7月24日(日)  マドリッド - バルセロナ

 昨日と同じように、パンにゴルゴンゾーラ・ムースを塗りたくって食べる。このチーズは旨いし何度も使えてお得だ。それとオレンジジュースとヨーグルト2個で朝飯、とても健康的。
 9時、オスタル・コマーシャルを出発する。建物はすこぶる古くて、ヨーロッ映画でこんなすり減った階段の途中でスパイが撃ち合うシーンを思い描く。そんな時の定番はこの階段の隙間から誰か落ちてくんだ。宿泊料も安いしオーナーも良い人なので来年、またマドリッドに来るかも知れないので、そしたらまた泊まりたいな。

 アトーチャ駅には電車の出発50分前に到着する。構内に入っていくと、すぐ前を行く女の子がバックパックを背負い、そのポケットには見覚えのある巡礼証明書を入れた筒が刺さっていたので「ブエンカミーノ」と声をかけたらハッとして振り向き、こちらもバックパックを背負っているので巡礼仲間と認めたらしく顔をクシャクシャにして笑っている。顔立ちからコリアンらしいが、言葉が分からないので立ち止まることなくそのまま通り過ぎる。

 電光掲示板で私が乗るバルセロナ10:30を確認する。今回はちょっと早めの25分前になったら出発ホームが表示されたので、トレドへ行った時と同じセキュリティーゾーンに行ってチケットを見せたら、バルセロナ行きはここではなく上だと言われる!えっ、上ってどこ?アトーチャ駅って近距離駅と長距離駅だけじゃなかったんかい!?時間が迫っていることだし、こんな所で考えている暇はない。駅員が指差す方向へ早足で歩いていく。中2階になった所に居た駅員にまた教えてもらうと、スペイン語が喋れるかと聞かれる。少しだと答えるとエスカレーターを指差し、あれに乗ればいいらしい。上階に行ってみると、ここにも同じセキュリティーゾーンがあった。ここで係りにチケットを見せたところ、やっと確認が取れたのでホッとする。言葉で苦労するときは乗り物を利用する時と決まっている。

 トレド行きも70km以上あるのだから長距離列車の気がするが、同じ長距離でも今回は日本の新幹線と同じAVEなのでホームが違うらしいのがやっと分かった。ここには同じ形をした近代的なAVEがいっぱい並んでいたから。座った座席はコンポステラでの注文どおり窓側の席だった。イスも高級ぽくて快適だ。マドリッドからバルセロナへは631キロ、約6時間の列車旅だ。乗っているだけで到着するので何とも気楽。


 赤土の乾いた大地に灼熱の太陽というスペインらしい風景がずっと続く。こんな風景を見ているとやっぱ環境が人に与える影響ってあるんだろなと言う気がしてくる。

 バルセロナのサンツ駅には定刻の1時ちょっとに到着する。右も左も分からないので早速タブレットを引っ張り出す。このタブレットは古くなったので、GPS電波のキャッチが異様に遅く、待てども待てども位置が表示されない。でも、駅付近の地図は細かく出るので、こっちの道だろうと当たりをつけて歩き出す。

 通りに放射状の建物が現れた。え、ずいぶんと変わった建物だなぁ、何だろう?でも塀が異常に高くて更にその上にフェンスだの鉄条網だのあって物々しい。加えて放射状の建物とくれば刑務所だろうと推測する。バルセロナって、こんな町の中に刑務所があったのか。すぐ側に珍しく写真つきで値段も書かれた食堂があった。価格も手ごろなのでお昼を食べて行くことにする。入っていくと中国人がいて、フランスでも入ったことのある中国人経営の安いレストランだった。私のような節約旅行者には数少ないありがたい食堂だ。チャーハン3.5ユーロとビールを頼むと、おつまみにオリーブが小皿で出てきた。グラスも冷やしてあって、スペインでは珍しいかも。チャーハンは量もあって旨いし、この値段でオスタルの近くなら毎日来たいような店だった。

