Fatima10  アルベルゲのパーティー Rates

7/6 5時半、キッチンでスープを作って不味いパンをみんな入れる。ヨーグルト2と共に朝飯。日本から持ってきたスティックの先端スペアをまだ持ち歩いているので受付のテーブルの上にチョコンと置いておく。だれか使ってくれるかも知れない。今後、もしスティックを買ったとしても新しいスティックならすぐスペアが必要になることもないだろう。数グラムでもバックパックが軽い方がいい。

 7時出発。毎朝、自分ひとりだけは逆方向へ歩きだすのでちょっぴりテンションが下がる。しかし逆にテンションが上がることもあった。昨日から青い矢印が具合よく出現してくれてて今日も要所要所に描かれているのだ。これまではハッキリと描かれた黄色矢印と比べて薄ーく消えかかっているようなのが多かったが、ここんところのは塗り直して青々したのまである。それが殆どの分岐点にあるのでとても心強い。振り返って見ると電柱の反対側には黄色い矢印もあるし行ってはならない方にはバツ印まで描いてくれてる。

 バルセロス市内に入った所で一時巡礼路を見失ってしまうが、左には大きな川があるので、このまま進んで行けば大きな橋を渡るのが分かっているから迷うようなことはない。公共の建物がある地域に出たらすぐ現在地が分かり、昔の砦跡に行くことができる。前に来たときはここにガロ伝説の由来となった「縛り首の石柱」があるのを知らずに素通りしてしまったので、今回はその石柱をちゃんとカメラに収める。写真は鶏伝説の由来となった縛り首の絵。サンチャゴが縛り首になった人の足の裏をくすぐっています。じゃなくて下から支えて死なないようにしています。なんとも雑な絵だけどバルセロスに取っては大事な歴史物だと思います。

 橋を渡って3年前に泊まったアルベルゲの玄関を撮りたかったが確認できなかった。外観が変わったのかな?裏に回ると以前と同じアルベルゲ入り口があった。この近くにティエンダがあって買い物した記憶があるので食料を買おうと探してみたが消えてなくなっていた。記憶違いかな?今回バルセロスは素通りなので町外れを目指していると、別のミニスーパーがあったのでお買い物。ファンタオレンジにチョコパンと中身が分からない小さなボトルを買ってみる。これは単に安かったから。そこから5分も歩くと手ごろなベンチがあったので早速ジュースを飲んで一休み。その後、しばらく歩いてから正体不明のボトルを飲んでみたら、ガス入りの水らしい。水はいつも水道水でまかなっているので、巡礼5年目にして初めて水を買ったと思う。これが驚くほど美味くておまけに体にも良さそうで気のせいか元気が出てきた。これなら疲れを感じた時にまた買ってもいいかなと思った。安いし。

 村の中にあったアルベルゲの案内板の隣で休んでいたら後ろから「オラ」と声が掛かる。地元の人かと思って顔も見ずにオラと返事をしたら巡礼だった。スペイン女性で一人で歩いているらしい。アルベルゲ案内を見ながら、今日はどこに泊まるんだと聞いたらまだ決めてないそうだ。私が通り越して来たバルセロスには泊まらないようなので、次にアルベルゲがあるのはTamalだけで、ムイビエンだったよと教えてあげる。一緒に写真を撮ってバイバイ。この案内板はファティマへ行く人用とサンチャゴへ行く人用の2バージョンが表裏に書かれてあってとても親切。現在地点から私営・公営アルベルゲまでの距離と電話番号が書かれているが、出来れば宿泊料金も書いて貰えると助かるんだが。

 次にも同じアルベルゲ掲示板があり、そこではベルギー女性巡礼が今日の宿を思案中だったので、互いに自分たちが泊まったアルベルゲ情報を交換しあう。今日はこの人を入れて三人の巡礼から「ファティマ?」と聞かれた。うち二人からは「ファティマへ行く巡礼は初めて見た」と言われる。もう一人は何も言わなかったが当然見てないだろう。もう何時まで経っても逆歩きはゼロなのが確定だ。この立派なアルベルゲ情報板は今日3枚あって、最初の案内では今晩の宿Ratesまで14kmで次が6km、最後が2kmと案内してくれていた。励みにもなるしとても有難い。

