フランス人の道4   ここんとこ安上がり

5月13日 歩き20日目
 レオンの巨大アルベルゲ。5:50、部屋が突然明るくなる。オスピタレロが一斉に部屋の明かりを点けて回っているのだ。昨晩は9時に鐘の音で移動させられたし、なんか収容所みたい。できればこういう巨大アルベルゲは避けて小さいアルベルゲを泊まり歩きたいが、距離の関係でそうも言ってらんない。

 アルベルゲの片隅にはバックパックが山積みになっていた。みんなどこそこのアルベルゲまで運んでもらうための荷札が取り付けてある。3年前にこの道を歩いた時にはついぞ見かけなかった荷物運びサービスが大繁盛のようだ。サンチャゴまで100キロ地点のサリアから歩き始める人たちは軽装の人が多いが、今では遠く離れたこんな所でも荷物運びサービスのお陰で軽装の人をよく見かけるようになった。ちなみにフランス人の道以外では巡礼が少ないのでこの手のサービスは成り立たない。。

 そそくさと準備をして1時間後に出発。まだ町は暗く静まり返っている。ファルマシア(薬局)の電光掲示板には気温は3度と表示されている。寒いはずだよ。毎日朝は長袖ポロシャツの上に合羽を着用しての出発だ。今日は半ズボンの上にジャージズボンを履くと暖かいことに気づく。以後、このスタイルが朝の定番となる。歩いていて次第に暑くなってきたら簡単に半ズボンに変身可能。軍手もはめているので完璧。

 暫く歩くと五つ星の最高級パラドールの登場。きっと1泊200ユーロくらいかな。5ユーロの公営アルベルゲなら40泊分だよ。日本人の巡礼ブログでたまに利用する人がいるが、私には夢のまた夢。まぁ泊まりたいと思わないんだから夢でもないか。貧乏育ちだから贅沢には興味が無いので都合がいい。みんな憧れのパラドールなのか、この前で記念写真を撮っているな。

 そろそろ町はずれが近くなった所に超ロング歩道橋の出現。一度みたら忘れない、まるで天まで届く梯子のようだ。ここまで長くする必要があるのか謎だ。日本なら予算を少なくして効率よく渡れる歩道橋を考えるだろうから、こんな長い歩道橋は絶対に掛けないが、スペインではやたらと長い歩道橋が珍しくない。きっと効率より歩行者に優しい視点に立っているのかも知れない。

 8:35、次の町にあったバルでコラカオを頼み、持ち歩いているパンを一緒に食べる。コラカオ2ユーロと目っ茶高い。やっぱり大都市の近くは鬼門だ。また歩いて行くと今度は通りにログハウス風の簡易販売所があった。まだ出来たてのほやほやな感じがする。メロコトン(桃か)のジュース1ユーロを買う。ここんちは良心的な価格だった。トイレもあるので巡礼がみんな寄って行く。

 歩いていると町の通りが緩い上り坂で道幅が広く見覚えのあることに気づく。えーと、確かこの辺りに無料で菓子や水をくれる家があったよなと思い出すと、記憶は正しく確かにそれは現れた。3年前は窓の下にテーブルが置かれていたが、今回はちょっと離れた所に移動していて水は置いてなかった。すぐ側で畑を耕していたおっちゃんがオーナーで、スタンプを押してって3年前と同じような調子で声をかけてきた。あぁやって巡礼者の反応を楽しむのが生甲斐になっているのかな。

 3年前に泊まったビジャダンゴスのアルベルゲ前を通り越して San Martin del Camino のアルベルゲに1時到着。レオンから6時間掛かった。出発がいつも早いボビーが先着していた。長期間一緒に歩いたボビーがいると安心するものがある。

 シエスタの時間が迫っていたので、ティエンダの場所を聞いてまずは食料の買出しに行く。今日も寒かったのでスープを作ることにする。勿論キッチンに何があるかは調査済みだ。卵6個にジャガ芋と玉葱、トマトと1リットルビールを仕入れる。チョリソーにチーズ、パンは昨日の残りがあるので今日の買い物は抑えめ。帰ってきて早速スープを作り始めるが、ここには塩がなかったので薄味のスープとなる。塩は有るところには大きいのが何袋も有るのに。

 今日の費用は宿代含めても全部で12.5ユーロ(1,600円ほど)だけ。ここんとこ公営アルベルゲを泊まり歩けているのでとても安く上がっていて、およそ毎日15ユーロ程度で収まっている。この調子で節約が続けば最後に総費用を集計するのが楽しみだ。

 大事にしていた右手親指の欠けてぐらぐらしていた部分が取れてしまった。でも自然に取れたので痛くないので良かった。これが肉まで食い込んで取れることを警戒していたのだ。爪が弱くなったのか時々端が欠けてしまう。指のささくれも良く出るので足にワセリンを塗ったついでに爪や指にも刷り込むようにしているが、効果があるのか無いのか分からない。

 明日の準備をしているときに歩数計がないことに気づく。あれー、どこに行っちゃたんだろう。いつもはバックパックのベルトに取り付けているが何処にも見つからない。歩数は分からなくてもいいのだが、時計機能が付属しているので、それがないと困る。腕時計は重たいから毎回この歩数計が頼りなのだ。タブレットを出せば時間は分かるが、それは面倒。どこ行っちゃたかなーとバックパックの中を全部出して探しても見つからない。もしかしたらチェックインしたレセプションでポロリしちゃったかな?でももうレセプションは閉められてオスピタレラも帰ってしまったので入ることが出来ない。入れないとあの中にあるような気がしてならない。こういう時は可能性がない所まで探すのが肝要だ。こんな所に入る筈がないと思ったが、ハンドロシステム(背中に入れる水タンク)を入れておく背中のポケットも調べてみたら、タンクを入れておくレジ袋の中に落ちていた。何かの拍子にポロリと入ってしまったようだ。良かった、これが無いと困るのだ。これにて一件落着。

 夕方になったらバシャバシャと音を立てて雨が降ってきた。明日の朝までには止んでくれることを祈りながら眠りにつく。


フランス人の道5につづく