フランス人の道10 アルベルゲ寿司 5月19日 歩き26日目 同室の小林さんは真っ暗な6時に出発していったが、私はいつものように明るくなり始めた7時前に出発。今日はトラバデロ村のアルベルゲSUSIを目指す。何でかと言うと、ネット情報によるとここんちの家庭料理が素晴らしいと書かれていたから。SUSIって寿司かな?家庭料理って寿司のこと?もしかして日本人経営のアルベルゲ?今から期待が膨らむ。 今日は途中から道は二手に分かれる。一本は山の中に入って行き、もうひとつはこのまま舗装路を歩き続ける。今の足では舗装路を選択するのが賢明だ。私の前を一人のソロ女性が歩き出したが、ほとんどの人たちは山の道を選んだ。女性は快適に歩くので、ぴょこたんと歩く私との距離はぐんぐんと開いていく。でも何故か暫く経ってから後ろからやって来たな。なんで?話してみるとアメリカからやって来たお嬢さんでミシェルと言った。ミシェルか、大天使ミカエル、男ならマイケルだろう。ビートルズの歌でもお馴染みなのですぐ名前を覚えられた。昨年、日本に行ったそうなので片言英語で盛り上がる。日本に行った事のある欧米人は想像よりずっといる。 2時間歩いてVillafranca del Bierzo に到着。ここには許しの門という名所がある。サンチャゴ巡礼が今よりずっと命がけだった中世の時代、これからオ・セブレイロ(セブドイロだったかな?)の難所に向かわなければならない巡礼に、ここまで到達すればサンチャゴまで行かなくてもオッケーとの許可が当時の教皇から下されたそうだ(確かそう)。「ココまでで許す」で許しの門か。 ※お役立ち情報 写真は許しの門ではなく、ただの城のようです。許しの門は普通の教会脇にあるので知らないと見落としてしまいますが、巡礼路沿いにあります。 すぐやって来たミシェルと写真の撮りっこをする。ミシェルはここでコーヒー休憩にすると言って自分も誘われるが、鈍いので先に進むことにする。どうせまた会うだろうと思ったが、ミシェルとはこれ切り会うことはなかった。 粗食が続いてるので何か食べたいなー。店がないかなーと道の両側を見ながら歩いていると、運良く町を出るところに小さなスーパーが店開きしてたので缶ビールにオイコスヨーグルト、オレンジで2.41ユーロを買って隣のベンチで手持ちのパンと一緒に食べる。朝飯にビール、日本ならやらないがここはスペイン。加えて旅行中(巡礼だけど)なので朝でも昼でもビールは飲んでいいのだ。安いし。 町外れからはまた巡礼路は2本に分かれる。1つは山の上を歩き景色はグーだが最初に急角度の上りがある。もうひとつは川沿いのなだらかな舗装路。3年前に山コースを歩いたし、足も痛いので当然川沿いのイージーウェーを選択。川沿いの道は徐々に高度を上げているようだが、ゆるい上り坂の方が足の痛みが軽減される。緩い上り大好き。逆に、下りは痛みが増す。ここで韓国の団体に出会った。聞いたら総勢22名の大巡礼団。いつにも増してコリアンが多い巡礼路となり、間に挟まれて歩くような展開に。ちょっとやだな。 処方して貰った痛み止めは効くのが遅く持続時間が短めな気がしてきた。箱に書いてあるスペイン語を読んだら「イブプロフェン」と読めるので、テレビで宣伝してる薬と同じようだ。日本から持参の痛み止めも持っているので、そっちを試してみようかな。処方された薬が効き目を発するのはどうやら服用してから2時間くらい掛かる気がする。朝起きてから飲んだんじゃ痛いまま歩き出さなくてはならないようだ。どうしようかな。 その後2時間半歩いて12時ちょいに目的地 Trabadelo 村の私営アルベルゲ SUSI に到着。看板には Albergue SUSI じゃなくて CASA SUSI となってるんだな。カサはアルベルゲよりランクが上の宿だが、料金が同じなら名前なんか何でもいいや。チェックインは13時なので、その前に足を冷やしたいと伝えたら近くの川を紹介してくれる。畑の細い道を伝って日陰になった川に出る。幅10mの川で雪解け水かと思えるくらいとても冷たい。冷たすぎて長い時間入れとけないので出したり入れたり20分ほど冷やしたので足はキンキン。 川の反対側、ここから離れた橋の下に羊の群れが現れて押し合いへし合いしている。ばっかだなー、おっこちるぞ。牧羊犬もお目付けで付いて来ている。しばらくしたらその牧羊犬が羊をおっぽり出して自分の正面に現れてこちらをじっと見ている。大きな川が間にあるので心配はないが、どうやら見慣れない人間がいたので警戒してるらしい。仕事熱心なんだな。白黒のブチで毛長種。むかし家で飼っていたクロと良く似ているので、まさかクロの生まれ変わりが私を覚えててやって来たんじゃないよなと、現実味のないことを妄想した。 今回初の私営アルベルゲ。ベッド5ユーロ、夕食10ユーロと私営にしては格安。でも朝食は4ユーロと高めなのでそれは止めといた。ベッドルームはご覧のように石つくりの部屋に平ベッドが快適に並んでいる。キャッホーだ。 SUSI はスージーと読むそうで寿司ではなかった。スージーはおかみさんの名前。それを言ったら笑われる。雑貨屋から缶ビール2とジュース、チョコパン一袋を買って来る。ビール以外は明日の朝食用だ。全部で4ユーロと少し。山の中なので若干高いようだが納得の値段だ。ちなみにアルベルゲで売っている缶ビールも銘柄によっては雑貨屋と同じ値段だった。良心的~。夕飯は7時半と遅いので、それまでビールと手持ちのチーズ、豆で繋ぐことにする。 外のテーブルで飲んでいるのだが、同じテーブルでせっせと日記を書いている婦人がいる。聞けばニュージーランド(前のベスとは別人)から一人でやって来たジョーおばちゃん。ジョーって女性の名前にもなるんか。オールドブラックジョーや矢吹ジョーは男だったよな。年は60歳と自分から言っている。膝を痛めているそうなので、自分もこうだと赤く腫れた脛を見せて自慢する。明日はショートコースを予定していて、既にオスタルを予約済みだそうだ。それは安心でいいね。自分もそうしたいよ。 夕飯は大きなテーブルを囲んでみんなで頂く。本当に地元の料理でおしゃれとは無縁だが、本物のスペインの家庭料理を食べた気がした。スープもメインも食べる前におかみさんが説明してるがチンプンカンプン。でもスープはカボチャでメインはマメ料理らしいのだけは分かった。見たまんま。ベッド数は少ないので簡単にコンプリートの札が表に張り出された。このトラバデロ村には公営アルベルゲだけでも2軒あるし、私営もあるからここが満員でも問題ない。3年前に泊まった公営まで写真を撮りに行って来る。 おかみさんのスージーはオーストラリア人なので英語ネイティブだが勿論スペイン語も話す。親切なおかみさんに和風マリアカードを上げてからスペイン語で「私は SUSI が好き」と寿司を食べる真似。「同じように SUSI も好き」と両手をおかみさんに向けるギャグをかましたら、大きな胸をぐりぐり押し付けながらハグしてきたので、ちょっとギョッとした。 フランス人の道11につづく |