7月22日(金) トレド - マドリッド
トレドのホテル・サンタイサベル、のんびりと8時に起床。昨日買ったボカディージョの残り半分と水で粗末な朝飯。マドリッドへ戻るための電車は12:25発なので時間はたっぷりある。途中で見物しながらふらふら歩いても1時間でトレド駅か。もう見物する予定のものはないので、ソコドベル広場で人間ウォッチングでもしていよう。9:10、お気に入りのホテルを出発する。もしトレドを再訪することがあったら絶対にこのホテルだ。
広場でコーラを買って、ちびちび飲みながらベンチに座って行き交う人をゆっくりのんびり見物して時間つぶしをする。小さな移動ワゴンを出して二人のお嬢さんが何やら始めたが、見ているとソコトレインのチケットを売っているらしいのが分かった。ソコトレインと言うのはヨーロッパのあちこちにある蒸気機関車の形をした自動車が、小さな客車を幾つも引っ張って観光させてくれるものだ。トレドの町が見渡せる有名な観光スポットの丘へもこの広場からソコトレインに乗って行くのが通常のパターンのようだ。スペインの大きな都市あちこちで目にしたが、乗ったことは一度もなくて、乗るくらいなら歩いてしまった方が早いしタダだし。
暇人なので、ここで2時間近く人間ウォッチングをしてから、昨日、偶然見つけたエスカレーターを利用して長い長い坂を降り駅に向かう。古い橋をバックにしてトレド最後の写真を撮る。来た時にも渡ったこの橋はPUENTE
DE ALCANTARA(アルカンタラ橋)と言って、日本語名みたいな橋だ。作られたのは千年以上も前のローマ時代だそうだが現在でも立派に橋の役目を果たしている。スペインを占領したモーロ人を追い出すレコンキスタの際には、幾度となく攻撃にさらされているという歴史ある橋だが壊れたような箇所は見受けられない。それとも修復したのか? 車やバスは通ることが出来ないので、もしトレドに来ることがあったら是非、徒歩で渡ってもらいたい。それと、この橋から町を見渡せる丘に行くにはこれも是非徒歩で!車を使って行くより10倍心に沁みます。
トレド駅11:20着。それでもまだ電車が出るまでには1時間もある。駅構内のバルでカフェコンレチェを飲んで暇つぶしをするが、小さなカップで1.9ユーロもした。今まで歩いてきた田舎の倍くらいの値段だ。だろーなーと思ってたのでショックはない。一緒に、ホテルで貰ったマサパンを2個食べてみる。マサパンと言うのはトレド名物のお菓子で、こんなのが日本にもあったような気がする素朴な味だ。そんなに甘くないのが良い。
日記帳の残りページがいよいよ無くなってきたので、取りあえず文字を今までの半分サイズで書いて少しでも寿命を延ばすことにする。手帳を買い足すのも何なので、そのうちどっかで白い紙を仕入れたいな。
電車は時間通りに発車する。来るときは満席だったが、帰りは乗客が少ないので隣の席は空だった。きっと、もっと遅い時間になってからマドリッドへ帰りだす人たちが大勢いるんだろうと想像する。日本からのスペインツアーでは、トレドへやって来る殆どがマドリッドからの半日オプショナルツアーなので、それは他の国でも同じような気がする。私みたいにトレドで2泊もするような観光はとても贅沢なのだ。毎日粗食だけど。
マドリッド、アトーチャ駅の目の前がソフィア王妃芸術センターだった。今まで目の前を歩いてた筈なのに気がつかなかった。でもすぐ見つかったので探す手間が省けた。チケット売り場にはシニア割引の表示がなかったので通常の8ユーロでチケットを買ったが、後で手持ちの地図を見たらちゃんとシニア割引で半額になると自分で書き込んでいた。自分で調べといたのに肝心なところで役に立たなかった、くそ。
こういうところはバックパックのような大型の荷物を持って入ることはできないので、どうなるかなと思ったら係りの人がロッカーを教えてくれた。お金を入れて利用するが帰りには入れたコインは戻るそうだ。これは良心的でありがたい。