 歩いていくと角にガウディのカサミラがいきなり現れる。今晩のオスタルはこの近くだ。次の区画まで行くと、ネットで見ていたオスタルの小さな入り口があり無事にチェックイン。受付の子がサンチャゴ巡礼に興味があるようで、変なスペイン語と変な英語で少し話せたのが良かった。スペイン語の過去形はひとつも教わってないのだが、それでも何となく話は通じるようだった。きっと想像力を働かせて聞いてくれているのだろう。

 ここはオスタルと言うか、ドミトリーと言った方が一般的か。一部屋に2段ベッドが数台あって男女の区別はない。もちろん、シャワー・トイレは共同だがこっちは男女別だ。早速シャワーを浴びて洗濯もするがアルベルゲのような物干し場は皆無だった。仕方ないので中庭にあったイスに掛けて干しておく。でもキッチンは完備されていて、鍋釜は勿論、食器も沢山整理整頓されてる上にガラス張りの大きな冷蔵庫まであった。

 バルセロナと言えば何といってもサグラダ・ファミリアだろう。入場チケットは前日に買った方がいいと言う話を聞いていたので、取りあえず行ってみる。オスタルからは歩きで25分ほどか。高い尖塔があるので遠くからでも目印にすることができる。来てみるとさすがのサグラダ・ファミリアで人でごった返している。チケット売り場と思しき所にいた係員に聞いてみたところ、ネットで買えの一点張りなので万事休す。人対人なら何とかなるものでも、ネットだとスペイン語か英語だけだろ!?私には買えないんじゃないかな。ダメなら入場は断念するかと、この時点で半分は諦める。

 暑い中をせっかく来たんだから一周して帰ろう。大きなサグラダ・ファミリアの反対側に回ったら、こっちの門はまったく別物に見えるほどだった。さっき見た方は最近できたもので、こっちはそれよりずっと昔に完成したもののようだ。何しろ着工が1882年らしいので既に百年以上も作り続けている教会だ。なのでこちらの入口は色合いが物凄く古く感じる。近くには大きめの池があって、写真で見たことのある池だった。池の周りにも沢山の観光客がいて、日陰にもなっているので絶好のサグラダ・ファミリアスポットと言う所か。ガイドブックでもここから写真を撮るのがグーと書かれている。

 帰り道は一本間違ってしまった。100mほど歩いて間違ったことに気づいたが、戻ることなく勘で歩いて行ったらカサミラに出る。ついでだから入って見るかとチケット売り場に入って行ったところ、21ユーロと高額設定でシニア割引もないそうなので止めておく。歩いているときは1日の経費を20ユーロとしてた私が入るところじゃないだろう。
 近くの雑貨屋で1リットルビールと1ユーロのナッツを買いオスタルに戻る。食堂で飲みながらタブレットでサグラダ・ファミリアのチケット予約方法を検索したら、日本の方が親切に解説してくれていた。それを見ながらサグラダ・ファミリア(この名前長すぎ)のサイトでスペイン語ながら予約にチャレンジしたら、あっけなくチケットをゲット出来てしまった。誰だか知らないけど解説サイトを作ってくれた人ありがとう。支払いはカードで済ませ、チケットは電子チケットで、タブレットに保存したPDFファイルを入り口で見せればいいらしい。シニア割引を使ったのでパスポートの提示が必要だそうだ。通常15ユーロのところを11ユーロ。チャーハン1杯分の割引だ。明日の2:15~2:30の入場なのでタブレットのバッテリー切れに注意していよう。


7月25日(月)  バルセロナ2日目

 オスタルで有料の朝食2.9ユーロを食べさせてもらう。ヨーロッパの朝食はどこもあっさりで、トースト、ジュース、コラカオにコーヒー程度。でも腹が減らないようにいっぱい食べておく。種類は少ないが食べ放題なのでトーストを6枚食べる。レセプションで「デサジュノ(朝食)ね」と言ってお金を払って、あとはキッチンに並べてある食べ物を勝手に食べていいスタイルだ。同じテーブルではオスタルの朝食は申し込まずに持参の食べ物を食べている人もいるから至って自由だ。ミニカステラを2個おやつに貰っておく。

