フィステラ・ムシアの道8  サンチャゴへ Santiago de Compostera

7月9日  日本出発から79日目
 ムシア4日目、5:55に目覚める。睡眠導入剤がばっちり効いて一度も目覚めることなく朝まで寝られた。すぐ6時にセットしておいたタブレットのアラームが鳴る。キッチン備え付けのコーヒーに砂糖を入れて飲ませてもらう。

 まだ夜明け前の薄暗がりの中をバス停へ。既に30人ほどがバスを待っていた。みんな早起き。6:45発のバスが時間通りにやって来てバックパックをトランクルームに放り込んだら列に並ぶ。乗り切れない可能性を心配していたが、今日サンチャゴへ帰る人たちは手ごろな人数のようで乗車率は80パーセントほど。チケットは教わったとおり運転手から買って8ユーロ。5日掛かりでやって来たムシアから8ユーロでサンチャゴへ戻れてしまう。

 バスは幾つかの停留所に停まりながら知らない道をぐんぐん飛ばしてサンチャゴまで24キロ手前のネグレイラにも停まり、ここで数人の人が降りた。昨年ネグレイラのアルベルゲで一緒になったインチキぽい日本人おじさんはこのバスでフィステラから移動してきたのか、それって公営アルベルゲに泊まっちゃいけないパターンなんじゃないのかね?昨年、ムシアの公営アルベルゲの受付で、バスでやって来た韓国おばちゃん二人組みが宿泊を断られたのを思い出した。

 8:25、サンチャゴ郊外にある Estasion de Santiago バスターミナルに到着。ムシアから所要時間1時間半ほどですっ飛んでこられる。近くにはサンチャゴからイルン行きのバスが待機している。これに乗れば北の道( Camino del Norte )のスタート地点のイルンへ行けるのか。 Camino を一度に複数歩く場合、2本目はサンチャゴからイルンへバス一本で行けるなら候補に入れてもいい気になる。

 何度も利用したバスターミナルで、ここからリスボンへ向けて乗り込んだ時から1ヶ月以上が経過しているが、ついこないだのようだ。3階のチケット売り場へ移動してトイレを借りて日記を付けていると、若い女の子が「英語できる?」と近寄ってきた。どうやらバス代が欲しいと言っているようだが旅行者には見えない。詐欺だろう。アイドンノーであっちへ行ってもらう。変なのが来たら言葉が分からない振りをするのが一番簡単。実際、ロクに言葉分からないし。すぐ近くの人にも同じ事をやっている。

 アルベルゲ・メノールへ行く途中にパン屋があったので小さなバゲットと缶ビールで1.5ユーロ。バックパックに突っ込んでメノールにチェックイン。予約を入れてあるのですんなり2泊で28ユーロ。メノールでカードで支払うのはもしかして初めてかな?カードの読み取り機がいつもは置いてなかった気がする。残念ながらベッドルームは3階のA30.17だった。階段の上り下りが大変。今は清掃時間なのでベッドルームには入れないからキッチンへ下りて行ってパンとビールで粗末な朝飯にする。パンには薄く塩味が付いていたのでそのまま食べることができた。

 10:50、カテドラル前に来た。ミサは12時なのに既に大行列が出来ている。この時間にこの行列なんて変だな。入り口ではいちいち持ち物検査をしているのでかなり掛かりそうだ。じゃぁとカテドラル横に回ってお土産売り場から入ってしまうことにする。ここはカテドラルの出口専用で「 EXIT ONLY 」と書かれているが、前のご婦人の後に続いてすんなり入れてしまう。一応そこには見張りの男がいるが止めるのが面倒なのか通れてしまった。職務怠慢のお陰で入れたってことか。中に入るとまだガラガラ状態だった。

 ミサが終わったけど今日はボタフメイロはやらなかったな。ジャージズボンと靴下が欲しいので新市街までデカトロンを探しに行ったけど見つからなかった。ポルトガルの道からサンチャゴ新市街をカテドラルに向かって歩いてた時には見かけたんだがな。一度歩いただけなので記憶がかなり曖昧。これ以上旧市街から離れると戻るのが怪しいので適当な所まで探しに行って戻ることにする。普通のスポーツ屋なら数件あるので 50% OFF とデカデカと張り出された店に入って行くも値段を見たらジャージズボンが5,60ユーロと高くて手が出ない。ダメならサンチャゴで買うのは諦めて、次のマドリッドでデカトロン見つけられるかな?

