おまけ4  日本へ Madrid - Doha - Japan

7月13日  日本出発から83日目
 いよいよ日本へ帰る日がやって来た。4月の末に成田を出発して今は7月、足掛け4ヶ月間も遊び歩いて来た。と言っても実質3ヶ月未満だけど。部屋の小さなテーブルでバーガー用パンにマーガリンとジャムを挟む。もう一つには生ハムを挟み、こっちは空港で食べる弁当の積もり。インスタントコーヒーも2袋を飲んで使い切る。ヨーグルトを食べたら、もうプラスプーンは使わないのでゴミ箱へ。昨晩飲んだMahou1リットルビールのラベルを上手に剥がして持ち帰ることにする。

 入念に準備をしてオスタルを9時に出発。レセプションのお姉さんは地味だけどいつも愛想が良かった。ここならまた泊まってもいいな。これでマドリッドのオスタルには3年間に渡って4,2,2泊と宿泊したが、そのどれも感じの良いオスタルだった。でも昨年と同じオスタルを予約しようとしても毎回いっぱいだったので毎年違うオスタルになってしまった。5ヶ月も前から予約でいっぱいになるのって、やっぱり人気があるんだな。

 アトーチャ駅が見える大通りに出たら、ボロボロの服を纏った裸足の物乞いおばあさんがいて「パラコメール(食べるために)」と道行く人に紙コップを差し出しているが足を止める人は居ない。2年前にも見かけたことがあって、そのときはプラドの行列に並んでいた時なので、一人だけ施しをするのが恥ずかしくて出来なかった苦い思い出がある。今度はそんなことはないので、通り越してからバックパックを降ろして中からコインを取り出しおばあさん目掛けて戻って行くと、おばあさんは直感が働いたのか私の目を見て真っ直ぐ近づいてきた。手にもった紙コップの中には細かい銅貨ばかりが何枚も入っているのが見える。おばあさんはコップじゃなくて自分の手を差し出したので残ったコインの2.01ユーロを渡すとバーガー屋を指差して「これで食べられる」と言うようなスペイン語を言った。たった2ユーロぽっちだけどあのコップの中の銅貨から比べたら大きい方なのだろう。喜んでくれたので2年前のつかえが薄らいだ気になった。次に会う機会があったら、もう少し大きいのを上げようかと後で思った。

 アトーチャ駅裏側から出る空港行きバスは5ユーロ。車体横にでかでかと「AeroPuert」と書かれているので間違えることはない。市街地を通り越し、ぐんぐんバスは進んで終点の第4ターミナルに10:00 到着。運転手もバスを降りて一服点けている。第4なので4つ目の停留所かと思っていたが、3つ目で終点だった。終点は乗り越す心配がないので安心。

 空港では3ヶ月近く前に設定したパスワードが生きていて簡単にネットに繋がる。来たときに夜明かししたマックで弁当のパンと一緒に食べるコーヒーを注文したいのだが、注文用のボードでやるとどうしても最後の詰めでお金を入れる口が見つからず注文できない。仕方ないので店員さんに直接注文することに。でも間違ってエスプレッソを注文してしまった。お猪口のようなちんまいカップにコーヒーがチョッピリ。でもこれってチビチビ飲むとそれなりに美味しいことを発見する。そっか、エスプレッソってこうやって飲むと旨いんだなと新発見をした気になる。68にもなって今更の気がするけど、家にいるときはいつもでっかいマグカップで薄いのをガバガバ何杯も飲んでいたのでエスプレッソの良さに気がつかなかったよ。

 オスタルで作ってきたバーガーパンに挟んだ生ハムにTさんから貰ったケチャップの小袋を掛けて食べる。見た感じマックの品を食べてるのと良く似てるなと気がつく。まぁここはマックの一部ではあるが、店内じゃなくて通りを挟んだ飲食コーナーなので何を食べようと気にすることでもないけど。数日持ち歩いている乾燥フルーツ入りのミニカステラも2個食べて、これで機内食まで持つだろう。最後の最後までつつましい。

