北の道15   お勧めの海コース

5/29 グエメスの名物アルベルゲ。7時に食堂に行って朝飯を軽く食べさせてもらう。ドナティーボは出立するときにすることと言われているので、みんな食後にお札を箱に入れている。私も予定どおり20ユーロ札を入れさせてもらう。一時本降りの雨になったが、食べているうちに収まってくれたのでラッキーだ。

 7:45、出発。遠くの空が少し明るくなっているので期待しよう。今日のカミーノは二コースある。山を降りたらすぐに幹線道路に出て、直線で船着場を目指す最短コースと、グエメスお勧めの海回りコース。今回は余裕があるのでお勧めコースを行こう。海コースを歩き始めて少ししたら向こうから巡礼が逆に歩いてきたので聞いたところ、ロングコースでなくショートコースに変更したそうだ。海コースでも長短のコースがあることは聞いていたので自分もそうすることにする。でもこの男は歩くのが凄く遅いので結局一人歩きになる。海岸線に出るとまずまずの景色が見られたが、その後は内陸に入ってしまい結局迷って大した景色も見られずじまい。このコースにしたことを悔やむ。

 こっちにはカミーノの矢印もなくて、たまに目にしても本当に適当なのですぐ迷う。凡その勘だけで船着場の町を目指すしかない。11時頃、途中の村に教会があって、芝生にベンチもあるからここでジャムを挟んだ最後のパンとバナナを1本食べる。

 やっと渡し場のある町にたどり着いたが、前回とはまったく違う方向から町に入ったので船着場の方角が分からない。まぁ前は海なんだから左に左に行きさえすれば船着場にぶち当たるだろう。予想どおり、歩いていくと船着場のマークを発見。海の近くは迷っても大げさにならないから同じ何でも安心できる。船着場には青年の巡礼が一人待っていたが、若者はさばけてなくて面白くない。互いにオラと挨拶しただけで無言で船を待つ。

 サンタンデールまでは2.9ユーロとちょっと高め。乗船時間も3回の渡し舟の中で最長の20分ほどで到着。サンタンデールは大きな街なので人がわんさかいる。近くにはスペイン大手銀行のサンタンデール銀行本社のビルが聳えている。前回来たときは港の近くが大工事中だったが、その場所には大きいけど訳の分からない変てこりんなビルが建っていた。誰でも上まで行って港町の風景を見渡せるようだが面倒なので下から見るだけにしておく。

 波止場をのんびり歩いて記憶を頼りに公営アルベルゲを目指す。あそこの角を曲がると正面に階段があるんだよなーと思いながら歩いていくと、地元の婦人が「アルベルゲはあっちよ」と指差しながら親切に教えてくれる。分かっちゃいるけどグラシアスとお礼を言っておく。ここのアルベルゲは入り組んだ街中にあるのでちょっと分かりづらい。この親切なご婦人は巡礼が迷っているのを良く目にしているのかもしれないな。

 アルベルゲのドアにはオープン13時と書かれているので40分待ちか。バックパックを扉前に置いて階段に座って今日の日記を書いておく。時間になったが外から管理人がやって来る気配がないので、もしかしたら常駐かなと想像してベルを鳴らしたらガチャッと開けてくれる。レセプション前(と言うほど立派ではなくて机がひとつあるだけ)にはバックパックが3つ置かれているので、これは配達サービスのなんかな?テーブルの上には奇麗な千代紙を使った折り鶴が2つ置かれているので、日本人が泊まったのかと想像する。

 受付は私が一番なので、好きなベッドを確保できる。ここにはWi-Fiがあるのでコンセントが近いベッドにするか、奥まって個室感があるベッドにするか迷っている内に後からやって来た女の子がコンセント近くのベッドに落ち着いたので迷うのはこれでお仕舞い。何日も前から一緒になっているオーストリアのハイジおばちゃんも到着してきた。この人は数日前に日よけのためにシスターが被るスカーフをしていた人なので、シスターなのかなと思っているのだが尋ねるチャンスがいまだにない。

 シャワー、洗濯してから少し歩いた所にあるスーパーへ買出し。大都市なだけに道には人がうじゃうじゃ歩いていてまるで東京みたい。この道はカミーノになっているので歩道にはお洒落なホタテの石版が埋め込まれている。都市では多くの場合、ペンキの黄色い矢印は書かれてなくて、その代りに景観を汚さないこのようなマークが歩道にあることが多い。明日はこれを頼りにサンタンデールを脱出することになる。

 スーパーで買ってきた物はどれも一番安い物ばかりだが、これが私には分相応です。ちなみに1リットルビールは0.70ユーロで百円もしない。同じ1リットルでも有名メーカーのは倍の値段がしてるが、それでも日本円なら200円もしない。缶ビールにいたっては一番安いのは円なら28円なのでスペインビールの安さには脱帽です。日本も何とかしろ。消費税10%でもいいから飲食物は無税にしろ。年収1億円の人も100万円の人も同じビールを飲んで同じ消費税払うのはおかしいぞ。

 フレンドリーなオスピタレラおばちゃんにマリアカードを進呈する。そこの壁に張っておいてちょうだい。気を良くしたのか聞きもしないのに明日のカミーノの説明をしてくれる。壁の地図を示しながら、Pielagosから電車に一駅乗って鉄橋を渡り、次の駅Mogroで降りるんだとのこと。それは3年前にもやったコースだが、今年のGronzeには新しいカミーノが紹介されていたので、その鉄橋は渡らなくて済むんじゃなかったかな。まぁ行ってみたらの話しだ。ハイジも一緒に真剣になって聞いているが、ハイジはドイツ語しか話さないのでどこまで理解しているか。私も人のことは言えないのは同じだけど、ハイジに「ここからここはトレインだよ」と適当に伝えてみる。私は「おはよう、こんにちは、ありがとう」のドイツ語しか知らないので伝える手段は地名と身振りだけだけど何となく分かったみたいだ。


北の道16につづく