フランス人の道3   大都市レオン

5月12日 歩き19日目
 5時半に起床。まだ誰も起きてこない。大きなキッチンに移動してコーヒー、クロワッサン、ミニロシアケーキにヨーグルト3個を食べて朝飯とする。時間がたっぷりあるのでワセリンをたっぷり塗ってのんびりと出発準備をする。今日は大都市レオンに到達する。昨日、ボビーはレオンを6km通り過ぎた小さい町のアルベルゲに泊まるのを提案していたが、レオンまで27kmもあるんだからレオンでいいや。

 まだ薄暗い7時に出発する。強風が横から吹き付けていてとても寒い。軍手を出したかったがバックパックの一番底に入れたのを思い出して諦める。合羽のフードを被ってひたすら歩き続ける。暖かいのが飲みたいなと思っていたら、しばらく歩いた先にバルを発見し暖かいコラカオで体を温めることが出来る。兄ちゃんは親切だったが1.5ユーロと少し高めだった。レオンが近いからかな?ここんちのWi-Fiを使ってメールのチェックをしておく。休んでいる前を何人もの巡礼が通り過ぎていく。

 Mansilla de las Mulas に入ったら人のブログで良く見かける「もうぐったり」の石像があった。ここだったのか。3年前にも見たはずだけど百パーセント忘れていたよ。もっと大きな町、レオンなんかにあるものと思い込んでいた。

 そろそろレオンが近くなってきた上り坂でフーフー言ってた婆ちゃん二人に話しかけてみる。見たところ70台半ばに見えて、メタボの方はかなりバテているようだ。二人はイタリアからやって来た姉妹だった。イタリア人と分かると必ず「はじめまして」のイタリア語を言ってみる。昨年仕入れたイタリア語だが、これを言うと全員が嬉しそうな顔をしてくれる魔法の言葉だ。イタリア人はだいたい陽気なので言葉は通じなくても楽しい。それとイタリア人あるあるで、相手がイタリア語を話せないと知っててもべらべらとイタリア語で喋り続ける。この二人もそうだった。

 坂を下って行くと特徴のある青い大きな陸橋が現れてきた。おー、レオン手前の大陸橋だ。あれ、でも今日は陸橋の入り口に幅広の赤白テープが幾重にも巻きつけてあって進入禁止になっている。張り紙もしてあったので巡礼路が変更になったことが分かる。へーと立ち止まっているとさっきの姉妹もやってきて、また陽気に何か言っているが状況から何を言っているのか何となく想像がつく。60代に見える元気な妹の方は両手をパタパタと羽ばたく真似をしながらやって来た、どこまで陽気なんだ。まぁ仕方ないので矢印にしたがって歩き出す。新しい巡礼路はレオンの町へは直接向かわないでぐんぐんと山の方を目指していたが、しばらく行くと左方向へ曲がる道があって、ここから急坂を下ってレオンに入っていくようだ。まぁ矢印はちゃんと続いているので迷うこともない。

 27キロ歩いてフランス人の道最大の都市レオンに到着した。ん?ブルゴスとどっちが大きいだろう。まぁ二つとも大都市です。一度来ているし矢印もしっかり導いてくれたので迷うことなく公営アルベルゲを目指すことができる。見覚えのある旧市街に入って、そろそろアルベルゲだと思った所に明らかに迷っていると分かるメタボの男巡礼を目にする。「アルベルゲ?」と一声掛けたところ、「そうそう」と言う顔をしたので「こっちこっち」と案内してあげる。そこから一本角を曲ればもうアルベルゲだが迷っている時は1キロ先も10m先も同じように不安なのが分かる。受付前には行列が出来ていて、その中にちゃっかり並んでいるボビーを発見する。レオンは通り越そうと提案していたボビーだが、歩いてみたらレオンが調度良かったようだ。

 相変わらず薄暗くてすし詰めのレオンのベッドルーム。でも公営にしては珍しくWi-Fiがあったな。前にもあったかどうかはすっかり忘れてたが、Wi-Fiがあるのは素晴らしい。きっとWi-Fiの需要が多いのであちこちの公営アルベルゲでも設置が進んでいるのかも知れない。シャワー、洗濯したらボビーが物干し場を探していたので塀の影になって見つけにくい物干し場に連れてったげる。

 買い物に行く前にキッチンに何があるか確認。電子レンジはあるがコンロはないな。食器類は問題ないようだ。ベッド数の割に食べるスペースは広くなく、長いテーブルが1本どーんとあるだけだ。よっしゃ食べるには問題ない。3年前に利用した近くのティエンダは店じまいしたのか開いてなかった。まぁ大都市なんだから歩いていれば見つかるだろうとカテドラル方面に歩いていく。途中、骨董市をやってたので面白いので覗いてみるが勿論、買う気はさらさらない。テレビの何でも鑑定団を思い出す。こんな所で買ったのが鑑定したらお宝になったりするんかなー。でもちょっと見、みんなガラクタに見える。カテドラルは3年前に入ったので外から写真だけ撮ってみる。金取るし。

 スーパーで500ミリ缶ビールにバケツ野菜、スープの素、インスタントコーヒー10袋入り、大きくて焼きたてのパンにヨーグルト4、チョリソーとボビーに上げようとノンアルコールビールを1缶買う。こんなに買っても7.58ユーロなので、やっぱり昨日の9ユーロ以上の代金はボラレたと確信する。くそ。

 帰り道、途中で話したイタリア婆ちゃん姉妹がアルベルゲが見つからず、探し疲れて立ち往生(座り込んでたけど)してたので連れてってあげようと歩き出したはいいが、自分も道が分からなくなっていたことに気づく。でも地元の人に教えてもらったら見覚えのある通りに出られたので一件落着。早速キッチンで昼夜兼用のごはんにする。隣にコリアンが座ったのでちょっとお喋り。コリアンは大体がフレンドリーだ。

 庭に出たら日本人が3人もいた。やっぱりフランス人の道には日本人がいるんだな。これからも時々日本人と出会える予感がする。せめて1週間に一人でいいから日本人と会って日本語でお喋りしたい。きっとそれはストレス発散になると思うんだよな。日本人、欧米人に限らず、だいたい誰もがどこから出発したのか聞いてくる。フランス人の道を歩く大半がフランス側のサンジャンをスタートしているので、マドリッドスタートと言うととても珍しがられる。第一、マドリッドの道を知らない人が殆どなのでどんな道なのかいちいち紹介することになる。

 6時に隣の修道院に行ってシスター達の夕の祈りに参加させてもらう。でも巡礼は私の他にたった数人しか参加してなかったな。3年前はもっとずっと居た覚えがあるのだが。途中、一般席の親子が前に進み出て、あれなんだろなと思っていたら、どうやら赤ん坊の洗礼式だった。目出たいものが見られて良かった。

 カラーン、カラーンと大きな鐘の音がベッドルームに響き渡る。時間は9時。そういえば夜に何かイベントがあるような事を聞かされてたな。半強制的に隣の教会にゾロゾロと移動させられて、これから巡礼のための祝別式があるようだ。だから修道院の夕の祈りが少なかったのかも知れない。各自、自国語で書かれた紙を渡されているが、日本語はなかった。だろうね。何をやってるのか分からないが何となくは想像できる。きっと巡礼についてありがたい祈りの言葉を言ってるんだろう。ここではそれしかないし。

 メガネっ子のマリアナがいたので、同じイタリアの婆ちゃん姉妹を紹介したらみんなで嬉しそうにイタリア語でお喋りを始めた。自国語でお喋りできるっていいよね。


フランス人の道4へつづく