プリミティボの道5 Bodenaya - Campiello  欠けた

6月23日
 今朝のアルベルゲはお洒落に音楽と共に起床。元気なオーナーは朝からテンションが高い。みんなで朝飯を食べさせてもらう。昨夜から差し歯が不穏な動きをしていたので注意していたが、朝食を食べてる時にあっけなく欠けてしまう。2年前にもスペインで差し歯が取れてしまったことがあって、そのときは粉々になったので捨ててしまったが、今回は綺麗に折れたので、これは大事に持って帰って友達の歯医者さんで治してもらうことにする。でもまだ1ヶ月近くスペインにいるのに前歯が欠けた間抜け面で過ごさなくちゃならないのかー。

 ドナティーボには15ユーロを入れさせて貰って、7時40に雨仕様でスタートする。幸いなことにすぐ霧雨程度に変わってくれたので、このまま上がってくれると嬉しい。アルベルゲから少し歩くと昨日昼飯を食べた帰りに歩いた舗装路に出るが、巡礼路はここから脇道へと誘導している。でも、昨日の食事をしたバルで巡礼路と合流してるのが分かっているので、ここは舗装路を行ってしまおう。雨なのでなるべく泥道は歩きたくない。

※お役立ち情報
 ドナティーボのアルベルゲで高額紙幣しかないと入れるときに困ります。お釣りを貰うのも何なんで、5や10の小額紙幣を常に持っていることをお勧めします。


 昨日のバルの辺りがこの村の中心らしく、スーパーもあった。朝早いがこの店は開いていたので、少し買い物していくことにする。早朝なのに何人もの人たちが買い物しているので、出勤前に食べ物の調達をしているのかと想像する。行動食用にチョコパンとホワイトチョコレートを購入。店を出たところで昨日一緒だった体格のいいスペインおじさんと会ったので、何となく一緒に歩くことになった。おじさんと言っても年齢は私より10歳くらい下か。

 巡礼路は舗装路を外れて村の路地に誘導されて行く。と、一軒の家から中型犬3匹が躍り出て勢い良く吠え掛かってきた。数歩前を歩いていたスペインおじさんはその姿に立ちすくんでしまった。行く手を阻まれて立ち往生、おじさんピーンチ。しかし元の舗装路に戻るには大分あるし、村の一本道なので脇へ逃げることもできない。これを進むしかないのはすぐ分かった私はスティックで威嚇しながら意味もなく口笛を吹きながら進むと3匹は後ずさりをしながら吠えている。おじさんは「おぉ」と感嘆の声を漏らして私の後ろに続き、犬を通り越すと今度はそそくさと私の前に移動する。犬は後ろを見せると危険なので後退しながらその場を抜ける。犬は縄張りを10mも離れれば追ってはこないので一件落着。おじさんはスペイン語で何やら言っているが、ペロ、ペロと言う単語が入っているので犬の扱いが旨いとでも言っているようだ。ペロは犬のことだから。

 スペインでは犬の放し飼いが本当に多く、村では犬を良く飼っている。私といれば犬に脅された時に助かると思ったのか、これ以降、ずっと二人で歩くことになった。実は私も歩いている中で一番のストレスがこの犬っころとの対峙だ。吠え掛かる犬には全て石をぶつけてやりたくなるが、いまだ実行したことはない。

 次の山村には立派な無料休憩所があった。へー、こんな小さな村なのに凄いなと感心する。スタンプも用意してあったので押させてもらおう。自販機も複数あるし温かい飲み物の自販機まである。それにテーブルもあってとても綺麗。宿が見つからずニッチもサッチも行かなくなった夕暮れにこんなのがあったら泊まってしまいたくなるような建物だ。

 10時40分。次のTineoは大きな町だった。ここにもアルベルゲはあるが、予定どおりスルー。おじさんがバルに寄りたいと言うので付き合ってコラカオ1.3ユーロを頼み持参のチョコパンを食べておく。コラカオは暖かい牛乳に小袋入りのココアの粉が皿に載せられて出るのが一般的だが、ここんちは大きなココア缶がスプーンと共に一緒に出された。日本的には小袋で出されてもどうかと思うが、ここんちはそれを上回る手抜きに感心する。おじさんはトスターダ(トースト)を頼んだが、半分にカットしたコッペパンに塩とオリーブオイルの瓶が一緒に出てきた。うーむ、手抜きもここまで来ると潔いな。でもここで休憩と腹ごしらえが出来たのでよかった。目的のCampiello村まではあと12.2kmなので残り3時間と言ったところか。時間としては理想的だ。

