ポルトガルの道18   不思議なアルベルゲ Sáo Joáo da Madeira

6月15日  日本出発から55日目
 このアルベルゲは別料金で朝食を出すので、頼んでいない私は朝飯を食べずに7時スタート。フィリップスは相変わらず出発が早い。霧雨になってきたのでザックカバーを装着。合羽は暑いので着ない。途中にあったバス停で昨日仕入れたバナナを2本食べる。

 1時間歩いたところに線路脇を歩く巡礼路が現れる。これ歩いて大丈夫なんかなと思うが、いくら何でも現役の線路脇を歩かせないだろう、危険すぎる。きっと廃線じゃないのかな。

 1時間半歩いた道端にパナデリアがあったので寄っていく。パナデリアだかパステリアだか良く分からなくなってきたけど要するに飲み食いできるパン屋です。カフェコンレチェと甘いパン。シンプルだけどとても美味いパンだ。両方でも1.65ユーロ。こういう店が朝見つかると、とても便利。店の前には柵で囲まれた池があって、中にはカモの親子が暮らしていた。猫にやられないのかなと心配になる。

 Oliveira da Azemeis の町の出口で一本道を間違えてしまい20分迷う。次の村でカフェコンレチェ。パンが食べたい所だが、ここんちにはないので昨日仕入れたアーモンドで腹を繋ぐ。


 次の町には家々のベランダなどにマネキンサイズの妙な人形が飾られていた。完成度の低い人形なので、どうも案山子のようだ。やがて市庁舎らしい建物に差し掛かると、ここにも大量の案山子が並べられている。ポスターも出てきたので、やっぱり案山子を題材にした祭りらしいのが分かった。きっとそれなりの謂れがあるんだろうが、それを知る術がない。

 町の角で何度も会うN1ホステルで一緒だったソロのおっさんとばったり。会うのはこれで4回目かな。また一緒に歩き始める。今晩の宿を聞いたら、ホテルを予約してあるそうだ。そう言えば一緒になる割りにこの人とはアルベルゲで一緒になったことがない。試しに「いつもホテルを予約して泊まっているのか?」と聞いたら当たりだった。おっさんリッチマンだったのか。そう分かると身に着けている物もどこか高そうに見えてきた。安い公営のアルベルゲ目指してばかりの私からは考えられないけど、ホテルに泊まり続けて巡礼する金持ちだっているんだろなと想像することもあった。この人がその本人だったのか。私もアルベルゲがない時は仕方なく安く泊まれるホステルを利用するが、15ユーロから25ユーロの間が平均だ。ホテルってその数倍するんだろな。私なら破産だ。

 目的の町に入ると、おっさんは道行く人にホテルの方向を聞いて、じゃここでな感じで別方向に行ってしまった。今日の私の目指すアルベルゲはこのまま巡礼路を行って少し外れた所にある筈だ。早めにタブレットを出してチェックする。普通のアルベルゲとは違うようだけど、大きそうな施設なので泊まれるだろう。通りに巨大なショッピングモールが現れたので、ぼちぼちアルベルゲが近づいた筈だ。そこから10分ほど歩いた所にそれはあった。大きな施設で、見た感じ病院ぽい。

 Santa Casa de Misericordia このアルベルゲは不思議ベルゲ。入っていくと車椅子の人達が沢山いるので病院にしか見えない。アルベルゲの雰囲気はこれっぽっちもないので、受付の女性に「ここアルベルゲ?」と聞くと、少し待てとのこと。「ノー」じゃなくて「ウェイト」と言うからには泊めてくれるんだろうと半信半疑のままイスに座って待つことにする。周りにいる人達は全員病人や怪我人に見える。その中でポツンと座って待っている旅姿の私は周囲との違和感半端ねえ。やがて一人の女性が迎えに来てくれて施設の奥へ奥へと連れてってくれる。あ、扉にホタテのマーク発見。やっぱりアルベルゲだったんだと確信する。通された部屋には既に見慣れたバックパックがあった。フィリップスが先着したようだが姿は見えない。ここも床にマットレスをベタッと置くスタイルだったが、全然オッケー。

 壁にポルトガル語で何やら色々書かれているので、施設の名前の一部を翻訳すると「misericordia = 慈悲」と出た。修道院か教会が貧しい弱者のために設けている救護院と想像したが本当のことは分からない。でも、普通の病院と違のは長い廊下を歩いて来る途中で目にした様子で何となく分かった。やっぱり想像通りの施設だと思う。日本ではあり得ない施設だ。巡礼にも「慈悲の心」で一晩の宿を提供してきたんだろう。何十年、或いは何百年も。宿代は寄附なので、いつものように5ユーロ入れさせてもらう。部屋はご覧のようなマットレスだけの簡易宿だが、寝るには十分。ただキッチンも食べる部屋もないのでそこは少々暮らしずらいかな。シャワールームは離れた所にあり、施設が広いこともあって戻るのに迷う始末。

 後で調べたら「misericordia 」は「レ・ミゼラブル」と言う有名な小説の題名と似ている。それはフランス語だが、やっぱり意味としては近かったようだ。欧米の言葉はどこか似ているので互いに習得し易そうで羨ましい。

 いつものルーチンの後、来るときに見かけた巨大モールを目指す。途中でパベルと遭遇。アルベルゲはあっちだよと教えてあげてモールの中へ。アルベルゲにはキッチンも食べるスペースもなかったので、ここで昼飯を食べることに決める。予想通り、モールの2階に上がっていくとフードコートがどっさりあって賑わっている。ビール大とベーコン・豚肉・チーズが挟まったボカディージョ。パンがカリッとしていてとても美味い。具も温かいのが嬉しい。合計で5.95ユーロと外食にしてはまずまず。

 1階へ移動して巨大スーパーへ。そこでフィリップスと遭遇。みんな考えることは同じなので行く先々で会う。500ml缶ビールと飲むヨーグルト、紙パックジュースにパン1袋で3.14ユーロ。帰り道、モールへ向かうパベルとすれ違う。やっぱあのモールへ行くっきゃないよね。

 あの若者5人組がアルベルゲから出て行くところだった。どうしたんだろう?グループなので断られたんかな(公営ではグループは断ることがある)。連中は騒がしいのでこっちとしたら幸いだけど、あれだけの人数で若いんだからどうにでもなるだろう。部屋に戻るとチャリの女性巡礼が入っていた。モニカ、イタリアからやって来たそうだ。おなじみになった年配のグループが来ればいいのにと思ってたが、今日は別のところに泊まるようで来なかったな、残念。写真は部屋のドアに書かれていたアルベルゲの印。サンチャゴとファティマ巡礼の両方が描かれていた。


ポルトガルの道19へつづく