ポルトガルの道8   アルベルゲ?ホテル?

6月5日  日本出発から45日目
 山の中のキャンプ場。でも日本で言えば国民宿舎みたいなもんかな。5時半に起床して出発準備開始。普段は自分のベッドの上だけに荷物を広げなくてはならないが、今日は1部屋すべて自由にできるので、隣のベッドまで使ってパッキングできるので楽ちん。パッキングで一番手間が掛かるのが寝袋の収納。羽毛シュラフなので広げると空気を吸って凄い体積に膨らむが、これを凡そ1.5リットルほどの入れ物に突っ込むのに時間が掛かる。あとは広げた荷物を順序良くバックパックの中に収納して完成。ベッド周りに忘れ物がないか入念にチェック。最後にビーサンを仕舞って靴に履き替えれば準備完了だ。おっと、ベッド下のスティックを忘れてはいけない。

 昨日、買っておいたミニパンを食べて6時半に出発。扉の鍵を部屋に置いて、もう一度忘れ物がないかチェック。一旦外に出てしまうと自動ロックされてしまうので再入場は不可能だ。この建物内はもちろん、外の広ーい施設には人っこ一人いない。昨晩お世話になったレストランもまだ人気がない。また木製の橋を渡ってキャンプ場を後にする。どこも静まり返っている。

 来るときに尋ねた活気のない会社横を通って本線と合流する三叉路にやって来ると昨日の犬達はいなかった。自分を覚えているかとちょっと期待したんだけどな。

 ずっと山道を歩いて、7:40最初に現れた村にあったカフェでコーヒーを頼む。ポルトガルのコーヒーは普通に頼むと極小のカップで出てくるが、カフェコンレチェと頼むと幾らか大きめのカップになるようだ。スペインでいつも頼むコラカオは通じない。ココアと言えば通じるのかな?カフェコンレチェも通じないが何となく分かるらしい。エネルギーの元なのでコーヒーには付属の砂糖を二つともぶち込む。

 村を過ぎたらここからはもう一山越して行くようだ。本格的な上りが始まり、いよいよファティマが近づいてきたのを感じる。こんな山の中でも黄色と青の矢印は要所要所にあるので心強い。矢印を書いてくれる方もファティマの近くと言うことでテンションが上がるのか、場所によってはこれでもかと言うくらい書かれているのが笑える。

 山の上から遥か下にMinde の町が見え出した。どうやって下るのか心配なほど町は下に見えた。歩き具合に寄ってはここに泊まるのも良いかなと思った町だが、昨日は無理してキャンプ場まで歩いてしまったので、ここの選択肢はなくなった。10時、Minde の町に到着。ここに来るまでの下りが激しくて大変。足の爪先を守るために靴紐をきつく縛りなおして下るほどだった。

 町の十字路に小ぎれいなカフェがあったので、腹に何か入れて置きたいのでまた休んでいく。大きなクロワッサンに100%ジュース、それに丼サイズのカフェコンレチェ。さらにポルトガル名物のナタまで食べても4.2ユーロとかなり安かった。日本の半額くらいかな。これだけ飲み食いすれば元気百倍だ。あと4,5時間は歩いていられる。

 10:55、小雨が降り出した中を再スタート。暫く歩いて行った突き当たりの角には「左Santiago 右Bombeiro 」の道標があった。てことは、この町の消防署は確実に泊まれると言うことだ。うーん、だったら泊まりたかったな。まぁ今日泊まるには早すぎる時間なので残念だが通過するっきゃない。

 ファティマが近づいてくるとまた山越えルートになる。今日は凡そ30キロのコースだけどファティマを目指してる高揚感があるので険しくてもさほど苦にならない。FATIMA○○kmの表示が頻繁に出るようになるが、中々街並みが見えてこない。それでもやっと2時過ぎにファティマのバジリカ前に到着する。やっと着いた。