 空港内で店開きしている他の店は、町中の店の倍ほどの値段でずーずーしく商売をしているが、マックだけはコーラ1ユーロなどと普通の価格で商売しているのでエライ。マック頑張れ。ぼったくり店はくたばれ。

 カタールのカウンター近くでバックパックの荷物を全部出してから荷室を上下二つに分けているジッパーを外して広げ、まず長いスティックを突っ込む。尖った先端がバックパックを突き破らないように、帽子を二重にして先端を包む。防寒用のフリースと貴重品入れにしているベストは機内持ち込み。その他の荷物は順番にバックパックの中に詰めなおし。機内持込が多くなったお陰でバックパックの空きが増えたのでサンダルに履き替えた靴も入れることができる。穴の空いた最後の5本指靴下はここで捨てる。日本から持参の5本指靴下4足全てに穴が空いてしまった。踵に開いた穴のお陰で靴ずれができてしまったせいでカットバンが足りなくなってしまったが買い足さずに何とかなってしまったな。

 全てパックし直したところでカタールのカウンターを見たら動きがあって、意外やチェックインが始まったようだ。近くで作業していてラッキーだった。普通は2時間前なので3時にチェックイン開始かと思っていたが、まだ1時半なので3時間半も前だ。こんなこともあるんだなぁ。並んだ前の親子は日本人で、こんなに早くチェックインが始まるとはと驚いていた。親子は父と息子で1週間の旅程で個人旅行だった。私の80数日間の旅程を言ったら驚かれるが、どんだけ呑気な人なんだと思われたことだろう。

 荷物を預けてボーディングパスを貰う。第一関門を目指して歩き出したらバックパックに帆立貝をぶら下げたご婦人がいたので「Buen Camino」と声を掛けるとこちらを一瞥しただけで「グラシアス」と返事が返ってきた。巡礼者同士は返事も同じ「Buen Camino」なので、この人は私を巡礼と気づかなかったのか。日記帳に挟んだクレデンシャルを見せると態度が一変してフレンドリーに早代わりする。お互いに巡礼が終わって国に帰る所だったので笑顔でさよならする。最後の最後に巡礼者に会えてよかった。

 乗るゲートはS38、調べてきたとおりターミナルは4Sだったのでパスポートコントロールを過ぎたらエスカレーターで地下へ下りてから無人のトラムに乗り込む。今の時間はみんな4Sへ行く人なので人の波に乗っていれば迷うことがない。ターミナル4S到着。ここでターミナルはSとMとに分かれるが表示がちゃんとしているので迷うことはない。ツアーで来ると4Sは複雑で添乗員の後ろを夢中で追いかけていると何も分からない内に移動完了してしまうが、一人でやってくればみんな確認しながら移動していられるし迷うほどでもない。

 人のブログで読んだとおり、免税店の店の中を通り過ぎるように道が作られており少々うざい。ゲートまで辿りついたが私が乗る17:10のドーハ行きはまだ表示されていなく待合室もガラガラだ。隣のS37では搭乗が開始されたので、まさかと思ったが一応S37の行き先をチェックする。

 さっきのチェックインでカタール航空と提携しているJALのマイル申請をしてなかったことに今ごろ気づく。ヨーロッパからなので勿体ないから日本に戻ってから考えようか。

 マドリッド、時刻どおりに離陸。来たときと同じに自分の座る3席は誰も座る人がいなくて独占だ。超ラッキー。とても空いているフライトで、3席、4席を一人で座っている人が何箇所もある。それなのに自分の前のシートは3人が満席で通路側の青年は日本人に見える。その通路反対側のシートは4席誰も座っていないのだから、日本人が移ればいいのにと思うが、この人は生真面目にドーハまでの6時間を3人仲良く並んだままだった。きっと隣の欧米のご婦人二人も「移ればいいのに」と思ってたことだろう。

