フィステラ・ムシアの道4  思いだしたお姉さん Fisterra

7月5日  日本出発から75日目
 Ceeの私営アルベルゲ。残りのサラダ、チーズにパン。それにヨーグルトとコーヒーも飲んで充実の朝飯。食料を沢山持っていると豊かな気持ちになる。アルベルゲの人たちは朝は誰も起きてこないようで、巡礼は開いている玄関から自由に出て行く。この扉って一晩中開いてた訳じゃないよな?

 7:55、出発。小雨がポツポツと降っているので時間の割に薄暗い。海岸通りに出てとりあえず隣町のコルクビオンへ。隣町と言ってもセーとは繋がっているので別の町という実感はない。今までの巡礼路は海岸通りを次の町の広場まで歩き続けたが、コルクビオンに入ったら丘の上に矢印は続いていた。すぐそこにはコルクビオンの私営アルベルゲがあった。へー、初めて見た。こんな近くにあったんだ。どうやら巡礼路を変更したってのは、このアルベルゲに導くためのような気がする。今まで通り海岸沿いの道を行った方が眺めはいいし安全だし距離も短いので巡礼路の変更は黒いものを感じる。

 また海岸沿いの広場に出て、ここは毎年歩くところとの合流点。スペイングループがバルのテラスで朝飯にしていて手を振って挨拶してくれる。小さな町の細い路地をぐねぐねと通り過ぎたら、また山の中に導かれたので、まさかMUXIAへ行く道じゃないだろなと妙な心配をするが、こっからムシアへ行くはずがない。モホン(道標)はフィステラへの残存距離を示しているので間違いないのが分かる。

 森を通り越したらグルッと廻った海岸の先にフィステラの町が見え出した。町に入りだしたので、ここがフィステラかなと思ったが違った。町の端っこをぐねぐね通り越したらまた林に入ってしまった。記憶が当てにならないのも甚だしい。

 やっと本当のフィステラの町が遠くに見え出したところで小休止。鼻を怪我してるおじさんもやって来たので写真を撮りっこする。下のほうで賑やかな声がしてるので覗いてみると、舗装路が下を走っており、そこには数人のおばちゃん巡礼が椅子のベンチセットに座ってかしましくしていた。舗装路を歩く手もあるのか、て言うか、この下に舗装路があることを覗きこんで初めて知ったよ。海に近い分あっちの方が眺めがいいかな?

 海水浴場が現れてきたのでやっとフィステラの端っこに到達。砂浜を歩く手もあるが靴の中に砂が入ってしまいそうなので大人しく海岸から少し離れた巡礼路を歩く。2年前に Ana とビールを飲んだ海岸沿いのバルを通り越して十字架のある高台で小休止。鼻を怪我したおじさんもやって来たので一緒に写真を撮る。昨日はずっと傷バンを貼っていたが、今日は何もしてないので傷が良く見える。出来物のようでちょっと痛そうだ。

 10:58、フィステラの公営アルベルゲ到着。オープンは1時なので2時間待ちだ。おじさんもすぐやってくるが2時間待ちが分かるとどっかに行ってしまった。自分は特にやることもないのでバックパックを扉の前に置いて近くでブラブラしながら待つことにする。明日歩くMUXIAへの道を確認しようと扉の前でタブレットを開いたら勝手にネットに繋がる。ポンテセセルスのお姉ちゃんが親切に設定してくれたパスワードが生きていて接続してくれたようだ。暇つぶしに持ってこい。

 12時過ぎたらおじさんが戻ってきて後ろに並ぶ。スペインの3人組も到着してきて、私のことを「あんたが1番か?」と確認している。みんなも後ろにバックパックを並べて順番を確保しだした。その後は続々と到着してきて、みんなバックパックを整然と並べて順番を確保している。女の子が列の反対側、私のすぐ隣にバックパックを下ろしたので、スペインのおじさんが後ろに並べろと指導しているが、女の子は泊まるんじゃないからと言っているようで(想像です)バックパックもそのまま。

 チェックイン開始。もちろん私が最初だ。オスピタレラのお姉さんは過去2回受付していた人と同じ人だったので言ってみたけど覚えてないようで残念。ベッド代6ユーロで紙の枕カバーとシーツを支給される。ここのベッドルームは少し変わっていて、レセプションから小さな中庭に出て次にはパスワード付きのドアがある。ピピピと数字のボタンを押して開錠され入ることができる。それはこのドアにはレセプションを通らなくても外から直接来ることができるから。ベッドは早いもの順に好きなのを取れるので、明日はムシアまで長距離を歩くから出発準備がし易いように、窓際で光が入るベッドを選ぶ。

