プリミティボの道13 Guntin -Melide  プルポの町メリデ

7月1日
 狭ーいキッチンで手持ちのインスタントコーヒーを入れてパンだけ喰って朝飯。6時20にスタートする。今日もマックラ。泊まったアルベルゲの屋根が異様に光っていたので写真を撮ってみる。月も出ていないし高い木に囲まれているので桎梏(シッコク)の闇だ。その中で光る屋根とのコントラストが薄気味悪い。ヘッドランプを装着して歩き始める。遠くで犬が吠えているのが気になる。


 1時間黙々と歩いて先にスタートしていたスペイン家族と長身のスペインおばちゃんに追いつく。おばちゃんが私を撮ったのでこちらからもおばちゃんを撮り返すと両手を上げてポーズを取ってくれる。本当に足が長くて後ろから見ると凄い美人に見える。その先に二人のおばちゃんが歩いていたので歩きながら少しお喋り。今まで見たことない二人なのでサンチャゴまで100km手前のルーゴがスタートなのかも知れないな。二人とも割と計装だが一人のおばちゃんはミニスカートだった。

 アスセイシャツと言う村に入ったら、農家としか見えない扉の中にテーブルがあって巡礼が座っていた。あれ?これバルなんか。休みたかったし何か飲みたかったので入って行くと中はちゃんしたバルになっていた。ガラス張りで区切られていてユニークだしむしろお洒落。カウンターにスタンプがあったので押させてもらう。珍しくカフェコンレチェを頼んで手持ちの残りカステラを食べる。ここでエネルギー補給できたので、この後はメリデまで一直線かな。

 今日もフランスの夫婦4人組と再会する。バルで休んでいる間に抜かれたようだ。相変わらず愛想が良く今回も「ミッシャーン」と声をかけてくれる。今日のご婦人方はミニスカートになってる。背の低いご婦人と長身の男性との身長差は30cmはありそうだ。歩幅の違いは相当なもんだろう。後ろから見ていると、やっぱりチョコマカとせわしなく歩くことでストローク差を補っている。そんな歩き方をしている女性の疲労は男性の倍くらいになるんじゃないのかな。あの状態で数百キロを歩いて来たのかと思うと、ちょっと可哀そうな気がした。彼らはメリデから4キロ先の村まで行くそうなのでメリデは素通りか。名物のタコは食べないのかな?写真を撮ってバイバイする。

 一度見たら忘れない特徴のある山を越えて12時20、メリデの街に到着。先を歩いていたおばちゃん二人は私営アルベルゲに予約してあるのか、巡礼路から外れてどっかに行ってしまった。2年前にもメリデには泊まったことがあるので、プリミティボの道からメリデの街へはどこから入ってくるのだろうと興味津々だったが、思ってもいなかった方から入ってきた。それは前に来たときに訪問したことのある有名と思われる教会隣の道で、イーデンやイタリア組とお茶したすぐ近くだった。ここからなら目をつぶっても公営アルベルゲに行くことができる。まぁ実際には目は開けてるけど。

 アルベルゲのオープンは1時なので、その前に名物のプルポ屋でも探しておこうと賑やかな通りに行ってみる。2年前に訪れたときはここでプルポを食べられなかったので、今回は必ず食べてやるのだ。見覚えのある町の中心にあるロータリーに出たら、巡礼が本当にうじゃうじゃいる。店はMaps.meに登録してあるので、ここでGPSを出して方向を確認する。巡礼路からは外れた方にあるようだ。少し歩きそうなのでアルベルゲのオープンの時間が近くなって来ているから取りあえず戻っておこう。12時50に戻ったら大柄で長髪ひげもじゃのスペイン人おじさんが待っていた。お互いに自己紹介してみたが初めて聞く名前なのでマッハで忘れる。サンジャンをスタートしてここまで1ヶ月ちょっと歩いてきたようだ。

 オスピタレラは時間前にやって来たがすぐには開けてくれなかった。でも5分遅れでチェックイン開始。割り振られたベッドは1階のA113。入り口側の下段なので満足だが、チェックイン順に構わずベッドを割り振っているようで下段に空きがいっぱいあるのに下上下上と端から割り振っている。殆どの人は下段が好きなのにこれじゃぁ納得いかないんじゃないのかな。おまけにここは強制Wベッド並びなので更に微妙だ。カップルやグループなら並びたいだろうにお構いなしに上下上下。

 早速シャワーへ直行。混んでいる時は手っ取り早く済ますのだが、ここは男性用だけで5つもシャワーブースがあるのに私しか使ってないので、シャワー浴びながら洗濯ものんびりさせてもらう。お湯だと汚れが良く落ちるってことだし。物干し場も裏に大きなのがあるのを覚えている。

 今日はスーパーは後回しにして、まずは有名なプルポ屋Ezequiel(エセキエルかな)へと行って見る。そしたら入り口にモンセラットとスペイングループの一人に今朝のミニスカートのおばちゃん達までいたので片言で少しお喋りする。モンセラット達はここから14km歩いてアルスアを目指すそうだ。モンセラットはこないだスペイングループと一緒にズルしたので、冗談で「アウトブス?」と聞いてみたら、ちゃんと歩くそうだ。(笑)あと3,4時間は掛かるだろから到着は5時か6時になるか。この店の前に居たってことは、みんなも名物プルポを食べたようだ。パワー回復できて元気にアルスアに到着することだろう。アルスアの次は距離的にきっとペドロウソに泊まるだろうから、自分も明日はウソまで頑張って歩いてみようかな。ここからなら32kmなので歩ける距離だ。

