ポルトガルの道15   雑魚寝のアルベルゲ Mealhada

6月12日  日本出発から52日目
 コインブラの修道院付属アルベルゲ。キッチンでパンにトマト、ヨーグルトにインスタントコーヒーの朝飯を食べて7:10に出発。入ってきた逆コースで出ようとしたら通り道になっているカフェの入り口がロックされている。考えたらそうだよな、無人のカフェ店内を自由に入っていい筈がない。じゃぁ出口はどこだ?考えられるのはひとつしかない。昨日、博物館に行くために入って行った穴倉の通路だ。ジャンバルジャンが逃げたような石段を降りていくと(想像です)、博物館に至る前にも扉があって、そこが開いたので無事に脱出に成功。こんな説明なかった気がするけど、言葉が分からないので気がつかなかっただけかな?

 空は曇天。橋の手前には大型バスが停まっていて、フロントガラスには大きく「素敵なポルトガル8日間」の文字が!へー、阪急だよ。日本のツアーがコインブラに泊まったんだ。日本人と会ってお喋りしてみたいけど、こんな朝早くでは誰もいる訳がない。

 橋を渡りきると、大きな通りは通勤ラッシュ本番。たくさんの人が歩いている。ちょっとヤバそうな男から「セニョール」と声が掛かったがそのまま歩き続けると後ろから同じ男が「ヘーイ」とまだ声を掛けて来るが知ったこっちゃない。こういうときは立ち止まらないように習慣付けている。何か用事でもあるかと相手をすると何が出てくるのかな?ちょっと興味があるけど君子危うきに近寄らずだ。

 大きな川沿いを歩いているが黄色い矢印はまずまず出てくるので大丈夫。たまーに矢印が見当たらない場所も出てくるが注意深く遠くまで目をやると、だいたい見つけることができる。大事なのは、どっかに矢印がある筈だと信じて、時には50m先まで見渡すこと。ま、それでも見つからない時は仕方ないから勘を働かせるしかないが。平らな川沿いをグイグイ歩けるので距離を稼げる。

 坂の町 Trouxemil に9:20に到着。2時間歩いたのでカフェで小休止とする。もう今日のノルマの5分の2くらい歩けた気がする。すぐフィリップスもやって来る。このカフェには果物を売っていたので、ぼたんきょみたいのを1個買ってその場で食べてみる。0.15ユーロと格安。パベルがこちらに気づかずに前を通り過ぎようとしたので声を掛けたら寄ってきた。このカフェは道の目立つ所にあるので、その後も5人の歩き巡礼が寄って来る。意外なほど巡礼がいるようだ。大きな町から歩きスタートする巡礼は多い。きっとコインブラを出発地点に選んだ人たちかな?

 メアリャーダ市内に入る。ここは子豚の丸焼きが有名らしく、道沿いには子豚の丸焼きを作っているアズレージョまで建っている。写真は、その子豚の丸焼きを売りにしているレストランらしいが、節約巡礼の私には無縁だ。暫く行くと、印刷してきた地図に手書きで付け加えた市内図と家並みが似ている。アルベルゲの近くに来たと錯覚して横道に逸れて駅まで行って探すが見つからない。じゃぁ GPS の出番だ。GPS 電波キャッチがいつも遅いので、こっちに来る前に GPS 関連のアプリを追加してきた。maps.meと連動して電波の捉え具合を知らせてくれるアプリ。キャッチ迄の時間はまちまちだが、宇宙に散らばっている沢山の衛星からの電波をキャッチした順に知らせてくれる。全ての衛星電波をキャッチし終わると、それが maps.me に反映されて現在地が示される仕組みだ。それまでは単に maps.me の画面だけ見て「遅いなー、止まってんのかな」と思うだけだったのが、このアプリで電波キャッチの進捗状況が見られるので遅くても待っていられる。ただ、余りに遅いとやっぱり途中で諦めてしまうが。

 アルベルゲはまだ暫く先なのが分かったので市内を通過する。Selnadelo 町入り口にネットで見ていたのと良く似た施設が現れたので、お、これがアルベルゲかと思ったが違った。でもすぐ目的のアルベルゲを発見。私営で大きくて奇麗な施設だがまだ準備中らしく数名の従業員が出たり入ったりして動き回っている。庭先に座って待っていると、昨日のアルベルゲで一緒だったイタリア婦人がスタンプ貰いに寄って来たけど、ここには泊まらないそうだ。従業員の人たちは私が待っているのを見てるのに、案内するどころか誰も声を掛けて来ないのに腹が立って、そんならいいやと歩き出してしまう。

 町を通り越して森の中に入っていくと、さきほどのイタリア婦人が立ったまま盛んに携帯でお喋りしている。その横をオラと一声掛けて通り過ぎると、携帯で喋りながら付いてきた。ずーっと延々と喋り続けている。よくもまぁあんなに話すことがあるもんだ。

 この人は今晩の宿をボンベイロなんて言ってるので、自分が目標にしているセミナリオの他にそんなのがあったのか!?消防署には一度泊まりたかったので、もし泊まれるならそこにしようと思った。この人は歩くのがすこぶる早いので、少し離れた所をストーカー宜しく離されないように付いていく。でもガイドブックを持っていないのか、時々道が分からなくて立ち止まっているな。向こうから逆方向に行く巡礼がやってきたので二人して尋ねるが、どうもはっきりしないし黄色い矢印も見かけなくなってしまった。このイタリア女性はとてもマイペースの人で、私にはお構いなしに居ないのと同じように振舞う。もう一人の年配女性はどこに行ったんだろう?あっちの人の方が社交的だったな。

