北の道5  今日から二人旅

5/19(日) 歩き3日目、オリオのアルベルゲ。早朝の真っ暗な内からソリさんが何やら活躍している。もう出発準備を始めたのかな?7時ころに起きると外は嵐の模様!雨風がビュービュー吹きまくっている。

 ソリさんは早起きして朝食を作ってくれていたのだった。ご飯を炊いて海苔を巻いたおむすび!とっても美味そう。スープはカツオ出汁にトマト・パプリカの具が入っている。酸味があってこれも美味い。このアルベルゲでは5ユーロで朝食を出してくれていて10人ほどが食べ始めだした。スペインのデサジュノはどこも似たようなものでパンとバター・ジャムとコーヒー。頑張ってもせいぜいフルーツが付くくらい。我々の朝飯の方がずっと手が込んでいる。早朝から準備をしてくれたソリさんに感謝だ。

 今日は共に17キロ先にあるZumaiaの公営アルベルゲに宿泊と決める。滅多に出会わない日本人同士なので一緒に歩かない手はない。ありがたくご一緒させてもらう。天気も悪いしショートコースなこともあって遅めの8時50に出発する。オーストリアのおばちゃん二人組と一緒にスタートするが、歩くペースはそれぞれなので段々と二人旅になる。雨は降ったり止んだりを繰り返している。

 Zarauzからは二つのルートになる。3年前は海沿いを歩いたが、今回は山のコースを取ってみる。ずっと歩道に沿って歩いていくが、町を抜けた辺りからこれはカミーノとは違うんじゃ!?と気がついて戻ってみると、確かに目に付きにくい所に右に折れる矢印を見つける。舗装路を歩く時には見落としがちな分岐だ。何度も痛い目にあっているが何度やっても同じことをしてしまう。ソリさんの持っているスマホには優秀なアプリとGPSが搭載されていて、要所要所で取り出しては正しいカミーノを教えてもらえるので滅多なことでは大きく迷子になることはないと分かってきた。自分ひとりで歩くときはGPS電波は捉えづらく、殆どは道端にある矢印が頼り。カミーノを見失うことは日常茶飯事になっているが、二人ならその心配はなくなったも同然だった。経験したことのないようなハイテクカミーノ。

 大きな石が敷き詰められた旧道みたいな坂道をぐんぐん登る。やがてゲタリアが眼下に望めるビューポイントが現れた。へー、上から見るゲタリアってこう見えるんだ。そこを過ぎてしばらく行くと3年前に泊まった私営アルベルゲの前に出る。あれ、ここはとっくに通り過ぎてる位歩いたと思ったが、まだここだったんだ。ちょっとショック。近道を来た気になっていたが、ちっとも近道じゃなかったのか。坂道を登っただけ余計な苦労をしただけなのが分かった。

 行く先に今晩の宿があるZumaiaの町が見えてきた。時間はまだ2時前。町に入っていくとイルンのアルベルゲで一緒だった台湾の女の子が交差点に突っ立っていた。時間も手ごろだし同じアルベルゲに泊まるんかと思ったが、これからまだ歩いてデバを目指すそうだ。デバまではまだ山坂を10キロも歩くので到着は5時だろう、若い子は凄いね。ブエンカミーノ。

 ここの公営アルベルゲのオープンは3時なので、まだ1時間ある。どっかで食事でもしようと町をふらふらして地元の人で混み合っているバルへ入る。ここはメニューはなくてカウンターに並べてあるピンチョスを指差しで注文するスタイルらしい。ソリさんはピンチョスを二つ。私もピンチョスを二つにグラスワイン。ソリさんは食べ足りないのか更に二皿追加していた。ムール貝は缶詰だったそうで残念がっているが私には見分けが付かない。味見をさせてくれても分からない。そう言えばムール貝って缶詰以外食べたことなかったんだ。

 3時前にアルベルゲに行くと外扉は開いていて中庭に入ることができ、建物の扉の前でウロウロしていたら中に招き入れてくれる。Zumaiaのアルベルゲは元修道院だった。入り口からして重厚な雰囲気が漂うアルベルゲ。チェックインでオスピタレロが私のパスポートを見ると同い年だと言い出した。うーん、私ってこんなジジイに見えるのか!?でもお陰で仲良くなりました。名前はVicente。同い年のよしみでマリアカードを進呈するとバッチをもらえた。荷物になるものは極力増やしたくないのだが、折角なので帽子に取り付ける。部屋は平ベッドだったので嬉しい嬉しい。全体的にすこぶる古いがトイレ・シャワールームは近代的に改装されていた。熱いお湯もふんだんに出てくる。ついでに洗濯もして部屋干しする。

 ソリさんのご主人は極度の心配性で毎日連絡を入れないとならないそうだ。連絡が途絶えると即座に捜索願いが出されるとのこと。私は90日間でただの一度も連絡しないし毎年このスタイルで誰も心配しない。どっちがいいんだろう?

 ソリさんの巡礼歴は最初はフランスのルピュイからSJPPまで歩き、次ぐ年にSJPPからサンチャゴまで歩いたそうだ。そしてこれが3回目の巡礼とのこと。女性がたった一人で北の道って、かなりハードル高そうな気がする。今年はサンチャゴまでは歩かずに真ん中あたりのヒホン(Gijon)で切り上げるらしい。主だった巡礼路を歩いた私が再びこの道を選んだ理由は、北の道が一番綺麗だったからだが、同時にこの道が一番ハード。だから尚更、この道で日本女性に出会うとは夢にも思わなかった。

 このアルベルゲには不用品コーナーがあったので物色する。こういうの大好き。奇抜な色使いのウエストバック発見。カメラ用に小型の袋をバックパックに取り付けてあるが、チャックの調子が悪くなってきたのでこれと交換する。日本にいたら絶対に持たない品のないバックだがここはカミーノ。これにカメラと同じくバックパックに差し込んでいた時計付きの万歩計を入れることにする。使ってみるとこれが凄く便利なのが分かった。今まではカメラバックと万歩計はバックパックに取り付けることしか頭になかったが、こうしてウエストバックに入れた方が扱いやすいのが分かった。今まで雨天の歩行時にはバックバックに取り付けてあるカメラ入れは小さいレジ袋を被せて防水ぽくしてたけど、ウエストバックなら丸ごと合羽で覆えるし一石三鳥くらい便利。ええもん拾った。ただし良く見るとベルトの両サイドが少しばかり切れ始めているのを発見。でも丈夫なベルトなので当分の間は持つと思う。

 明日は35キロ歩いた先のIbiriと言う村に私営アルベルゲがあるとソリさんから提案される。そこに泊まれば告ぐ日のマルキナ迄が5キロ短縮されるので楽になるとのこと。それに乗る。早速ソリさんがスマホで予約の電話を入れてくれようとするのだが、これが中々通じない。あれこれやってる所に女性巡礼がやって来たので教えて貰ったところ、スペインでは電話番号の前に+のボタンを押すことだと判明。自分では一度もスペインで電話したことはないが、それを知っただけでも成果だ。何かの時には役に立つだろう。


北の道6へつづく