おまけ  7月18日(月)  Santiago - マドリッド

 今日からはサンチャゴ巡礼おまけの部になる。折角スペインくんだりまでやってきたのだから、少しは観光も入れたくなると言うものだ。まずはスペインの首都マドリッドへ移動。

 サンティアゴ・デ・コンポステラのアルベルゲ・メノール。早朝の電車移動が控えている割りに良く寝られたほうだ。ベッドからフェイスブックに返事を書いて6時半に起きだす。昨日立てた予定より少し早めの7時ちょっとにメノールを出発し、サンチャゴ駅には7:23到着。7:38になったら電光掲示板にマドリッド行きが4番ホームと表示される。地下道を歩いて名ばかりと思われるようなセキュリティを通過して4番ホームへ。電車はちゃんと時間通りにやってきた。今回も出発のアナウンスもベルも鳴ることなしに音もなく出発する。いつものことだがまたドキッとする。ホームでのんびりしていて、たまには乗りっぱぐれてしまう人がいるんじゃなかろうか。

 マドリッド行きの電車は満席だった。当日券で乗ろうとするのは危険と感じる。来年もコンポステラからマドリッドに行くようなら早めにチケットは買っておくのが良さそうだと覚えておこう。オウレンセで停車した後、車内に吊り下げられているテレビでアニメを流しだした。同時に車掌さんがイヤホンを配りだしたが、欲しい人だけが貰っているようだ。言葉わからないし、いらない。

 車窓から赤土だらけの風景をうんざりするほど見る。来年、銀の道を歩くなら、こういう道が殆どらしいのを思い出す。日陰もないし暑そうだなぁ。イヤなら来なくちゃいいだけの話なのだが。

 細長い4本のビルがやけに目立つマドリッド・チャマルティン駅に13時過ぎに到着する。サンティアゴから約5時間か。さて、問題のアトーチャ駅への移動だが、来れば来たで事前に想像してるより何とかなるもんだ。構内をウロチョロしたら券売機があったので傍にいた係りの人に「アトーチャ?」と聞いたら券売機じゃなくて窓口で買えと言うので教えてもらった列に並んで無事にチケットをゲット。案ずるより産むが易しとはこのことだ。

 アトーチャへはセルカニアスと言う近距離電車で行くらしい。これは殆ど地下を走っているようで地下鉄と言った方が良さそうな電車だっだ。アトーチャ駅はチャマルティン駅よりはるかに大きかった。明後日はこの駅からトレドへ移動するので、その電車がどこから出るのか確認しときたいので探してみると、同じ構内だが別の駅かと思われるほど離れたところだった。ここの電光掲示板にはトレドの文字が表示されている。よし、明後日はここから出発すればいいんだと安心する。

 今晩のオスタル(安ホテルのこと)の近くにあるランドマークのプエルタ・デル・ソルへ行くための出口が分からないので、立っていた警官に教えてもらって歩いていくと大きな植物園があった。あ、これかぁ、ネットで何度も見ていた駅構内にある大きな植物園だ。ここに焼き菓子のワゴン販売があったのでマドリッド到着祝いに食べて見る事にする。これとこれとこれを1つずつと言って買ったのだが、売り子は言った倍の量をチョイスしてるが、ま、いいかなと思って支払うことにしたら、なんと目方販売で9.8ユーロもしたのでぶったまげた。そんなに高いものと知っていたらと思うが、既に袋に包んでしまったので後の祭りだ。言葉の分からない旅行者と見ると、ときどきこういうボラレ方をされるのが辛い。ま、スラレた訳じゃないからいいか。今までの田舎と違って、生き馬の目を抜くと言うマドリッドでは値段も聞かずに買わない方が良さそうだ。授業料としておこう。

 オスタルへは遠回りになってしまうが安全策を取って、三角形の2辺を行く分かり易いルートを選択する。歩いている目の前に郵便ポストから手紙類を掻きだして持ち去る人がいた。日本ならちゃんとした郵便局の格好をした人がやっている仕事だが、驚いたことにGパンの半ズボン、素足にスニーカーでTシャツの人だった。おまけにその郵便物を入れて持ち歩いている袋はレジ袋だった。えーっ、スペインってこんなラフな格好した人が大事な郵便物の収集をしているの!と驚いたので、その後姿をパチリ。いくら所変われば品変わると言っても、これは日本では有り得ないだろう。一時が万事と言うらしいから、こんなんで自分が出した郵便物がちゃんと届くのか心配になる。