 次の町にはボンベイロを示す看板があったので、ここのことかなと思ったが、女性が目指すのはここではなかった。二人とももうすっかり迷子モードに入ってるので、家族連れにカミーノを尋ねたら親切にスマホで調べてくれる。教えて貰った坂を下ったところにやっとカミーノの道標を発見する。女性に「あったよ」と伝えたら「ドルミール(寝る)」と一声言って別方向にさっさと行ってしまった。どっかホステルでも予約してるんだろうと、自分は道標に従って歩き出す。(実はこの道標をまた見つけてしまうというポカに気づくのは明日だ)。

 30分ほど歩いたところで、そろそろ目的のセミナリオが近づいたんじゃないかなと GPS で検索。ガーン、すっかり通り越していた!!まいったな、途中で GPS 出しゃ良かったよ。目的のアルベルゲは巡礼路から大分外れた村の中なので、その手前からの道順はシミュレーションしていた。しかし通り越してからの道順は予想外なので非常に分かりづらい。現在地から目的地までの道順をタブレットに検索させて、その通りに歩くことにする。こういう時にバッテリー切れになると困るが、まぁ今回は大丈夫そうだ。

 通り過ぎた道を戻るのは気が滅入るがそんな事は言ってられない。タブレット片手にうんざりしながら歩いていくが、それでも20分で目的の村が見えてきた。maps.me は良くできていて、田舎道なのに地図どおりに進むことができる。

 セミナリオ前に到着したが、広い施設なのでどこがアルベルゲ入り口なのか分からない。地元の人に教わりながらぐるっと脇に回って到着。幼稚園の入口があって、退園時間なのか、大勢が賑やかにお迎えに来ている。その晴れやかな門から脇に入った隙間にひっそりとアルベルゲ入り口はあって、無骨な鉄扉を開けて入り、更に薄暗い抜け道みたいな所を通過して行くのでテンションが下がる。

 受付ではパスポートなどのチェックはなくて、単純にスタンプだけ押してくれる。やっぱり修道院なので疑うことはしないのだろう。4時半と遅めの到着。ここはドナティーボだったので5ユーロを寄付する。受付してくれたシスターに、もう使う可能性がない「ほっかいろ」を2個上げたら、次にやって来た巡礼にすぐ上げようとしてた。そんなにいらないんか!でも私の居ない所でやってくれないかな。幸い(?)その巡礼もいらないと断っていた。

 ベッドルームはマットレスが敷かれただけの簡単なものだった。昨日のコインブラで一緒だった3人が既に入っていた。その中にあのイタリア姉ちゃんもいたので、別人がいたのかと本気で思った。だってこの姉ちゃんは私とは別方向に歩いて「ドルミール(眠りたい)」と言ってたよな。あれはホステルを予約してあるんじゃなくて、ここで眠りたいってことだったのか!だったら一言、こっちにアルベルゲがあるよと教えて貰いたかったよ。昨日から薄々感づいてはいたが、ちょっと普通の感覚ではない女性のようだ。

 シャワー・洗濯を済ませて食堂探しに出かけていく。今日は久しぶりにまともな食事がしたかったが、教わった辺りにはそれらしいのが見当たらない。仕方ないのでイートインコーナーが広く充実しているパナデリアでビールと肉が挟まったパン、それにピザを一切れで3.5ユーロ。パンはロクなもんじゃなかったな。本当にパンの専門店か?

 この店は通りに面した壁一面がガラスになっていて外が見える。目の前の道路に乗用車が停まったかと思ったら5人の若者がバラバラと降りてきてトランクルームからバックパックをおろし出した。どうやら巡礼がキセルをしたらしい。食べかけのまま出て行ってアルベルゲの方向を教えたる。後になって考えたら、この5人の若者は途中のカフェに後からやって来た5人組じゃなかったかな?若いのに根性のないやつらだ。

 帰り道、雑貨屋で500mlの缶ビールとヨーグルト2、塗るチーズに時々買っているクックテイルと言うつまみで6ユーロ。アルベルゲに戻ってビールを飲んでいたら、昨日一緒だったおばちゃんと若い娘の二人組みが到着してきた。19:40の到着とは恐れ入る。アルベルゲが万床だったらどうするんだよ。幸い、マットレスは二人分が残っていたので事なきを得る。ポーランドからの二人で、このあとポルトからは2年前に私が歩いたセントラル・ルートを歩くと言うのでセントラルのアルベルゲ情報を教えてあげると真剣に聞き入っていた。

 寝る部屋はここひとつだけかと思っていたが、団体が到着したら別の部屋が開放された。へー、今頃団体の到着と言うことは、予約でもしてあったんかな?

 車でキセルした若者達がベッドルームで遅くまでお喋りしているので腹が立った。特にメタボ男の低音が部屋に響く。こういうときは「びーくわいえっと」とか言うのかなと想像してみるが、それ言う勇気が出ないので我慢。連中は若者なのにキセルしての到着なので疲れてないんだろう。静かになったと思ったら、今度は別室の団体がシャワールームでお喋りを始めた。それも中々終わらないので、あの変人のイタリア姉ちゃんがドシドシと足音を立てて文句を言いに行ったな。帰りしなに「シャラップ」と言って息巻いている。

 今日は成り行きから少し冒険してしまい、予定のアルベルゲを通り越して9キロ以上余計に歩く羽目になった。おまけに道を間違えて40分遠回りして修道院付属のアルベルゲに到着。38キロ以上を歩いてしまった。歩数は55、000歩オーバー。今回の最長かな。


ポルトガルの道16へつづく