ポルトガルの道20 魔女の住処か? O Porto 6月17日 日本出発から57日目 5時半起床。キッチンへ移動して昨日の残りのパン2個とインスタントコーヒーで朝飯。十日以上に渡って仲良くしてきたパベルだが、この日を最後に会うことはなかった。ハグしてお別れする。 6:40スタート。前をフィリップスが歩いている。アルベルゲは巨大な修道院脇にあって、巡礼路はその修道院をぐるっと回るように続いている。行けども行けども修道院の高い塀が続き、塀の中には高い木がうっそうと茂っている。どんだけでっかい修道院なんだよ。 途中、逆ルートを行く日本人の方と会ってちょっと立ち話。ポルトガルの道で初の日本人巡礼だ。その後はずっと欝蒼とした森を暫く歩き続け、次の町のセルモンデのカフェで小休止。カフェコンレチェ0.8ユーロ。コーヒーにはいつも袋の砂糖が2個付いてくるが、いつも2個共入れてしまう。エネルギーの元。休んでいる前をフィリップスが通り過ぎて行った。 歩き出すと地元のおっちゃんが話しかけて来てくれて、自転車を転がしながら暫く一緒に歩くことになった。巡礼に興味を持っているのか、それとも自身も巡礼を経験したのかは言葉は殆ど通じないので不明。おっちゃんが入って行ったカフェを見ると、昨日のアルベルゲで一緒だったイタリアの二人連れが休んでいたので互いに手を上げて挨拶しながら通り過ぎる。 山を下って行った先に街並みが見える。ポルトかと思ったが、本物のポルトはそこから丸1時間歩かなければ現れなかった。10:40、ついにポルトに到着~。これでポルト4回目って、もっと他の外国に行けよって声が聞こえてきそうだ。ドンルイス一世橋が巡礼路になってる筈だが、市内に入ったら黄色い矢印がなくなってしまった。まぁ賑やかな道を選択していれば橋に到達するだろうと歩いていくと、またフィリップスを発見。すぐドンルイス一世橋が目の前に現れた。テンションが上がって一緒に写真を撮りっこして分かれる。フィリップスもポルトからはセントラルルートを行くようだが、回り道するようなことを言ってたな。どこに行くのかはハッキリ分からなかった。 自分的にはポルトガルの道の行程は三つに分かれている。まずリスボンからファティマへのルート、次にファティマからポルトへの行程。最後はポルトからサンティアゴへの行程。統計的にはポルトから巡礼の数は倍になる。それは、リスボンからポルトまではアルベルゲが少なく歩くには多少の困難が伴う。それに比べ、ポルトからサンティアゴ迄はアルベルゲも安定してあるから歩きやすいのがその理由だと思う。2年前にポルトからサンティアゴ迄、セントラルの道を歩いたので今回は海沿いのコスタを行く。分かれた巡礼路は途中からまたひとつに合流するが、なるべく違う道を歩きたいので今回はポンテベドラから更に珍しい道のスピリチュアルの道と言うのを歩く予定だ。ポルトから歩く人でこの道を選ぶ人は数パーセントくらいだろう。珍しい道なので情報が少ないのが気がかりだが、途中途中で一生懸命に調べたお陰で幾らかの情報を仕入れられた。本ルートだと2日の行程だが、スピリチュアルルートだと3日掛かる。でもアルベルゲが2箇所にあるのが確認できたので不安はほぼ解消された。 ポルトのカテドラルは巡礼路沿いにあるので寄って行く。中ではスタンプが貰える筈だが、今日はまだ係がいないようだ。聖堂のベンチに座って待っていると、同じバックパックを背負った仲間がやって来た。「スタンプが欲しいね」と言うサインを互いに送りあう。ばあちゃんがやって来て、この人がスタンプを押してくれるようだ。コインブラで新しいクレデンシャル(スタンプ帳)を手に入れたが、なるべくスタンプのスペースは節約したいのに、婆ちゃんは行の中心にポカンと押してしまう。