マドリッドの道3  ☆みっつ Hostal El Chiscon

4月25日 歩き2日目
 早朝6時はスペインでは真夜中。チェックアウトは真っ暗闇の中で。昨夜は遅く寝たが目覚ましのお陰で二人とも起床できる。準備をして廊下に一歩出るとそこは暗闇。ベッドルームは警官に案内されるままやってきたので戻る道筋を二人ともはっきりと覚えていなかった。ここは階段を下りて地階だったのをやっと思い出した。明かりもなく大きくて暗い事務室内を怪しい人影が二人手探り状態で歩くさまは間抜けな泥棒に見えるだろう。二人して「こっちか、こっちだ」と何とか昨日の受付まで到達することができる。

 どうやらここはトレスカントスの市役所らしい。そんな重要な所に良く外国人を泊めるもんだ。警官は受付の椅子に座ってずっと寝ずの番をしていたようだが昨晩同様機嫌よく応対してくれる。カナダ人が持っているのは昨夜二人が出したゴミで、ごみ箱から袋に移し替えて持ってきてくれた。無料で泊めて貰った恩義をこうやって返してくれたらしい。恥ずかしながら私はそこまで気付かなかった。

 朝早くからやってるバルを教えてくれたので二人で朝飯求めてバルへ向かう。真っ暗の町に煌々と明るいバルはちょっと不思議な光景に見えた。店内に入ると沢山の地元の人たちが朝飯を食べている。次から次へと絶えることなく人がやって来てはささっと食べて出勤していくようだ。スペインって自宅で朝飯食べないのかな?

 カナダ人は足が痛いと次の町へはバスで行くそうだ。旅仲間ができたと喜んでいたのだが、今日も一人歩きが決定か。昨日、町に入るために渡った大きな陸橋を戻って巡礼路復帰を目指す。下の道路にはまだ暗い中を出勤のためと思われる車がマドリッド方面に向かって突っ走っている。道路の反対側に出ると少し高台になっていて、ここから見ると行く先は本当に荒野のようだ。矢印はその荒野に向かってずっと続いているようだ。徐々に明るくなってきて気分は爽快になる。

 尾瀬みたいな風景がずっと続いているが、飛び石で向こうに渡る所が8ヶ所もあって、その都度真剣モードで超えなければならない。そのどれもが片側が1mほど水が落ちており、バランスを崩して落ちる場合は滝つぼ側でなく川上側と、必ずシミュレーションしてから渡る。まぁ滝つぼというほどではないが、落ちたらずぶ濡れ下手すると怪我だ。川上側に落ちるならせいぜい膝まで濡れる程度。真剣モードが功を奏して落ちることは一度もなかった。めでたしめでたし。

 昨日の疲れが繰り越されたままで朝から調子が出ない。予定通り今日は13kmのショートコースで助かったが頻繁に休みを入れたので5時間ほど掛かってしまった。時速3km以下か。目的の町Colmenal Viejoにアルベルゲはないので、巡礼御用達の Hostal El Chiscon を探す。ネットの情報では巡礼割引があるそうだ。地元の人数人に教えてもらったところ、巡礼路からは外れた位置にあるようだ。最後に聞いた人は親切にオスタルの前まで連れてってくれ、この人は巡礼経験者だった。

 オスタルと言うのはホテルより一格下がる宿なので、20ユーロだと嬉しいなと思いながら来てみたら、予想に反して38ユーロ。でも来てみて分かったけど、ここんちは本物のホテルのようだ。しかも門には★みっつを誇らしげに主張している。巡礼向けにオスタルと名乗っているだけなのかな。レセプションと書かれた入り口に入ってチェックイン完了。受付のセニョーラにマドリッドで道が分からず苦労したと(身振りで)言ったら、あなたはファーストカミーノかと聞かれ「4回目なら大丈夫。ファーストカミーノの人にマドリッドの道は難しい」とのこと。どうやらこの人も巡礼経験者のようだ。

 部屋は風呂もトイレも併設されている立派なもの。折角なので湯舟にお湯をはって体力回復に専念しよう。洗たくしたけど物干しはないのでクローゼットのハンガーを利用して部屋のあちこちに干しておく。さてそしたら次は飲み食いだ。セニョーラにスーパーの位置を教えてもらったら、ミラドールと言うのがあるそうだ。行ってみると普通のスーパーではなく、大きな建物に個人商店が入っている複合施設のようだ。スーパーの方が勝手が分かるので一旦外にでてスーパーがないか探してみたが近くにはなさそうだ。舞い戻って肉屋で生ハム、八百屋でトマト2、キウイ、オレンジを買い求め、外にあるパン屋では1リットルビールにパン一袋とコーラを買う。結構な荷物になった。

 アルベルゲと違ってキッチンはないので洗面所の大きなコップにナイフでカットした果物を盛り付け一人宴会の始まり。だいたい巡礼に出ると一日2食で、遅めの昼と早めの夕食をいっぺんに取ることが多い。そして夕方には寝てしまうという非常に健康的、規則的な生活になる。さらに毎日ガシガシと歩き回るので究極のダイエットなのでは。毎年帰るころには5kgくらい痩せている。食べ終わってからはベッドの上でネットしたり寝てしまったりして過ごし体力の回復を目指す。明日も16kmのショートコースなので徐々に体も慣れてくるかな?


マドリッドの道4へつづく