Fatima15  20kmで1リットル Nova

7/11 Madeiraのアルベルゲ。部屋の隅には小さいテーブルと椅子がひとつだけあるので、座ってパンと飲むヨーグルト2個で朝飯にする。エデの出発の準備ができたらしく「トゥゲザー?」と言ってくれるが、エデは若いので私とは歩くスピードが違うだろうから先に行けと伝える。同じファティマに向かっているんだからまた時々会えるだろうと軽い気持ちで別れたが、エデとはこれきり会うことはなかった。

 少し遅れて出発しようとすると、ドアの外に置かれている透明アクリルの箱には私が入れた5ユーロの他にエデの入れた5ユーロ札もあった。静まり返った病院の廊下を歩いて外へ向かう。

 昨日お昼を食べたモールまでは間違えようがないが、その先は覚えがない。でも今日も矢印はそこかしこにあるので大丈夫だ。と気を許していたら裏切られた。途中、20分ほどの間は矢印が現れなくて迷った気がしていたが地元の人に「Camino Fatima ?」と尋ねると、この道でいいらしい。ここんとこ矢印が適切な位置に現れてくれてたが、今日はさっぱり現れないので不安になったが、やっと矢印が登場する。こんなに長い時間(と言っても20分)矢印無しで歩いたのは数日ぶりだ。この辺りを担当している巡礼友の会がゆるいのかな?文句を言える立場ではないが。

 今年オープンしたと言うアルベルゲ前に12時過ぎに到着。建物だけは新しいが、他はまだこれから整備が進みそうな施設に見える。13時のオープンだが人の気配はまったくしないので、エデはここを素通りしたのが分かった。周りにはバルも店もなんもないアルベルゲなので食事が提供されるようだ。

 今日は何しろ暑くて暑くて、水タンクにはいつもより大目の1リットルを入れて来たが飲みきってしまう。今日はAlbergaria-a-Novaを目指している。マデイラからノバまでは22.3キロなので私の場合、暑いときは20キロで1リットルを飲むようだ。今更だけど今後の参考にしよう。20キロ以上歩く日は1.2リットルは必要かなと細かいことを考える。バックパックに入れてある水タンクは2リットル入るが、満タンにするとぐっと重たくなるので必要ギリギリを見切るのが重要だ。

 フーフー言いながらノバ手前までやって来る。そこにガソリンスタンドがあったので水も尽きてることだしセブンアップ缶を飲んだらこれが1.2ユーロもした!こんな所でぼったくりか?そこから少し歩くと今晩の宿、私営のアルベルゲに12:50到着~。ここにはフレンドリーな兄ちゃんが居たのを覚えているので期待したが、いくらチャイムを押しても人が出てくる気配がなかった。え?もしかして休業日かと不安になったが、この炎天下、これからもう一つ先まで歩くのは勘弁だ。裏手に回ってみても誰もいないがシーツやらの洗濯物がはためいているので無人ではないのが分かる。耳を澄ますとアルベルゲの中から話し声が聞こえるので勝手口からそーっと入ってベッドルームに行ってみると上にも下の階にも巡礼がいた。

 ウロチョロしていたらやっとの事で女将さん登場。ごめんねーと言っているようだ(ポルトガル語)。英語は話せないがスペイン語なら話せるそうだ。簡単なスペイン語と身振りで「昨年も泊まったんだ」と言うと嬉しそうにしてくれる。昨年いたセニョールはどこだと聞いたら、今はコインブラに働きに行ってるようだ。出稼ぎかな?10ユーロでチェックイン。昨年はウェルカム・ドリンクでビールを飲ませて貰えたが、今回はそれはなかったので残念。昨年は1階の部屋だったが、今回は二階だった。部屋には先着の男性がいたが、この部屋には後から入る巡礼はいなかった。

 シャワー、洗濯してからアルベルゲ内を探検してみると、昨年とはだいぶ違って施設が充実している。庭に水を湛えたプールができてるし、別棟のバルみたいなスペースには椅子・テーブルが並びガラスケースの中で缶詰やインスタントパスタ等の食料が並べられていて飲み物の自販機まであった。瓶ビールが1ユーロと誠実価格なのでそれ2本とチンして食べられるシーチキン風味の良く分からないインスタント物3ユーロを求めて飲み食いする。食い足りない気分は持参のクッキーとパンで凌ぐ。昨年は親切な兄ちゃんが一生懸命に大工をしていたので、それらがこうやって完成したのでアルベルゲはおばちゃんに(たぶん母親)任せて自分は出稼ぎに出たんかと想像した。

 ガラスケースの中の食料はカウンターに置いてある貯金箱に自己申告で入れるスタイルだった。その貯金箱に鍵さえ掛けてないのには驚いた。ここにアルベルゲの人は誰もいなくて、お釣りが必要な場合はそこから勝手に取ればいいらしい。なんとも性善説に則ったスタイル。昨年泊まったときは、1キロほど離れた地元の隠れレストランを紹介されたが、今回はなかった。このバルぽい別棟が完成したからかなと思った。

 夕飯も食べたいので、またガラスケースの中から袋入りYakisobaインスタントラーメンとコーンの缶詰を買ってふたつで2.2ユーロ、アルベルゲのキッチンでラーメンぽいのを作ることにする。そこへ食材を抱えた年配の小父さんがやって来た。ウールの長ズボンに長袖Yシャツと、余りに普通の格好なのでここの家族が夕飯を作りに来たのかと思ったが、この人は巡礼だった。ポーランドからやって来て、チャリでリスボン、ファティマ、サンチャゴと巡礼している71歳。コルセットしてる。自分は腰が悪いので歩くのは無理なのでバイスクルと言ってるけど、普通は自転車でも無理なんじゃ?!この小父さんにほんのり尊敬の念を抱く。外にあったチャリはこのおじさんのだったのかと気づく。親しくなったのでマリアカード上げたら、おじさんがファティマで泊まったゲストハウスのカードをくれて20ユーロだからと泊まるのを奨めてくれた。そんな話しをしてたら北京の女の子が参加してきて自分の泊まった宿も紹介してくれた。結構みんなファティマ詣でもしてるんだな。

 熊野古道のクレデンシャルを見せたらファンタスティックとか言いながら、裏表スタンプ含めてすべての写真まで撮っている。マリアカードにサインしてプレゼントしたところ、それも写真に撮ろうとしているので、これはプレゼントだと言ったらとても喜んでくれる。

 今日は相変わらず上り下りあるし、もう暑くてこれ以上の距離歩くの無理な気がしてきた。明日は傘祭りの町アゲタまで23.5kmなので6時台に出発しよう。


Fatima16へつづく