北の道19  婆ちゃんのアルベルゲ

6/2 6:20起床。毎朝の恒例行事、パッキングと足の肉刺予防にワセリンをすり込み忘れ物がないかベッド周りを再点検。一仕事終えて7時からの朝食の時間を待つ。ここはアルベルゲとしたら経験したことのない程の高値20ユーロなのでどんな朝飯が出てくるんだろうと期待している。

 7時少し前になったので2階のキッチン兼食堂へ行ってみる。やっぱり多少は早くてもオーケーのようで数人が朝飯を食べ始めていた。綺麗なテーブルに一人ずつ皿とナイフ・フォークがセッティングしてあり、やっぱり普通のアルベルゲの朝飯とは違うのがはっきり分かる。何を食べさせてくれるんだろう、ワクワクワク!?食事は一人分ずつ量が決まっているようで、ジュースが1パックにトーストが2枚。マーガリンとジャムの小さいのが付いている。それにカステラの小さいのが1個と席に着くとコーヒーを出してくれる。まぁ普通だった。バイキングが良かったな。

 Sさんは今日も早めにスタートしたが自分は少し遅れた7:10に出発する。古い町並みには3年前に腰痛を何とかしたくて入った薬屋があった。店構えはどんなだったか記憶になかったが、薬屋はこの町にここしかないようだし、この通りは覚えているのでここに間違いない。店内は近代的だと覚えているが外観は中世の街並みにマッチした美しいものだった。中にいた薬剤師さんに身振りでボルタレンを売って貰った思い出が懐かしい。

 Sさんには程なくして追いつくが、そこには昨日のアルベルゲに泊まれなかったオーストリアのオバちゃんがSさんと一緒に歩いていた。二人は19キロ先の公営アルベルゲを目指すそうだが私はそこからひとつ先にある私営のアルベルゲを目指すことにしてある。そこは私営なのにドナティーボで評判が良いとのこと。

 ずっと歩き続けて幹線道路と合流することになったら、Sさんが道路の向こうからやって来た。どうしたのかと聞くと、巡礼路を外れて近道をした積りが結果的に大分遠回りをしてしまったと悔しがっていた。でも私と合流できたんだからとんでもなく大回りをしたんでもないだろう。

 サンビセンテの町に入る手前に大きな橋があり、ベンチがあったので靴下を脱ぎバナナを食べて休んでいくことにする。そこへパラパラと巡礼がやって来て休みだした。みんな初対面でも同じ目的を持った巡礼同士なのでフレンドリーで楽しい。ここへ来る途中で巡礼路は二つに分かれたが、ここがまた合流するポイントだ。見たことない人達なので、きっと私とは違うルートを歩いてきた人たちだろう。橋の下を覗くと一人乗りカヌーの数人が橋の下の流れに抗して橋の反対側に行こうとしているのが見えた。男のカヌーは流れを乗り切ったが女性は力不足で越えることができない。見ててもさっぱり成功しないので歩きだす。

 サンビセンテからは巡礼路を外れたコースが存在する。3年前に同じ巡礼仲間が教えてくれた道で、これを行けば5キロの短縮になるそうだ。でもその道には矢印はないので、Sさんはそれを嫌って本来の巡礼路を行くとのこと。私は一度歩いた道なので心配はしていない。それに、こっちの道がとても景色が良かったのも選択肢のひとつだ。橋を渡りきった所にすぐその分岐は現れた。巡礼路は直進だが近道をする私は町の中に入って行く。

 ずっと歩き続けて道端にあったドライブインみたいな大きな店で1.5ユーロのコーラを飲んで一休みした他は目的の町までひたすら歩き続ける。やはりこの道を知っている巡礼はいるようで顔見知りの年配カップルに会うことができる。その後は知らないうちに巡礼路と合流できたようで、矢印もお目見えしてきた。またドライブインのようなスーパーマーケットのようなLupaと言う大きな店が現れたので食料を仕入れよう。バナナ2本とクッキー、缶ビールを仕入れてビールはスーパーの店先にあった日陰にべったり座って飲むことにする。ときどきこんな浮浪者みたいなことをやってるが、もう慣れたもんで恥ずかしくも何ともない。この感覚ってむしろやばいかな?飲み食いして出たゴミをスーパーのゴミ箱まで捨てに行ったら、ペットの犬を連れたセニョーラがブエンカミーノと声を掛けてくれる。

 アルベルゲがあるBustioの町に入ってくると、通りのバルでパラパラと巡礼が昼飯を食べているのが目に入る。前には女性の巡礼が歩いているが、取りあえず今晩の宿を決めておきたいので地図で確認した方向に行くと簡単に見つかる。呼び鈴を押すと人のよさそうな婆ちゃんが応対しくれて「テンゴ  ノ レセルバ バレ?(予約してないけど?OK)」と変なスペイン語で言うと「モチーラ(リュック)はそこに置いてバルでご飯を食べてくれば」のようなことを言ってくれたので泊まるのはオーケーのようだ。スーパーで買って安く済まそうと思ったが生憎シエスタだ。安く食べさせてくれそうな店を物色して町外れまで歩いてみる。まぁ小さな町なので片手で勘定できるくらいのバル・レストランしかない。

 町の入り口にSUSHIと書かれたレストランがあったので、どんなインチキ寿司があるのだろうとからかい半分で入ってみる。店の人は東洋人だが聞くと中国人だった。でもメニューを見ると平均的に安いのでここんちで食べることにする。寿司っぽい料理もあったが、どうせロクなもんでないのは見るまでもないので焼きそばにチキン・フライドポテト添えの二皿を頼む。飲み物にはビールの小瓶をリクエストして合計で8.9ユーロ。焼きそばの麺はインスタントラーメンと同じだったが、やたら具が多いな。しかもソースじゃなくて塩味。ひょっとして元はインスタントの袋入り塩ラーメンか?!味はまぁこんなもんか、想像の範囲内ってとこだ。チキンは普通だった。

 店の中を見渡しながら食べているが、紙おむつに子供のおもちゃからプラスチックの家庭用品まで多種多彩に並べてある。ようするに食堂兼何でも屋ってことらしい。しかもキャッチフレーズが「寿司」だ。さすがと言うか貪欲さに恐れ入ったよ中国人。味はともかく全部食べたら腹いっぱいになったので結果オーライ。安かったし。

 アルベルゲに帰る途中、くだんのアルベルゲ方面から戻ってくるソロ女性巡礼がいた。聞くと、コンプリートとのこと。あらー残念。私もタッチの差で泊まれたのかも知れない。でもこの町は大きいので泊まるところは幾つもあるだろう。来る途中に一緒だったおっさん二人組も別のアルベルゲを予約してあったし。この女性は逆歩きらしかった。私も今回はサンチャゴ到着後は逆歩きでファティマを目指す計画なので、その大変さは幾らか理解している積りだ。女性なのに勇気があるなー。

 bustioのアルベルゲは私営だけどドナ。ご覧のような素晴らしい部屋でバス付きトイレ完備。ツインルームなので、これで誰も来なかったらすっごい贅沢だなーと思っていたら、スペイン親父が入って来てしまった。ま、コンプリートなんだからどの部屋もそうだよね。夕飯も付くかと思っていたが、残念ながら朝食のみだった。じゃぁ明日ドナには幾ら入れようか?

 部屋は立派だけどWi-Fiがないのが玉に瑕。また町まで出て行ってバルに入り「Wi-Fiある?」と確認してから高いグラスワイン2ユーロをチビチビ飲んでネット三昧。スーパーならフルボトル買えちゃうよ。


北の道20へつづく