ポルトガルの道32 自然のアスレチック Arousa 6月29日 日本出発から69日目 手持ちの食料が昨日の八百屋で買ったチョコビスケットしかない。それとコーヒーを飲んで粗末な朝飯。コーヒーの残りがあと1袋になったので、スーパーがあったら仕入れたい。コーヒーがあると気分転換になって便利。 ロシアのカップルはまだ誰も起きない真っ暗闇の中を出発して行った。昨日、しつこいくらいオスピタレラのおばちゃんに港町から出るボートの時間を聞いていたので、どうやらその時間に合わせて今日の内にボートに乗って本線に合流する積りらしい。ボートに乗れば3日間で歩き終えるこのルートを2日間で終わらすことができるってことか。二人は急きょこっちのコースに変えたので、その辻褄を合せる積りのかも知れない。忙しいこったな。 8時スタート。海が近いからか凄い霧が出ている。舗装路から崖下に下りる狭くて暗い道が続いているので若干ビビル。まるで洞窟にでも入っていくようだ。苔むして岩だらけ。もののけ姫の森のような雰囲気の道がずっと続く。岩場のアスレチックみたいで面白かったが、油断すると悲しい現実が目の前にぶら下がっている。膝を石に打ち付けたり捻挫したらエライことになってしまう。二人はこんな険しい真っ暗闇の中をヘッドライトを頼りに下って行ったのか。想像するだけで恐ろしい~。 そんな道を30分ほど下っていくと、ようやく平らな道になってきたのでやっと緊張から開放される。それから暫くは小川沿いの穏やかな道を歩くことができる。所々に背丈の低い街頭のようなのが設置してあるので、たぶん遊歩道になっていると思われる。 30分のあいだ、矢印がさっぱり出てこないので少し心配になった。矢印の代わりに黄色と白で二重線が書かれているGR表記は現れるが、これがカミーノの代わりじゃないだろしな。タイミング良く犬を連れたセニョールがやって来たので、確認のためにカミーノかと尋ねてみる。この道で大丈夫のようだ。 大きなインターチェンジらしき交差点にでたら、やっとここで黄色い矢印を発見する。一安心。川沿いの道に木製のベンチがあったのでバナナを食べて小休止。日記もつけておく。小さな町が現れたのでバルを期待したが、町の端っこを掠めて町には入らなかったのでバルもなかった。川沿いに学校みたいのがあって、川には大きなフロート台が幾つかあったので、ここは子供たちの林間学校みたいな所なんかな? 9:15、目的地12キロ手前の村にバルがあったので寄っていく。今日歩いていて初めて登場したバルだったので、これを逃す手は無い。バルと長屋状態の隣には雑貨屋があったので、同じ経営のようだ。店に入ってパンとハム・チーズを買おうとしたら、ボカディージョにしてくれるそうだ。渡りに船と頼む。見たこともないような巨大なボカディージョを作ってくれて、缶ビールを追加してもたったの2.4ユーロとメチャ安だった。外のテーブルで食べていたらバレンシアの夫婦と昨日も同じ宿になった気の良さそうな兄ちゃんもやってきた。兄ちゃんは同じテーブルに座って、同じボカディージョを注文した。やっぱり巨大なボカディージョ。ここでこのサイズを食べれば半日はガス欠にならずに歩けるだろう。いい店があってラッキーだった。夫婦がチョコレートをひとかけらくれたので有りがたく頂く。 4晩も一緒のアルベルゲになった兄ちゃんに名前を書いてもらう。Piotr はピオトールと読むそうだ。「o」が一個足らなく見えるが本人が書いたんだからポーランドではこうなんだろう。英語的にはピーターだとも教えてくれる。ピーターなら十二使徒のリーダー格ペトロのことだ。ポーランドの巡礼と会うと必ず「ろーまんぱぱ」と言うと通じる。名前は忘れているがポーランド出身のローマ法王のことで、きっとポーランド人の誇りだと想像して。 次の村では音だけの花火がバンバン空でハネていた。お祭りがこれから始まるようで、歩いていくと楽団を乗せたトラックが景気よく走り回っている。人家が密集するような村ではないけど、主催者が祭りを盛り上げようと一生懸命なのが伝わってくる。 