ポルトガルの道31   一人じゃなかった Armenteira

6月28日  日本出発から68日目
 食堂に移動してヨーグルト、クロワッサン、トマト、コーヒーで朝飯。コリアの夫婦がブエンカミーノと言い残して真っ暗闇の中を出発していった。奥さんはいつもスカートにごつい登山靴、バックパックと言う勇ましいスタイルだったな。

 7:10、まだ暗い中を出発。数人が前を歩いているので嬉しい。でも今日はみんなとは別の道を行くので、その分岐がどこなのか模索しながら歩く。知らずに分岐点を通り越してずるずるとみんなと同じ道に入るのを避けたかったので、時々チェックしながら進むことにする。さて、分岐点と想像していた大きな橋が現れた。ここで地図とにらめっこして考える。地元の人がやって来たので、橋の名前を尋ねたら、この橋を渡っていけば自分が目指すスピリチュアルの道だと言うのが分かる。なんだ、じゃぁここもまだ分岐点じゃなかったのか。やっぱり前を行く巡礼の後に続く。

 これが今回歩く「 Variante Espuritual 」の地図だ。右の黄色い直線が一般的に歩かれる巡礼路で、途中の青い丸の Caldas de Reis アルベルゲで泊まることができ、合流地点まで2日間の行程。見て分かる通り平らな所が多い。赤い線がスピリチュアルの道で、こっちを行く人は全体の数パーセント程度と思われる。水色の丸がアルベルゲの位置で、ちゃんと手頃な距離にあり全体で3日間の行程。こっちは山越えが幾つか出てくる。海上の青い線はボートに乗ることもできるが、私はここも歩く予定。3日目の行程は赤い点線で書かれていることから、ここを歩く人は更に少なく、ネットでは9割の巡礼はボートを利用すると怖いことが書かれている。矢印があるかちょっと心配。

 橋を渡って進んで行くと分岐点があるらしいので、今か今かと目を配りながら歩いていくと、ちゃんと目立つように分岐の看板が登場する。あったあった、ネットで見ていたのと同じ看板だよ。ちゃんと見落とさないようになっていた。看板の写真を撮っていたら、ロシアのカップルが追いついてくる。Variante Espiritual ルートの説明をちょっとして「自分はこっちに行くんだけど、二人もどう?」な感じで誘ってみたけど、この二人はやっぱり直進する普通の道を行くようだ。ま、そうだよね。分岐はあちこちにあっても大体がその日のうちに合流するのが多い中で、ここは分かれると合流は3日後なので予定になかったら行かないよね。


 そこへ今度はエステルがやって来た。エステルはスピリチュアルの道を歩くようなことを言ってたので期待を込めて「エステルはこっちに行く?」と言ってみたら、普通の道を行くことに変えたそうだ。じゃあここでバイバイだねと言うと、サンチャゴに到着したあとは互いにフィステラの道を行くのだから、また再会するだろうなことを言っているようだ。そんな旨く行くかな?こんなやり取りを分岐点でやってる間にもパラパラと巡礼は通り過ぎて行くが、スピリチュアルの道を選ぶ人はタダの一人もいなかった。想像してたのよりずっとこっちを行く人はいないようなので3日間誰にも会わないんじゃないかと若干びびる。

 マイナーな道だけど矢印だけはちゃんと続いているのでそこだけは安心した。マリンハスでイタリアのおばちゃんに脅かされた通り、どんどん山道に入っていく。標高は高くなくても海抜ゼロメートルからのスタートなのでそこそこの登りだ。でも、おばちゃんが言ってた程の凄い登りでもなさそうだし元気なのでぐいぐい歩いていける。

 野を越え山越え海沿いの町に出る。大きな修道院らしき建物が登場するが、もちろん目指す修道院であるわけない。ここからは海に沿って普通の舗装路を歩くようになった。しばらく行くと道路反対側のセニョールがカミーノはこっちだと手で合図をしてくれる。そこには八百屋があったので、ここで食料を仕入れて行く事にする。この先は舗装路を離れ山の中に入っていく筈なので、食べ物を持っていた方が安全だ。バナナ2本、チョコサンドのビスケット1包みにファンタレモンを仕入れる。ファンタをごみ箱のある道端で飲み干してすぐ山の中へ。

