ポルトガルの道13   これ食べる? Cernache

6月10日  日本出発から50日目
ベッドルームの隅にご覧のような骨董品レベルの面白い椅子があった。高さの調節を大きなネジでやる。こんなん見たの初めてだ。何でも鑑定団に出したら1万円位の値段が付きそう。

 小雨なので気が重い。隣のキッチンへ移動してインスタントスープをチンして温める。チョコパン2個に果物の桃。桃は皮をむく必要なかったし、意外と食べやすかったな。買い物レパートリーに入れとこう。

 7時20、でっぱつ。ジャンピエールとイタリア青年はコインブラまで行くそうだ。私は歩いた調子で決めよう。最初からずっと小雨が続く。巡礼路は時々川沿いでビチョビチョの酷い山道に導かれるので靴の中に水が染みてきてしまった。ゴアテックスの新品だがメーカーの売れ残りなので防水が弱くなっているのかな。靴も車も型遅れで値下げされた物が好き。

 巡礼路はCondeixa a Velha 村には入らなかったので雨の日なのにカフェに入り損ねてしまった。町を外れた処にカフェみたいのがあるが、なんかハイソな人たちが出入してそうなのでビビッて通過。ここは巡礼路が分かりづらかったので、やって来た男性に教えてもらう。町を出て暫く行くと、屋根つきの分相応のバス停があったので、ここでやっと小休止とする。エネルギー補充にバナナチップを食べておく。前の道路を勢いよく水を跳ね上げながら車が走り抜けて行く。

 人里離れたところで大音量で音楽をかけている一軒屋があった。人が集まっている風でもないからフィエスタと言うのでもなさそうだな。やばい人が住んでいるのかな。ここで反対方向からやって来た巡礼と出会ったので雨の中、立ち話をして気を紛らわすことができる。ソロのブラジル人男性で、今朝はコインブラを出発してきたそうだ。目指すは勿論ファティマ。逆ルートを歩く人の殆どは二人連れなので、ソロは非常に珍しい。お互いにずっと雨の中を歩いている同士なので普段より親近感が5割増し。ブエンカミーノと言いあって別れる。

 雨の中を5時間弱歩き、もううんざりなのでセルナーシェのショートコースに決定する。アルベルゲは情報どおり巡礼路の道筋にあったが、扉には電卓みたいなボタンが並んでいて秘密の番号を押さないと開かないらしい。電話番号も書かれているが携帯は不携帯。ま、ここにいれば誰か助け舟がやってくるだろうと軒下で気長に待つことにする。

 すぐ近くにはスーパーがあったので、ちょっと下見に行った帰りに通り反対側から男がやって来た。この人が管理人で、どうやら私が待っているのを見つけたので来てくれたようだ。最初からとてもフレンドリーで笑顔を絶やさない。ファティマの管理人に見せてやりたいよ。謎の番号はボタンの端っこを5つ辿って押せばいい覚えやすいものだったのでメモは不要だ36987。すぐ中を案内してくれ、ベッドルームは小さいのが3つ。どれにしてもいいそうだ。キッチンは電子レンジもコンロもばっちり使えて完璧。多くは安全な電気コンロだが、ここのはガスの元栓を捻ってマッチで点火する旧式だった。洗濯機はないが、手洗いしたら乾燥機は自由に使っていいそうだ。手で絞るのがすっごい大変なので、これはとても有難い。スーパーは1時にクローズされるから、先に買い物に行った方がいいと助言される。

 今日も1リットルビールは外せない。オレンジ色のジャガイモ、玉ねぎ、人参にヨーグルト4と非常食用に干しぶどう。スープの味付け用にトマト味の豆の缶詰を買ってみる。合計で8.82ユーロ。干しぶどうはどこでも高目なので合計を押し上げられた。アルベルゲに戻って中鍋にスープを山盛り作る。缶詰だけじゃ味が薄いので、キッチンに備わっていた塩と持ち歩いているスープの素も足してみる。隣のしゃれた談話室で一人だけの宴会。とても充実した気分だ。いっぱい作ったスープの残りは明日の朝食用として取っておくので朝飯の心配はない。

 午後、チェコのパベルが到着してきて私と同じ部屋に落ち着いた。フルネームは Karnik pavel と言うそうだが、チェコでは日本と同じく後ろがファーストネームだそうなのでパベルと呼んでいる。パベルも倹約旅をしているが、午後に到着したからスーパーがクローズしてしまったので買い物ができなかった。食べるものが無いと沈みがちだったので、取って置いたスープを提供してあげる。恐縮して「これはあなたが朝に食べるのでは?」と言ってきたが、ノープロブレムだ。喜んで食べ始めたが、味が薄かったのか塩を追加してるな。チェコ人はショッパイもの好きなのか?嬉しかったようでスープの写真まで撮っている。お礼の積もりなのか、持ち歩いている1リットルビールを半分飲ませてくれる。これは栓がすでに開いていたので、栓抜いて持ち歩いてるのかパベルは?まぁキャップ式の栓なので問題ないけど1リットルビールは重たいだろう。パベルとはこれで3回一緒のアルベルゲになった。

 ポルトガル第二の都市ポルトから巡礼路は3本に分かれる。私は2年前に真ん中のセントラル・ルートを歩いたので今回は海沿いのコスタ・ルートを歩く予定だ。パベルはセントラルを歩くと言うのでアルベルゲ情報を教えて上げる。ポルト到達はまだ1週間も先になるが、不安なのか一生懸命にメモをしている。最初に一緒の宿になったアザンブジャでも翌日の巡礼路をとても心配してたので連れって上げたし、結構慎重派のようだ。

 明日はコインブラ。歩く距離が短く早く到着するので観光みたいなことをしようかな。ちょっと楽しみ。


ポルトガルの道14につづく