 次にあった村はたった一軒の家だけだった。その家の一歩手前に村を示す立て看があって、その家を過ぎた所に村の出口を示す斜線付きの立て看があった。どういう経緯でこうなったのか知りたいところだ。この辺りから前の晩で一緒だったスペイン人カップルも列に加わって4人で歩くことになる。

 Campielloの村が見えてきた。村に入ると早速2軒のアルベルゲが目に入る。勿論私が目指すのは安い公営だ。大きなバル兼スーパーが受付らしいので半公営というところか。こういう時にスペイン人と一緒だと何かと具合がいい。宿代は5ユーロで巡礼定食が10ユーロで7時からと、おじさんが通訳してくれるが、全てスペイン語って通訳になるんかな。合計15ユーロのお支払い。

 おじさんと歩いている途中で話したことを受付のセニョーラにも言っているのが分かる。この人はセビージャから銀の道を歩き通してからプリミティボの道を歩いていると伝えているので、おじさんは私の代わりに自慢してくれてるようだった。

 日記帳におじさんの名前を書いて貰う。Juan Prefaciファンと読むらしい。若干肥満型なので、膝を痛めているらしく長い急坂を下りるときには狭い道なのにジグザグで下っていたな。

 ベッドルームは少し離れた別棟だった。トイレ・シャワー室は3つもあるしベッドの間隔も広くてとても綺麗。巨大な洗濯乾燥機があるが、これはきっと業務用。とても気に入ったがキッチンも食事するスペースもないのが玉に瑕だ。皿もコップもないのを確認してスーパーから生ハムと1リットルビールを買って来る。ソファーに座ってビールはラッパ飲みでハムは手づかみ。

 大きなドイツのおっちゃんがチェックインしてきた。結局この大きなアルベルゲには私とスペイン人3人とドイツ人一人の5人だけだった。昨日のアルベルゲに泊まった5人の内、4人がここに再集合できたが、歌姫のモンセラットは手前の大きな町Tineoに泊まったらしいのをスペインカップルが教えてくれる。残念、また歌を聞きたかったな。

 7時過ぎたので泊まった全員がバルに移動して夕食の始まり。まず出てきたのは大鍋に入ったスープ。これって私が良くやるインスタントスープとそっくりじゃん。スパゲッティの麺をぶつ切りにしたのが沢山入っている。私はこれを作るときには大して煮込むことはしないが、この麺はくたくたになっていたので、ここまで煮込んで食べるものなのかと新発見した。店でインスタントを使うのはコスト的に無理だろうから、スペインにはこういうスープが定番であるのかも知れない。

 2皿目に出てきたのは、またも大きなフライパンに入ったパエージャ。米なのが嬉しい。もう2皿目なので後はないだろうと腹いっぱい食べる。でも日本のオジヤの方が何倍も旨い。これで終わりかと思ったら、まだ次があった。牛肉とポテトが大きなフライパンに載ってどっさり出てきたが、もう腹いっぱいになってるので1かけらの肉と少しのポテトを食べてみただけで勿体なかった。デザートはドイツ人だけヨーグルトを食べているが、私のデザートを誰かが勝手にケーキと注文したらしく、大皿に盛られたケーキにも手をつけることができなかった。ヨーグルトが食べたかったよ。食べ残すなんて節約旅行者の私にはあるまじき行為。

 食後にスーパーの方に行ってファンタオレンジと干しブドウを一袋買う。干しブドウは2ユーロもしたらしい。ファンタオレンジは、ここではコーラより旨いので良く買うようになってる。

 今日は上り下りの多い行程だったが24kmを歩き切った万歳。高低表によると、明日はまた上り下りが激しそうなので16.2km先のPola de Allandeを目指すことにしよう。


プリミティボの道6へつづく