プリミティボの道6  Campiello - Pola de Allande
              スペイングループ登場
6月24日
 濃霧の中7時半にスタートするも、ほかのみんなは巡礼路と反対の方に歩き出した。え?自分が思ってたのと違うなぁと付いていくと昨日のバルで朝飯を食べるようだ。言葉が分からないから、そんな手筈になっているとは知らなかった。コラカオのグランデ2ユーロを頼み、昨日買っておいたパンを食べる。それで結局スタートは7時50とゆっくり目に。相変わらず今朝も雨支度での出発となる。

 次にあった村のバルにも3人は寄っていくそうなので、自分は一人で先へ進むことにする。山が深くなった頃、山肌にそってU字型に曲がった先に巡礼者らしい人影が目に入る。どうやら二人組みが休んでいるようだ。近づいて行くと、インディラ、アストンだった。数日振りの再会なのでお互いに喜びあう。インディラはいつも愛想が良く、相方のアストンは優しそうでいつもインディラを気遣っているようだ。インディラの英語は激しい鼻濁音なので、いつも「ら」行しか聞こえてこないがスペイン語で話すよりは通じるので楽しい。一緒に写真を撮ってからは二人の後を付いていくことにする。


 相変わらず上り下りの激しい山道が続いている。インディラは若干メタボ気味なので大変そうだが頑張って歩いている。荷物が大きすぎるんじゃなかろうか、体の3分の1位はありそうなバックパックを背負っている。それでもきっとアストンが重い荷物を持っているのだろうと想像するが無理をして膝を壊さなくちゃいいが。少し距離を置いて後ろをずっと付いていく。歩くのが鈍いインディラに合わせていくとこちらも楽だし。

 山の中から巡礼路は分岐していて、片方は更に山深い道になるオスピタレスを回るコースだが、歩いた人のブログではこっちに行って懲りたと書かれていたのでもちろん別のコースを選択する。歩くのがしんどそうなインディラ達も考えは同じようだ。

 次の村にポツンとあったバルでコラカオとトマトで1.5ユーロ。店の中にはほんの少しだけ食料を売っていた。インディラ達二人も寄って来て休憩とエネルギー補給をしている。バルのおばちゃんは田舎の素朴な人らしく感じが良かった。Pola de Allandeのアルベルゲまでは巡礼路なら5kmと教わるが、上り下りが多かったので1時間20分も掛かってしまった。時速3キロと言うところか。

 山間の小さな町に入ってくると、すぐアルベルゲの看板が掛かっていて、脇道に入ると建物はすぐ見つかった。山の傾斜を利用して建てたのか、高い石積みの上にアルベルゲが乗っている。12時20に到着。扉は開いているが管理人はいなかった。このスタイルが一番好きだ。インディラ達は次のアルベルゲを目指すと言っていたが、上り下りで疲れたらしく、今日はここに泊まることにしたようだ。顔なじみがいればこっちも嬉しい。インディラが下段ベッドでアストンはいつもその上段を取っている。下段が他に空いていてもそのスタイルなので、決め事にしてるのかな。

 シャワーはしたけど洗濯はしないでおく。昨日洗ったのがまだ乾いてないので着る物が無くなってしまうから。生乾きの洗濯物だけ窓の外に飛び出た物干しに掛けておく。この物干しは日本にはないタイプで、スペインではたまに見かける。大きな蜘蛛の巣みたいな形で中心に支柱があり、ぐるぐる回しながら洗濯物を引っ掛ける方式。中心付近に掛けるのは窓から体を乗り出さないと掛けられないのでちょっと危険だ。ここから落ちたら怪我では済まない。良くて病院送り悪くちゃその先だ。

 町の中心に向かって10分ほど歩いた所にある小さなスーパーへ行って、2.5ユーロもする白ワインを買ってみる。アルコール度数15パーセントなので日本酒並なのが気に入った。ビンに入った豆があったので、これでスープを作ろう。他に6個入りカステラにクックテイルと言うナッツ1袋で8.43ユーロ。やっぱりワインが高かった。と言っても日本円なら400円もしないが、普段買っているのは1リットル1ユーロのワインなので、これでも高望みの方だわって想い出の九十九里浜か。

 瓶詰めの豆をアルベルゲに置いてあったインスタントスープで温める。日本で食べる白い豆と同じ味がしたので同じ種類なのかも知れない。これに砂糖を加えれば完璧な甘い煮豆になる気がする。同じテーブルで食べだしたインディラ達にワインを勧めてみたが、今日は缶ビールと言うことでノーサンキューだった。ボトル半分も飲むと少し酔ってきた感じがしてきて気持ちがいい。全部は飲みきれないので蓋をして取っておき、後で誰かに飲ませてやろうかな。

 3時頃、スペイン人の団体7,8人がどやどやと入ってくる。ひとしきりベッドを品定めしてから私の所にやって来て何か言っている。カマと言う単語が聞こえてくるのでベッドについて何か言っているようだ。ぴんと来ないでいると、完全メタボのおっちゃんが自分のバックパックの中に入っている機械を見せてきた。蛇腹の太いホースが見えたので、どうも電動の吸入器のようだ。このおっちゃんは喘息持ちなのか。そのためのコンセントが私のベッドにしか付いていなかったので、ベッドを交換して欲しいらしい。そういうことなら勿論OKだ。バレバレ(オッケーのこと)と言いながら気持ちよく交換してやることにする。私が取っていたベッドの隣と交換するらしく、そこの下段に陣取っていたメンバーのセニョーラも移動し始めた。上段ベッドとでなく等価交換のつもりらしい。喘息のおっちゃんは両手を合わせて拝む仕草をしているので、スペインにも日本みたいな感謝の表し方があったんだなと思った。自分の子供にも喘息の子がいたと身振りだけで伝えてみるが理解できたのかな?


 一番先に到着したメリットで、コンセントがあって右チャック寝袋が使いやすいベッドを確保した積もりだったが、そういう事情なら譲るのが当然だろう。巡礼の道の魅力はそこなんだし。と書いていたところに歌姫のモンセラットが到着してきた。おっ、今晩も歌ってくれないかなと密かに期待する。モンセラットもスペイン人の団体がいたのでテンションが上がっているようだ。スペインにいるんだから当然だが、どこに行っても同じスペイン人がいるのは羨ましい。4月の25日に成田を出発して、もう2ヶ月間日本人に一人も会ってない。

 夕方近くなったらインディラ達がWi-Fiしに行こうと誘ってくるので付いて行く。バルでギャエレに教わったティント・デ・デラードを注文したら通じなくて、ファンタと言ったら通じる。出てきたのはちゃんと赤ワインにファンタが入ったものだった。小さなコップだったので、たったの0.5ユーロ。これだって一応アルコール飲料なのに、それが60円ほどで飲めるスペインは素晴らしいな。インディラ達にモンセラットがユーチューブで歌っている所を見せてあげる。

 暫くバルで遊んでアルベルゲに戻ったら、モンセラット達が食事中だったので、半分残った白ワインを勧めたら飲んでくれた。遅くチェックインして来たバルセロナから来たというおじさんにも勧めたら、これはワインではなく何とかだと言っているが、何を説明しているのかさっぱり分からん。それでアルコール度数がワインより高めだったのかなと想像する。甘いものと一緒に飲む物らしく、おじさんはベッドルームに戻って胡桃や甘い豆を持ってきて、モンセラットも小さく切った菓子を持ってきてくれる。こうやって飲むのか。でもやっぱりショッパイ物の方がツマミには合うな。


プリミティボの道7へつづく