ポルトガルの道19 パベルとお別れの日 Grijo 6月16日 日本出発から56日目 Santa Casa de Misericordia の不思議なアルベルゲ。泊まった4人全員が6時に起床、部屋の明かりを点けて出発準備を始める。パベルは隅っこのテーブルで黒パンを食べだした。イタリアのモニカは昼間は外に停めて置いた自転車を、いつの間にか部屋の前の廊下に持ってきていた。バックパックひとつで巡礼を続ける我々とは違って、自転車巡礼は駐輪場所には気を使うようだ。写真を撮らせてと言ったら普通に自転車の横に立っただけなので、ほらハンドルを握ってと注文をつけると嬉しそうに応えてくれる。 7:10出発。朝もやが凄い。一人で歩き出して、5分ほど歩くと昨日と景色が違うことに気づく。アルベルゲの門を出て右に行くと思い込んでいたが、実際には正面の道をまっすぐ行かなくてはならなかった。昨日、来るときと巨大モールへ行くときの2度も歩いた道なので慣れた気になっていた。その辺りが一番間違い易いのに、またやっちまった。また門まで戻って仕切りなおし。町を脱出しようとしているときに、先に出発した筈のモニカがブエンカミーノと言いながら追い越して行った。どっかで朝飯にしてたのかな。仲良くなっても自転車巡礼と再会することは不可能だ。 2時間歩いて Mala Posta の町にあった小奇麗なパナデリアで生オレンジジュースとパンで小休止。2.3ユーロ。やっぱり生ジュースは少し高いようだ。でも炎天下を歩いてるんだから、いつもよりビタミン補給は必要な気がする。 次の町の道沿いに、お馴染みになった大きなスーパーRiDol があったので食料調達していこう。大きめのヨーグルトの上に乾燥フルーツの細かいのが別容器で載った高級タイプを買ってみる。それと缶ビール。ベンチがあると良かったんだが、このスーパー駐車場にはそんな気が利いたものはなかったので、隅っこのコンクリートの上に腰掛けていただく。周りはゴミが吹き溜まっていて、食べるには宜しくない環境だが仕方ない。身なりもこんなだし、ホームレス一歩手前な気がしてきた。サンチャゴ巡礼を知らない人が見たら、それこそホームレスそのものじゃないのかな? この大きな道路の反対側をファティマへ向かうと思われる東洋人の女性が歩いていた。たぶん韓国の人だろう。互いに手を上げて挨拶する。あっち側を歩いてたら立ち話が出来たのにな。今日は誰にも会えてない。 12時半、Grijo の町に到着。アルベルゲが道端にある筈だが見つからないまま通り越してしまったようだ。地図を片手に考えていたら、買い物帰りらしい地元の婦人二人が離れた所から声を掛けてくれる「カミーノー?(巡礼路?)」と言うので「ドルミール(寝る)」と答えたらこっちこっちと連れてってくれ、そこはさっき通り越した建物だった。入り口の扉に労務者風のグループが並んで腰掛けていたのでまったく気づかなかった。婦人は「ほらどいて」な感じで座りこんでいた人をどかしてくれる。良かった、親切な婦人が通りかかってくれて。 扉は開いていたが、オスピタレロはいないので夕方にやって来るスタイルらしい。アルベルゲには猫の額ほどの中庭があって椅子とテーブルが設えてあるが、太陽が燦々と照らしているので幾ら日光浴が好きなヨーロッパ人でもこう暑い日には座る気にならないだろう。フィリップスが先着していたので同じ部屋の下段に寝袋を広げる。ちゃんとしたキッチンはあるが近くにはまともな店はないようだ。昨日は大きなスーパーがあったのにキッチンがなかったし、中々両方揃うと言うことが少ない。 フィリップスに聞くと、やっぱりこの辺りで店と名がつくのは隣のカフェだけでスーパーはないらしい。カフェに行って店の隅っこ畳1枚ほどのスペースに並べてある僅かばかりの中からバナナ1本に玉ねぎ1個、コーンの缶詰と瓶ビールを2本買って帰る。今日はスープ作りだ。キッチンには当然あると思ってた栓抜きがなかったので、フォークを使って王冠の端からコツコツ工夫して開ける。 あとからイタリアおっさん二人組みが到着し、最後にパベルがやって来た。2階には狭い部屋が二つでベッドも2段が2台ずつあるが、既に4人で下段は埋まっている。パベルも下段がいいので螺旋階段を降りた下の階にまだベッドルームがあることを教えて上げる。 明日はポルト到達の日で、パベルとは別ルートに別れる。心配性のパベルがまたポルトからのことを聞いてきた。ポルトには公営アルベルゲが3つもあって、セントラルルートを行くパベルには「このアルベルゲがセントラル・ルート上にあるのでいいよ」と詳しい地図で教えて上げる。私は海沿いのコスタ・ルートを行くので、同じポルト泊まりでも別のアルベルゲを目指すが、残念ながらコスタ・ルート上にはアルベルゲはなくて、少し脇に入らなくてはならない。 夕飯はキッチンで三人並んで手持ちの食料を食べることになった。私は食料が尽きていたので、また隣のカフェに買出し。今度は1ユーロのパンを1袋にりんご、トマト、ぼたんきょみたいのと、また瓶ビールを2本。果物は細かく切って皿に盛ったので少しは食事ぽくなった。またビールの王冠をフォークを使ってコツコツ開けだしたら、フィリップスが親指2本を使い、テコの原理でスポンと抜いて見せてくれる。 8時ころ、やっとオスピタレロがやって来てチェックインできる。7ユーロ。イタリアの二人組みはどっかに行ってたので無料になったらしい。幸か不幸かお陰でスタンプは押してもらえなかったな。 ポルトガルの道20につづく |