プリミティボの道9  Grandas de Salime - A Fonsagrada
               ドミノ初体験
6月27日
 アルベルゲのキッチンでヨーグルト2、チョコパン2、ジュースで朝飯にして予定より早目の6:10にスタート。10分前にはモンセラットが一人で出発していった。スペインの夜明けは7時近い。女の子一人で真っ暗闇の中を良く行くよな。

 前の晩に一応、巡礼路は確認しておいたのだが真っ暗なので合っているかどうか不安だ。教わった道には矢印ないし。すぐあとにスペイン家族3人が続いたので一緒に歩くことにする。町の中に入ると少しの明かりがあるが、出てしまうとまた真っ暗闇。矢印探しもままならないが4人なので心強い。今日は1,050mの山越えを含む27.6km。朝から気合いが入っている。おまけに小雨が降ったり止んだり降ったり降ったりの天気なので修行してる気になる。巡礼ですけどね。


 3人家族と一緒に山登りして、1時間ほどでスペイングループ6人が泊まったらしいCastroの村に辿り着く。アルベルゲがあったが付近には店もバルもなさそうだった。泊まるには不便そうだな。そこを越えて暫く行くとアストゥリアの博物館に寄ると言うので付いて行ったが霧の中、扉は閉ざされていた。頂上付近にアストリア州とガリシア州の境目があったので州境を跨いでみんなで記念写真。そこへクロアチアから来たという女の子がやってきたので歩きながら少しお喋り。こんな霧が舞ってる山の中なのに良く女の子が一人で歩いていると感心する。来年はポルトからLa Costaの道を歩きたいそうだ。やはり銀の道やプリミティボの道を歩くような人はサンチャゴ巡礼にとりつかれてる人が多い。私も同じ道を歩きたいのだと言ってみる。本当はこの後歩く予定だったが坐骨神経痛のお陰で日程が大幅に遅れたため諦めたとは言わなかった。それだけの英語力ないし。

 家族のお父さんが、ガリシア州からは道標に付いているホタテ貝の向きが今までと逆になるんだと講釈を始めた。今までは貝の根元が進む方向で、ガリシア州は貝が開いている方がサンチャゴだと。でもこの貝の向きは必ずしもそうじゃないんだよな。ガリシア州でも貝の向きはあっちこっちに向いているのがあるので無条件に信じてはいけない。信じていいのはどこでも矢印の向きだけだ。その後、スペイン家族は巡礼路が分岐しているところで、どっちに行くか話し合いを始めたので家族とは離れて一人旅になる。

 頂上らしきところを越えると、そこからは延々と下り道になった。遠く丘の上に目的のFonsagradaの町が見えてきたが、ここからは一旦谷底に下りてまた上っていかなくてはならないようだ。それが見えているのはちょっとテンション下がる。谷に下りてからはまた巡礼路が分岐していて、矢印のある方は町の方に続いてないので、ここは矢印を無視して町方面の道を選択する。町の入り口に到達したら、今度は道がアチコチに分岐しているのでアルベルゲがどこにあるのかGPSでチェック。このまま真っ直ぐ行けばいいらしい。旅の頼れる相棒はGPS。

 そろそろアルベルゲの近くまでやってきたが、道が複雑にグネグネしていてGPSでも確認できないので町の人二人に聞いてやっと見つけることができた。二人目に聞いた所はアルベルゲのすぐ目の前だったが、それが分からないのが辛いところ。普通の家みたいに見えるので分かりづらいアルベルゲだな。ここはカンタブリコと言う名前のアルベルゲなので、カンタブリア州の何かなのだと想像する。何かって何なのかな?

 無事に私営アルベルゲに到着すると、インディラがチェックインの最中だった。インディラは膝を故障しているのでバスを利用して到着したが、相棒のアストンは一人で歩いて来て丁度今到着したようだ。銀の道で仲良くなったホセも足を怪我した奥さんのジヌはバスに乗っても自分は一人で歩いていたし、そういう拘り好きだなー。日本カミーノ・デ・サンチャゴ友の会の掲示板には「ここはALSAのバスが走っているので雨の日は利用するのがいいかと」なんて投稿があったが、何を考えているんだ。

 私営は高いので滅多に利用しないが、今日の町には公営がない。でもやっぱり私営はサービスが違っていた。部屋もキッチンもキレイで、トイレ、シャワーは3つずつもある。一人一人に布のシーツ、枕カバー、掛け布団、おまけにバスタオルが一人ずつにってホテル並み?ベッドルームは8人部屋が幾つもあって、インディラ達は昨日と同様、私の隣のベッドになった。今日もインディラが下段でアストンがその上。

 大方は文句なしのアルベルゲだが、ただ一点だけ不満なところは物干し場がないこと。洗濯・乾燥機は6台もあるけど手洗い派には干す場所がない。仕方ないので靴下だけ洗ってベッドの近くに干しておくが天気が悪いので乾くはずがない。濡れた雨合羽も干す場所がないので同じように近くに広げて置くしかない。

 買い物に出かけたら、フランスの4人組がアルベルゲを探していて今回も嬉しそうに「ミッシャ~ン」と声を掛けてくれる。4人をアルベルゲまで案内してからスーパーへ。1リットル白ワイン、豆のビン詰めとピクルスのビン詰め、トマト、パン沢山とヨーグルト4で6.5ユーロ。たまにピクルスが食べたくなるのは漬物が食べたいからなのかな。このピクルスは余り美味くなかった。ワインはまた飲みきれなかったので近くの人に残りを上げる。

 スペインの6人グループがチェックインしていたが、モンセラットが居ないので、もう一つの私営に入ったかな。この人たちは別のベッドルームになったが、広いキッチンでゲームを始めたので観戦してみることにする。二人はボードゲームだが、あとの4人は何とドミノだった。日本でドミノと言えば将棋倒し以外の発想がないが、本来はこうしてゲームをするものらしいのは知っている。テレビで一度やってるのを見たことがあるが、実際に目にするのは初めて。相手に手持ちのドミノを知られないように麻雀みたいに立てていて、用心深い人は更に両手でドミノを覆っている。麻雀は縦に立てるがドミノは駒が薄いので横に立てるようだ。

 見ていると何となくルールが分かってきた。要するに時計回りで隣の人が出したドミノの駒と同じのをくっつけるゲームのようだ。1枚の駒には両端に2種類の数があるので、くっつけた反対側と同じ数の駒をくっつけて行く。手持ちに出す駒がないとペナルティーとして山から1枚引いて自分の駒が増えるという仕組みだ。最終的に手持ちの駒がなくなった人が勝者で、それで1ゲームが終わるらしい。

 へーと思いながら見ていたら、「やれやれ」と言うので初ドミノを体験させてもらうことになった。駒を出す向きが縦だったり横向きだったりと、それはやっている中で教えてくれる。3ゲームやって、一度だけ勝利することができたので喝采を浴びる。すごく単純なゲームに見えるが、単純なものほど奥が深いんだろなと想像する。思いがけずにドミノを体験できる楽しい夜になった。今日のアルベルゲも顔なじみが沢山いるので楽しい。


プリミティボの道10へつづく