ここはガラス張りの外付けエレベーターに乗って美術館の中に入って行くらしい。大きな美術館なので、その観覧順序は自分で選択しなくちゃならないので、やっぱり一番上の4階まで行ってから順番に下に下りる方式を採用する。ピカソやダリの国なので、4階3階は抽象画ばっかりだった。世の中の何が気に入らなくてこんな絵を描くのだろうと言う物ばかりで1つも面白くなかった。2階まで降りてきたら、やっとお目当てのピカソのゲルニカがあった。教室2つ分ほどの大きな部屋を丸々この絵一枚の為に使っていて、それに見合う巨大な絵だった。絵の両脇に見張りが目を光らせているので、誰も写真を撮ることができない。
北の道を歩いたとき、ゲルニカの町でこの絵のレプリカ壁画を見てきたが、あれの数倍はあるんじゃなかろうか。ゲルニカで見たのが本物のサイズかと思ってたが全然違ってた。と言うことで、本物の写真は撮れないのでゲルニカの町で撮ったレプリカです。ドイツのアッラ、ヤナ母娘が撮ってくれました。本物はこれの倍じゃなくて6倍ほどもあって、見た誰もがその大きさに驚くだろう。
有名な絵には見張りが張りついていて撮れないので、名もないようなオブジェを撮ってみる。有名美術館に展示してあるので決して無名じゃないんだろけど。
この階にはダリの絵もたくさんあって、ダリの絵は同じ抽象画でも面白いものだった。ダリ本人を写した写真はいつも突拍子もないおどけた写真ばかり見ていたので奇人だと思っていたが、絵はとても繊細なものだったのでダリのファンになった。
ダリとピカソの絵は知っているのが何枚もあったので堪能した気になる。入場料8ユーロは良しとする。ソフィアには2時間?もっと居たかな。一人なのでどこへ行っても気に入れば居たいだけいられるのが嬉しい。
3日前と同じオスタルへは4時半に到着する。オーナーのおっちゃんが「ミチオ ケタール(どうだい?)」と出迎えてくれる。なんだか嬉しい、こちらからも「ただいま」と言いたいようだがスペイン語の「ただいま」を知らないのでオラーしか言えない。
慣れたところで前と同じ部屋がいいなと思っていたが、0号室と言う別の部屋に通される。でもこの部屋にはエアコンがあった!おまけに室内には不似合いな、取ってくっつけたようなシャワーも置かれている。部屋自体の広さは前と同じなので、シャワーのお陰で狭い部屋が一層狭く感じる。この二つがあるので前回より2泊で2ユーロ高かったのか!?それとも2回目だから良い部屋にしてくれたのか?ま、エアコンはありがたいから2ユーロ高いのは良しとしよう。早速へんなシャワーを浴びて洗濯。この部屋のベランダにはロープが渡してなかったので、ロッカーからハンガーを出してベランダに干すことにする。
スーパーがまた見つからない!少し付近をウロチョロしても見覚えのある所が出てこないので、頭の中にあった地図を180度回転させて反対方面に歩いて行ったらそれが正解だった。いつものように色々買って7.26ユーロ。このスーパーにはやっぱり冷えたビールは置いてなかったので、前回と同じくオスタル近くの雑貨屋に寄って1リットルのMahouを買って帰る。今日の野菜は袋入りの安物なのでドレッシングが付属してないから、バーガーキングから持ち帰った袋入りのケチャップを掛けて食べることにする。これもまたイケル。いつも同じメニューじゃ飽きるので、今回はチーズを少し冒険してみる。蓋にはパンに塗る絵が描いてあるゴルゴンゾーラで、これは思いのほかイケタ。
7月23日(土) マドリッド2日目 セゴビアへ
チーズのことをフェイスブックに書いたら、それはゴルゴンゾーラ・ムースと言うのだと友達のSさんが教えてくれた。このチーズはイケルので覚えておこう。スペインで食べられるレパートリーが増えて嬉しい。今朝もそのムースを塗ったパンを食べて朝飯にする。ほかにはコーヒーとオレンジジュース。
今日はマドリッドから97キロ離れたセゴビア観光に行く。セゴビアにはローマ時代の水道橋とディズニーのシンデレラ城のモデルとなった城があり、どちらも世界遺産らしい。セゴビアへの行き方もネットで一生けん命に調べたから大丈夫(だろう)。
8時過ぎに近くのソル駅から地下鉄に乗って、セゴビアへのバスが出ると言うモンクロア駅へ1.5ユーロ。地下鉄を降りると、ネットで見たとおり「Segovia」の表示があり、それに従い歩いていくとバスチケット販売所「La
Sepulvedana」の窓口があった。これもネットで見たとおりだ。ネットはありがたいね。セゴビア往復で14.24ユーロで、買うときに帰りの乗車時間も決めてくれと言うので、3時にしとけばゆっくり観光できるだろうと、3時をお願いする。係りも私も殆どが身振り手振り。