 だいぶ疲れてきたし石畳で足裏も痛くなってきた頃に目的のRatesの町に入ってきた。3年前に買い物した雑貨屋の前を通り過ぎればアルベルゲは目の前だ。そしたらアルベルゲの入り口に女の人がいて、こちらに向かって手を振っているようだが良く見えない。まさか私にじゃないよね?でも後から考えるとこれはまさかだったのかも知れない。それくらいこの女性(オスピタレラ)はフレンドリーだったから。1時50の到着でオープンは2時だがチェックインさせてくれる。「あなたがファースト・ペレグリーノよ」と言われる。1番なのでどのベッドにするか選ばせてくれるそうだ。ここはベッドが指定らしく、私が選んだこのベッド番号は埋まったと記録するようだ。部屋には二段ベッドが4台、平ベッドが1台あるが二段ベッドの上の間隔が広いので二段ベッドの下段をお願いする。

 シャワー、洗濯してからミニスーパーへ買い物。その前にキッチンに何があるかチェック済みなので今日はスープを作ることにした。ジャガイモ、玉ねぎ、トマト、玉子6、クノールスープの素、1リットルビールとコーヒー1箱で6.35ユーロ。早速キッチンでスープ作りに取り掛かる。と言ってもみんな細かく切って鍋に放り込むだけ。スープの素と塩コショウで味付けする。トマトの酸味が強すぎる気がするが、これはこれで美味いだろう。玉子を6個とも入れて大皿2枚分のスープの出来上がり。ビールと共に食べて腹いっぱいになる。

 食べ終わったところで今晩はオスピタレロのパーティーがあるから一緒にどうかと誘われる。うーん、腹いっぱい食べちゃった所だけど参加したいと返事する。食べる前に聞けば食事量を調整したんだけど誘われたら必ず参加だ。腹いっぱいでもワインなら飲めるので、今晩の楽しみができた。

 昼間あった女性巡礼が、海沿いのラコスタ巡礼路を歩いてからこの内陸ルートのセントラルに移って来たのを聞いていたので、自分も明日はラコスタへ行こうと計画してみる。このセントラルルートは明日からは特徴のない道が続き、石畳歩きもいい加減うんざりして来たのでこのアイデアは渡りに船だった。後からやって来たオスピタレロにラコスタへのルートを尋ねると、私が考えたのと同じ国道E-206を行けば海に出られると言うので確信を持つ。ひょんなことから明日からの楽しみが出てきた。今日は10キロ以上も石畳の道を歩き続けたのでいい加減閉口していたのだ。

 このアルベルゲは広い敷地内に織物の博物館を併設していた。大きなガラス張りの立派な施設で、植物から繊維を取り出して糸を作り、最後に機織りで布にする迄の過程を実物で紹介していた。公営のアルベルゲなので、巡礼を泊める他にもこうして地域に貢献しているようだ。この他にも芝生の広場があったり二階建の別棟もあったり意味不明の鉄塔が立っていたりと、何しろ大がかりな施設のようだ。

 親切なオスピタレラはAnaと言って、あとからやって来たのはAnaのご主人のようだ(写真)。8時にAnaがパーティーが始まるよと迎えに来てくれる。夕方になって少し寒そうなので、長袖とジャージのズボンにする。パーティーは別棟の建物で、入っていくと想像と違って巡礼は私を入れても3,4人しかいなかった。他は地元の人が十数人で、どうもこの人たちが交代でアルベルゲを運営しているらしいのが分かる。地元の人たちばかりの所に適当に座るとAnaがやって来て「巡礼がいる所の方がいい?」と聞いてくれる。私の英語はどうせ片言なので、周り中ポルトガル語の中に居ても同じことなので、ここでいいんだと伝えると、英語が喋れるAnaが私の隣に座ってくれた。細やかな心遣いをしてくれるんだな。

