フランス人の道2   ハムのおばちゃん

5月11日 歩き18日目
 6時45分起床。フランス人の道に合流して2日目だ。すでにキッチンのテーブルには朝食の用意が出来ていた。果物やハム・チーズこそないがパンと飲み物、マーガリンにジャムは沢山あるので期待以上だ。歩くためのエネルギー補給だからといっぱい食べさせて貰う。さっさと食べ終えたボビーには先に行ってもらい、自分は7時35にスタート。

 フランス人の道はこの先、十数日後に通過する町で北の道とプリミティボの道の2本と合流する。北の道はアルスアで、プリミティボの道はメリデで合流だ。どちらも一昨年、昨年で合流後に歩いたことがあるが、今回はフランス人の道を Sahagún から Santiago 迄の369kmを歩くので、この辺りは3年ぶりだ。もっと記憶しているかと思ったがさっぱり覚えていなかった。1時間歩いたところで草原の中にポツンと教会があって、やっと覚えている場所が現れたので写真を撮っておく。ここのベンチで靴まで脱いで一休みしてからまた歩き出す。長めに休む場合はなるべく靴から靴下まで脱いで足を乾かすようにした方が身のためだ。

 10時半、エルブルゴラネロ村に入った。ここで私よりずっと早く出発していたオーストラリアのつるぴか兄弟に追いつく。兄が足を痛めているのでやっぱりかなり歩くのが遅い。足が良くないのでまだ10時半だけどこの村のアルベルゲに泊まるそうだ。日程に余裕があるなら無理しない方がいいよ。

 3年前に泊まった村だが、その時は巡礼路を見失い少し迷ってアルベルゲに到着したことがあった。でも今回は巡礼路通りに歩いたら公営アルベルゲの前に出たので、前は単純に矢印を見落としただけだったようだ。3年前はアルベルゲのオープン待ち時間に近くのティエンダでビールを買って飲んだことがあって、この店で初めて塊の生ハムをスライスする現場に出会えたのに感激して、その様子をカメラに撮らせてもらったことがあった。そのティエンダで今日はヨーグルト2とKASのオレンジジュースを買い求める。(KASはファンタとそっくりの炭酸ジュースでとても美味い)。

  そうだ!と思いついて、店の外に立てかけておいたバックパックからカメラを取り出して「4年前に生ハムを切っている所を写真に撮った」と身振り手振りで伝えてみたら、首を縦に振って「覚えているよ」というポーズをしてくれたので嬉しくなった。そんなことをお願いする巡礼も珍しいんだろう。今回も写真をお願いすると気持ちよくオーケーしてもらえる。でも4年前でなくて考えたら3年前だったな。

 ヨーグルトとジュースは店の前にあるベンチに座って平らげる。コーラもファンタもバルで飲むと1.5ユーロほど取られるが、店で買えば3分の1で済んでしまうので良いタイミングで店があると嬉しくなる。さて出発しようかと公営アルベルゲの方を見たら、足を痛めた兄弟の他にもう数人の巡礼がオープンを待っていた。多分1時にオープンだから、まだ2時間は待つだろな。

 まっすぐで平らで物凄く退屈な道を歩き続ける。20数人の巡礼をブッコ抜いて1時半、Reliegos 村に到着。沢山の巡礼がバルのテラス席にたむろしている前を通って今晩の宿、公営アルベルゲに到着。小さな村だけどバルも私営アルベルゲも複数あって、まさに巡礼によって成り立っているような村だ。公営アルベルゲのおっちゃんオスピタレロはとてもフレンドリーだったので和風マリアカードを進呈する。今まで泊まった日本人の書き込みノートを盛んに見せてくれる。その中にブログで読んだことがある aya という女の子のコメントを見つけたので写真を撮ってみるが本人かどうかは分からない。

 シエスタの時間が迫っているので、おっちゃんに店の場所を教えて貰い買い物に出かけていく。1リットルビール、トマト、小さなパンと大きなクロワッサン、16Pチーズと生ハムを5枚切って貰って9.14ユーロ。毎日同じような物を買っているので大よその値段は分かっている。今回はちょっとボラレタ気がするな。もやもやもや。

 シャワー、洗濯してから2階のキッチンで一人宴会の始まり。一日で最良の時間だ。塊をスライスして貰う生ハムはパックしてある生ハムよりコクがある気がする。その代わりに一番外側は硬くなってしまって食べられない。まぁこれが自然なんだろう。

 この村に泊まると言ってたボビーが来ていないな。早く到着したので次の村まで進んでしまったかな?まぁまたすぐ会えるだろうからどっちでもいいが。でも3時になったらやってきた。どこで何をして遅れたんだろう。ヒゲや頭を剃っていたような事を言ってるな。ボビーも安い公営に泊まるのかと思ってたが近くの私営にチェックインしたそうだ。代わりに昨日のアルベルゲで一緒だったフランスおばちゃんがやって来た。ここはABとベッドルームがあるが、男女別にはしないで取り合えずBから一杯にするようだ。

 最初にチェックインしていたドイツの巨漢が盛んに咳き込んで止まないでいる。メタボだからイビキもかきそうだ。咳とイビキじゃ夜はうるさそうだな。気の毒でもあるし、持ってる咳止めを上げたら何も言わずに手にとって口に含んだ。その後も何も言わないのでよっぽど無口のようだ。まぁ色んなのがいるわいな。薬は一発で利いたようだ。

 近くにいたメガネの女の子に話しかけたらとてもフレンドリー。その友達の大柄女性もフレンドリーで二人とも英語をよく話せるので楽しく交流できる。と言っても私の英語は片言なので難しい話はできないが、わいわいやってるだけで楽しい。小柄なメガネちゃんはマリアナで大柄の方がイレーネ、二人ともイタリアのお嬢さんだった。イレーネはフェイスブックをやってるのですぐ友達つながりになった。日本に来たこともあるそうで、そこでも話が盛り上がる。「キョート、トーキョー、ヒロシマ」とか片言での交流だが楽しい。相撲を見たり富士山にも上ったそうだ。私は相撲なんか直接見たことないよ。

 公営アルベルゲなのでご多分に漏れずWi-Fiがない。昨日もWi-Fiがなかったのでネットがしたくて近くのバルに出かけていく。ここに日本語を喋る韓国のおばちゃんがやって来た。ありがたや、20日振りに日本語で会話できる。何故か韓国の人で日本語を喋れる人がたまにいるのは何でだろう?

 マドリッドの道では最初の9日間はたった一人で歩き続け、サアグンに着くまでの17日間で出会った巡礼は全部で10人にも満たなかった。でも今日フランス人の道に居た巡礼は軽く60人を超えただろう。どのくらいマドリッドの道がマイナーだかこれで分かって貰えると思う。マドリッドの道を考えている人は良く考えた方がいいですよ。


フランス人の道3につづく