 夕飯はタイカレーをチョイス。それと白ワインをコップに一杯だけ。カレーの上にでっかい鷹の爪がデーント1本載っている。端っこをかじったら目茶辛いのであとは食べないでおこう。食後のお茶を配りだしたが、前の人がウィスキーらしいのを貰っているのが見えたので真似して「ウィスキー」と言ったらワゴンを置いたまま取りに行こうとしたので「それだよ」な感じでワゴンの瓶を指差したらコニャックのVSOPだった。コニャックの他にコーヒーも貰えた。洋酒は普段飲まないが、ちびちび飲んでいると暇つぶしに丁度いい。これから飛行機ではこのパターンがいいな。


7月14日  日本出発から84日目

 乗り換えのドーハには少し早めの深夜0:45に到着。成田行きが出るゲート番号は機内のテレビで発表されていて806便2:20E1ゲートからの出発だった。2年前のドーハ乗換えでは出発ゲートが2回も変更になったり出発も1時間以上遅れたりと散々だったが、今回はすんなり行きそうだ。E1ゲートまでやって来たらチェックインの行列ができていたが、これは機内に入れるんじゃなくて単に隔離された待合室に入れるだけだった。そう言えばこんなスタイルだったのを思い出したよ。

 シートは予約したとおり後ろが壁になっている通路側だったが、隣に巨漢の欧米青年がいて肘をこっちの陣地まではみ出させているし足までこっちに出ているのが気に食わない。シート運は使いきったと言うことかと諦める。こんだけ太っていると毎回エコノミーは大変だね。隣りの乗客も大変だから金貯めてビジネスに乗ってね。

 夜7時前に成田到着~。もう日本語だらけなので何の心配もいらない。まだ地元まで帰れる時間だが、今晩は予定したとおり試しに成田空港に泊まってみる。またいつかこんなことする可能性があるか知れないから下見ってことで。ずっと座りっぱなしだったので胃が働かないようなので売店で飲むヨーグルトを買ってごくごく。

 第二ターミナルの端から外に出て第三ターミナルへ通じる通路を歩き、途中の切れ目から外にでるとウェイティング・エリアがある。もう泊まるための施設と言って過言ではない有り難い建物。エアコンが緩く掛かっていて暑くも寒くもない。広い建物内に数人しか居なかったが、時間が遅くなると節約旅行者がパラパラとやって来る。

 畳のスペースに寝袋を広げて寝床を確保。実はこの中で一番ヒッピー然としたのは髭ボーボーの私かも知れない。年も年だし知らない人が見たら、筋金入りのバックパッカーに見えることだろう。成田にいるからバックパッカーだが街中ならホームレスか。警備員も頻繁に巡回しにやって来て必ずトイレまで見て回っているので安心感がある。室内は明るいままなので残り2粒になった睡眠導入剤を飲んで寝てしまう。


7月15日  出発から85日目

 朝の6時。睡眠導入剤のお陰で目覚めたら明るくなっていた。時計を日本時間に合わせる。泊まらせてもらった部屋はこんな感じ。およそ60人くらいが利用したようだ。外国人もいたのでネットで調べたんだろう。便利な世の中になったもんだ。バックパックから全ての荷物を出して荷室を2つに戻してパッキングのし直しをする。トイレで洗顔して第二ターミナルへ移動し2階の吉野家へ。日本に戻ったら何を食べようかと暫く前から思っていたが、やっぱりカレーにした。黒カレー450円。メニューを見たらハムエッグ定食もあったので、こっちも捨てがたかったな。納豆も付いて430円か。

 京成で上野へ向かうことにする。余分な金が掛るスカイライナーじゃなくて普通の電車がいいと念を押して1,030円。8:04発で上野9:19着。徒歩で上野駅へ移動して中央口にある讃岐うどんのモリとさつま芋の天ぷらで530円、やっぱうどんは美味いなー、それにヘルシー。構内を行きかう人を眺めてみると、日本人って本当に服装が地味なんだなと改めて思った。東京なんだから地元の群馬よりは垢ぬけているだろうが、ヨーロッパの人たちと比べると本当に地味に見える。

 10:15の高崎線に乗り込むと、さすがにこの時間では空いていて簡単に座れた。あと3時間ほどで前橋まで帰ることができる。


今年のサンチャゴ巡礼これにて完結しました。
長らく読んでくれてありがとうございました。