ポルトガルの道11  消防署全滅

6月8日  日本出発から48日目
 早めの4時半に起床。今日は30キロのコースなので早めの行動開始だ。トマト、ヨーグルト2、パンにチーズムースとファティマのホテルで貰ってきたマーガリンを塗って食べる。トマトとパンをナイフで半分に切って挟む。この旅でナイフは必需品。

 6:15、早めの出発。空は雨模様だ。1時間ちょい歩いた村はずれにポツンと教会があった。消防署で紹介していた泊まれる教会ってこのことかな?だったらフィリップスはここに泊まったはずだ。でも泊まる必要がないんだから一歩離れた教会にわざわざ確認にはいかない。

 1時間歩くと今度は山火事の跡になった。行けども行けども山火事の跡。こんなに広範囲に燃えたんじゃ消すのは大変だったろな。ポルトガルもスペインも山火事の跡に出っくわすのは珍しくない。なんでこんなにも山火事が多いんだろう。日本と違って乾燥してるからかな?こんだけ燃えてしまうってことは、スペインもポルトガルもお国柄、自然に消えるまで放っとくんかな?偏見著しいかな?

 Ribeira do Farrio 村を5キロ過ぎた所で矢印を見失う。どこで見失ったかさっぱり覚えが無い。ずっと山の一本道の気がしていたが、どっかで細い曲がり角があったのかも知れない。小さな集落に入って来たところで本降りになってきた。合羽を出すのが面倒なのでびしょ濡れで歩く。バカ犬がフェンスの向こうで激しくほえ続けている中で土砂降りの雨。なんか酷い状況だな。犬なんか鳴かせとけと立ち止まって行くべき方向を検討していたら、飼い主が2階からカミーノの方向を指してくれる。

 歩き続けているとやがて舗装路に出て、大きな三叉路に差し掛かると行くべきAnsiao を示す大きな道路標識が現れた。もうカミーノなんかどこだか分からないからこの舗装路を行ってしまおう。別方向に目をやると天の助けのカフェがあった。雨の中をずっと歩き続けてきて体が冷えたのでカフェで温まりたい。周りに人家なんか見当たらない寂しいところでやってけるのかなと心配になるような寂れたカフェだったが、営業中だったので助かった。カフェコンレチェとパン1袋で1.8ユーロ。暖かい飲み物とパンを腹に入れたので大分回復した気になった。

 休んでいる間に雨は上がったかに見えたが、歩き出すとまた降ってきた。くそ、旨くいかない。寒いのでずぶ濡れの上に合羽を着込む。それだけで暖かくなった気になる。歩いていると、意外なほど早くAnsiao の表示が出てきた。え?こんなに早く着く!?タブレットを引っ張りだして確認するとGPSが機能して現在地が確認できる。まだAnsiao 手前7.8km地点だった。あと2時間てところだな。

 Ansiao に近くなったところで本来のカミーノとやっと合流できる。町に入ったところの三叉路角地に青いホタテマークを付けたホステルがあった。ネットの紹介にもMaps.meの地図データにも記されていない宿だ。でもマークが巡礼御用達ぽいな。ここには消防署があるので通過。さて、問題の消防署だが、ここには昨日の消防署とは違ってホタテマークがばっちり確認できるので期待が膨らむ。受付に行って泊まりたいと言ってみたところ、今日はメンテナンスなので泊められないと言われる。またかよ、消防署ってこんなに当てにならなかったんだ。じゃぁ安いホステルはない?と尋ねると、確認はしてないけどあっちの方にホステルがあったようだ程度。何となくの方角だけ教えてくれたので歩き始めると、別の消防隊員が付いて来いと言っている。ホステルを教えてくれるのかと思ったので、付いて行くと、ここを行って左だと言い残して消防署に帰って行ってしまう。教えられた方に歩いていくと町から出てしまいそうになった。これはホステルじゃなくてカミーノを教えたんだなと気づく。やっぱり自力でホステルを探すしか無さそうだ。

 えーと、消防が教えてくれた宿は当てにならないので、それよか途中で見た宿の方が巡礼マークがあったし安そうだなと勘を頼りに戻っていく。あったあった、さて入ろうとしてもドアには鍵が。隣にカフェがあったので、こっちが受付かと尋ねると、ここんちは同じ建物にあるのに経営が別らしく、閉まっているならブザーを押せと言っている。じゃぁそうするか。中からセニョーラが出てきてくれ、肝心の料金を聞くとなんと15ユーロだそうだ。即決です。通された3階の部屋はシングルルームでベッドも大きいのがデーンとある。トイレ・シャワーは共同だが全然オッケーだ。