 ぐんぐん登っていき、屋根つきのバス停があったのでバナナを食べてエネルギー補給をする。バナナやオレンジの皮は自然に還るのでどこに捨てても構わないのが便利。その後もずっと山の中を歩き続け、とうとう目的の村に近くなって来たのが感じられる。そこからは下りになって、まるで犯罪人が必至こいて逃げて行くような細い山道になった(どんな例えだ)。

 大きな修道院で、アーチを潜って庭に入っていくと小学生を引率した一団が来ていた。郊外学習で訪れるような有名なところだったのか。受付らしい部屋に入って行くとそこはお土産コーナーで修道士が店番をしていた。尋ねると、ここはアルベルゲではないそうだ。そうだったのか、修道院の中に併設されたアルベルゲだとばかり思っていたよ。アルベルゲはアーチを出て下がった先にあるようなことを言っているな。まぁここは違ったがアルベルゲはあるようなので当たらずと言えども遠からずだ。

 言われたとおりに修道院を後にして更に歩き続けると、はるか先のほうにも建物が見え出した。あれか!?修道院からは600mほど離れているようで、隣には体育館のような施設も見える。まだ時間前なのでチェックインは出来ないし扉にはカギが掛かっているので入ることが出来なかった。

 現在12時半でオープンは2時だった。何か食べたいが近所にはバルも店もない。修道院のすぐ側にはバルがあるのを見ていたので戻って行こう。暑い暑いと言いながらも歩くしかない。今回の巡礼で初かも知れないペリグリノ・メニュー(巡礼定食)を頼む。一般的な巡礼定食は第一の皿と第二の皿のほかにパンと飲み物デザートが付くが、ここんちは8ユーロなので一枚の皿に全てが載っているプレート料理だった。まぁ安くちゃ何でもいいや。豚肉が3枚と目玉焼き1にフライドポテト、ちんまりとサラダが載っている。サラダ用にビネガーとオリーブオイルの小袋が2つずつ付いてきたので残ったのを持ち帰ることにする。スーパーから時々買っているバケツ野菜にはドレッシングが付いているが、カット野菜だと味付けになるものがなにもないので。

 ここでゆっくり日記など書きながら13:50までねばる。支払いになったら8じゃなく10ユーロに値上がりしていた!どうもビールで2ユーロ取られたらしいが、普通、巡礼定食には10ユーロでワインか水が必ず付くんだからビールを頼んでも値段の内かと思ったよ。だったらすっごく高い巡礼定食だ。周りに店がないので強気なのか、ぼられた気になる。

 アルベルゲに戻ると、分岐点で別れたロシアのカップルと、カミンハで傷バンを上げようとした気の良さそうな若者が開くのを待っていた!え、だってこのカップルはこっちには行かないと言って別方向に歩き出したんじゃ?どうやら途中で気が変わってこっちを選んでくれたらしい。それはラッキー。ソロの若者は最初からスピリチュアルの道を歩く予定だったのかどうか知らないけど、アルベルゲで一人と思っていたので嬉しい誤算だ。

 オスピタレラがやって来てチェックイン。ここも6ユーロだった。まだ新しい建物で設備も近代的。周りに店もバルもないからなのか、自販機が3台も並んでいた。泊まる人が少ないのでベッドも好き放題に選べる。歩く人が少ない最大のメリットかな。シャワー洗濯したら豆タンクみたいなおばちゃんが到着してきた。歩いている間は誰にも会わなかったのに、こんなコースを歩く人が少しはいるんだな。その後もパラパラと到着してくる巡礼が数人いた。

 ここの受付に小物を乗せた皿があったので、40日も持ち歩いている石ころをそっと載せておく。セブレイロ峠の教会で貰った小石で、黄色いペンキで矢印が書いてある。少しでも重量を減らしたいので持ち歩くのは嫌だったが、折角くれた石だし、神父さんがくれたので多分祝別してあるだろう。なので捨てるのも気が引けたけど、ここなら捨てるのと違うからいいかなな感じで。

 ロシアのカップルはオスピタレラのおばちゃんを捕まえて盛んに明日の港町から出るボートの時間を尋ねている。この道はサンチャゴの遺体を乗せた小船が地中海を越え大西洋から続く川を遡って、パドロンに至るまでをなぞる道。それでこの道を「Variante Espuritual 」と言うそうだ。それに倣って、次の港町からボートに乗ってパドロンまで行ってしまう巡礼の方が多いと言う。今日は登りが多かったが、明日は逆に下りが多い予想なので、楽勝の気がしている。ほんとかな?


ポルトガルの道32につづく