 有名なプルポ屋なので入ってみたら大賑わいだった。長いテーブルが沢山あって当然のことながらみんな相席。若いカップルが東洋人に興味を持ったのか、何故かここに座ってと言ってくる。巡礼ならノータイムで一緒に座るが普通の観光客なのでちょっと離れた同じテーブルに座ることにする。そしたらまた一緒にどうかとご招待されたので、そこまで言うんだったらと隣に移動する。

 二人とも英語を話すので、私の片言英語でそこそこ会話を楽しむことができる。男のほうが日本に行った事があって日本ファンだそうだ。日本語の単語も幾つも披露してくれる。それで私に興味を持ったのか。サンチャゴから北に約100km行ったア・コルーニャの人で女性のほうはイタリアのベネチアだそうだが今は同じコルーニャに住んでいるそうだ。

 ところで二人が飲んでいたカップに注目!これはガリシア独特のワイン・グラスで陶器製。小さめのご飯茶碗にみえる。日本ならさしずめ茶碗酒と言ったところか。

 男性はプロのコックさんで、日本に行ったときに撮影した、お好み焼き、ラーメン、寿司、天丼の写真がスマホにいっぱい保存してあった。二人はプルポの他に肉料理も頼んでいたので一切れ味見をさせてくれる。最後にスペインの強いリキュールを1杯おごってくれて、これは昨年アナが飲ませてくれたのと同じ甘い酒だった。1時間ほど一緒にお喋りしてバイバイする。巡礼でないスペイン人とこんなに長く話すのは珍しい。

 支払いをしようと通りかかった店員さんを捕まえると、何を食べたのか聞いている。客の自己申告でいいらしい。プルポとセルベッサと言ったら10ユーロでその場でお支払い。とても大雑把。

 帰りがてらスーパー・フロイスで1リットルワイン、スナック菓子、ヨーグルト4、ムースチーズ、6個入りコッペパン、ファンタオレンジ、インスタントの玉ねぎスープ、石鹸1個。明日は日曜日で買い物ができないからと食料を多めに確保しておく。それでも6ユーロと非常に安い。

 アルベルゲに戻る途中の教会に入っていったらイタリアのアウレイリオとオランダのピーターがいた。二人ともこれからアルスアまで歩いて、明日はペドロウソ泊まりらしい。じゃぁこの人達とも明日会えるかな?ここからはフランス人の道を歩いてきた人がほとんどなので、プリミティボからやって来た巡礼に会えるのはとても貴重。

 夕方、プルポ屋にWi-Fiを利用しに行く。店内に入らなくても入り口で利用できるから一回パスワードを設定してしまえば店を出ても使い続けることができるので便利。広場ではステージが作られていて大型オートバイがしこたま集合している。広場周辺だけでなく道路まで沢山はみ出している。その数500台はありそうだ。銀の道ではべスパの集まりがあったし、ここでも似たようなイベントをやっているんだな。そこへフリアンとスペインの親子がやって来た。3人家族だが奥さんは残して男だけでオートバイを見に来たらしい。さっそく合流してオートバイを見て歩く。何百台も並んでいるが、その9割は日本製と思われる。たまにBMWやドカティがあるがハーレーは本当に少数派。

 4人でバルに入っていく。今日こそはと先にさっさと全員分の支払いをしてしまう。どうだい、こうすれば奢り好きのフリアンも手が出せないだろう。3人はカウンターに置きっぱなしになっている皿に載ったヒマワリの種を盛んに食べまくっている。前歯でパチンと割って中身を食べたら殻は床に捨て放題。スペインのバルでは床がこうして散らかっているバルほど評判がいいとのことだが、日本人にはやっぱり抵抗がある。私にもやれと言うのでチャレンジしたが、面倒くさいので試しにやってみただけ。

 2軒目には既にお馴染みになったプルポ屋Ezequielに入った。ここは親子の父親の方が払ってくれたので今回はフリアンの出番はなかった。今日のアルベルゲはフリアンだけ私営に入って我々は同じ公営泊まりなので、ここでバイバイする。フリアンは明日私が目指すペドロウソまでは距離があるので行けないようだが、次ぐ日のモンテ・ド・ゴソまでは距離が短いので一緒になる可能性が高いかな。

 アルベルゲにはアメリカと韓国の青年がいたので交流する。アメリカ人はここでは意外と少ないが韓国人はフランス人の道には沢山いる。韓国の人は殆どが上手に英語を喋ることができるので英語への取り組み方が日本とは違うのが想像できる。言葉が通じなくても片言でも、こちらから話しかければ嫌がる巡礼は一人もいない。

 さて、寝静まったベッドルームには轟音が響き渡っていた。すぐ隣とその近くにも爆音の発生源があるようだ。とてもじゃないが寝ることが出来ないほどのステレオイビキなので、ここで悶々としてるよりキッチンで寝てしまったほうがナンボか楽だろう。寝袋を担いでキッチンの長テーブルへと移動する。寝ていると私の後に続いて誰かやって来たのが分かったが、私が二つある長テーブルの真ん中を独占していたので、その人は木製の狭い長イスに横たわってしまった。こりゃ悪いことをしたな、テーブルの端に移動して、こっちに寝られるよと適当な英語を言ってみたが平気だと言っているようだ。でもこの人は後になってからちゃんとテーブルの上に移動してきたな。


プリミティボの道14へつづく