ポルトガルの道23   ジェントルマン? Viana do Castelo

6月20日  日本出発から60日目
 キッチンに下りて行ってコーンフレークに牛乳。パン少しとヨーグルトに〆はコーヒー。ジャンピエールはいつも食べずに出発するようだ。6:55少し遅めの出発。今の時間では既に太陽は上がっている。

 山の中からの出発なので村を抜けるとすぐ山道になる。今日は前を昨日のおばちゃんが歩いているので心強い。きっとおばちゃんもそう思っている気がする。おばちゃん頑張れ。と言っても、おばちゃんは私より20歳くらい年下かな?

 山の中の小さな村に私営のアルベルゲがあった。巡礼路から一段下がったこのアルベルゲは手作り感満載で、屋根の上には完成度が低いホタテのオブジェ。風が吹いたら倒れるんじゃないのかな。入口にはホタテ貝を首から下げたマネキンまで置かれているのでセンスの悪さが伺える。ガイドには記されていないので、ここを目当てに来る巡礼はほとんどいないだろうな。みんな一日の目的地を立て、そこを目指して歩くので、ひょっこり現れたアルベルゲに泊まるようなことは余りしないだろう。特にこの辺りは店もカフェも近くにないので尚更泊まるには不適当だ。アルベルゲとしてはやってけないんじゃないかな。きっと本職は他にあってアルベルゲは副業とみた。

 2時間歩いた村の外れに立派な教会があった。サンチャゴ像やファティマ関連の石像まで設置してある。こんな田舎の教会にしては不釣り合いと思えるほど立派だ。教会付近の手入れも良くしてある良い環境なので日陰に座って靴下まで脱いで休んでいく。足を乾かすのは大事。村はずれなので休んでいる間、巡礼も村人もだーれもやって来なかった。

 11時半、丘を越えて行くと街に入りだした。街の背後に覆いかぶさるようにある山の上には大きな白い教会がある不思議な光景だ。今日の目的地 Viana do Castelo の街と言うのはすぐ分かった。街には長い橋を渡って入るのだが、その袂にパン屋があったので休んで行くことにする。肉が挟まったパンとビールで2.1ユーロ。パンが美味かった。店の中から山の上の教会が良く見えている。今年1月にトラピクスのツアーで山の上までバスで上った教会なので懐かしい。あの山の上からこの橋の写真を撮ったのも覚えている。上からの眺めは最高だったが、今回はあんな所まで歩いて行く余裕はない。

 長い橋の狭い歩行者用通路を渡って街に侵入。ここのアルベルゲは地図で見ると複雑そうだったが、渡り終える前に橋下に下りる階段があって、矢印はそこから下に導いていた。下りてからもぐるっと回って橋の反対側に矢印は続いている。来る前に地図で見て迷いそうだなと思ったのは、橋を渡り終えてからの経路が複雑に見えていたからなのだが、渡り終える前の丁寧な矢印のお陰で迷うことなくViana do Castelo の公営アルベルゲに到着。案ずるより産むが易しだった。

 まだ時間前だが扉は開いていたので入ってみる。年配の男がいて、この人が管理人のようだ。いつもオスピタレロには会話のとっかかりの積りで「そいではぽん(日本から来た)」と先に言っている。すると「日本はグーッだ。チナは」と立てた親指を逆さにした。こういうのってたまにあるんだよね。だから日本から来たと言ってる訳じゃないんだが、日本人が礼儀正しいと言うのは世界共通の認識だと思う。ありがたいこってす。

 時間前に受付はしてくれたが、ベッドルームにはまだ入れないそうだ。バックパックはここに置いといていいよと言うので身軽になって昼飯を食べに行こう。近くのカフェでボカディージョとビールで3.5ユーロ。カフェなのに安かったな。食べ終わって外に出たら、昨日のアルベルゲでネイルアートしたイタリア姉ちゃんが道端でタバコをふかしていたのでお喋り。この人はもうひとつ先まで進むらしい。ブエンカミーノ。

 ここからの巡礼路が心もとないので明日の為に矢印を探すことにする。地下道を通って向こうへ行ってみるが、どうにも見つからない。ご婦人巡礼の二人が通りのテラス席で食事していたのでカミーノは?と聞いてみるが、この二人もはっきりとは分かってないようだ。仕方ないので帰ったらオスピタレロに尋ねてみようか。帰り道にあったスーパーでトニカと飲みたかったファンタオレンジを買ってアルベルゲに戻る。

