Fisterra_Muxia8 サンチャゴへ Santiago de Compostela

8/4 サンチャゴへ戻るバスは7時なので、6時になった所でバックパックを抱えて少し明るいレセプションに行く。今朝もママは早朝出勤していた。いったい何時に出てくるんだろう、働き者だねママは。ゆっくりとパッキングして飲むヨーグルトとパンで朝飯。ママがカステラを薦めてくれるが今日はノーサンキュー。日記にこう書かれているが何でノーサンキューだったのか覚えがない。昨日一緒にお昼を食べたハンガリー人とコリアの母子、台湾の3人も同じバスでサンチャゴへ戻るようでレセプションにやって来た。台湾の子は今頃になってママにバス停の場所を聞いている。正気かっ、今から乗るバス停を調べてないなんて!!なんて豪胆な子達なんだろう、小心者の私には考えられない。

 30分前になったので出ようとすると、ママが「ミチオまだいい、2分で着くよ」と言うので、また座って待つことにする。クリスに電話を入れているので私を見送らせる積もりなのかも知れないな。昨日、イルカが湾にやって来たスマホのムービーを見せてくれて、3頭もやってきて湾には2時間もいたそうだ。クリスが教えてくれた時にすぐ見に出て見たが姿がまったく見えなかったので、もう外洋に帰ったと諦めたが、それからずっと居たのが分かったので見られなかったのは惜しいことをした。このアルベルゲの名前がDelfinなので、なんでデルフィンなのか意味が分かなかったが、目の前の湾にイルカが本当にやって来るときがあるのだった。

 10分前になったので、ママとハグして出発。7人でぞろぞろとバス停まで歩いていく。クリスが見送りに来てくれて、細いベルト状のお守りをプレゼントしてくれる。手に巻くのかなと身振りで言うと、そうじゃないらしいのでバックパックに結わいつけてみる。バス代はサンチャゴまで8ユーロで7時半の出発になった。デルフィンの前を通るので車窓から見ているとママとクリスが玄関の前に立って手を振ってくれているのが見えた。良かった、こっち側の窓際に座っていて。ありがとう、来年また来られるといいな。

 アチコチ停まりながら10:40、サンチャゴのバスターミナルに到着。5日掛けて歩いた行程がたった2時間ちょっと。いつものことながらギャフンだ。車体横のトランクルームからバックパックを引っ張り出したら市内に向けてゾロゾロと歩き出す。台湾組は私が1週間前に泊まってスティックを貰ったアルベルゲ隣の私営アルベルゲに入って行った。昨晩この子達はサンチャゴで泊まるアルベルゲを探していたが、希望してたメノールが一杯だったのでこっちの私営を予約したらしい。メノールは当日分がいっぱいあるよと翻訳を使って言ってみたけど、やっぱり予約しないと不安だったようだ。そのときハンガリー人ボランティアのデイビットが気を利かせて空いているアルベルゲを教えてやったらしい。

 さて私が泊まるメノールは1時半にならないとベッドルームに入れないので取り合えずオブラドイロ広場に行ってみよう。サンチャゴでする暇つぶしはここばっか。何もすることがない時間つぶしなので、ずっと石畳の上にお座りして人間ウォッチングをしている。到着してテンションが上がった巡礼を見るのは楽しい。台湾の子達も身軽になったスタイルで広場にやってきたのが遠くに見えた。今まで入ったことのない坂下の教会を訪問してみる。出てきた所でまた台湾の子達とバッタリ。彼らもあちこち探索してるようだ。カテドラルの内部は修復中なのでミサは近くのフランシスコ教会で巡礼者のミサが行われている。バックパックを担いでいるのでどうせ入れないだろけど駄目元で行ってみると案の定入り口で止められる。やっぱり「ペケーニョ モチーラ(小さいバッグ)だけ」と言っているようだ。じゃぁミサはいいやと戻る道筋にまた台湾の子達が昼飯を食べるレストランを物色していたので写真をパチリ。あちこちで会っていたが、これが最後になった。

 今日は日曜日なので、どうせ閉まってるんだろなーと諦め半分でスーパーのフロイスに行ってみたが予想どおりお休みしていた。ここって必ず日曜は閉まってるな。ガツガツ仕事しないのは羨ましいが旅行者にはとても不便。仕方ないから近くのフルテリア(果物屋)でジャガイモ1、トマト1、大きなマッシュルーム2、人参1、玉ねぎ1にサーモンの缶詰などを細々と買い揃えて合計2ユーロと少し。こんな面倒な買い物なのに店のセニョーラは嫌な顔をすることなくいちいち秤で計って笑顔で売ってくれた。またここんちに来てもいいな。パンも置いてあるのに何故か売ってくれなかったので、予約でもされてたんだろうか。それとも昨日のパンで古くなったからかな?少し戻ってパナデリア(パン屋)で前から気になっていた木の実が入った黒パンを買ってみる。ガラスケースのパンを取り出して切ろうとしたが、何か思い浮かんだようで店の奥から同じ種類のパンを持ってきた「こっちの方がカリエンテ(温かい)だから」と言っているようだ。このセニョーラも親切だな。パンが欲しくなったらスーパーじゃなくてここんちに買いに来よう。ずっしりと重くて木の実入りなので普通のパンよりお高くてここも2ユーロと少しだった。