 壊れたので撤去されたままなのか、シャワー室には扉が無く廊下側のドアが開くと丸見えだった。男には人権がないのか!?軽くシャワー洗濯して、すぐ近くのバルへ昼飯を食べに行く。この店はリスボンでお世話になった千春さんお勧めのバルで、安くて美味しいとのこと。meson A Pedra 。 Wi-Fi パスワードはapedra20161 次に来たときのためにここに書いておく。フィステラ到達祝いに定食をお願いして、1皿目はピニエント・デ・パドロン(小さいピーマンの素揚げ)、大好物だが定食を滅多に食べないので中々食べる機会がない。2皿目には本格パエージャを頼む。好物が2つもあったのでラッキーだ。飲み物には白ワインを頼むとデカンタで出てくる。白ワインはジュースみたいで美味しい。今まで安めのプレートを食べて失敗してたけど、今回は当たり。10ユーロ以上の価値があった。デザートにエラードを頼んだらスーパーで売られてる棒アイスが出てきた。やっぱりね。ネットしながらのんびり食べさせてもらう。

 アルベルゲに戻ると受付には知らないおばちゃんが一人だけだった。一段落したのでかな。同じテーブルでランチしている女性が、どうも2度会った人に似ている。前回は2度とも髪をアップにしていたのですぐには分からなかったが、やっぱりこの人のようだ。「これあなたか?」と、タブレットに保存してある前の写真を見せたらハッキリ私を思い出してくれたようだ。また一緒に写真を撮らせてもらい二人で大笑いする。このアルベルゲは人気なのでボランティアも沢山いると思うが、同じ人に3度も会うということは、この人は地元の人だったのが分かる。アルベルゲのボランティアは世界中からやって来る元巡礼と思うが、フィステラは地元の人だけで運営しているのかも知れない。

 室内にバスの時刻表が貼られていた。明日はムシアへ行って3泊し、そこからサンチャゴまでバスで帰る予定なので時間をメモしておく「月ー金 6:45 14:30 土曜 7:30 14:30 日曜 7:30 14:30 」か。いずれにしても一日2本だけなので満席で乗れなかったらやばいな。

 暇なのでやっぱりフィステラ灯台まで行くことにする。片道3キロなので時間つぶしには持って来いか。灯台に行くのも4回目なので、まぁこんなもんかな感じでサラッと見て帰ってくる。今日は人が少なかった気がする。

 アルベルゲの玄関を入ると、こんな時間なのにまた行列が出来ている。ここフィステラではサンチャゴから全て歩いて来た人にだけ証明書が発行される。証明書はここ公営アルベルゲだけが発行するので、泊まらなくても証明書だけ貰いに来る人が後をたたないようだ。私を思い出してくれた受付のお姉さんは対応に忙しそうだが、脇を通ったら手を振って挨拶してくれたのが嬉しい。ネグレイラでワインを飲ませてあげたスペインのおっちゃんが並んでいて、私を見つけると大きな声でオーっと言いながら両手を広げてハグして来たので周りの注目を浴びることになった。

 隣のスーパーへ買出しへ。500mlの缶ビールにOIKOSヨーグルト2、オレンジジュース、チョコパン1袋で3.39ユーロ。朝飯と明日は7時間歩かなくてはならないので行動食を持ってないといけない。中間にある村のリレスにはバルがあるので、そこで補充することも可能だが、やっぱりスーパーで買っておけばいつでも食べられるし安上がりだ。

 ビールを飲んでポテチとヨーグルトを食べてみたが、やっぱり物足りないのでまたスーパーへ行って西瓜4分の1カット0.59ユーロを買ってきて食べていると、美人のお姉さんは一足先に引き上げるようで、帰り際に「See you maybe next year」と言ってくれる。もしそうなったら楽しいけど、ここは複数のボランティアが勤めているのでどうかな。受付に残ったおばちゃんに、今日は何人がやって来たのか尋ねたら、ぺらぺらと受付簿をめくって、百人以上と返事をした。想像をはるかに越える人数が歩きでフィステラまでやって来ることに驚く。

 十字架の後ろは毎回お土産に貝殻を拾っているフィステラの海岸。巡礼路は海岸線をずっと向こうの右側から続いている。

 鼻を怪我したおっさんも明日はムシアへ行くそうだ。途中のリレスのスタンプがどうのこうのと言ってるので、リレスのスタンプがないとムシアの公営アルベルゲで泊めて貰えないと言ってるようだ。まぁ経験からそんなことは無いと思うけど一応、頭に入れておこう。まだ7:40と昼間の明るさだが、明日は早起きなので貴重な睡眠導入材を飲んで寝てしまう。


フィステラ・ムシアの道5へつづく