マドリッドの道10   極小アルベルゲ

5月2日 歩き9日目
 遅めの7:45出発。エレナ達とは今日でお別れなのでハグしてバイバイ。旦那の目の前だけどスペイン人だから気にしないんだろな。

 雲が多いためかこの時間でもまだ夜明けの雰囲気だ。ずーっと緩い上り坂を歩き続けて10:20に Santa Maria La Real DeNieva の町に到着。大きな教会前にあったバルに入る。フランス組もやってきた。小腹が空いたのでコラカオにクロケッタ1個と小さな唐揚げひと掴みで2.5ユーロ。とても安い。ここを過ぎるとアルベルゲのある町までバルはひとつも現れなかったので、良いタイミングで休めて良かった。

 今日もフランス組は我々と同じ町に泊まるそうだが、私営と公営の二つあるアルベルゲのどちらにするかは決めてないそうだ。ジャンマリーはエレナ達がこの町からマドリッドに帰ることを知っていた。少し大きめの町なのでバスの便がいいのだろう。ジャン・マリーはスペイン語がそこそこ喋れるので(私よりずっと上手)エレナから聞いていたようだ。エレナがここまで歩くなんて私は知らなかったよ。クリスチアンはフランス語オンリーなのでジャンマリーとしか喋れない。

 そこからは4人でぞろぞろと歩いて行く。町はずれに打ち捨てられたような闘牛場があった。スペインにはあちこちに闘牛場があって、丸い建物はほぼ間違いなく闘牛場だ。でも外から見るだけで一度も入ったことはない。ここは扉もないので中に入ってみよう。おんぼろだけどテレビで見る闘牛場とそっくり同じだった。この町では今はもう闘牛は開催されてないのかな?日本で放映される闘牛のシーンはオブラートに包まれて残虐さは隠されているが、スペインで放映される闘牛中継は赤黒い血と涎(よだれ)をボタボタと大量に垂らし、疲れきって諦めの表情さえ見てとれる牛のアップが映し出されたショッキングなものだった。あれを見れば闘牛反対の声が上がるのは当然と思えるだろう。刃物を使ったなぶり殺しショーだ。

 私営アルベルゲへと導く紛らわしい表示にだまされてカミーノを外れてしまい、地図を頼りにやってきた地点も予想とは違ってアルベルゲは見当たらない。近くの学校に子供を迎えに来たらしい一団がぞろぞろと歩いてきたので尋ねたところ、二組目のセニョーラは自分も巡礼をしたと言って親切に対応してくれる。現在地を教えてもらうと、アルベルゲは三角公園の近くと思いこんでやってきた地点は別の三角公園だったのが判明する。どうりで見つからない筈だよ。その夫もアルベルゲを知っていると言うので、この親切な家族に連れられてアルベルゲに向かっていると、向こうからやってきた自転車のセニョールはアルベルゲの管理人だった。夫婦とも知り合いらしい。そこからはこの管理人にバトンタッチされて自転車を転がしながら一緒にアルベルゲに向かう。

 14:20アルベルゲ・ムニシパルに到着。ここはなんと大きなグラウンドの中にある部室のようなアルベルゲで細長い建物の一部をアルベルゲにしたものだった。フェンスの向こうの芝生の上で既に寛いでいるボビーの姿を発見する。フェンスは施錠されるので、明日朝は施錠したら鍵をここに置いてってねと、フェンス外にある建物の高い窓枠を教えられる。ジャンプしないと届かない場所なので悪戯防止になるようだが、毎日こんなことやってたら周囲の人はみんな知ってるんじゃないのかな。

 バックパックを下ろしていると、フランス組がフェンスの向こうにやってくるのが見えた。ベッド数は2段ベッドが2台だけの極小アルベルゲなのでタッチの差で下段をゲットできるが今晩はクリスチアンの鼾大会が決定だ。ここは5ユーロだった。写真の左のドアがトイレとシャワー、蛍光灯の明かりの下がちんまいキッチンです。驚異的な狭さ。寒いので電気ストーブを点けてます。

