北の道7  ノーコイン

5/21 歩き5日目。昨日の予告どおりソリさんがおにぎりと緑茶を用意してくれる。米はこれで終わりになったらしい。重たいのにありがとうございました。お陰でスペインで日本の米を3回も食べられてありがたいです。巡礼中にスペイン・ポルトガルで日本の米自体食べたのは5年目にして今回が初だった。こっちで食べる米はどれも粒が小さくて粘り気がないので美味くはないのだが、たまーに米が食べたくなるとスーパーから冷凍の調理済み米を買ってきて食べることがある。パエージャだったりチャーハンだったり。やっぱり日本の米は滅茶苦茶美味い。じっくり味わって食べさせてもらう。この後、3か月近くは日本のコメとお別れだ。

 8時出発。今日もソリさんと一緒に歩き出す。多少のぬかるみはあるが今までから比べたら格段に歩きやすい。昨日貼った湿布が効いているようで朝から腰が痛くないのが嬉しい。湿布の残りはあと2枚だけなので、もっと持ってくれば良かったな。2年前に雨の中を歩いたために坐骨神経痛を発症したと思うので、湿布に加えてホカロンも3枚持参してきたが、初日から雨が続いたので既にホカロンは使い切ってしまい残るはこの湿布だけだ。私が必要とするのは医師が勧める温湿布だけど、スペインには売られてないらしいから調達は無理だろう。もし品切れ以後に痛くなったらタイガーバームとボルタレンが最後の砦だ。

 ソリさんとお喋りしながら歩くので飽きることはない。ソリさんはイルンへ向かう電車の中でブロガーのたまゆりちゃんと会ったそうだ。私もネットでやり取りしたことのある女の子なので話が弾む。色んなところで繋がりがあって面白い。二人とも同じ17日にイルンを出発してソリさんはサンセバスチャンで2泊したのでそれ以降は会ってないらしい。ソリさんが2泊してくれたお陰で私との出会いがあったということか。その私も普段なら通り越してしまう宿なのに大事を取ってストップしたので出会えたのだから偶然と偶然が重なって不思議な出会いが生まれている。

 1時半、教会の中に大岩が据えてあるマルキナに到達。公営アルベルゲは3時オープンなので大分待つことになる。広場のテーブルで飲み食いしている巡礼もチラホラいるので、同じように待っているのかな。スーパーEROSKIで食べ物を仕入れて同じ広場にあるテーブルで頂くことにする。ここっていっぱいテーブルと椅子があるが、バルの物と言うのでも無さそうだし役場のサービスでもなさそうだ。どういう謂れがあるのだろう?でも有難く使わせていただく。同じようにスーパーから買ってきて食べだす巡礼もちらほら見える。

 アルベルゲのオープンが近づいてきたら20人程の巡礼が急に集まりだした。列にならんでチェックイン開始。丁寧に受付しているので中々自分の番にならない。ここはドナティーボだったので5ユーロ札を貯金箱みたいのに入れる。私は気づかなかったが箱には「No Coin」と張り紙がしてあったそうだ。ドナなので幾ら入れてもいいのが建前だろうが、2ユーロとか小額を入れる人もいるので、それでは赤字になるのだろう。公営と言えども使い捨ての不織布のシーツやら何やら運営経費は必要だ。

 ベッドの番号を渡されて、ソリさん15の私16なので二段ベッドかと思ったら快適な平ベッドだった!3年前にも泊まっているのに完璧に忘れていたよ。ベッドの間には低い柵まであって中々考えられているが、これもまったく記憶の外だ。昨日の私営は男女別にしてたが、公営は逆に男女ミックスの所の方が圧倒的に多い。隣の男が何か言ってるけど知らない単語なので翻訳アプリを使ってみたところ「隣人」だった。なるほどね、お隣さんと言う訳か。

 ベッドの用意ができたら次はシャワー・洗濯が鉄板のコースだ。Tシャツと、切り離したズボンの裾のみ洗濯。ここには回転して洗濯物を脱水するスピナーが無料なのがありがたい。手で絞るよりずっと効果的。物干し場はぐるっと建物に囲まれた中庭だが、広いので陽が当たっているから乾くのが早そうだ。

 夕方、ソリさんに誘われて夕飯を食べに行く。場所はすっかり忘れていたが、3年前に皆で入ったレストランだった。こんな所にあったんだ!外から見たんじゃ分からなかったが中に入ったら記憶が甦った。隣のテーブルにはベルギーからのおじさん二人組がいたので片言英語でお喋りできる。ベルギーはパトラッシュの話題が楽しいが、意外やベルギーではこの物語はマイナーで日本の方が売れてるそうだ。話の中でひょんなことから明日泊まるゲルニカのユースをソリさんが電話で予約してくれる。ソリさんは別のホテルに泊まって次ぐ日はバスでスキップするらしい。

 前菜はロシアンサラダとアスパラをシェアして、主采はステーキを注文。ソリさんはイカ墨の何かだった。ずっと隣のベルギーおじさんとお喋りをしているので言葉はあやふやでも楽しい夕食だった。

 アルベルゲに戻ったら広い談話室が酔っ払い天国になっていた。こういうのが大好きな私は参加して楽しんだのは言うまでもない。みんなとツーショットしてたら、あのヒッピーおじさんもいたので一緒に写真を撮らせてもらう。ベッドルームに行くとフランス婦人は酔っ払いがうるさいとこぼしている。自分も混ざれば楽しいと思うが人それぞれだ。


北の道8へつづく