 アルベルゲはまだ受付前だが、昨日一緒だったメタボのお姉ちゃんの他にも何人もが到着してきた。その内4人は昨日のアルベルゲで一緒だった人たちだ。この分だともっと来そうだな。チェックインが始まり、オスピタレロは私が一番の到着だったことを覚えていたので最初に受付してもらえる。6ユーロでバスタオルが渡された。へー、アルベルゲでバスタオル付きなんて珍しいな。自分のタオルを濡らさないで済むのはありがたい。

 さっきのスーパーにまた買い物に出かける。その前に路銀が心もとなくなってきたのでキャッシングだ。今回は200ユーロが限度だった。ATMでは200か300が普通だが、まれーにそれ以上を借りることができる。ATM 使用料がいくらか掛かるので、どうせなら多めに借りた方が何かと便利と思うが、それもATM 次第なので仕方がない。スーパーでは1リットルビール、ヨーグルト2、パン1袋にカット野菜で4.62ユーロ。キッチンに戻ったら冷凍庫に入れておいたファンタが消えていた。側にいたメタボの姉ちゃんも知らないそうなので、誰が飲んでしまったんだろう。ちょっと残念。

 昨日のアルベルゲでも一緒だった、イタリアの女の子もキッチンで何か始めだした。肩や足にタトゥーが入っていて服装もどこか飛んでいる。昨日は話す機会がなかったが、こうして一緒のキッチンにいるので話しかけてみると、この子は英語が堪能だった。エステル・ボッフェッリと、いかにもイタリアの名前だ。ちびまる子みたいにおでこの途中で髪パッツンしているが、実はこれはイタリアで流行っている髪型のようだ。今回がファースト・カミーノだそうだ。やっぱり歩きやすいポルトガルの道は初めての人がいるんだな。

 買ってきた野菜はいつものようなレタスが主かと思ったが、開けてみたらキャベツや人参だった。キャベツの千切りなら生で食べられるけど、大きめにカットされてたんじゃ困ったなと言ってたら、エステルが「それはスープ用だ」と教えてくれる。仕方ないので面倒でもスープを作ることにする。

 このベッドルームは昨日一緒だった人達がほとんどで、気安さがある。私は1番でチェックインしたのでお気に入りの下段ベッドを確保したが、夕方には全てのベッドがいっぱいになる。遅く到着して来たおばちゃん二人連れは上段しか残ってなかった。これがまた通常の2段ベッドより高くサイドの柵はなし、もっと悪いのは上り下りの梯が備わってなかった。上段ベッドになったおばちゃん、下りる時にエライ苦労をしている。もう一人の元気な方のおばちゃんが「ほら次はここに足を掛けて」と死んじゃいそうな大騒。

 私より年上に見えるし、あれじゃぁ大変だなと気の毒に思い、昨年、座骨神経痛で苦労してたときにギャエレが下段ベッドと交換してくれたのを思い出して自分の下段と交換してやろうと考える。その下段ベッドには若い女性のエステルがいるので、好き好んでエステルの上段ベッドに移るんじゃないよと言いたいから、一応、おばちゃんが大変そうなので交換してやろうと思ってると一声掛けておく。まぁ殆どは身振りでだけど。

 おばちゃんが戻ってきたところで申し入れてみたところ、どうも私が上段ベッドが好きなのかと思ったのか、良く分からないことを言い出した。それをエステルが聞いて、先ほど私が伝えたことを英語で上手に伝えてくれたようだ。やっとこちらの真意を理解してくれたおばちゃん「あなたがトイレに行くときに大変でしょう!?」とか言ってくれるが大喜びしてくれる。さらに「あなたはジェントルマンだ」とまで言ってくれるので、こんなこと位でジェントルマンと言われるのはくすぐったいな。でも少し良いこと出来たのでこっちも気分が良くなった。

 二晩一緒だった日本人によく似ている顔のコリアンレディーが到着してきたが、ベッドルームはもうひとつの方になったようだ。私は夜中に必ず1回はトイレに起きるので、上り下りが苦労の上段ベッドなので今晩は睡眠導入剤のお世話になって朝までグッスリする作戦。


ポルトガルの道24へつづく