 このセニョーラ、しきりにポルトガル語で何か言うのだが何のことやらさっぱり分からない。タブレットを渡して翻訳してみたところ、食事は下のカフェでしないでくれと言っているようだ。変なの、同じ建物にあるカフェで食事してくれと言うのなら理解できるが、その逆とは如何に?察するに、カフェの人とは仲が悪いんかなと想像する以外に思いつかない。食事はスーパーから買ってきて食べると伝えると安心したらしい。謎だ。

 シャワー、洗濯して小さなバルコニーに干しておく。ここからやって来た方向が良く見えて眺めは抜群だ。安いし良い部屋なので目っけもんだった。

 セニョーラに教わった市場に行ってみるが今日は休みなのか閉まっていた。でも少し歩いた所にスーパー発見。1リットルビールにさくらんぼ、トマト2、青りんご、チョリソーにOIKOSヨーグルトで7.59ユーロ。今回もカードでお支払い。もう現金が50ユーロしかないので本気でキャッシングしなくてはだ。場合によってはアルベルゲもホステルもなく、仕方なくホテルなんかに泊まった日にゃ1泊50ユーロでは足りない可能性がある。

 新しいクレデンシャルが欲しいので広場にあった小さなインフォメーションに行ってみる。こじんまりとした中には一人だけお姉さんが待機していた。クレデンシャルはここでは扱ってなくてコインブラでないと買えないとのこと。でも親切なお姉さんで、他にも何やら気遣いしてくれてる。こんな小さな町に観光客が来るとは思えないので、暇でしょうがないんかな?

 ホステルのコンセントに差し込もうとしたら充電器の変換コネクタのピンが折れてしまった。このコネクタは使用するときにC型コンセントの位置が深いのでいちいちネジを回してピンを伸ばさなければならない物。数年前からそのピンが曲がっていたのをダマシだまし使っていたので限界が来たってことらしい。すぐに別のを手に入れないと困る。何が困るって右も左も分からない土地で迷ったときに頼りになるのは地図アプリだけだからだ。タブレットがバッテリー切れで使えなくなるほど困ることは無い。さっきのインフォメーションに行ってお姉さんに電気屋を教えてもらう。こういうのが欲しいんだよとピンが折れたコネクタを見せると、電気屋はないがこういうのを取り扱っていると言う店を教えてくれる。行ってみたらちゃんとありました!!ポルトガル、バカにしたもんじゃありませんぜ。1口のみのCタイプで1.5ユーロと安かった。今までのは日本のコンセントが2つ挿せてタブレットとカメラの二つが同時に充電できたが、取りあえずこれでも十分だ。

 町をふらついていたら買い物帰りのフィリップスに遭遇。まったく良く会う男だ。カフェに行こうと誘われるが、その前にキャッシングしたいので一緒に銀行前のATMに。今回は200ユーロが限度だった。カフェでは二人してワインを飲みテレビではフットボールの試合をしている。フィリップスは英語とフランス語をごちゃ混ぜにして喋る。「それフランス語?」と尋ねると当然のように「そうだよ」と答える。自分が理解してれば相手の理解はどうでもいいらしい。明日は10kmだけ歩いてドナティーボのアルベルゲに泊まるそうだ。10kmか、私はもっと歩きたいな。

 フィリップスも倹約しているので、きっとこの町ではまず消防署に行っただろう。今日は20ユーロのホステル泊まりで、とてもいいホステルと喜んでいる。でも私んところも15ユーロでとても気に入ったホステルなのでお互いに満足できて良かったね。帰りに広場にあるインフォメーション前を通ったらシエスタなのかクローズされていた。ここはベリー親切だったよと言って通り過ぎたら後ろからドアが開いて「何か御用ですか?」と言いながらお姉さんが出てきてくれる。ありがとう、でも今回は用はないんだよ。本当に親切なお姉さんだ。

 ファティマを後にしてからの2日間は野を越え山越えひたすら歩くだけ。この行程にアルベルゲはない。消防署が泊めてくれるという話なので2回行って2回共撃沈。ホステルに2晩連続で泊まらざるを得なかった。でも昨日は20、今日は15ユーロと安い所が見つかって良かった。今日からはサンチャゴ巡礼路に復帰したので、明日から数日はアルベルゲがあるようだ。


ポルトガルの道12につづく