 二人のマリア像のある公園に戻ったら公園地下にトイレがあるのを見つける。ヨーロッパには滅多に公衆トイレがないので、どんななのか見ておこうと降りて行くと危なそうな男が所在なさそうに立っていた。先に下りて行った普通の男がいたから良かったけど、もし一人だけで入って行ったら何か危険があったのかな?やっぱり地下ってのはなるべく立ち入らないのが身のためだ。

 旧市街に戻って、いつもの Froiz で買い物。バケツ野菜、クリームチーズ、小さなバゲットパンにちょっと良さそうな1リットル白ワイン1.85ユーロ。まぁ私のちょっと良いはこの程度だ。トマト2、セブンアップ、ヨーグルトと間違って買ってしまったゼリー2個で合計7.1ユーロ。バケツ野菜はいつも2.49ユーロの安い方を買っているが、今日のはトッピングにパスタ、チーズ、鳥肉が入っているので嬉しい。

 メノールの食堂で飲み食いしながらタブレットを見ていたら、国際交流協会つながりのKさんがオンラインだったので文字チャットをする。Kさんは現在ヨーロッパに来ていて、グラーツと言うところからゼメリング鉄道でウィーンに向かっている最中だった。それでスペインの時間帯でもオンラインだったのか。

 日本人がいた!アルルの道を歩いて来たというSさん57歳。Caminoとか四国遍路の話などを2時間もお喋りして楽しい時間を共有する。Sさんは個室を取っているとのこと。個室かぁ、一度も利用したことないけどどんなんだろうな。1泊17ユーロだそうなので、私の大部屋より3ユーロ高いだけだ。そんなにハードル高くないから一度くらい試してみたいもんだ。Sさん下戸だそうだが、話が弾んで1リットルを一人で飲みきってしまう。

 後ろのテーブルに10人くらいの高校生グループがいて、夕食の時間が始まった。一人一人が大皿にちんまりと盛られた食べ物を貰っては席に付いている。私がいつも食べる量と比べて3分の1ほどしか載ってない。あんなんで育ち盛りが足りるんだろうかと心配になるほど。皿の上には小さなパン2切れとチョリソーに青野菜が少々しか載っていないのだ。欧米人の朝食は凄く少ないのは知っているが、今は夕食だよ。嘘みたいだ。それに比べたら私は食べすぎなんか!?子供なので酒は勿論飲まないけど、食事と一緒にテーブルに載っているのはコップに入った水だけ。ジュースやお茶さえ飲ませてもらえないようだ。子供によっては自腹でコーラを飲める子もいるが、どんだけ質素なんだよ。でも、食べ終わった子はおかわりができるようで、空になった皿を持って三々五々おかわりしにキッチンへ行きだしたので保護者じゃないけど少しホッとする。そりゃそうだよな、あんな量で育ち盛りが足りるはずない。

 団体の若者は調子ずくとやかましいので嫌いだが、このグループは先生もいるし統制が取れている。話し掛けたらアメリカはシカゴからやって来たそうだ。へー、スペインの高校生は良くこういう団体巡礼をやるけど、アメリカからはるばる来た高校生を見るのは初めてだ。シカゴで知っていると言えばアルカポネだけなので、それを言ったら何故か受ける。かまいだしたら乗ってきて楽しいひと時になった。騒がしい奴らと思っても、こちらから話し掛けると楽しい奴らになるので先入観は持たない方がいいだろう。

 またSさんがやって来てポルトガルの道とか四国遍路の話になる。まだ若くて仕事を持っているのに良く巡礼に出られましたねと聞いたら、自営なので休みは自由になるらしい。だよね。
※日本人は検索でヒットする可能性があるので許可を貰ってない人は顔・名前とも伏せてます。

 ベッドルームに戻ったら、この部屋は西日がガンガン当たる外れ部屋だった。でも自分のベッドは窓がないところだったので運良く陽が当たってなかった。不幸中の幸い。今晩は寝苦しい夜になるかと諦めていたら、夜になったら涼しい風が入るようになった。誰かがドアにサンダルを挟んで開け放し状態にしたお陰で風が通るようになっていた。サンダルの人に感謝だ。


フィステラ・ムシアの道これで完結
次からは「おまけ」を少しだけ