ポルトガルの道22   久しぶりのふたり Marinhas

6月19日  日本出発から59日目
 キッチンに行ったらマットレスで寝ている人がいたので音をたてないように朝飯を軽く食べる。もう一人やって来て同じように朝飯を食べている。

 6:20出発。日中がとても暑くなって来たので、これからは少し早めにスタートしよう。矢印を見失うが、ここらは海から離れなくちゃオーケーなので心配することもない。景色が良いのに加え、迷いずらいのは海沿いを行く巡礼路のメリットだろう。手持ちのユーロが50を切ったので少し心細くなってきた。明日にでも追加キャッシングしたい。

 7:50、まだ涼しくて快適に歩いていられる。特に左は海、右はビルが立ち並ぶ海岸通りの道はビルの日陰で涼しい。ポボア通りにおばちゃんが切り盛りしている小さな八百屋があったので、ネクタリンとコーラで1.25ユーロ。海岸沿いの涼しいベンチでコーラだけ飲んでみる。この海岸通りはやたらとベンチがあるので休むには便利だ。その脇を数人の巡礼が通過していった。

 しばらく歩くと日が高くなってきた所に加え、海を離れて田舎道になったので尚更暑い暑い。特に耳が熱を持ったようにカッカと暑くなる。日陰になっているラウンドアバウト交差点に座りこんでネクタリンとバナナを食べて休憩していたら女の子が寄ってってくれる。「あれ、日本人?」と聞いたらコリアンだった。私はほぼ9割の確率で日本人と韓国人を見分けられるが、私が間違えるくらい日本的な顔立ちをしている。ここは田舎道なのでラウンドアバウトも舗装されてなくて、二人して地べたに座り込んでお喋りする。この子もソロで歩いていた。コリアの巡礼は団体が多く、多いのは圧倒的にフランス人の道だ。ここポルトガルの道を歩くコリアンは少なく、いても団体は見当たらない。こんな若い子が遠く離れたスペインで一人で歩くなんて勇気があるなぁと感心する。今日はどこに泊まるのかまだ決めていないそうだが私はマリンハスだよと教えておく。

 また暑い暑いと言いながら歩き続けて、村に雑貨屋があったのでSuper Bock の缶ビール0.85ユーロを買って前にあった石のベンチで小休止。スペインには色んなビールメーカーがあるが、ポルトガルではこのスーパーボックが一人勝ちの気がする。ここは日陰になっているけど日陰以外では休む気がしない。

 さっき休んだときにGPSで位置を確認して目的地との距離を測ったら10キロだった。それから30分ほど歩いてるので、残りは1時間半ほどか。もうひと踏ん張りだ。今日は八百屋と雑貨屋で買い食いしただけで、カフェで休んでない。店で買ったものを飲み食いするとカフェの半額で済むから、ユーロが残り少ない中で経済的に済んでいる。カフェは金が掛かると言っても1回が2ユーロから高くても4ユーロとそれ程ではないが、長丁場なので油断はできん。明日はキャッシングしよう。

 1時半、マリンハス村に到着。歩いているとアルベルゲの大きな看板があったので矢印に従い立派な建物に入っていく。が違った。ここは診療所のようだ。非常に紛らわしい看板。何人もの巡礼がこの看板に導かれて訪問してくることだろう。この看板の10m先に診療所があって、アルベルゲはこの看板を無視して直進するのだった。アルベルゲの矢印は上向きにするとか、作り直した方がいいんじゃないのかね?

 そこから5分歩いただけでマリンハスの公営アルベルゲ「San Miguel de Marinhas 」到着。歴史を感じさせる石つくりのアルベルゲだ。ここのオープンは2時なので、5人の巡礼が木陰の涼しい所で開くのを待っていた。その中の一人が何やら両手を挙げて叫んでいる。え、誰?目を凝らして見るとジャンピエールではないか!!「ジャンピエールッ」と声を上げて再会を喜ぶ。ジャンとは10日前のアルベルゲ・ボニートで再会して以来だった。いつも相当日にちを明けての再会を続けているので不思議のようだ。

 時間になったのでぞろぞろと並んでチェックイン。ここは最安値の5ユーロだった。ベッドルームは2つあり、好きなのを選んでいいスタイル。シャワー・洗濯を済ませて談話室にある大きなテレビを見たら、これがなんとワールドカップ日本戦だった。驚いて「ジャパン!?」と声を上げてしまうと見ていた数人が「うんうん」と首を振った。あまりサッカーには興味はないが、これは見ないとでしょ。15分ほどでゲームセット、2対1で日本が勝利した。周りからは「コングラチュレーション」と言って貰える。