 初めて訪れた聖地からなのか、サンチャゴ到着では感じなかった高揚感がある。シーズン外れのためか、思ったよりずっと人はいなくて広すぎるバジリカ前は閑散としていた。ここでは到着祝いに、やって来た人にシャッターをお願いして撮ってもらう。このおっさん「サンチャゴ、ファティマか、ファティマ、サンチャゴか?」と聞いてきたので巡礼を知っている人らしい。

 取りあえずファティマ見物する前に宿を確保しておきたいので Peregrinos de Fatima を目指す。ファティマでは歩きの巡礼のみ泊めてくれる無料のアルベルゲがある。大通りを歩いていくと簡単に見つけることができたが、想像とは似ても似つかないホテルに見える建物だった。え、これ?これが無料で泊まれると噂のアルベルゲなの?でも名前はその通りだったので入ってみる。レセプションで地図を見せながら尋ねても「これはこのホテルですね」と言うばかり。アルベルゲの場合「Peregrinos」と付けばそれは公営アルベルゲのことだ。でもここはホテルでアルベルゲとはまったく違う。でも、これから他を探すと言ってもまったく情報がない。一泊幾らと聞いたら25ユーロ朝食付きと言うので、それなら我慢のしどころかなとお願いする。

 でも、よくよく考えたらホテルの名前は巡礼が間違って泊まりに来ないかななんて魂胆があったような気がしてきた。だってファティマのホテル関係者なら無料で泊まれる修道院運営のアルベルゲがあることくらい知っていておかしくないだろう。そこと混同し易い名前を付けといて、やってきた鴨が「おっかしいなー?」なんて首を傾げているんだから無料の所と間違ってやってきたな位わかる筈だ。なのに一切口をつぐんで自分ちに泊めようとするのは確信犯な気がする。聖地ファティマでこんなん有りか!?まぁ25ユーロは日本のビジネスホテルと比べて半額なので良しとしよう。

 後でネットで調べ直したら、無料のアルベルゲはバジリカの裏側にあった。日本で調べている内に、地図でPeregrinos の宿を発見したものだからすっかりその気になっていた。完全にリサーチ不足。シャワー・洗濯してハンガーに吊るしたのを小さなベランダに掛けて乾かすことにする。

 旅の装備を解いてバジリカ方面に歩き出したら、何度も一緒になる女性二人組みのおばちゃんの方がベンチに座っていた。あれ、女の子はどうしたんだろう。この二人組はファティマには寄らないと言ってた筈だが、気が変わったらしい。それに女の子は国に帰ったようなことを言ってるな。おばちゃんもファティマからサンチャゴへは行かないようなことを言ってるようだが詳しくは分からない。このおばちゃんとはリスボン出発の初日から何回も一緒になったが、これを最後に会うことはなかった。

 この大通りはサンチャゴからリスボンに向かうバスの中から見ていた通りだ。近くに無料の宿がある筈だとバスの中から目を皿のようにして見ていたがアルベルゲらしいのは見つからなかった。そりゃそうだ、ホテルだったんだから。

 スーパーに行ったら惣菜コーナーがあって、量り売りで色んなものが売られていた。ピラフみたいのがあったので、「これをこのくらい」と手まねで頼む。その場でチンで温めてパッケージに詰めて貰える。そのほか、ミニトマト1パック、1リットル白ワイン、ヨーグルト4に8Pチーズ、コーラにライムで6ユーロとちょっと。今回もカードでお支払い。ホテルには食器類はプラコップしかないので手持ちのプラスプーンの出番だ。ファティマ到達祝いに、今日はほんのちょっぴり豪華。

 こんな山の中ばかりなのに30km台を3日間も歩き続けてしまった。体が歩きモードに変わっているのもあるけど、年を考えると歩きすぎだろう。歩けるからいいやじゃなくて、もう少し慎重にしないと故障が出てから泣くことになるぞと自分を戒める。明日はファティマ連泊で休養日だから、そこで完全復活を目指そう。


ポルトガルの道9へつづく