 他の人も英語が片言で話せる人は気を使って話しかけてくれる。みんなお揃いのTシャツを着ていて、これがアルベルゲRatesのユニフォームらしい。黄色一色のTシャツを来ているおっちゃんが自身のシャツを示して「シンカンセーン」と言うのが理解できなくて「シンカンセーン」と言うポルトガル語なんかなと思ったが、その内自分のスマホの写真を見せてくれたら、黄色の新幹線のことを言っているのが分かった。前にテレビニュースで一度だけ見たことのある、検査用の黄色い新幹線のことを言っていたのだった。この人、鉄道関係の人なんかな?

 今日は特別の日なのでパーティーなのか、それとも定期的にこうやってパーティーやってるのかは分からなかったが、みんなこのアルベルゲを中心に仲良しの輪が広がっているのには違いない。いい組織だなと思った。

 料理は焼いた肉や長いチョリソーのぶつ切りなど多彩。他のテーブルにはまた違った料理が並んでいるので、これはきっとそれぞれが自慢料理を作っての持ち寄りパーティーらしい。見た目がカラフルなおからみたいのまで並べられている。チキンにポテトチップス、ポテチってこっちでは料理扱いになるのか、他の食べ物が載った皿の上にポテチまで乗せて一緒に食べているな。日本では考えられないが、やってみたら意外と合うかも知れない。ほかにも正体不明の皿があるので異文化体験なので少し味見してみる。Anaが私の皿を持って離れた所からチキンをひとつ乗せて来てくれ、大きな皿に小さなチキンがひとつだけチョコンと乗っているのが日本人の感覚からしたら面白かった。飲み物は何がいいかと言われたので白ワインを所望するとこれがカバだった。カバ大好き。チョリソーは美味いけど塩が強すぎる。スペインもそうだが、こっちの料理は塩を使いすぎる気がする。炊いた米もあったので一口食べてみたが、日本のコメとは違って粘りがなく硬目に炊かれていた。昼にスープを食べすぎたので、チョコンチョコンとつまみ食いしてみる。


 パーティーなのでポルトガル名物のファドを期待したが、歌はなかった。代わりにケイマーダの儀式が始まった。カミーノでは有名なケイマーダだが、私はまだ見たことがなかったのでこれはラッキー。ケイマーダを見せようと他の巡礼にも声を掛けたのか、ぞろぞろと入ってきた。部屋の電気を落としてから強い酒を陶器の鍋に入れ、他にも何やら入れて火を点ける。青い炎がメラメラと燃え立ち神秘的なムード満点だ。最初に私に陶器のしゃもじを渡して来たので、何かやれと言う事らしい。まぁ日本語でやれば良いと言うのでへっちゃらだ。ケイマーダのリーダーみたいな人がやったのと同じようにしゃもじで火の点いた酒をすくっては炎と共に鍋に垂らすを繰り返しながら何事か日本語で唱える。何言ったかな?まぁ真面目な事を言ったんだと思う。順番に何人もの人にバトンタッチして、最後はその酒をみんなで飲むと、これがまぁケイマーダと言う物らしい。

 ポルトワインも出てきて少々酔ってしまったようだ。皆フレンドリーで、ワインもいっぱい飲ませてくれてとても楽しい夜だった。Anaと全てのオスピタレロに感謝だ。Muito obrigado !!

  ベッドルームに戻ると、私以外は皆女性で、一人60代だが他の5人はみな若い女の子ばかりだった。お陰でイビキもなくぐっすり寝られる夜となりました。

 あとでこの中のメンバーが昨年ファティマへの道で一緒に写真を撮った人と良く似ていたので同一人物かと思ったが、RatesのAnaに問い合わせたら別人とのこと。残念~。


Fatima11へつづく