 オスピタレラに教えてもらって買い物に。小さな村だが商店やカフェが固まっている一画があって、既にカフェで一杯やっている巡礼もいた。暑くなってきたのでチーズやハムを持ち歩けなくなってしまった。なのでそれらを買ったら午後と明日朝で食べ切らなくてはならない。と言う事で、今回は定番の2つは買わないで、コーンフレークと1リットルの牛乳を買ってみる。大きなトマトとヨーグルト4、コカコーラゼロ。1リットルビールと白ワインが1.69ユーロと同額だったので、今日はワインを買ってみる。合計で7.04ユーロだったが、0.04ユーロは負けてくれた。袋代も取らないし、田舎の店は小回りが利く。ワインはアルベルゲの冷凍庫に放り込んで日記を書いてる間に冷えてもらう作戦。

 コーンフレークは食べやすくてヒットだった。ワインは発泡性のものでとても美味い。ビールと違ってワインの飲みすぎは良くないので、メタボの女性とドイツの女の子二人組みに一杯ずつ飲ませておしまいになった。みんなと片言英語でお喋りするが、もう少しマシな英語になりたいといつも思う。無理。

 6月も後半になってきたので大分暑くなってきた。荷物も減らしたいのでおんぼろになって来たホタテマークが入ったTシャツはそろそろ暇を出そうかな。4分丈の半ズボンも海パンで歩くようになったら捨ててしまおう。長そではフリースとポロシャツを持っているが、どちらか1枚あれば十分だろう。いつ捨てるかなんて大したことでもないけど、一応そのタイミングを考えてる。

 途中のラウンドアバウトでお喋りしたコリアンの子がチェックインして来た。どこで泊まるか決めてないと言ってたが、結局同じアルベルゲになったな。まぁ知り合いになった人が増える方が絶対に楽しい。この子の顔は日本人と良く似ているので、日本語が通じないのが不思議な感覚になる。うっかりすると日本語で話しかけてしまいそう。

 8時になってチャリのペアがやって来た。公営アルベルゲでは徒歩巡礼が優先される決まりがあるので、早い内のチェックインは遠慮してるのかも知れない。それもちょっと可愛そうな気もするけど、ベッドが満タンだと次のアルベルゲまで10km歩くのは2時間以上必要だが、チャリなら30分で行けてしまうので仕方がない。このときオスピタレラは不在だったので、「ベッドもまだ空いてるし、自転車はこっちに仕舞えるよ」と教えたる。父と娘のように見えるけど、下手に聞いて気まずくなるのじゃ不味いのでそっとしておく。

 2階にちょこんと設置してあった冷蔵庫の扉が少ーし開いていたお陰でその前のフロアが広く水浸しになっていた。泊めてもらった恩返しの積もりで、モップとバケツを持ってきてコツコツと水を移す作業をしてみる。誰のミスか知らないけど、掃除してるので傍目には私の失敗に見えるのかな?

 胃の調子がイマイチ。ワインはそんなに飲んでないので、牛乳の飲みすぎなんかな?コーラを飲んでもスッキリしないので持参の胃薬を1粒飲んでみる。

 ジャンピエールほか二人が石の上に座ってまったりしてたので仲間に入れてもらう。3人ともイタリア人だった。へー、イタリア人ってそんなに多くないけど、ソロ同士が3人も集まったんだ。初めて会うイタリア人には必ず言う魔法の言葉「ぴあっちぇーれ」を言うと必ず笑顔で返してくれたり握手を求めて貰える。女性は40歳くらいか、彼女がシャワールームから出てきた所で私の足の日焼けを見て悲鳴を上げた人だ。何気に見るとチンパンジーの足がこんな感じだったかな。そのための悲鳴か!?ごらんのようにクッキリすっきり日焼けしているが、まだまだ焼ける予定。この人のネイルアートが凝っていたので写真を撮らせてもらう。ごらんのように矢印とホタテ貝をあしらったカミーノ仕様だ。おみごと!


 驚くことに21:20になってやって来た二人の女の子がいた。一人はずーっと前のサンタレン・N1ホステルの朝食で一緒になった鼻にピアスの女の子だった。実に18日振りの再会。昨日は私が泊まったのと同じビラドコンデの同じアルベルゲ泊だったそうだが、気がつかなかったなぁと言ったら、「大きなアルベルゲだから」と返してきた。同じ距離を歩いたのにどうしてこんなに遅かったかと言うと、途中のビーチで泳いできたそうだ。さすが若者、よくそんな元気があるもんだ。

 あしたは26キロ先のViana do Castelo 。今年1月のツアーで寄った丘の上に大きな教会がある印象的な港町だ。ここには教会附属のアルベルゲがあるらしいので期待している。


ポルトガルの道23につづく