 ボビーと連れ立って食料調達に出かけるがスーパーの位置でボビーと私は反対方向に意見が分かれる。でも結局ボビーの方が正しかったのでNHKの英語初級講座で良く使われていたフレーズ「アイムワラーン」を言ってみたら通じるようだ。ここにはスーパーのチェーン店Diaがあったのでプチ喜ぶ。大きなスーパーには必ず食べやすいバケツ野菜があるのだ。いつもバケツ野菜と言っているが、要するにプラスチックのバケツ状の入れ物にカット野菜に各種トッピング(チーズ、ハム、鶏肉、トマトなど価格により色々)が別容器で載せてあってプラフォークとドレッシングがセットになっている。それだけ買えばそのままサラダが食べられるという便利なものだ。便利なだけに凡そ日本円で300円強と割合高い。今日は合計11ユーロと大量買いになった。現金が80ユーロと減ってきたので現金温存のためにカードで支払う。

※お役立ち情報
 現地通貨をゲットするには両替やキャッシングなどがあるが、それらは手数料や利息が発生する。それに比べてカード支払いは日本国内で買い物するのと同じで余計な金は掛からないそうだ。しかも幾らかポイント加算されるしね。海外ではなるべくカードを使った方がお得。

 狭い部屋には食事するスペースなどないので外の芝生の上で食べることにして、買ってきた食べ物を並べだしたらボビーが自分のベッドの毛布を芝生の上に広げだした。二人してピクニックのようで、これも結構楽しいかも知れない。広いグラウンドは施錠してあるので入ってくる人もいないし、広大なピクニック広場を二人で独占だ。昨日は薄ら寒かったので1リットルビールを飲むのが少々大変だったが、今日は外でも寒くないので1リットルが調度いい。ボビーはいつもノンアルコールビールを飲んでるな。それにベジタリアンだった。まさか本当にモスリムじゃないんだろな?礼拝してるの見たことないし。

 食後は狭い部屋で4人してお喋りに花を咲かせる。ボビーは英語オンリー、クリスチアンはフランス語だけ、ジャンマリーはフランス語とスペイン語の片言で英語は話せない。私は英語とスペイン語がもろ片言。フランス組以外は言葉が本当にロクに通じないのが面白い。これが私以外がネイティブスピーカーだったりすると疎外感を感じるか知れないけど、みんな片言で会話してるので居心地がとてもいい。

 電気ストーブを点けたので靴下を脱いだ足を暖めていたら、ボビーが私の足の爪2本が内出血してると教えてくれた。少し痛むのはこれが原因だったのか。今年の靴は昨年とまったく同じ靴を買ってきた気安さで大して慣らし履きをしてこなかった。なので靴がまだ足に慣れていなかったようだ。

 このアルベルゲにはWi-Fiはない。Wi-Fiは公営アルベルゲにはあったりなかったり、無い方が多いかな。特にここは小屋みたいなアルベルゲなので無いのは一目瞭然だった。こんな狭い部屋に形ばかりのキッチンとシャワールームを良く付けたもんだと言うレベル。スペインのアルベルゲの紹介サイトでマドリッドの道のアルベルゲ情報を見ると、管理人が常駐しているアルベルゲは極々少ない。と言うか無いに等しい。多くが到着したら電話で管理人を呼び出したりバルや民家に鍵を借りに行くタイプなので、詳しいガイドブックも電話を持っていない私はちょっと大変。マドリッドの道は歩く人が少ないので常駐はできないんだろう。昨日のアルベルゲなんか5日間も巡礼が来なかったと言ってたし。他のカミーノと比べるとユニークなアルベルゲが多そうだし。でもあるだけマシ。

 硬いパンを食べてたらガチンと嫌な感触があって、口の中から昔詰めた小さな銀がポロッと出てきた。あらまやっちゃったよ。4回サンチャゴ巡礼にやって来て歯が壊れなかった年がなんと1回だけ。2回は一番目立つ前の差し歯が取れてしまい情けない顔で写真に写っているが、今回は奥歯のちいさな詰め物なので残り日数が70日あっても何てことない。前歯は気を付けて割れないようにしているが、これも運があるしなー。

マドリッドの道11につづく