せめて日付だけでも端っこに書いて貰えると同じ行にもうひとつ押せるので、指で「ここね」と2回も示したのに、やっぱり中心に堂々と書かれてしまったので一行に1つしか押せなくなってしまった。まぁ言葉が通じないんだから仕方がない。スタンプ無料だし。 ポルトに来るたんびに訪れているサンベント駅だが、歩く途中にあるので今回も中に入ってみる。構内には大きなアズレージョが壁面いっぱいに施されていて、確かここも世界遺産。無料で世界遺産が見られるのってありがたい。続いて道沿いにあるクレリゴスの搭がある教会へ。搭に上るにはお金が掛かるので、今回は下の教会だけ入ることにする。ここのマリア像は日本的でおだやかな顔をしてるので大好き。近くには世界で3番目に美しい本屋があるが、本屋なので本を売るのが本業なのに入場料を取るのが気に入らないので今回も入らない。 次に世界1狭いと言われる建物を(有料)外から見る。何でこんなに狭いのを建てたかと言うと、両脇の建物は男女の修道院で、男女修道院の建物同士が隣り合ってはいけない決まりがあるからだそうだ。なので形ばかりの建物が必要だったと言うアホみたいな話。脳が動脈硬化か。 入口も扉一枚分の幅しかなくて、それが建物の幅。チケットを売る人も建物の中に入れないから入口に立ったまま客待ちをしている。こんな中に金出して入る人いるのかなと疑問だったが、やっぱり入っていくモノ好きはいないようだ。隣の教会に入ってみると、ミサをしていたので満員だった。狭い建物も無料にすればみんな入るのに。 今回ポルトで見たかったのはこんなもんかな。昼飯が食べたいのでうらぶれたカフェに入る。ピザ1切れと名物のバカラオのクロケッタ(コロッケね)とビールで6ユーロと少し。バカラオはバカリャウとも言うらしいが、ポルトガル名物の干し鱈です。前々から食べてみたかったけど、繊維が多過ぎて真綿を食ってる感じ(真綿食べたことないけど)、期待に反して美味いもんではなかった。 さて本日のアルベルゲを目指そう。多少遠くても歩いて行けばいいので時間は掛かっても気楽。一応、アルベルゲの位置はタブレット地図に登録してあるが、坂が多いので今回はちょっと複雑だ。リスボンで迷った二の舞にならないように注意しよう。しばらく歩いて、そろそろ分かれ道かなと感じたのでタブレットを取り出して確認する。そしたら現在地がその分岐点で、歩いてきた道路と並行して続く道が2本。同じ方向に続くがうち1本は坂を上がるものだった。これだから坂の街は迷うのだ。早めのタブレット確認が功を奏した。次からもこれだ。 急な坂を上って行って角を二つみっつ曲がると教会があり、アルベルゲは棟続きらしい。12:40、アルベルゲ前に到着。だが、ホテルと見まごう程の立派さに若干びびり、もしかしてこの隣りにあるのかなぁと通り過ぎて確認してみるが、やっぱりこの立派な玄関がアルベルゲらしい。玄関にはアルベルゲとはどこにも書かれてなくて、CASA何とかとあるだけだ。恐る恐るフロントに行って「アルベルゲ?」と尋ねると正解だった。こんな立派なアルベルゲがあるんだなぁ、さぞやベッドルームも立派なんだろなとテンションが上がる。チェックインが済むと、何やら意味不明なことを言ってるようだ。坂を下りてゲートがあるから下へ下へ行くように言っているらしい。スーパーの場所でも教えてくれてるのかなと思ったが、どうもアルベルゲはこの立派な建物じゃなくて別の建物のようだ。この建物はホテル部門で、アルベルゲの受付も兼用してるだけだったのだ。期待して損した。 言われた通り、坂を下りていくと頑丈なゲートがあって、今は開け放たれていた。そこから入っていくと遥か下の方にネットで見ていたすんごい建物が見える。あっ、あれかー!その建物は谷底の河原に建っているような小さい建物で、まるで「ハウルの動く城に出てくる魔女」が住んでいるようなおどろおどろしさを感じた。