ~、場所によっては追い立てられてしまうのだよ。案の定、中央の通路に座っていい席をゲットできたと喜んでいる人たちを係が排除しだした。ミサが始まるまでにはまだ30分以上あるので、いたちごっこを繰り返している。気の毒だが決まりなので仕方が無い。堂内に入るには階段を下りて入るのだが、そこも腰を下ろすには手ごろなスペースなので多くの人が座りだすが、安全対策上そこももちろん禁止。堂内にはこういう役目をする人が沢山いるので抜け駆けは難しい。

 肝心のミサはいつもより長めに感じたのは疲れてのことか?ボタフメイロは予想どおり振ってくれた。今回は正面の席に座ったので、ミサは良く見えていいのだが、ボタフメイロを見るには横に振られるので正面を通過する瞬間しか見えないので不適当だ。終わると拍手がまた沸き起こった。ショーじゃないんだから拍手なんかするなよ。



 暇でしょうがないので巡礼博物館に入ってみることにする。クアント クエスタ?幾らですか?と聞いたところ、無料だった。無料なのにレシートもくれて、それにはゼロユーロと書かれているから普段は有料なのか?もしかしたら今年は慈しみの特別聖年だから特別大判振る舞いなのかな。何はともあれタダなのは有難い。内容は、タダだからいっかなと言う程度だった。それとも有料で入れば見る目が違って良く見えるのか?


 昨日買い物したスーパーに行ってみよう。日曜なので閉まっている可能性もあるが、遠くはないのでブラブラと歩いていくと日本人の団体がいたので後ろに居た男性に話しかけてみる。ビジネスクラスの飛行機でやって来たツアーだそうだ。節約旅の私はビジネスクラスと聞くだけで「おっ」と怯んでしまう。こないだ会った日本人ツアーが全部パラドール泊まりだったのを思い出し、「じゃぁ全部パラドール泊まりですか?」と聞いたら、そこは違った。でも50万円もするツアーだそうなので私の80数日間の全費用より10数万円も高い。近くにいた同じツアー仲間のご婦人が聞きつけて「ひとりで来てるんですってよ!」と仲間を呼び集めだした。どうやってスペインを回っているのか興味津々らしい。海外にはツアーでしか行ったことがない人には個人で海外に出かける人は羨望の眼差しで見られるようで何となく嬉しい。私の日程を披露すると一様に驚いた顔をされる。

 スーパーは残念ながら閉店してたので、日曜もやっているいつものパン屋に行くことにする。遠く離れた地からサンチャゴを目指す巡礼の後だと知り合いに会える可能性があるが、それからは何日も経過しているので誰にも会うことはなかった。パン屋ではいつものように1リットルビールその他を買って暑い日ざしの中をメノールへ帰る。

 シャワー、洗濯後に地下のキッチンへ移動する。冷蔵庫に入れておいた食料は処分されずに残っていたので良かった。インスタントスープを作り、その中に残った冷凍ご飯を入れる。こういうの大好きだが期待したようにはならずに粒は粒のままだった。日本の米とは違うので、雑炊みたいにはならないらしい。これにとき卵を落とせれば更に良いんだが、残念ながら今回は卵なしだ。

 ベッドルームは運悪く西日がストライクの部屋だったので、9時過ぎても暑くて寝られる状態ではない。またキッチンへ降りていって自販機の缶ビールを飲んでみる。1ユーロ、高っ!

 明日からは「おまけ」のスペイン10日間観光が始まる。まずマドリッドへ電車で移動する。電車やバスを利用するときは時間厳守なので緊張する。朝も早いし。なので明日のタイム・テーブルを作り、起きた時からそれに従って行動するようにする。
起床      6:45
メノール出発 7:15
サンチャゴ駅 7:35、余裕があれば朝飯を食べる
駅出発     7:48
まぁ大体作った予定より早めに行動開始するのだが。
唯一の心配は、マドリッドに着いてからが分かっていない。マドリッドにはチャマルティン駅と言う所に到着して、そこから約10㎞離れた街中のアトーチャ駅へ移動しなければならないのだが、その行き方が分かっていない。5kmなら歩いてしまうが10kmはさすがに勘弁だ。アトーチャ駅からオスタルへは30分の歩き。歩きならいつでも何とかなるので心配してない。さてどうなるか。

このつづきは「おまけ」で