ぐいぐい歩き続けるとようやく海が見えてきた。でもまだ目的地は先だ。町の入り口で危なそうな男がいるなと思ってたら「セニョール」と声を掛けてきた。反射的にチラッと見て「おら」と一声発しただけで立ち止まらずにやり過ごす。何でも向こうから声を掛けてくる者には警戒を怠らないのが吉だ。そうするのは危険な匂いがする者だけで、でない人には勿論普通に接している。 対岸へ渡る長い橋が現れた。えーと、この橋は渡らずに次の橋を渡るほうがアルベルゲに着くには都合がいいんだよなと、大きな橋の下をもぐって通過。でもすぐ現れる筈の次の橋が全然現れない。あれー、地図とは大分違うんだな。さっきの橋を渡ってしまった方が良かったかなと思ってみるが、海岸線の地形自体も地図とは違うので、Maps.me が間違っているのかなと不思議な感じで歩き続ける。そしたらまた橋が現れたので、ここでやっと最初の橋は自分が思っていた橋より手前の橋だったのだと気づく。今度の橋の向こう側には地図どおりに渡るべき橋が現れた。良かったー、最初の橋を渡ってしまわなくて。 橋を渡る前から今日のアルベルゲである体育館が見えている。体育館は市民体育館サイズの大きな物だった。頑丈で大きな入り口はカギが掛かっていなかったので入ることができた。どこがレセプションかなと1階を見回してみるがガランとしてそれらしいのは無い。階段があるので上がってみよう。体育館の2階の一角がアルベルゲになっている面白い造りだった。ここから体育館の中へも直接行けるようだ。一角と言えどもキッチンやシャワールームなど、必要なものは普通のアルベルゲと同じにあった。私が一番乗りで、オスピタレロは年配で愛想がない。公営アルベルゲにはこういうタイプが時々いるが悪気がある訳ではないと思う。ボランティアだから仕方ないのか、ボランティアだからこそフレンドリーであって欲しいのか、それを言っちゃぁおしまいよなのか。 シャワーして、限界を超えているオンボロTシャツは捨てることにする。これで着替えのTシャツは1枚のみになったので、毎日自転車操業だ。オスピタレロに教わったスーパー Froiz へ行く。シエスタの時間だけどダメ元で行ったら運良く開いていた。バケツ野菜、トマト、1リットルビール、ヨーグルト4、ファンタアップルに青リンゴ。石鹸がちびてきたので固形石鹸。明日用にチョコパン一袋で合計7.76ユーロ。今日もカードでお支払い。 食堂で日記を書いていたら後からチェックインして来たピオトールがオレンジをひとかけくれた。内気なようで自分からは余り話さないようだが、幾日も一緒になってるので親近感を持ってくれてるようだ。オスピタレロは盛んに自分の洗濯物をオイルヒーターの上に載せて乾かしている。夏なのに。ボラなので少しは自分のこともしないとやってらんないのだろう。 ガラスケースの中を見たら土産物に混じって安いTシャツを売っているではないか!しかも「Variante Espiritual」の文字と大きな帆立貝がくっきりプリントされている。余りに安いので2枚買ってもいいかなと思ったが、やっぱり荷物になるので1枚だけにする。たったの3.5ユーロ。その場で着てしまう。古いのを捨てたその日に願ってもないTシャツを買えたのでついてる。以後、これが一番のお気に入りになる。 ベッドルームには2段ベッドが12台置かれているが、今日の泊り客は8人だけなので全員が好きなベッドを選べた。部屋が広いのでベッドの間隔も広く取ってあって圧迫感もない。2段ベッドの上に人がいないととても快適に過ごせる。バックパックから出した荷物も上段に並べて置けるので翌朝のパッキングが楽になる。 今日は下りが多い24キロと高をくくっていたので意外と疲れた。明日はここ Vilanova de Arousa から次にアルベルゲがある Pontecesures まで38kmの行程だ。距離があるのでいつもより早めにスタートしたい。他の人たちはボートに乗るのかな?羨ましくないけど。 ポルトガルの道33へつづく |