北の道16  ハイジはドイツ語だけ

5/30 サンタンデールのアルベルゲ。ハイジ婆ちゃんに名前を書いてと日記帳を渡す。ハイジ メセナー。ドイツはドレスデンの人だった。ハイジと言う名前からオーストリアかと思ってた。シスターかと思ってたが違って、プロテスタントだそうだ。ドイツにはカトリックとプロテスタントが半々だと言っている。今日はどこまで歩くのかと聞いたら、私が予定しているレケハダから10キロも余計に歩いたセンティジャナデルマルと言うのでビックリする。ここから37キロもあるよ。はて?ハイジは英語は喋れないはずなのに何で日記帳にはこんなことが書けたのだろう?

 今まで朝は必ず雨仕度での出発だったが、今日は初めて青空の下での出発となった。3年前に迷い狂った経験から大都市サンタンデール脱出に苦労するかと予想してたが矢印が適切で一度も迷わずに脱出に成功。3年前に間違ってしまった角には新たに表示タイルが埋め込まれていた。きっと今まで何人も巡礼が間違ってしまった要注意な角なので地元の「巡礼友の会」が対応してくれたんかと想像する。

 次の村の中にベンチがあったので靴下まで脱いで用意してきたサンドイッチで朝飯にする。留まっていると数人の巡礼がブエンカミーノと言いながら前を通り過ぎて行く。ハイジ婆ちゃんもやって来て、今日は何度か顔を合わせることになった。次の村にあった駅は地下道を通って線路の向こう側に渡るものだったが、よく見ないとその地下道が分からない。渡り終えてから後ろを見るとハイジ婆ちゃんがやって来たので、お互いに手で地下道の方向を指し示す。私:あっちだよ ハイジ:あっちだね。な感じ。

 今日のコースは矢印どおりに進めば新しいカミーノを歩けて鉄橋ルートは通らないで済むと思っていたが、矢印どおりに歩いたら前と同じルートになってしまった。途中からハイジと一緒に歩いて問題の村に到着。オスピタレラが教えてくれた通り、ここからは一駅電車に乗って列車専用鉄橋を渡る。この鉄橋を歩いて渡ってしまう巡礼がいるとの情報があったので、3年前は自分もそうしようと決めていたところ、ほかの巡礼から橋にはポリスがいると聞かされて電車移動にしたのだった。今回も前と同じにする。

 ハイジ婆ちゃんと一緒に駅に到着すると、今まさに列車が出たところだった。まぁまたすぐ来るさと高を括っていたらさっぱりやってこない。ハイジ婆ちゃんが少し離れた所にある公営アルベルゲを見つけて教えてくれる。本当に駅のすぐそばにあったんだな。かなり待ってやっと電車がやって来た。乗り込んでも車掌はやってこないので今回も予想どおり無賃乗車決定。鉄橋を渡ってすぐの駅Mogroに到着。ここで数人の女性巡礼らしいグループが一緒に降りた。ばかに軽装だがホタテ貝をリュックに括りつけているので巡礼のようだ。矢印に従って歩き始めたが、3年前とはまったく別の道だった。ハイジ婆ちゃんは道端のスーパーで買い物がしたいそうだ。私も付き合うのは一向に構わないが、もしかしたら別の思惑があって先に行けと言ってる可能性もあるかなと忖度して一人で先を行くことにする。

 女性グループもどっかに行っちゃったしずっと一人で歩き続けて交差点に出ると、黄色い矢印が予想とは逆の方を向いているので悩む。こうなったらノロマのGPSに頼るしかない。木陰でザックを下ろして気長に電波のやってくるのを待っていると、矢印の向いた方角から男性巡礼が現れた。やっぱり矢印は間違いだそうだ。なんだろなーこの糞矢印は。早急に何とかしてくれ。

 暑い暑いと言いながら歩き続けると特徴のある長い陸橋が現れた。あー、やっぱり3年前と巡礼路は変更になっていたんだな。前は90度別の道からここに到達していたのをハッキリ覚えている。線路をまたぐ陸橋を渡って今晩の宿がある町の中へ。だが今回も最後の詰めで失敗。Requejadaは1度泊まった記憶があるので本当は角を左に曲がれば50mでアルベルゲなのに右と記憶してたもんだから500mも進んでしまってから、どうもおかしいことに気付く。こういうのはほんと疲れる。暑いのに。前に歩いた事があると言う曖昧な記憶は時にもろ刃の刃。