 マドリッドの象徴と噂のプエルタ・デル・ソルへは問題なく辿りついたが、印刷して持ってきた地図に記入したオスタルの位置を通りの反対側と間違って記してたので迷い狂う。地元のおばちゃんに聞いたら、一緒に探してくれたけど見つからなかった。でもひょいと上を見上げたら3階のベランダに名前を書いたプレートが見つかったので歩き始めたおばちゃんを追いかけて、見つかったよと報告する。おばちゃんムチャス グラシアス。
 オスタルは建物の3階にあった。呼び鈴を押して出てきたオーナーは人の良さそうなおばちゃんだった。2泊で50ユーロだが、今回の旅で初の一人部屋だ。3坪くらいの細長い部屋で、ベッドの隙間に小さな机と椅子が置いてある程度の狭さだが、2か月以上も2段ベッドでごちゃごちゃ寝を繰り返してきた私には贅沢なくらいだ。部屋も家具もすこぶる年代物で、変に新しいホテルよりずっと趣があって良い。いかにもスペインの安ホテルという雰囲気がぷんぷんだ。

 エアコンはなくて扇風機のみ。もちろんトイレとシャワーは共同だが、ずっとこのスタイルだったのでなんの問題もない。アルベルゲじゃないから物干し場はないかと思ったが、小さなベランダにロープが渡してあったので干すことができる。ベランダに出るとオスタルを探し歩いてきた通りが眺められた。

 Maps.meの地図を頼りに小さなスーパーへ。マドリッドのスーパーにも1リットルビールやバケツ野菜などのお馴染みが置いてあったのが嬉しい。ほかに生ハム、1リットルジュース、カップめんにビスケットで8.16ユーロ。やっぱり田舎で買うより若干高めの気がする。

 部屋に戻るとデジカメが幾ら探しても見当たらないのでマジでスラレたかと思い込んだが、ベランダの扉の隅に転がっていたので一安心。バックパックから知らないうちにこぼれ落ちたらしい。治安が悪いと噂のマドリッドだから、ネットで見た盗難被害の情報が激しく頭にあったので気がつかない内にやられたか、やっぱりマドリッドは怖いなぁと思った。一時はこれまで撮った写真は諦めて、これからはタブレットのカメラで撮ろうとさえ思った。

 マドリッドでは今回2泊してからトレドへ行って、それからまた戻って2泊する作戦だ。4泊もする割にマドリッドの見所はプラド美術館、ティッセン・ボルネミッサ美術館にソフィア王妃芸術センターとスペイン広場に王宮くらいしか思いつかないので、4日後にマドリッドを再訪したときはやっぱりセゴビアに足を伸ばすのが良さそうだ。そこには世界遺産のローマ時代の水道橋とお城があるそうだから、セゴビアへの行き方もネットで調べておこう。


7月19日(火)  マドリッド2日目

 昨日の高い焼き菓子1個と持ち歩いているインスタントコーヒー、お茶、オレンジジュースで朝飯を食べた気になっておく。安宿だが部屋にはお湯を沸かせるポットが備わっているところが嬉しい。ここのオスタルにはWi-Fiが飛んでいるのでマドリッドの美術館情報を収集する。入館の仕方やシニア割引があることなど分かってとても便利。ソフィアは今日が休みだったのも分かる。

 何はともあれ、マドリッドの目玉と言えばプラド美術館だろう。昨日歩いた通りを逆に辿って朝イチで行ってみる。今朝の通りは何やら物々しい警備をしていて、テレビクルーも出張っているので何か重要なイベントでもあるようだ。ここはマドリッドの市役所なのか、入口でショットガンを構え腰にはハンドガンを持った女性警官ががっちりガードしている。とてもカッコイイので一緒に撮りたいところだが、それはさすがに追い散らされそうなので、内緒で一枚撮らせてもらおう。


 プラド美術館のオープンは10時だが、9時半に行ってみると既に20人程が列を作っている。「プラド チケット?」と確認して列に並ぶ。難しい文法なんか考えることはない、単語を並べるだけで通じてしまう。見る見るうちに沢山の人たちが後ろに付き、10時近くになると百人ほどが並んでしまった。早めにやって来て良かった。その列を目当てに物乞いのお婆さんがやって来た。裸足で汚れた足がみるからに気の毒だったが、周りの目を気にして恵んでやることができなかったのが我ながら情けなかった。写真、人の列が途切れた所が私の場所で、白いレジ袋で番取りして写真を撮りました。