 私のベッドは暮らしづらい上段なのだが、下段に居たコリアン男子がいつのまにか消えてたので、すかさず下段に引越しをしておく。バルセロナでは合計4泊するので、上段か下段かは重要だ。これで残り3日間は快適に過ごせること請け合いだ。

 サグラダ・ファミリアの入場は2時過ぎなので、午前中は市内見物に当てる。9時に出発し、まずは日本行きの飛行場へ行くためのエアポートバスの停留所を確認しにカタルーニャ広場へ向かう。歩いていると、道路の反対側にガウディのカサ・バトリョを偶然発見する。相変わらず変ちょこりんな建物だ。広場へ着くと、丁度エアポートバスが出るところだった。車体には大きく「Aerobus」と書かれている所が嬉しい。最後の気がかりであった空港行きの手段が確認できたので安心する。バスは見ている間に4台も来たので相当頻繁に発着するようなのも分かる。空港にはT1とT2があって、私が乗るカタールの飛行機はT1エアポートだ。バスの正面には大きくT1と表示されているので間違いなく乗ることができそうだ。これも安心材料。

 カタルーニャ広場からは世界一美しい通りと噂のランブラス通りにそのまま続いている。はて、シャンゼリゼ通りもそんなこと言ってなかったか?それはさておき、ここにはカナレタスの泉と言う名所がある。泉と言っても水道なのだが、「テレビでスペイン語」講座で現地講師のジーナが飲んでた泉なので是非来たいと思っていた所だ。この泉の水を飲むと、バルセロナに再訪できると言う言い伝えがあるそうだ。これもイタリアに似たようなことを言っている泉があったな。テレビでは観光客が「やっと泉を見つけたよ」と言っていたが、通りを歩き始めたらあっさりと見つけることができる。もちろん、一口飲んでみたことは言うまでもない。こんなときにヨーロッパの水道水へっちゃらの私は躊躇なしに飲むことが出来るので便利だ。

 通りを歩いていくと、これもネットで見たミロがデザインしたと言う大きなタイル床が現れた。特にこれといった特徴がないので見落とす人がいっぱいいそうだが、折角なので写真に撮っておく。通りの終点は港になっていて、コロンブスの塔が聳え立っていた。港からは大きくて長いロープウェーが張られていて、遥か彼方のモンジェイックの丘と言うところまで連れてってくれるらしい。通りには奇妙な格好をした人たちが何人もいて、一緒に写真を撮ってチップを貰うようだが見るだけなら無料。

 通りを戻りながらガウディの初期の作品があるという広場に行ってみる。ドラゴンが巻きついた奇妙なデザインの街路灯があった。これも写真で見たことがあるので小さい物だけど見られたので嬉しい。バルセロナには見所がいっぱいあって、地図を頼りに次はゴシック地区と言うところに行ってみる。古い町並みを行くと道路の上に年代物の渡り廊下があったりして、いかにも昔っぽい。この狭い通りを行くとカテドラルがあって、ここは無料で入れるそうなので拝観させてもらおう。中は観光客でごった返しているが、神聖な所なので騒がしくないのがいい。ここには13歳で殉教した聖人の女の子の遺体が安置されてるそうだが、そのことに気がつかなくて拝観したので勿体ないことをした。

 すぐ近くにはピカソがデザインしたと言う壁や広場では女性演奏家がなにやら見たことのない楽器で美しい演奏をしながら自身のCDを売っている。どこもかしこも観光客だらけでバルセロナは町自体が観光地そのものだった。

 こんだけ見ればいいかなと、帰りもカタルーニャ広場の横を通ってオスタルに戻る途中、ビールのロング缶を買ってシャワーの後に飲む。冷房の効いたオスタルで一息ついてからいよいよサグラダ・ファミリアを目指す。

