おまけ2  最後の地マドリッドへ  Madrid

7月11日  日本出発から81日目
 廊下に並んでいるテーブルセットで朝飯にする。インスタントコーヒーを空のペットボトルにパラパラと振りまいてお湯がないので水。でもキャップを閉めてガシャガシャ振るとちゃんと溶けてコーヒーになる。食べ物はカステラしかないけどたまにはいいや。昨日キッチンでお喋りした神戸のTさんがやって来てまたお喋り。かなりの年だけど元気に朝シャワーを浴びきたそうだ。小さな桃缶を3つ買ったからと一つくれると言うので有りがたく頂き、これは持ち歩くことにする。今日はフランス在住の娘さんとこに行くそうだ。肉親が海外に住んでるのか、羨ましいようなそうでないような。たまにしか会えないんじゃ寂しいだろな。

 パッキングし直して8:45メノールを出発。過去2回サンチャゴからマドリッドへ行ったことがあるが、どちらも6時頃の早朝電車だったので慌しかったが、今回はゆっくりした電車が取れたのでこっちの方がいいな。

 9:5、サンチャゴ駅到着。構内は模様替えしたようで今までは入って右側にあったチケット売り場が入り口背面になっていた。ずいぶん思い切った模様替えだな。マドリッドへは途中のオウレンセで乗換えなので良ーく時刻表を見て確認。地下道を通って4番線へ。既に行列が出来ていたので、先頭の女の子にオウレンセ行きを確認して後ろに並ぶ。互いのチケットを見せっこしたら、この子もマドリッド行きだったので後を付いていけば迷うことはなさそうだ。15分前になったらセキュリティーチェックが開始されるが、毎度適当にやっていて緊張感の欠片もない。

 地理がわからないので電車がどっちからやって来るのか分からなかったが、北のコルーニャ方面からやって来た。座席は3号車の177番。心配していたとおり座席が進行方向逆向きだよ。私は後ろ向きに座る乗り物が苦手。まったくスペインの鉄道はこんちくしょうだ。車内では通路に設置してあるモニター用のイヤホンを配りだしたがスペイン語が分からないので貰わない。でも返さなくていいようなのでタブレット用に貰っておけば良かったかな?

 オウレンセには定刻の10:16に到着。やるなスペイン鉄道。マドリッド行きの電車は11分後に出る筈なので足早に移動するが電光掲示板を見ると11分後の電車は Vigo 行きと出ている。どうなっているのか分からないが、マドリッドへ行く人は何人も乗り換えのために構内にいるので心配はないだろう。結局、マドリッド行きの電車は50分遅れの11:13発になったようだ。さっき「やるな」と言ったのは取り消す。遅れるというアナウンスは無く、待たされている乗客も騒ぐ人は誰もいない。いつものことなんだろう。日本の鉄道は誤差数秒以内で運行しているとJRの運転手さんが誇らしげにテレビで言ってたが、それも大変だね。待っているのは我々乗り換え客だけじゃなく、オウレンセから乗る人たちがホームの外に行列を作っている。ホームは広くないのでみんな柵の外で待たされているようだ。

 やっとマドリッド行きが入ってくる。先頭から1,2,3と思っていたので乗る4号車の当たりを付けて移動してみたが、実際は先頭は8号車だったので早足で移動し直さなくてはならなかった。今度は窓側の06D席でちゃんと進行方向を向いてる席だった。隣はお嬢さんだったが、巡礼者同士と違ってやたらと話し掛けるようなことはしないしされない。もう普通の世界に戻ったのだから。外は雨がパラパラ降ってきて雨粒が窓に叩きついてくる。マドリッドでは止んでてくんないかな。

 3:40、マドリッド・チャマルティンとアナウンスがあって聞き取れる。すぐ大賑わいのコンコースへ移動してセルカニアス(近郊線)のチケット売り場へ。マドリッド3回目なのでここらだけは慣れたもんだ。アトーチャ駅まで1.7ユーロ。電光掲示板を見ると2分後に出る電車があるので急ぎ足で移動して飛び乗る。昨年はアトーチャが終点と思い込んでいて乗り過ごしそうな経験をしたので、今度は何番目がアトーチャか確認することにする。3番目だった。また来ることがあるかもなので頭に入れておこう。

 アトーチャ駅に着くと、マドリッドから歩き始めて80数日振りにマドリッドに戻って来たのを実感する。駅から一歩外に出たら暑い暑い。フーフー言いながら今晩の宿、オスタル San Isidro を目指す。オスタルまでは歩いて20分ほどなので安宿だけど位置的には悪くない。近くまではすんなり行くことが出来たが、この辺りだがなと言う所でつまずく。入り口がまったく見当たらないのだ。Maps.me の地図だとここんちになると思われる所は薬屋だったので、ダメ元で入って尋ねてみると知らないそうだ。こちらが客じゃないのが分かってのことか、まったく素っ気無い。じゃぁ自力で探すかと、この近所をアチコチ行って別の通りまでも探すが見つからない。もしかしたら Maps.me のミスかと疑う。