 本格的暑さでの24キロはきつかった。でも2時過ぎの到着でも3番目のチェックインなので好きな下段ベットを手に入れられたからめでたしめでたし。向かいのバルで高いビールを飲みながらチェックイン6ユーロ。3年前はこのバルの外テーブルに座って巡礼全員で楽しくビールを飲んだ思い出がある。そのときの写真をバルのお姉さんに見せたら大うけする。今回は同じ北の道を歩くので、タブレットに3年前の写真を沢山入れてあるので所々でこうして見せるという楽しみがプラスだ。

 アルベルゲのシャワーが幾ら出しても水なので、仕方なく水シャワー。最初こそヒャーッだったが、少ししたら慣れてきたので時には水も気持ちがいい。後からやって来た男は水シャワーがよっぽど嫌なのか、部屋のボイラーをあれこれいじっているがスイッチは入らない。でも別の部屋にあるブレーカーを上げたらボイラーのスイッチが入ったと大喜びしている。私は一度浴びたことだし、ホットシャワーになったからと言って2度も浴びる気はないのでそのまま。

 ここのシャワールームはシャワーヘッドが3つペッペッペと並んでいるだけのワイルドなもの。仕切りもないのに男女共用。今日は宿泊者が少ないのでバッティングすることはないが、3年前に泊まった時には下着姿になったオーストリアのカタリナ姉さんとバッティングした楽しい想い出がある。いつものようにシャワーを浴びながら洗濯もする。今日はピーカンなので洗濯物もすぐ乾きそうだ。

 さっぱりした所で向かいのバルに行ってビールの小瓶を2本飲む。3.6ユーロ。近くには店もあるのだが、今はシエスタで戸閉めだ。くそ。飲んでる内にハイジ婆ちゃんが到着する。みんなアルベルゲからは道路を隔てたこのバルが受付になっていることを知っているようだ。ハイジ婆ちゃんは10キロ先を目指すと言ってたのに、やっぱり暑さで参ったらしく、ここで手を打ったようだ。何はともあれ知り合いが増えるのは嬉しい。婆ちゃん婆ちゃんと失礼なこと言ってるけど、私よりずっと若いだろう。ドイツ語以外話せないのにソロで頑張って歩いてます。頭が下がります。私みたいに遊び半分で歩いているのが恥ずかしいくらいです(うそ)。

 そうこうしてたら女に目がないイタリア兄ちゃんもやってきた。こいつは一体何を考えて歩いてるのか分からん。いつものようにコーラを飲みながら、この人が泊まっているかとギター片手の女性の写真を見せる。確かに美人だ。いないよと言うと、すぐ次のアルベルゲを目指して出発してしまった。イタリアの男は時々こういうサカリの付いた犬っころみたいのがいるので、イタリアと聞くと時折その印象が頭をヨギル。でも殆どのイタリア人は気持ちのいいやつです誤解のないように。

 アルベルゲに戻って作っておいたサンドイッチと粉コーヒーをペットボトルに入れて流しの水を入れカシャカシャ。簡単な昼飯をとする。食後は明日用にサンドイッチを2個作っておく。朝作るのは時間的に勿体ないので、前日に作るに限る。

 夕方5時半にコロンビアからのシニア4人組が到着して私のベッドルームに落ち着く。その前にはチャリのスペイン爺ちゃんが下段のベッドに入っていたので、多くが上段になったが仕方なかろう。その内の一人は吸入器を持参していたので、プリミティボの道で吸入器を持ち歩いて巡礼していたフリアンにベッドを譲ったことを思い出す。凄いね、この人も喘息なのに歩いて巡礼だよ。これも頭が下がるが下段は譲らず。

 5時過ぎたのでシエスタが終わっている筈だ。近くのフルテリアに行くとちゃんと缶ビールまで売られていたので一番安いSanMiguelを2本とトマト、生ハム、ネクタリンを買っても4ユーロちょっとと激安。今晩の夕飯とする。スペインでは果物屋でもパン屋でも肉屋でもビールを売っているので大助かり。


北の道17へつづく