別の係りがチケット売り場から出てきて、子豚の丸焼きがどうとかセールスしだした。何を言い出すんだこの人は、レジ袋を提げたこの貧乏臭いスタイルを見ればそんな高級料理を食べるかどうかは分かりそうなものなのに。
さて、チケットが買えたので次のバスが出る9時発の09番乗車口の列に並んでみる。時間になって順番に乗り込み出したら、入り口で運転手に「これは9:45のチケットだ」と言われてしまう。そっか、頭になかったが言われてみれば確かにチケットにはそう打刻されている。希望した9時発は既に売り切れてしまったので、必然的に次の9:45を売ってくれたらしいのが分かる。
9時発のバスが行ってしまったので今度は列の先頭になった。1番乗りなら好きな席が選べそうなので、これも悪くないかな。時間になって乗り込み、運転手のすぐ後ろの席に座り正面も見える一番良い席をゲットする。
客が乗り込むときには運転手が一人一人チケットをチェックしているのを上から見ていると、その中の数人は私がやったのと同じような間違いをして、次のバスへと回されているのが見える。やっぱりやるよなーと思いながら見物していると、最後に乗った二人は座る席が無いと運転手に言い出した。チケットを売るときには定員ぴったりで売っている筈なので、誰かが時間と違うチケットで乗り込んだらしい。運転手の他にも係りがやってきて、すでに乗り込んでしまっている乗客のチケットを前と後ろから再度チェックし始めた。しょーがないなぁとチケットを用意していると、後ろの方で問題のある人が見つかったようで、チケットチェックは中止される。中国人と思われる若い女性が二人、バツが悪そうな顔をして下ろされた。運転手のチェックをどうやってかい潜ったのだろう。そう言えば運転手の隙を突いて乗り込んだ人がいたようなのを思い出した。また中国人かよと思ったが、実際にはどこの国だか分からない。でも日本人でないのは確か。正規のチケットを持った二人も無事に乗り込み、一路バスはセゴビアへ向けて出発。
セゴビアまではずっと高速道路を走ったので快適で速い。市内に入ってきたら、いきなり遠くのほうにお目当ての水道橋が見えてきた。あ、もう見えた!バスを降りたらあれを目指して歩いていけばいいんだと気楽になる。バスを降りた所で、道路の反対側にある帰りのバス停の位置を確認し、更に忘れてもいいように写真でも撮っておく。添乗員もガイドもいない一人旅ではこういうのが結構大事だ。
セゴビアは一大観光地だった。観光客がうじゃうじゃいる。目玉はローマ時代の水道橋の立派なのが世界遺産で、少し前までは実際に使用されていたというから驚きだ。目の前で水道橋を見てみると石が精巧に詰まれており、セメントや鉄筋もない時代によくこれだけの物を作ったものだと舌を巻く。来るまでは知らなかったが、水道橋の上まで上がることができてその様子をくまなく見ることが出来る。こんな立派な世界遺産なのに見るのも触るのも無料なのが気に入った。私はこういう所にやってきたときは、触っていいものには触って写真を撮ることにしている。手の日焼けが凄い。毎日スティックを握って歩いていたので、そこだけは白いままだ。
水道橋の上から奥へと続く道があったので少し歩いてみたり、反対側にも足を運んで水道橋を堪能する。観光ではパスポートなどの貴重品はポケットがいっぱい付いたベストに仕舞って持ち歩くのだが、暑い時期なので最近はそのベストごと2重にしたレジ袋に入れて持ち歩いている。このスタイルは結構気に入っていて、最近はどこへ行くにもこのスタイルだ。全財産がレジ袋に入っているとは誰も思わないだろう。どう見てもスーパーからの買い物帰りで金のない観光客だ。
セゴビアのもうひとつの世界遺産、白雪姫のモデルになった城のアルカサルへ向かうことにする。水道橋から城まではお土産屋やバルなどがずっと続いていて、観光客が列をなして歩いているので探す必要がない。みんなが行くほうに付いていくと途中にカテドラルがあった。でもここは有料だったので入らない。カテドラル、もういっぱい見ちゃってるし、どこも似たか寄ったかだろう。