今まで沢山の小さいアルベルゲに泊まって来たが、こんな劣悪とも言える環境のところは初めてだ。一軒スラム? 石段で谷底に下りて小さなアルベルゲに行く途中、近くにある集合住宅には危なそうな連中が数人でたむろしているのも気になる。預かった鍵で扉を開け、怖いからすぐ中から施錠した。まぁ中に入ってしまえば外から見たのよりはマシな建物のようだし、キッチンも一通りの物が揃っているので良いかな。一番乗りなので好きなベッドをゲット。暑い日なのでシャワーの前にスーパー探しに行こう。近くにはなさそうなので、きっと帰って来たら汗びっしょになるだろう。 Maps.meを頼りに、くそ暑い中を歩き続けて見つけたスーパー。中には沢山のフードコートがあるものの食料を買える店は皆無だった。スーパーはスーパーでもスーパーフードコートかよ。一瞬ここで食べてもいいかなと思ったが、気を取り直して別のスーパーを探しに出て行く。離れたところに「何トカShoping 」と書かれたビルを発見。外から見ただけではファッション関係のビルかとも思ったが、だめ元で入ってみる。色んな店舗が入っていたが、吹き抜けの地下を見るとスーパーFroiz を見つける。おっやったー。冷えた1リットルビールもあった。バゲットパン、ヨーグルト4、カット野菜に玉ねぎのインスタントスープの素、ファンタオレンジに、珍しく1リットルミルクも買ってみる。疲労骨折もどきがぶり返さないようにカルシウムは大事。こんだけ買っても6.25ユーロと格安なのが嬉しい。3キロ以上にもなった重たいレジ袋を提げて、フーフー言いながら暑い道を戻っていく。 鉄格子で出来たフェンスは今度は閉まっていた。ボタンを押せば開くと教わっていたので押してみると向こうからはカメラで確認できるようでインターホン越しに何か言っているようだ。クレデンシャルがどうとか言ってるので、面倒でもレセプションに行こうと歩き始めると向こうからやって来てくれる。クレデンシャルを一時預けて、翌日鍵をレセプションに返したときに交換でクレデンシャルは戻すと言う事らしい。あー、こんなスタイル前にもあったな。およそ1ヵ月半前に泊まったユースホステルがこのスタイルだった。暑い中、うんざりしながらまた長い石段を往復する羽目になる。でも、クレデンシャルを持ってレセプションに向かう途中で、アルベルゲに向かう女性巡礼と遭遇。良かった、あの魔女が住んでそうな建物に一人で泊まらなくて済んだと嬉しくなる。彼女はマリア、スペイン人で年は30歳くらいかな。ベッドルームは1回と地階にあるが、私と同じ部屋を選んだ。いびきはかく?と聞いてきたのでノーと言うと、彼女は少しかくそうで「だいじょうぶ?」と。へー、女性でメタボでもないのに鼾をかく人がいるんだ。まぁ少し位なんでもない「てんごのーぷろぶれま(問題ない)」と安心させたげる。 ドイツのおばちゃん二人組みも入って来たし、ソロの若いイタリア女性もやって来た。初めに受けたアルベルゲのおどろおどろしい印象は一変して賑やかで楽しいアルベルゲになった。やっぱりポルトから出発する人は多いんだな。全員がポルトのスタートだった。 Wi-Fi しにレセプションに行ったら、スペイン人の男性二人組みがチェックインしにやって来た。若い方は英語を話すので簡単英語でお喋り。感じのいい人だった。やっぱりこっちのアルベルゲに泊まる人はみんな海沿いのコスタルートを行くようだ。ときどき一緒になると楽しいなと思ったが、その後は誰とも再会しなかった気がする。 今回、4月後半から歩き始めて歩いた距離の合計が千キロを越えた。あと450キロほど歩いたらおしまい。日本に帰るのも1ヶ月を切ったので、これからは終盤に向かう気分でちょっと気楽になる。 ポルトガルの道21へつづく |