 また元の通りに戻って尋ねると、この婦人は知らないそうだが近くの青年にバトンを渡してくれる。この青年はすぐスマホで調べてくれてオスタルの入口画像を見せてくれる。やっぱりこの近くらしいのだけは分かったので御礼を言って探し直すことにする。バルの人に聞いても知らなかったが、歩いていた年配者に聞いたら、この人は「ここがオスタルがあるプリンシオペ通りで、ほらそこに住所が書いてあるだろう(想像で理解している)」と家の番号を教えてくれる。そっか、この番号を辿っていけばオスタルがあるのかと気づき、今度は更に慎重に番号に従って家伝いを辿って行く。するとあったあった、工事中のカバーが掛かっていて見えなかったが、確かにオスタルがあった。このカバーがなかったら実は簡単に見つかっていたのかも知れないな。色んなことがあるよ。親切な青年がスマホで見せてくれた玄関の画像とは行って帰るほど違った、まるで工事現場みたいな玄関でオスタルのオの字さえ見当たらない。ボーっと探していたら気がつかない代物だった。さっき尋ねた薬屋からたった2軒隣じゃないか。なんて不親切な薬屋だ。こんな店では買ってやるもんか。もう買うものもないけど。

 ベルを鳴らして中からカギを開けてもらう。オスタルはこの建物の2階フロアを専有しているらしい。ここからは2ヶ月前に「支払いのカードに問題がある」メールを貰っていたので一抹の不安があったが、何てことなくチェックインできたし同じカードが問題なく使えた。ずっと心配の種だったんだから勘弁してくれよ。2泊で60ユーロと、首都のマドリッドなら格安値段だろう。シャワー・トイレは共同だが立派な一人部屋だ。

 シャワー・洗濯して部屋干し。明後日飛行機に乗るので、その日何を着て何を乾かした状態でパッキングできるか、それには明日何を着て靴下は何にしようかと言った、しょーもないことを細々と考える。

 一段落したら6時になったのでソフィア王妃芸術センターへ向かう。正しくはMuseo Nacional Centro de Arte Reina Sofíaと言う日本語でもスペイン語でも超長い名前。7時から無料開放されるのだ。行く途中にあった生ハム博物館に寄ってビール大2.2ユーロを引っ掛ける。やっぱり小皿のピンチョスがおまけで付いてきた。美術館の前には30分前に到着したが、大して並んでいないな。昨年やっぱり無料開放目当てに並んだプラドは大行列だったのでもっと並んでいるかと想像して来たので拍子抜けだった。行列目当てのサックス吹きのおじさんが頑張っているが、小銭を集めている風もないので聞いて貰いたいだけなのかな?ラッパのケースが前に置かれているがコインを入れる人は一人もいない。

 それからうじゃうじゃと列に並びだして、10分前になったら来たときの10倍ほどの大行列に成長していった。良かった30分前に並びだして。時間になったので入場開始。一定の人数を入れるとストップが掛かる。私は最初のグループに入れたが、最後の列が入るには相当掛かりそうだな。昨年、有料で見ているので取りあえずピカソとダリが見たいのでまっしぐら。でもとても分かりづらい美術館なのであちこち行ってやっとゲルニカに辿り付く。立ち番のおばちゃん尋ねもしないのに「ゲルニカはあっち」と教えてくれたので沢山の人がゲルニカを探しているんだろう。ガラスのエレベーターから下を覗いたら、もう30分ほど経っているのに行列はまだ長く続いていた。

※久々にお役立ち情報
 マドリッドの三大美術館は全て無料の時間帯があります。2018年現在
・プラド美術館
 月曜日から土曜日18時から20時まで、日曜日17時から19時まで無料。
・ソフィア王妃芸術センター
 月曜日から金曜日19時から21時まで、土曜日14時半から21時まで、日曜日10時から14時半まで。
・ティッセン=ボルネミッサ美術館
 月曜の12時から16時まで。月曜日限定なので要注意。

 帰り道、中国人のスーパーで冷えた1リットルビール、ヨーグルト4、甘いパン1袋で5.2ユーロ。レジ袋は有料だった。オスタルに戻ってからTさんがくれた桃缶と一緒に夕食にする。アルベルゲと違ってテーブルは小さいけど一人なのでとても気楽。勘定してみたら個室は Vigo 以来16日振りだった。トイレ・シャワーが共同のこの部屋は旅行会社の海外ツアーでは出会ったことないレベルだが、いまは天国だ。


おまけ3 マドリッドの休日 につづく