 こことは別の短い列ができてきて、どうもそっちは優先チケットを持っている人の列らしい。そんなのがあったのか。何でも色んな方法があるだろうが情報不足で分からない。私たちは当日券を買う列なので、列が動き出したらゾロゾロとチケット売り場へ。パスポートを見せて66歳だよと伝えると、ムイビエンと言われて簡単に8ユーロの割引チケットをゲット出来る(通常14ユーロ)。買ったチケットを持って離れたところから館内へ入っていくようだが、前の人の後を付いていけばいいので簡単だ。

 ここは撮影禁止なのでケチ臭い気がした。でも白ばくれて数枚の有名な絵を撮ってみる。前にプラド美術館に行った人のブログでは撮影OKだったのに、いつから禁止になったんだろう?少数のマナーの悪い人のために全員が迷惑する結果か?超有名なマハの所には係員がしっかりガードしているので撮ることができなかった。着衣のマハと裸のマハの絵はひとつの部屋に並んで展示してあって、予想よりずっと大きな絵だった。この絵が描かれた背景に話題性があるのか、有名な絵なのだが絵自体はそれほどでない気がした。

 変な朝飯を食べただけで、10時に入館して飲まず食わずで2時までいる。おかげで全ての作品をくまなく見倒すことができ、自分が知っている有名どころは全て鑑賞できる。時間はまだ早いが、疲れたのでもうひとつのティッセン・ボルネミッサ美術館は止めにしてオスタルに帰ることにする。団体で行く海外ツアーと違って、唯一、時間だけは贅沢な使い方をしている。あとは言わずもがなだ。

 今回はアトーチャ駅からオスタルへの最短コースを探検しようと、昨日とは別ルートを取る。アトーチャ駅からまっすぐ伸びる、その名もアトーチャ通りと言う名前で(写真最下段緑の看板)、これがオスタルのすぐ近くまで続いているようだ。タブレットのGPSを見ながら歩いたので、問題なく辿り着くことができる。駅からオスタルへは所要25分ほどだった。明日はトレドへ行くための電車に乗るので、駅までの所要時間を確認することは重要だ。電車は時間指定座席指定なので、うっかりは許されない。乗り遅れたらチケットはパーだ。

 オスタルに戻って今回2泊分の支払いをしておく。今回は現金だが、次回の2泊分はカードで既に支払われていることを確認できたので一安心。同じオスタルだが、今回と次回の値段は違っていて、次回は2泊で52ユーロと、今回より2ユーロ高い。昨日はおばちゃんで今回はおじちゃんが応対してくれたが、夫婦して感じがいい。オスタルの廊下には日本人の泊まり客の写真が何枚も飾ってあった。私も次にマドリッドに来ることがあったら、ここに再度泊まりたいと思った。

 昨日のスーパーを探したが、オスタルの位置を逆方向に覚えていたので方向感覚が狂っていて見つけられなかった。賑やかな方に行けば何かあるだろうとしばらく歩いていくと、チェーン店の大きなスーパーDIA%があった。残念ながらここには冷えたビールはなかったがバケツ野菜は数種類が置いてあった。色々買って6.39ユーロ。オスタルの傍には穴倉みたいな小さな店があって、外から冷蔵ケースの中にビールがあるのが見えたので、買い物袋を提げながら入っていく。Mahouの1リットルが1.95ユーロと少し高めだが有難い。

 5時ころから飲み始める。自分専用の部屋で飲み食いできるなんて良いなぁと、我が身の幸運を噛みしめたい気分だ。〆には昨日買っておいたカップ麺を食べてみるが、相変わらず味が薄くて旨くない。こっちのは麺に味付けがしてないから不味いんだと思う。日本のカップ麺はどれも優秀だ。

 どうでもいいけど写真の説明:上段に湯沸かしポット、右端は巡礼証明書が入った水玉の筒、一緒に電動歯ブラシも入っている。下段、大きなのがバケツ野菜、後ろにOIKOSヨーグルト、1リットルビール、影になってるのはパン、青くて丸いのは8Pチーズ、その後ろの黒いのがカップ麺。手前は1ユーロの生ハム。全部で千円弱と激安。

 明日はアトーチャ駅からトレドを目指す。