 40日振りに定宿メノールにチェックイン。2泊で30ユーロ、公営としたら高額だけどサンチャゴなので仕方ないだろう。カードでお支払い。まだ1時前なのでベッドルームには入れないから地下のキッチンへ移動して買ってきた野菜でスープを作ろう。味付けは持ち歩いているセボージャ(玉ねぎ)スープの素と塩少々。色んなスープの素が売られているが、この玉ねぎスープの素が一番使い勝手がいいので見つけるとバックパックの中に常備しておく。ここのキッチンには昨年までは前の巡礼が残していった調味料がいっぱいあったのだが、今回はみんな片付けられていたので残念。

 日本でも生のマッシュルームって使ったことなかったけど、このマッシュルームの軸を取ったら傘の裏側が真っ黒だったのでびっくりする。え、腐ってるのこれ?でも勿体ないしなー、黒くなってる部分を爪で引っかいてこそげ落としてみる。だ、大丈夫かなこれ食べて。タンパク質にはサーモン缶詰をオイルごと入れてみる。この組み合わせも初挑戦なので、スペインに来るようになってから色んなことが出来るようになった。最初に巡礼に来たときには自炊と言えばスパゲッティを茹でることしか頭になかったけど、徐々に野菜も食べるようになって、今は野菜が中心だ。色んな野菜を片手鍋にぶち込んだので山盛りになった。味も野菜の旨みが出たようで上々の仕上がり。フェイスブックに書いたらマッシュルームには白いのと黒いのがあるけどどちらも食べて大丈夫と教えてくれる友達がいた。次からは安心して使えそうだ。

 ベッドルームに行ってみると、初のABCのDルームでやたらと奥まった先の先でトイレに行くのが面倒そう。ベッド8台の小さな部屋でフランスおばちゃんが二人先着していた。年配者は愛想がいいので知ってるフランス語で挨拶。フランス語は10個程度しか単語を知らないのですぐ品切れ。この人たちは英語は話さないようだ。フランス人あるある。

 夕暮れ時に何もないのも寂しいので飲み残しのワインとつまみを持って巨大キッチンへ。なんとムシアへの道で仲良くなったばっちゃんが部屋の隅にポツンと一人でいた、3日振りの再会。互いに大喜びする。今更だが名前を教えて貰うとニーナと言うそうだ。見た目ワイルドなイメージと違って名前は可愛かった。ニーナはここには泊まらずに今晩10時の夜行バスでリスボンへ行くそうだ。夜発なので時間がたっぷりあり過ぎるので自由に出入りできるメノールに時間潰しに来たらしい。なので会えたのはまったくの偶然だった。ワインとつまみ持ってて良かった。「グラスグラス」と言って少し離れた食器棚からニーナ用のグラスを持ってこさせる。

 スペイン人にしては英語が達者だなと思ってたらポーリッシュだった。出会ったポーランド人ってみんな英語を上手に喋るので感心する。日本は海に囲まれている国なので簡単に外国へ行くことは出来ないし外国からも気軽に来ることはできない。一般的に殆どの日本人は外国人と話す必要がないまま一生を終わるのかも知れない。それが日本人が外国語が話せない大きな原因かも。ヨーロッパでは周り中が外国と陸続きなのでその辺りは日本とまったく事情が違うんだろな。特にEUなんかじゃ国境なんか無いのと同じだし通貨も同じ。しかし言葉はその国独自のものがあるのでヨーロッパの人は4カ国5ヶ国語を話す人はざらにいる。どの国の言葉も元がラテン語なので似ているから外国語の習得は容易だし仕事や生活する上でも必要なんだろう。日本とはまったく事情が違う。

 ニーナはイギリス人の道を歩くようなことを言ってたけど、結局日数が足りなかったのか、ムシアで2泊してからフィステラで1泊して、フィステラからセーまで歩いてから今日サンチャゴへバスでやって来たので私と再会できたそうだ。そして今晩のバスでリスボンへ。ニーナのまだろっこしい行動は理解不能だ。

 ポーランド人だが今はドイツのWroclawと言う町に住んでいるとスマホの地図で教えてくれる。私の日記帳に「1939-1945 O'swiecim(アウシュビッツ)」と書いて説明をしてくる。ポーランドには人類史上最悪の出来事、アウシュビッツがあったんだ。髪の毛や靴がどうのこうのと見てきたことを一生懸命説明してくれる。恐ろしい歴史があるアウシュビッツには行きたくないけど、もしポーランドに行ったら必ず行くべき所だろな。ワインを飲みながら色んなことをお喋りしたけど半分も分からなかったが互いに楽しかったからオッケー。時間が迫ったので2度ハグしてバイバイ。凄くパワフルで楽しいばっちゃんだった。どれもこれも人との出会いは後で思い返すと全てが掛け替えのない素晴らしい思い出になる。なんちゃってガラにもない事書いちゃったけど本当です。


Fisterra_Muxia9へまだつづく