アルカサルのチケット売り場は城から少し離れた所にあって、レストランもやっている大きなものだった。売り場のメニューに65の数字が見えたのでシニア割引があるのが分かった。パスポートを一緒に出して「66歳だよ」と告げると、パスポートなんて見もしないで「ムイビエン」と言われて2.5ユーロのチケットを簡単にゲットできる。シニア割引とてもありがたい。城は残念ながら修理中で、一部は覆いが掛かっていた。
スペインで本格的な城に入るのはこれが初めてかな?観光用にちゃんと整備されてるし、映画の中に出てくるような雰囲気が漂っていて、これは中々見ごたえがあった。大きなベランダから見える周りの赤茶けた風景は、これぞスペインという雰囲気が充満していた。武器庫というところにあった中世の甲冑が珍しいので触っていたら、どっかのツアーガイドに注意されてしまった。触ってはいけなかったのか。何でも適当な国だから、そんな規制はないのかと思った。
一通り見終わって出口に向かっていくと、そこから別方向の塔へ行くことができるらしい。でも、私の買ったチケットはそういうオプションがないと思ったが、ダメ元で通ろうとしたらダメだった。やっぱりね。
また水道橋まで戻ってから、バス停を目指す。帰りのバスは3時の予約だが、早めの1時間前に戻って何か食べることにする。バス停前のバルに好物のポテトサラダがあったので、それとビールを飲んだら8ユーロも取られた。北の道を歩いているときにホテル付属のレストランで食べた巡礼者用メニューでは、このポテトサラダと同じものが大きな皿に載って3倍くらい出てきて、更にワインがデカンタで、メインが肉料理にプリンまでついて同じ8ユーロだったので、もっとずっと安いと思ったが、ここも観光地なのでこんなもんなのか。そうは言ってもまたボラレタ気分になる。(写真:左が今回のバル、右北の道のレストラン。この違いって)
帰りのバスでは居眠りが出て、着いたところで乗客に起こされる。ここからオスタルのあるプエルタ・デル・ソルまで同じ地下鉄値段で行くことも出来るが、半分道中のスペイン広場駅で降りる。ここにはドンキホーテとサンチョパンサの像があるそうだから。やって来てみたら、更に作者のセルバンテスの大きな像も後方にあった。中国人の家族が交代で像の台座の上まで登って万歳しながら写真を撮っている。またかよ中国人。おでこに「国の恥」って書いてあるぞ。
このすぐ近くにはスペイン王宮がある。ここも凄い。中に入るのは有料なので、ま、いっかなと入らないでおく。でも、柵の外からでも王宮の雰囲気はそこそこ味わえるので悪くは無い。沢山の観光客も王宮隣にある大きな教会の石段に腰掛けてくつろいでいる。ここは日陰になっているので絶好のお休みスポットだ。前の広場で観光客が貸し出しセグウェイに乗っている。日本では許可されないセグウェイなので一度やってみたいが一人で乗っても面白くないだろう。
ソルを目指して歩いていくと、同じ道を沢山の観光客が歩いている。この道はソルと王宮を結ぶ道なので、観光ルートになっているようだ。マドリッドの中心、ソル(puerta del sol)は今日も沢山の人たちでごった返している。もう見るところもないので、ソルから伸びる横道まで足を延ばしてみたら、何組ものパフォーマーが色んなことをやっている。一緒に記念写真を撮らせてチップを貰うのだろうから、写真は撮らずに見るだけにしておく。パフォーマーではないが、自分で作った空き缶細工を路上にj並べて売っている人に目が留まる。この人はサリドマイド被害者のように両手が短い人だった。その手でアルミの空き缶を器用に細工してバッチや玩具を作り、それを道行く人に持ち帰ってもらいチップを貰って生計を立てているようだ。物乞いではなく、自分の力で生活しようとしているその人に共感し、持っている小銭をジャラジャラと空き缶の中に入れてみたが、後になって並べてある空き缶バッチをひとつ貰った方が良かったかなと少し反省した。自分の力で生きようとしている人なら物乞いのように扱われるのは自尊心がキズつくだろう。
今日も夕飯にはいつものスーパーでカット野菜その他を買い、これもいつものようにオスタル傍の雑貨屋で1リットルビールを買って帰る。今日も中々良い一日だった。明日はいよいよ最後の地、バルセロナだ。
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