 今回も25分歩いてサグラダ・ファミリアに到着。まだ入場には50分もあるが、ギリギリや遅く着くよりずっといい。入場口の確認と、他の人がタブレットやスマホの電子チケットをどうやって見せて入るのかをチェックしておく。それが済んだら辺りをぶらぶらして時間を潰す。5分前になったので、少し早めだがチケットを見せて入ることにする。必要といわれてた年齢確認のためのパスポートはチェックされなかった。係としたらどうでもいいことなんか?いかめしい生誕の門をくぐって中に入ると、さすがと言うより他に言葉がない。素晴らしい内部に圧倒される。面倒がらずにチケット予約にトライして良かった。もう凄いカラフルな光と幻想的な柱が林立している様は別世界のようだ。

 別料金のエレベーター以外はくまなく見ておこうと堂内の隅々まで歩き回る。祭壇の裏側に回ろうとしたらそこから地下が見えて、遥か下にガウディの墓らしきものが見えた。デジカメで撮ったのを係に見せて聞いたらやっぱりそうだった。目の前までは行けないらしいが、ここから見られただけでも良かった。
 祭壇真後ろにはちょっと他と違う空間があって、普段のミサが立てられるようなスペースだった。祭壇の上に小さな赤いランプが灯っていたので、あ、ご聖体があるんだなと気がついて、隣に居た係員に「てぃえねす ほすちあ?」と聞いたらピンポンだった。サグラダ・ファミリアは観光客ぞろぞろで観光地ぽくなってはいるが、本物の教会なのでご聖体が置いてあるのだった。ここまでやってくる観光客はとても少なくて、カメラ片手に入ろうとしたら入口で係員に、あなたは祈るために入るのかと問われてしまったので、ここだけは観光地とは別扱いらしいのが分かった。

 そろそろ出ようかと聖堂の外に出たら、地下へと続く通路が見えたので行ってみる。そこは博物館になっていて、ミニ・サグラダ・ファミリアや重力設計に使用した(らしい)逆さまになった聖堂模型などがあった。工房もあったので日本人技術者がいるかなと見てみたが、今日はお休みらしかった。建設のビデオも2つ見て、もう見られるものは全て見た気がしたので出ることにする。聖堂の外に出ると人でごった返している。自撮りばかりじゃ淋しいので、人に頼んで記念写真を撮ってもらおう。今日もいつものようにレジ袋スタイル。
 今度は帰り道を間違えずにオスタルまで帰ることが出来た。シャワー洗濯後、近くの雑貨屋で1リットルビールにゴルゴンゾーラチーズその他で6.25ユーロ買い込む。朝飯はここのが安く腹いっぱい食べられるので買わないでおく。

 サグラダ・ファミリア内を見たことでテンションが上がっているのか、有名なライトアップされた夜のサグラダ・ファミリアと言うものも見たくなった。安全のために夜は出歩かないようにしているのだが今回ばかりは行ってみよう。ライトアップされたサグラダ・ファミリアを見るのは池の向こうからが定番なので、薄暗い時間からベストポジションで時間を潰す。待っていると中々暗くならないものだが、既にライトアップは始まっている。夜空が大分暗くなってきたところで何枚も撮っておく。水面に映ったサグラダ・ファミリアもバッチリ撮れたのでこれは満足。夜間撮影はブレ易いのでベンチや立木にカメラをくっつけて撮影したのが功を奏する。隣に海外出張丸出しの日本人がいたので話しかけてみる。やっぱり会社の出張でスペインに来たらしいが、一人は現地勤務だそうだ。金もらってスペインに来られるなんて羨ましい。
 帰りの薄暗い道で知らない男がスペイン語で声を掛けてきたが、立ち止まることなくスルーする。やっぱり夜の一人歩きは何かありそうな気がした。

 明日はカタルーニャの聖地、モンセラットに行く。

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