ポルトガルの道10 泊まれない消防署 6月7日 日本出発から47日目 ファティマ3日目、今日はファティマを出発する日。まだ暗い中、別棟になっているキッチンで朝飯を食べようとしたら鍵が掛かっていて開かない。困ったな、食料は冷蔵庫の中だ。パベルもやって来て二人で困っていると職員がやって来て開けてくれる。ここは何かの事務所にでもなっているようで、宿直者もいたってことか。パンにハム・チーズを挟んで、インスタントスープをレンジでチンして飲む。スープの素を持っていると便利。郵便受けみたいなドナティーボ入れには5ユーロを入れる。食事なしの場合は大体5ユーロと決めている。 霧雨の中、7時に出発。巡礼路はファティマを突き抜ける形で北に続いている。町の中から早速、ファティマの青とサンチャゴの黄色い矢印が逆向きになったのが見つかる。これまでこの二つは常に同じ方向を向いて我々をファティマに導いてくれたが、今日からファティマからは離れて行くので矢印は逆向きに変わった。 この日は特に何もなく、ひたすら歩くのみ。村の教会前で背負ってきたコーラを飲む。9時半、次の町の Gonde maria の道端にパナデリアがあったので休んでいく。小雨なのでやっぱり雨の当たらない所で休みたい。ハム入りのパイみたいのとカフェコンレチェでたったの2ユーロ(260円)。パナデリアは色んなパンを選べるのが楽しい。ゆっくり目に20分休んで再スタート。 今日は珍しくファティマへ向かう逆ルートの巡礼に二組出会った。ひとつはポルトガルの親父二人組で、ファティマ迄180km地点から歩き始めたそうだ。やっとファティマ専門の巡礼に会った。ふた組目は女性二人で、メタボぽいけど二人とも雨傘を差して元気に歩いていた。ふた組とも今日はめでたくファティマ到着だろう。 今日も宿のあてがないが、消防署がある筈なのでそれに賭ける。12時半、Caxarias の町に入り、道筋にあった消防署を尋ねるが泊まれないそうだ。やっぱりな、外から見た雰囲気でなんとなくそんな気がしていたよ。でも地図が印刷された一枚の紙を渡されて何か説明しているが意味が分からない。こちらからは消防署がだめなら「安いホステルに行きたい」と一方的に言ってたので、貰った地図にホステルの場所をペンで書き入れてくれる。よし、じゃぁそこへ行ってみよう。こういった現地で手に入れた物は持ち帰ると当時の情景が思い出されて良いんだが、先が長いので片っぱしから捨てている。 今きた道を途中まで戻って、さらに進んでいくと通りにスーパーがあったので、宿がこの近くなら旨いな。小さな小さな駅前にホステルはあった。名前は MANALBO マナルボと読むのかな?本当に場末のホステルって感じ。1階がカフェになっていて数人の客が入っている。おかみさんに「泊まれる?」と身振りを交えてお願いする。値段も聞かずにチェックインしてしまうが、雨が降っているしここ以外に選択肢がないのだから仕方がない。このホステルには先に出発していったジャンピエール達3人の姿はなかったな。みんなどこまで行ったんだろう。 シャワー、洗濯するが雨降りで湿度が高いし物干し場もないから乾く筈がない。山好きのうぶちゃんに教わったバスタオルで包んでしぼる方法で少しでも水気を取ってからハンガーに部屋干し。まぁ生乾きのまま着用しても体温で乾くからそんなに困ることでもないだろう。歩けばどうせ汗まみれになるんだし。 来るときにチェックしといたスーパーへ買出しに行く。1リットルビール、トマト3、ムースチーズにヨーグルト4にパン一袋で6.24ユーロ。今回もカードで支払いしてユーロはなるべく温存する作戦。レジのおばちゃんは愛想が良かった。残りが80ユーロに減ったので、2・3日以内にキャッシングをしたいところだ。 レジ袋を提げてホステルに帰る途中、夫婦ものらしい巡礼が歩いていたので声を掛ける。やっぱり今晩の宿を探していた。宿賃は幾らかと聞かれるが、アイドンノーだ。ホステルに戻ると1階のカフェにはフィリップスが座っていた。彼もここに泊まるのかと思ったが、私が行ったのと同じ消防署で同じ紙を渡されて、それには30分歩いた所の教会で泊まれると書いてあるそうだ。私はそんなの読みもしなかったよ。ここで一休みして教会へ向かうとのことだがチェックインが6時と遅いので、それでここで時間つぶしをしているらしい。フィリップスも目いっぱい節約している。 カナダのおばさん二人組がポンチョ姿のまま入ってきた。昨日のファティマで一緒になった二人かと思ったが違って、この二人は逆コースだった。昨日はアンシアオ泊まりで明日ファティマだって。私と同じ行程だ。アンシアオは明日私が目指す町で、そこでサンチャゴ巡礼路と合流する。今日はここに来る前にサンチャゴからファティマへ向かう二人組に二組も会ったので、そのときの写真を見せたら大笑い。なぜかと言うと「昨晩この左のおばちゃんの鼾が凄かった」そうだ。サンチャゴからファティマへ向かう巡礼とは何日も会わない日があるけど、今日はこれで6人も会った珍しい日。 ホステルはオンボロだがポルトガル名物のアズレージョが施してあるのでポイントを巻きなおした。ポルトガルで沢山の宿に泊まったが、意外とこのアズレージョが少ない。アズレージョって高いのかな? このホステルにも下のカフェにも珍しく Wi-Fi が無かった。やっぱりオンボロだから?こんな雨の日にちっぽけな町の中ではネット以外楽しみがない。フィリップスに教わった消防署近くのカフェにはあると聞いたので行ってみる。コーヒー0.8ユーロを飲んで長いこと Wi-Fi 三昧。 ホステルに戻り、明日の朝は早く出発するので支払いを済ませておく。値段も聞かずにチェックインしてしまったが、20ユーロとまずまずだった。ここんちには今日、私が目にしただけで5、6人の巡礼が泊まった。消防署が泊めるようになったらここんちは潰れるだろな。 部屋にはトイレとシャワーが付いてるけど、ホステルに普通は置かれているシャンプーもボティーソープもなくてちびっちゃい石鹸が1個だけだった。 Wi-Fi もないしボイラーの重低音がずっとしてるので外れの部類だ。でも雨の日に泊まれるだけありがたいと思わなくては。コップもないので1リットルビールはらっぱ飲み以外できない。プラフォークは折れてしまっているので使い古した割り箸の出番だ。先端のカビを良ーく洗い落して使用する。この箸は今日でもういいや。 9:58になったらボイラーの音がピタッと止んだので、それからは良く寝られる。助かった。 明日はアンシアオ。そこにも消防署があるが、当てにならないかな?ひるま消防署で貰った紙を翻訳交えて読んでみると「ごめんなさい、ここには宿泊の設備がありません」と書かれていた。ちゃんと代替のために離れた教会で泊まれるとも書かれている。でもこれを消防署にいる間にのんびりと翻訳してる時間は無いので仕方ない。明日は明日の風が吹く。 ポルトガルの道11につづく |