北の道22  アルベルゲは山の一軒屋  Leces

6/5 A Casa Rectoral 教会付属のアルベルゲ。7時前に起きてキッチンで朝飯にする。バーガー用パン(最近良く持ち歩いている)。トマトにインスタントスープ。日本から持ち込んだ固形スープの素が残り2個になってしまった。終わったらスーパーで玉ねぎスープを仕入れたい。スープの素を持っていると食べ物が無い時とか何かの時に重宝するので切らさない方がいい。昨日はいなかったドイツ人がキッチンにいたので、夜遅くなって到着したらしい。話してみるとフレンドリー。英語は話さないようなのでボディーアクションが主な伝達手段。虫刺されの軟膏を上げたおばちゃんがまたお礼を言っている。ちゃんと効いたようだ。

 昨晩、スペイン人の巡礼たちは揃って今晩のアルベルゲを心配していた。きっと私が3年前に泊まった公営アルベルゲLa Israがクローズされてることを言ってるのだろう。でも私はその手前16キロにアルベルゲがあるらしいのを知っているので教えてみる。そこは距離が短いので嫌なのかな?逆に私は今日もショートコースなので気楽。昨日とは打って変わって青空の下を歩き始める。

 今夜の宿は店も何もない所なので手前のリバデセジャの大きな町でチョコパン1袋とインスタント麺、ハムを買い込む。全部で3ユーロと80。ついでにバルでコラカオを飲んで一服する。3年前は町の中からどう歩いたのかまったく記憶がなくて、矢印も見失ってキョロキョロしていたら地元の人が教えてくれる。教わった方向に歩いて行くと橋を渡りだした巡礼を発見したので後を追う。

 歩きだしは天気が良かったが、やがて不穏な雲が空を覆って雨が降り出しそうになってくるころ、運良く今夜の宿が遠くに見える分岐にやってきた。そこに女の子の巡礼がいたのでちょっとお喋り。この子は私が泊まろうとしているアルベルゲじゃなくて、3キロ進んだ小さな私営アルベルゲ Tu Casa に行くそうだ。そこはベッド数が7つしかないのに予約もしてないって。大丈夫か!?自分はやっぱり確実に泊まれるこっちがいいよ。ブエンカミーノと言いあってバイバイ。

 丘を下って登った上に教会が良く見えていて、あそこがアルベルゲだろう。時間が早いので、また一番乗りで待たされるんかな。小降りの雨の中、到着した大きな教会はどこも閉ざされていて入ることはできなかった。まぁ時間になればどっかが開くんだろうと待つことにする。そこへ道の反対側からやって来たのは日本人のSさんだった。5日振りの再会だ。相変わらず飄々として眠そうな顔をしている。アルベルゲはこの教会じゃなくてあっちだよと教えてくれる。アルベルゲの前には既にSさんのバックパックが置かれていて到着1番だった。建物は大きく立派。巡礼路から外れたアルベルゲなのに随分と大きいんだなー。こんな大きくて巡礼でベッドがいっぱいになるとは思えないんだが。

 Sさん今日は電車移動だった。渡し舟に乗ったら全て歩き通すというモチベーションが下がってしまい、時には乗り物を使うスタイルに変えてしまったらしい。北の道の渡し舟はれっきとしたカミーノなので、乗ったからと言ってズルしたことにはならないんだけどな。でももう何度か乗り物を利用してしまったSさんに言っても無駄だから黙っている。

 オープンの1時を過ぎると巡礼がパラパラと集まりだして、俄然にぎやかになって来た。その中には二人の日本人女子がいたのでビックリ。このアルベルゲで日本人がなんと4人も揃ったよ。ここではもう日本人はマイノリティーじゃなくなった。こんなの初めてだよ。女の子から「おくのさんですか?」と声が掛かった!えっ、何で知ってるんだろうと思ったら、ときどきアルベルゲの旅のノートに書いていたのを読んだんだそうだ。自分もそういうノートがあると日本語で書かれたページだけ拾い読みするので、やっぱり日本人なら同じことするんだなー。

 二人にはぴったりと寄り添う青年がいて、一人の女子を気に入っているのが丸出し。おいおい肩まで抱いてるよ。ひょんなことから女子の年齢を教えてもらったら20代に見えるのに実際は40歳とのこと。女子からこの青年は31歳というのも教えてくれる。日本人は若く見えるし恋に年齢は関係ないのか。サンチャゴまでは一緒に行けるとして、そのあとはどうするんだろう?ドキドキ

 このアルベルゲは付近に何もない一軒屋だけど、施設内には垢ぬけた立て看板があってピザやパスタの出前が出来るそうだ。食料品や飲み物もアルベルゲの中に沢山あって買うことができた。うーん、重たい思いしなくても食べることはできたんか。巡礼も沢山集まってきて、みんなワインを買ってワイワイと宴会のようになっている。アルベルゲ前までバスでやって来たグループもいたな。巡礼ツアーか!?

 曲がりくねった杖を真ん中から金属でジョイントしようとしてる夫婦がいるので興味深く見ている。杖の様子がまるでハリポタに登場する空飛ぶほうきに似ていたので、あれ何てったかなーと考えたらファイアーボルトだったと思いだす。「これはファイアーボルトか?」と言ったらその奥さんも分かっていたようで、「イエス ファイアーボルト!」と、ほうきに跨ったスマホの写真迄見せてくれる。ずっとワインを飲みながらガハハガハハと笑っていて夫婦して豪快。フェイスブックを交換したらローラーゲームの写真ばっかりあった。プロではないらしいがぶっ飛んだ格好で滑りまくっていた。

 背が高いサイラスもやって来た。表にあったバックパックはサイラスの配送だったのか。いつも配送サービスを使うのは、膝を痛めたためらしいのが分かった。サイラスはいつもニコニコしていて愛想がいい。アメリカ人だから当たり前だけど、世界中の巡礼と英語で自由に喋れてまことに羨ましい。

 このアルベルゲにはコーヒーカップはあるけど皿の類が見当たらないのでカップでインスタントラーメンを作ってみる。チョリソーも足して小さいカップで2回に分けてチンで作って今晩の食事。余りに粗末なのでアルベルゲの缶ビールを1つ買って飲む。Sさんは今日もワインボトルを買ってちびちび飲んでいるが、飲みかけのボトルを置いたまま消えてしまった。あとで見たら誰かに飲まれてしまったようで空になっていた。あちこちにあったワインボトルはことごとく空になっていた。みんな酔っ払いなので持ち主がハッキリしないワインは全て飲まれてしまう。Sさん、もう飲まないのなら私にくれよ~。


北の道22へつづく